2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』をより楽しむために:おすすめの本をご紹介

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

このページでは2022年NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』をより楽しむための本をご紹介していきたいと思います。

この記事では、実際に私が読んでおすすめできると思った本のみを採り上げています。少しずつですが、ご紹介する本を増やしておりますので時間を置いてまた覗きに来てくださいね。

このブログを見てくださっているあなたは、既に『鎌倉殿の13人』に関する本を読みたい!と思われている方が多いでしょう。

そういう方はこちらから、おすすめ本の箇所へ飛んでください。

そして、「実はまだ本を読むとは決めてない」という方は、このまま読み進めていってください。

せっかく大河ドラマを見るなら、絶対読んだ方がいいと思う理由をご説明します。

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2022年の大河ドラマは、脚本家が三谷幸喜さんということもあって、楽しにしていた方も多いのではないでしょうか?

時代は鎌倉時代主人公は北条義時(ほうじょうよしとき)です。

しかし、「鎌倉時代はよく知ってるけど、北条義時って誰??」と思われた方、いらっしゃいませんか?

私もです^^;

源頼朝や北条政子に比べれば知名度はガクッと落ちますが、よく知ると、大河ドラマにとり上げられるだけのことはある、すごいことを成し遂げた男なんです。

何を成し遂げたのか? それこそが、本を読んで、事前に知識を仕入れておいた方がいい理由ともつながっています。

北条義時は、具体的に何をしたひとなのかというと、時の権力者、後鳥羽上皇(ごとばじょうこう)が起こした承久の乱(じょうきゅうのらん)を鎌倉幕府が誇る武力でもって鎮圧し、上皇3人をド田舎に飛ばしちゃった人、なんです。

何やらすごい人な気がしてきましたか?

でも、実際どのくらいすごいことだったのか、今の時代を生きる私たちから、想像できるでしょうか?

上皇はその当時、どれだけの権力者だったのでしょう?

上皇に手を出すってどれくらいヤバいことだったんでしょう?

戦争を起こした罰がド田舎に飛ばすだけでよかったの?

今の常識から考えると、よくわからないことがたくさんあります。

これは、時代感覚が違うからなんですね。

時代感覚とは、その時代の常識、という意味で使っています。時代感覚は、生きている今の時代のものしか、体感することはできません。しかし、歴史ドラマや小説を楽しむには、その舞台となる時代の感覚を持っていないと、持っている人に比べて、物語から得られる感動や衝撃をきちんと理解できないんです。

私の経験した具体例を挙げましょう。

前に、百田尚樹さんの『永遠の0』という小説を知人にすすめたことがあります。『永遠の0』は太平洋戦争中の戦闘機パイロットを主人公にした小説で、その当時、戦争で死ぬことが素晴らしいと考えられていたにも関わらず、主人公は生き延びることに執着する変わった思想の持ち主でした。しかし、その主人公が、最期に見事な戦死を遂げる、その理由が感動的な小説です。

私は読みながら号泣しましたので、おすすめしたんです。しかし、知人の感想は「主人公の気持ちがよくわからなかった」という、私の経験した読書体験とは真逆なものでした。これは、太平洋戦争当時の日本が、どんな状況だったのか、私と知人の間に知識量の差があったからなのでした。

作品の中でその時代背景は書かれているものですが、事前に持っていた知識で、「そうそう、そうだったよね」と思いながら読むのと、作品から得られる知識のみで読むのとでは、理解力に差が出てしまいます

大河は昔の日本が舞台といえど、時間は30年もさかのぼれば、そこは異世界、ファンタジーの舞台みたいなもんです。どんな設定かわからないのに、ファンタジー作品は楽しめませんよね。たとえファンタジーの名作、ハリー・ポッターでさえも、いきなり2作目から読み始めたらなかなか世界観に入っていけないと思います。

