コワルスキ好き、集まれ!(タルタロスの目覚め、ジェームズ・ロリンズ)読書感想
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今回ご紹介する本はこちら
タルタロスの目覚め ジェームズ・ロリンズ 竹書房文庫
シグマフォースシリーズの14作目です。
毎回、地球規模の災害をアメリカのトップ工作員たちが未然に防ぐこのシリーズ、つまり地球は14回滅びかけたということになります^^;
そう考えるとすごいですね。
今回はここ最近、少し離れていた ”歴史” ミステリの要素をがっつり組み込んだ力作でした。
シリーズ初期のころに作風が戻り、懐かしい思いでした。
シリーズ初期からのファンである私にとってはそれも嬉しいことだったのですが、それを上回る ”嬉しい要素” がついてきました。
それは、今作は空前の “コワルスキ回” だった、ということです!
シグマきっての破壊王、コワルスキが大活躍しております。
そして彼は、私の推しでもあります!
というわけで、これ以降、コワルスキについて熱く語ろうと思います。
コワルスキは『イヴの迷宮』で意味深なフラグがたっておりましたが、どういう意味だったのか、そのヒントが今作で分かりましたので、彼がこれからどうなってしまうのか、私の推測も書いておこうと思います。
それでは、いざ、コワルスキの良さを語りつくしましょう!
目次
1.コワルスキってどんな人?
まず、コワルスキについて簡単におさらいをしておきましょう。
本名ジョー・コワルスキはシグマフォースシリーズの3作目『ユダの覚醒』から登場したキャラクターで、元海軍兵士です。
コワルスキはシグマの隊員の中でも異色の存在で、そのキャラ立ち度は際立っています。
キャラ立ちの理由その① 優秀ではない頭脳
その理由のひとつ目が彼の頭脳にあります。
複数の博士号を取得していて当たり前の優秀な頭脳を誇るシグマの隊員の中で、コワルスキの最終学歴は高等課程修了と、異例です。
作戦中も、よく考えないまま行動をとって、他の隊員に怒られたり呆れられたりしています。
さらに作戦会議中も、難しい話を他の隊員がしているのを聞いて、「つまりどういうことだよ?」と俺にはわからないと、むくれていることがよくあります。
つまり、頭脳集団に属しているにも関わらず、自他ともに、コワルスキの強みは頭脳ではないと認められているのです。
キャラ立ちの理由その② 壊すの大好き
コワルスキのキャラ立ちの理由2つ目は彼の得意分野にあります。
彼の得意分野はズバリ、破戒。
大男と称される恵まれた体格の持ち主で、腕力には自信あり、ショットガンやマシンガンをぶっ放すのが大好き、さらにシリーズ途中から爆発物の専門家として教育を受け、ミーティング中も爆発物になる粘土をこねまわすという破壊の申し子みたいな行動をしています。
他のメンバーがアクションシーンでも頭脳プレーを得意としているのに対して、コワルスキは派手に壊してピンチを克服する豪快なアクションが売りです。
キャラ立ちの理由その③ 常に本音
そして、キャラ立ちの理由その3が性格です。
他のシグマのメンバーが理性的、知性的なタイプが多いのに対して、彼は単純で難しくものを考えるのが苦手な直情径行タイプです。
分からないことは素直に分からないといい、任務の最中でも、「俺はここから先に進みたくない」と他のみんなが思っている本音をぽろっと口にしたりします。
そんな彼だからこそ、緊迫した場面であっても、少し間の抜けた言動をして、くすっと笑わせてくれるシーンに変えてしまう、ユーモラスを演出してくれるんです。
コワルスキをめぐる大きな謎……
頭脳、行動、性格のどれをとっても異色の個性を持つコワルスキ。
なんでシグマは彼をスカウトしたのか?
これはシリーズ通しての大きな謎の一つかもしれません^^;
しかし、彼の存在は読む方にとっては侮れないものがあると思います。
私はコワルスキが登場するシーンでは「何をやらかしてくれるんだろう」「彼が出てくると笑えるシーンがくるんじゃないか」と思わず期待してしまいます。
他の隊員たちがでてきても、笑えるシーンなんて期待できません。
緊迫したシーンの多い、シグマフォースシリーズにおいて、ギャグ要員ともいえるコワルスキは、いわばオアシス!
要するに、大好きなんです^^
ちなみに、コワルスキがシグマにスカウトされるきっかけとなった事件は『シグマフォース機密ファイル』というタイトルの短編集とファンブックを合体させたような本に収録されています。
興味のある方はそちらも読んでみてください。
2.今作で分かるコワルスキの魅力
これまでのシリーズでもコワルスキの魅力は十分(私には)伝わっていますが、今作では、コワルスキの魅力をさらに3つの点から掘り下げています。
さらなる魅力その① 意外と繊細?