ですから、『鎌倉殿の13人』を見ようと思っているあなたには、ぜひ、事前に少し知識を入れておいてほしいんです。

『鎌倉殿の13人』を楽しむためにおすすめの本とは

私が実際に読んで、内容を確かめた上で、ご紹介していきます。

読書への慣れや、知りたいことの深さ・範囲によって、参考になる本は当然違いますので、そこも含めてご紹介していきますね。

<おすすめの本リスト>
  0.NHKから待望のハンドブックが発売されました!
    鎌倉殿の13人  NHK大河ドラマ歴史ハンドブック  NHK出版

  1.これはぜひ押さえておきたい!
鎌倉殿と執権北条氏 坂井孝一 NHK出版新書
    源氏将軍断絶  坂井孝一 PHP新書
    承久の乱    坂井孝一 中公新書
    北条義時と鎌倉幕府がよくわかる本  歴史の謎を探る会  河出書房新社

  2.ざっと北条義時の生涯を知りたい・読書不慣れな人でも読みやすい
    修羅の都 伊東潤  文春文庫
    承久の乱 本郷和人 文春新書
    炎環   永井路子 文春文庫
    北条義時 嶋津義忠 PHP文庫
    鎌倉燃ゆ 安部龍太郎ら7人  PHP文芸文庫
    言の葉は、残りて  佐藤雫 集英社文庫

  3.北条義時について詳しく知りたい・かたい文章でも平気な人向け 
    北条義時    安田元久 吉川弘文館
    頼朝と義時  呉座勇一 講談社現代新書

  4.鎌倉時代について広範囲に深く知りたい・読書が好きな人向け
    執権   細川重男  講談社学術文庫
    日本の歴史7 鎌倉幕府 石井進  中公文庫
    鎌倉幕府の謎   跡部蛮  ビジネス社
    吾妻鏡         西田友広  角川ソフィア文庫

  5.無料ですぐ読める作品もあるんです
    源頼朝   吉川英治  青空文庫
    右大臣実朝 太宰治   青空文庫
    修善寺物語 岡本綺堂  青空文庫

0.NHKから待望のハンドブックが発売されました!

鎌倉殿の13人 NHK大河ドラマハンドブック NHK出版

2021年12月、いよいよ発売されたのがこの本です。本というよりはムック(本と雑誌を足して2で割った感じの本)ですね。大河ドラマ制作局のNHKから「大河ドラマをみるのに必携の一冊!」として出版されるわけですから、出版前から楽しみにしていました。

これまでの経験上、NHKから出版された本はどれも総じてレベルが高いです。取材も丁寧だし、それを文章にする時の構成や面白さもきちんと配慮されていて、個人的には「NHK出版の本にはハズレなし!」と思っています。

そして本題の『鎌倉殿の13人』ですが、期待通りの内容でした。

まず、さらっとどんな内容が収録されているかご紹介しますと、

  ・坂井孝一(『鎌倉殿の13人の時代考証役)と伊東潤(近年最注目の歴史小説家)の対談

  ・北条義時の生涯

  ・鎌倉殿の13人の紹介

  ・その他の同時代の代表的人物の紹介(3代将軍や後鳥羽上皇とか)

  ・もちろん登場人物の相関図も掲載

  ・他にも「承久の乱」をテーマにしたコラムなどなど……

1冊はそんなに分厚くもないんですが、よくぞこれだけの情報を詰め込んだな!というほど、充実した内容です。

一つ一つの記事は短かいながらもよくまとまっていて、サクサク読めます。通勤時間などのちょっとした時間に少しずつ読み進めるのにも向いています。

書いている人たちの経歴も見る限りその道のしっかりとした研究者ばかりのようです。このページの中でご紹介している細川重男さんのお名前もありましたよ。

他に本書ならではだったのは、鎌倉に遺る当時の建物跡地などを紹介したマップと京都などにある戦の跡地などを紹介しているところです。聖地巡礼を行いたい方には嬉しいオマケです。

欲を言えば、これで「大河ドラマのために読書したぞ!」 ……というには少し物足りなさを感じる方もいらっしゃるかも。。。コラムを寄稿されている方の代表的な著書も記載されていたので記事を読んで気に入った方の著書を読んでみたり、このページで紹介しております他の本を次に読まれてもいいと思います。

ちなみに、私は本書『鎌倉殿の13人』はAmazonで購入しましたが近くの本屋で確認したところ、NHKテキストの棚と文芸誌の棚、両方で本書が並んでいることを発見しました。本屋派の方は探す時に参考にしてくださいね。

1.これはぜひ押さえておきたい!

このコーナーでは、『鎌倉殿の13人』の時代考証人である坂井孝一さんの本と、一から鎌倉幕府の成立や北条義時について知りたい方向けの本をご紹介します。

鎌倉殿と執権北条氏  坂井孝一  NHK出版

著者は『鎌倉殿の13人』の時代考証者です。この記事で、他にも同じ著者の本を2冊、ご紹介していますが、出版が一番最近なのが本書になります。

出版社名もNHKだし、帯にも「大河ドラマ鎌倉殿の13人 時代考証者による決定版」と堂々宣伝してありますので、皆さんが一番気になる本ではないでしょうか。

期待を裏切らず、これ一冊を読むことで、 大体の史実が頭に入り、放送前の予習にはちょうどいいと思います。 (お値段や、読みやすさ的な意味においても最適)

本書は、北条氏が源頼朝を庇護する前、北条氏が小さいながらも所領を手にするところから始まります。その後、なぜ北条氏は源頼朝という当時の厄介者を抱え込む気になったのか、源頼朝が挙兵を決意した理由、北条義時と父・時政との政治家としての違い、二代目、三代目将軍の治世から承久の乱にかけての義時の動きといった、北条氏の歴史から、主人公・北条義時の活躍までを1冊にまとめてあります。

本書の内容は他2冊とかぶるところもあるのですが、視点を源氏将軍から北条氏に変えることで、3冊全部読んでも新しい発見があり、面白いと思える内容になっています。

私が一番興味をひかれたのは、「北条義時、最初の結婚」のくだりですね。北条義時は頼朝の仲介で、姫の前という女性と結婚するんですが、その時にはなぜか、長男である泰時が生まれています。義時は姫の前との結婚前に、誰かと結ばれていたことは間違いありません。泰時という、義時の後を継ぐ存在を生んだ最初の妻がどこの誰なのか、詳細は実はわかっていないそうです。その正体について、大胆な仮説を提示しているので、それだけでも一読の価値ありだと思います。(詳しくは本書第三章、第三節「頼朝政権下の北条氏」をお読みください)

源氏将軍断絶  坂井孝一 PHP新書

著者は『鎌倉殿の13人』の時代考証者です。著者が三代続いた源氏将軍にどのような意見を持っているのか、この一冊を読めば丸わかりです。

特に、著者の2代目将軍頼家、3代目将軍実朝に対する評価が、好意的なのが特徴です。暗君とされている2代目3代目を、賢君と位置づけることで、頼朝死後の混迷深まる鎌倉幕府の権力闘争に、北条氏、後鳥羽上皇、そして2代目頼家、3代目実朝が頭脳プレーヤーとして加わり、より政治闘争の面白さが深まる解釈をしています。

実朝の最期である暗殺事 件の背景に関しても、著者の自説はユニークで、他の方の説よりも物語にした時に面白くなりそうだな! と思いました。

だから時代考証人に選ばれたのかもしれませんね。

承久の乱  坂井孝一  中公新書

著者は『鎌倉殿の13人』の時代考証人です。承久の乱に至るまでの歴史の流れを解説しています。

  • 主要登場人物である三代目将軍の実朝、執権の北条義時、後鳥羽上皇の人物像に迫り、
  • 承久の乱の行方を決めた東西有力武士たちの動きの分析し、
  • 乱後の北条義時とその息子北条泰時による後始末と鎌倉幕府の地盤固めを詳説し……

普通の新書1冊分に、これでもか! と承久の乱についてのすべてを詰め込んだ満足感のある内容です。

大河ドラマがどのあたりの歴史までを採り上げるのかはわかりませんが、承久の乱は、主人公である北条義時が時の権力者、後鳥羽上皇から名指しで討伐命令を下された、人生最大のピンチです。

北条義時を知る上で、絶対に押さえておきたい情報ですね。

上記の『源氏将軍断絶』と共に、2冊読んでおけば「かなり詳しい人」になれます。

北条義時と鎌倉幕府がよくわかる本  歴史の謎を探る会  河出書房新社

『鎌倉殿の13人』の歴史考証担当者である坂井孝一さんの本と並ぶ位置でご紹介する本書、それなりの理由があるのですが、本の内容をご紹介する前に、この本を書いた人々について少し触れておきましょう。