一つ目が、彼の内面のナイーブな面にスポットライトを当てたことです。
シグマの隊員であることを誇りに思っているコワルスキ。
ここまでは読者も知っていましたが、しかし、内面では「なんで自分がシグマの隊員に選ばれたのか?」という不安も感じていたことが明かされます。
理由は明白で、自分が周りの隊員に比べて特筆すべき学歴がないからです。
自分は破壊力と肉体の強靭さでシグマに貢献している、それは彼も分かってはいるのですが、人間だもの、比べちゃいますよね。
というか、ちゃんと自覚して気にしてたのか、コワルスキ。
コワルスキが意外に自分を客観視していることが判明し、私は感動すら感じた部分でした。
さらなる魅力その② ヒーローになる
2つ目は、彼らしい突破力・破壊力のあるアクションです。
爆弾大好き、武器(しかも大型の)大好きなコワルスキは、終盤、サブマシンガンを思う存分ぶっ放してご満悦なシーンがあります。
これだけでも彼の魅力は伝わってきますが、しかし、今回はそれだけではありません。
最後の最後、味方の(そして地球の)大ピンチに、シグマの隊員たちは究極の選択を迫られます。
今までのシリーズなら主人公のグレイがヒーローになるシーンですが、今回、ヒーローに躍り出るのはコワルスキです!
それも、気負った態度ではなく、実に彼らしいあっけらかんとした態度でいいところをかっさらっていきます!
いい意味で彼の単純さや、勇猛さをみせる素晴らしいシーンでした。
さらなる魅力その③ いつでも笑いを
そして3つ目は、考えるのが苦手なコワルスキがはいた名セリフです。
例のごとく、考えなしに武器を使ったコワルスキに、グレイが「もっと考えて行動しろ!」と怒るシーンがあるのですが、それに言い返したコワルスキのセリフに爆笑です。
一応このセリフがでてきたシーン、生きるか死ぬかの瀬戸際が続いてる場面だったんですけどね。
私はこのセリフを読んだとき、本気で声をあげて笑ってしまいました。
コワルスキの一言に笑いと安心感がもらえて私のお気に入りになりました。
3.今後のコワルスキはどうなる?
コワルスキは、以前、『イヴの迷宮』で意味深なフラグがたっていました。
現在より数年後の話ではありましたが、彼の身になにか大変なことが起こったらしいことを示唆されています。
いろんな憶測を呼んでいますが、今作でそのヒントが出ました。
コワルスキ、本気のピンチです。
フラグの意味を知った時、私は本気で凹みました。コワルスキの恋人であるマリアと同じくらいに凹んだと思います。
しかし、それでもコワルスキはやっぱりコワルスキ。自分が一番大変なのに、彼がマリアにとった態度はとてもかっこよかったです。
彼に暗い顔は似合いませんね……!
これまでもいろいろなピンチをしのいできたシグマの隊員たちですから、これからのシリーズで一発逆転! を期待したいと思います……!
4.『タルタロスの目覚め』のあらすじ
それでは最後に、本作のおおまかなあらすじをご紹介します。
まず、本作のタルタロスの意味から少し補足をしますと、タルタロスはギリシャ神話でいう地獄の意味です。
本作の冒頭に紹介されていますが、ホメロスという古代ギリシアの詩人が遺した『オデュッセイア』という作品にもタルタロスは出てきます。
『オデュッセイア』はトロイ戦争で活躍した英雄がトロイから故郷まで帰る波乱万丈の船旅の様子を記したもので、地中海をさ迷いながら、化け物に襲われたり、タルタロスに足を踏み入れてみたり、というファンタジー要素満載の冒険譚となっています。
しかし、この『オデュッセイア』、出発点と到着地点は特定されており、全くの夢物語というわけではないそうです。
では、その間の冒険物語はどうなのでしょう?
真実も含まれているのかもしれません。
本当にタルタロスもあったのかもしれない……
本作の作者であるジェームズ・ロリンズは、『オデュッセイア』はもしかしたら文明間の闘争を比喩的に描いたものだったのかもしれないと考察を述べています。
『オデュッセイア』はちょうど、ギリシアのミケーネ、アナトリアのヒッタイト、エジプトと多くの偉大な文明があいついで滅び去った時代と一致しています。
もしかしたら、第四の文明が他の文明を食いつぶし、自らもあっという間に、何らかの理由で滅びてしまったのかもしれない……
その一つの答えが、本作中で描かれています。
グリーンランドの氷山の中心で9世紀のアラビア船が発見される。
船の中で機械仕掛けの地図が入っている箱があり、何者かが力ずくでその箱を奪っていったと、シグマに報告が入る。
休暇中だったコワルスキとその恋人マリアに作戦開始の命令がくだり、彼らは箱の奪還のために船の中に生き残りがいないか捜索に向かうが、そこでみつけたのは、機械仕掛けで動く無数の殺戮ロボットの姿だった。
辛くも船から逃げ出し、地図の入った箱を追うコワルスキ達。
しかし、逆に敵によって追い詰められ、囮になったコワルスキが囚われの身になってしまう……
シグマのピンチが続く中、グレイとセイチャンも作戦に加わり、地図とコワルスキの行方を追うことになる。
一方、コワルスキは同じく敵に囚われていた考古学者と共に、地図の謎を解きながら脱出の機会をうかがっていた……
いかがでしたでしょうか?
私の推し、コワルスキが大活躍していたので本作はいつも以上に楽しめました。
コワルスキ好きの方は必読ですよ!
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
他のシグマフォースシリーズはこちらでご紹介しています。
シリーズ1作目『マギの聖骨』↓
シリーズの前日譚『ウバールの悪魔』
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