この本の著者は「歴史の謎を探る会」。「君らの名称こそ謎を感じるぞー」と思い、まずは公式情報であるAmazonや出版社のHPの紹介文をチェックしてみました。

歴史の中に埋もれている“ドラマチックな歴史”を楽しむべく結成された、夢とロマンを求める仲間たちの集まり。学校では教わらない史実の裏側にスポットを当て、一風変わった視点からのアプローチには定評がある。

「歴史の謎を探る会」とは公式情報の引用

なるほど、なんか楽しそうな集まりみたいですね。どんな人たちが所属しているのか、気になったのですが少しググったくらいでは残念ながらわかりませんでした…… ただ、歴史研究家というよりは、歴史ファンの集まりなのかな、と個人的に推察しています。

歴史には解釈が複数に分かれることが普通ですが、「こんな説もある、あんな説もある」と平等に記述してあり、それが本書の特徴の一つにもなっています。歴史研究家は複数の説の中でも、「これが推しだ!」と強力に支持する説を決める傾向があるので歴史ファンが集まっていろんな説を持ち寄って楽しんで本作りもしているのかな、と思いました。

さて、肝心の本書の内容ですが、基本は時系列に沿って、出来事や事件を記述してあり、その中で重要な役割を果たす人物をピックアップして、説明を加えていくという記述の仕方がしてあります。ところどころ重要な部分が太文字にしてあったりと、教科書を思い出させる書き方になっています。つまり、とてもわかりやすい。

ポイントが高かったのは、鎌倉殿の13人の名前を13人分、列挙してあったことです。これ、意外と他の本ではないんです。してあっても、文章中に紛れちゃったりして、後々探しづらいんですよね^^;

また、当時の用語(「侍所」とか「問注所」など)を解説しているコーナーがあったりして、分かりやすさ、親切さは今まで読んだ中でトップクラスでした。

まずは1冊どれを読む? と言われたら、時代考証を担当している坂井孝一さんの著書も捨てがたいのですが、本当に一からちゃんと知りたい人には本書の方がおススメです。

2.ざっと北条義時の生涯を知りたい・読書不慣れな人でも読みやすい

このコーナーでは、普段活字にあまり触れないという方に向けた北条義時の登場する小説や新書でも読みやすい本をご紹介しています。

修羅の都  伊東潤 文春文庫

小説です。源頼朝が平家滅亡を終えた辺りから、頼朝が死に承久の乱が起こるまでが書かれています。なんといっても小説なので読みやすいです。量も一般的な文庫本一冊程度なので読書をふだんあまりしない人でも読み通せる長さです。

作者である伊東潤は、学術論文まで読み込んで執筆する本格派の歴史作家です。頼朝の晩年にはなかなか個性的な説を採用していますが、これはちゃんとした歴史解釈の一つなのだとか。(本書の読了をツイートしたところ、作者ご本人からリプいただきました)

歴史的事実の描写にも優れている上に、過去に吉川英治文学賞の受賞や、直木賞候補にも選抜されるなど、小説家としての腕も確かなので楽しみながら歴史を知りたい人にはうってつけです。

承久の乱  本郷和人 文春新書

頼朝が築いた鎌倉幕府がそれまでの朝廷主体の政治とどこがちがっていたのか、それを受け継ぎつつ、執権政治を確立させた北条義時の才気と、そしてもう一人のカリスマ後鳥羽上皇にも光をあてた鎌倉幕府の政治史を新書本一冊にまとめあげた意欲作です。

新書ですが、抜群に読みやすく、わかりやすいです。

普段は全く読まない、という人でもいけると思います。

炎還  永井路子  文春文庫

1965年の直木賞受賞作品です。4つの連作短編集で、それぞれ主人公が違います。

 ・阿野全成(頼朝の異母兄)

 ・梶原景時(鎌倉殿の13人の中で最初に退場する人物)

 ・保子(阿波局とも呼ばれる。阿野全成の妻で3代目将軍実朝の乳母)

 ・北条義時

これらの人物にスポットライトが当たっているのですが、人選が渋いと思います。北条義時はともかく、他は歴史の荒波に消えていった、言ってみれば敗者です。特に阿野全成は頼朝の兄弟の中でも影が薄く、歴史書を読んでもほとんど触れてないことの方が多いほど。小説なのでもちろんフィクションではありますが、彼の生涯の出来事を知るには適した作品です。

敗者の視点から頼朝の無情さ、北条政子の苦悶、北条時政の無念など、歴史の勝者と思われている人々の人間性が浮き彫りになる、さすが直木賞、の一冊です。

北条義時  嶋津義忠  PHP文庫

北条義時の生涯の主だった事件や転機を一通り知りたいなら、この本がおすすめです。

小説の形にして、北条義時の生涯を簡潔にまとめあげてあります。

著者は新聞社から化学会社の役員を経て、還暦を前に作家デビューをした異色の経歴の持ち主です。作家としての実力は上述の伊東潤や永井路子の方が勝る印象ですが、頭のいい人が書いたんだろうな、というわかりやすい文章で非常に読みやすいです。

鎌倉燃ゆ  安部龍太郎ら7人  PHP文芸文庫

7人の作家による7つの物語が収録されている短編集です。書かれている時代はいずれも『鎌倉殿の13人』と同時代の出来事ばかり。作家により北条義時ら時代を彩る主要人物たちの性格が少しずつ異なっているのが作家による歴史解釈の違いが出ていて興味深かったです。
タイトル、作家、簡単な内容の順で収録作品を簡単にご紹介しておきましょう。

『水草の言い条』 谷津矢車
義時の初陣から承久の乱の始まり辺りまでの北条義時の人生を振り返る内容です。

『蝸牛』 秋山香乃
頼朝の長女・大姫と義経の愛人・静御前。頼朝の手で愛する男を奪われた女性2人の生き様をえがきます。

『曾我兄弟』 滝口康彦
頼朝主宰の狩りの最中に奇襲をかけた曾我兄弟の敵討ちに賭けた半生のお話です。

『讒訴の忠』 吉川永青
鎌倉御家人たちの憎しみを買った男、梶原景時のお話です。

『非命に斃る』 髙橋直樹
頼家が将軍になり、非業の死を遂げるまでの一代記です。

『重忠なり』 矢野隆
義時が不本意ながらその首をあげなければいけなかった畠山重忠の乱の一部始終をえがきます。

『八幡宮雪の石階』 安部龍太郎
現在でも詳細不明とされている実朝暗殺事件、その真相に一説を投じる内容です。

中でも『蝸牛』が一番心に刺さりました。大姫と静御前、深く傷ついた女性2人が共に時間を過ごすのですが、2人の間に芽生えたのは慰めでもなく友情でもなく、むしろ反目でした。しかし、頼朝への憎しみや愛を失った苦しさを理解できるのはお互いだけで……

クライマックスに向けて2人の女性が激情を表すまでの心情の動きが繊細に表現されており共感しかなかったです。

作風がことなる7作、きっとあなたもお気に入りが見つかると思います。

言の葉は、残りて  佐藤雫  集英社文庫

3代目将軍、実朝の美しくも無念な生涯をえがいた小説です。実朝と、そのただ一人の妻であった信子の2人を中心にした恋物語がメインの物語ではありますが、北条家が鎌倉幕府の御家人たちのなかでのし上がっていく様子も
しっかりと語られています
。本作を読めば実朝が将軍職にあった時代の主な出来事は理解できるでしょう。

また、本作では新しい実朝像を模索しています。実朝は公家文化に傾倒した暗君としての見方もありますが、本作では武士の政治から言葉による文治政治を目指した志高い青年将軍の姿が浮かび上がります。

実朝の生真面目さ、聡明さ、心根の優しさがみずみずしく表現されており、私の中の実朝像は本作によって固まりました。

さらに他の登場人物たちの性格の肉付けも非常にしっかりとしているのが特徴です。

例えば、義時は姉や父に悩まされながらも、北条のため、鎌倉幕府のために厳しい決断も辞さない賢さと冷酷さを併せ持った人物としてえがかれています。

私が一番印象に残っているのは政子の妹、義時の姉である阿波の局です。実朝の乳母でありながら夫と子供を鎌倉幕府存続のために亡くした気の毒な女性であり、そのためにぶっ壊れたところのある性格とされています。毒々しさが癖になる女性です。大河ドラマにも登場すると思うのですが、どんな造詣になっているのか、この作品を読むと期待(?)が高まると思います。

3.北条義時について詳しく知りたい・かたい文章でも平気な人向け

このコーナーでは、読書に慣れている方へ、内容と文章ともに少し専門的な本をご紹介します。

北条義時 安田元久 吉川弘文館

北条義時の一代記です。頼朝の時代から承久の乱で北条氏が執権政治を確立させるまでの時代を詳述しています。

北条義時に的を絞って書かれているので、彼の生涯を追うには適した一冊です。

鎌倉時代の政治史のみを切り出しているので知りたいところを詳細に知りたい方にはおすすめできる一冊です。

ただ、値段が2200円とお高めです。

あと、学者が書いた文章らしく、文章がかたくて読みづらいです。

読書慣れしてない方はこちらを読む前に、 「1.これはぜひ押さえておきたい! 」でご紹介した本を先に読まれた方が理解しやすいと思います。

頼朝と義時  呉座勇一  講談社現代新書

頼朝と義時の2人の生涯をまとめた1冊です。これだけだと他の本と同じような内容になってしまいますが、本書では彼らが武家政権を確立させた過程を重視しています。

鎌倉幕府は日本初の武家政権で、朝廷をもしのぐ権力を持ち、その後江戸時代まで続く武家政権の基礎を築きました。その立役者が頼朝と義時であった、というのが本書の主張です。

考察と推敲を丁寧に重ねたであろう文章で読みやすく、自身の考えだけでなく他の歴史家の諸説も紹介してある親切な本です。

これからより深く専門的に、鎌倉幕府の歴史について読書を重ねたい方にはぴったりの入門書だと思います。

著者は訳あって『鎌倉殿の13人』の時代考証人を降板されていて、本書を出版するのも悩まれたそうです。

本には罪はなく、文章からは誠実に書かれたものだという印象を受けましたのでここにご紹介することにしました。

4.鎌倉時代について広範囲に深く知りたい・読書が好きな人向け

このコーナーでは、鎌倉幕府全般について詳しく知りたいという方向けの本をご紹介します。

ボリュームも多く、かための文章の本が多いです。

執権  細川重男  講談社学術文庫

鎌倉幕府は源氏将軍三代が絶えると、北条家による執権政治に移行します。幕府の実権は北条家に握られることになるのですが、北条家の支配にはいくつか疑問が残ります。

  • なぜ北条家は将軍を出さなかったのか?
  • なぜ将軍にならずとも北条家は幕府の実権を握れたのか?

この疑問に答えるため、北条家の歴史の中でも北条義時、北条時宗の生涯に的を当てて考察します。

本書の主旨とするところは直接、鎌倉殿の13人には関係ないのですが、読めば北条一族にとって、北条義時がいかに傑出した存在だったのかがよく分かります。

あと、この種の本には珍しくフランクな文章で「面白く読んでほしい!」という著者の気持ちが前面に出ていて、読みやすく仕上がっています。

日本の歴史7 鎌倉幕府 石井進 中公文庫

鎌倉幕府の成立~承久の乱を経ての北条義時、執権政治の黄金時代までを詳述してあります。

この本の良いところは、鎌倉幕府の政治史だけではなく、経済、平民の暮らし、文化、宗教まで、その時代を丸ごと知ることができるところです。

また、この日本の歴史シリーズは全26冊もあり、出版年が1960年代という昔の本ですが、発売当時はベストセラー、そしていまだに大きな本屋にはならんでいるという驚異のロングセラー本でもあります。その時代の第一人者が選ばれて書いているので、その著者の視点や考察に記述が偏ってしまうところはあるのですが、その分、熱意が文章にも表れていて、読み物として面白く出来上がっています。内容が広範囲で深い分、文章量はかなりありますので、読書が好きな方向けです。

武士が日本の政治にいかに登場したのか、平家の政治も知りたいという方は、同シリーズの 『6 武士の登場』(著者は竹内理三)もどうぞ。

鎌倉幕府の謎   跡部蛮   ビジネス社

「鎌倉殿の13人」がよくわかる!

……と、表紙に(帯じゃないですよ、表紙です)堂々とうたった1冊です。確かによくまとまっているという印象です。

本書は鎌倉幕府の歴史を時系列に沿って眺めるタイプの歴史書ではありません。タイトルにもあるように、鎌倉幕府にまつわる謎を(といったらおおげさなものも中にはありますが)50項目もあげ、1項目ごとに解説を加えていくスタイルをとっています。

取り扱っている歴史範囲は平清盛が台頭するきっかけになった平治の乱から、承久の乱までと、範囲が広いのも特徴です。その間に起こった事件や活躍した人物ごとに項目分けされて文章が書かれています。

例えば、「鎌倉殿暗殺にまで発展した「北条VS比企」抗争の一部始終」や「66人の武将から嫌われた男「梶原景時」の実像」といった感じです。このため、時系列の視点では分かりにくかった事件の前後関係や人物の経歴が分かりやすくまとまっています。

ある程度、鎌倉幕府の歴史の流れが頭に入った状態で読むと、情報が整理されて、良い本だと思います。

逆に言えば、時系列に沿った歴史が頭に入っていない状態で本書を読んでも混乱しそうです。

他の本を読んでから、整理のための2冊目、3冊目として読むのがおススメです。

最後に、肝心の北条義時の取り扱いですが、項目としては「北条義時の野望の謎」として6項目、ピックアップしてあります。

さらに、「鎌倉殿の13人」の経歴が個人ごとにきちんと項目だてられて解説が加えられているのも、ドラマ前に読む方には嬉しいところですね。

吾妻鏡  西田友広  角川ソフィア文庫

鎌倉時代関係の本を読んでいると必ず参考文献にあげられているのがこの『吾妻鏡』です。この記事で紹介されている本達も決して例外ではありません。

『吾妻鏡』は鎌倉時代後期に編成された書物で、源頼朝の挙兵から始まり、第6代将軍の宗尊までの時代を記述しています。その内容は執権として幕府権力を握る北条氏びいきであるとされたり、必ずしも史実が記されているわけではないとされながらも、鎌倉時代を研究する上での第1級資料として重宝されています。『鎌倉殿の13人』を作成するうえでも、きっと重要な資料として活躍していることでしょう。

……とはいえ、現在までに伝わっている『吾妻鏡』本体は膨大な量であることに加え、その文章はすべて漢文、つまり漢字のみで書かれています。素人には太刀打ちできないし、『鎌倉殿の13人』を楽しむ目的での読書であれば明らかに『吾妻鏡』まで手を出すのは「やりすぎ」です。

にもかかわらず、なぜ紹介しているのかというと、この『吾妻鏡』は角川ソフィア文庫の「ビギナーズ・クラシックス」というシリーズからでており、このシリーズが古典を楽しむ上でおススメだから、なんです。『吾妻鏡』に限らず、『源氏物語』や『枕草子』などの有名どころはもちろん、『御堂関白記』(藤原道長著)なんて渋いところまでカバーしていて、内容も原文と現代語訳はもちろん、解説もしっかりとあり、「わかりやすい、読みやすい、他のも読んでみたくなる」魅力あるシリーズです。

ビギナーズ・クラシックス版『吾妻鏡』が出版されたのは2021年11月。タイミング的に『鎌倉殿の13人』を意識していることは間違いありません。これは読むしかない! というわけで、ここに紹介するに至りました。

『吾妻鏡』の全文が紹介されているわけではありませんが、主要な出来事はカバーされていましたので、こだわりたい方はぜひ、チャレンジしてみてください。

5.無料ですぐ読める作品もあるんです(青空文庫より)

このコーナーでは青空文庫から探し出した、鎌倉幕府や北条義時に関連した作品のみご紹介します。

ネットやアプリで無料に読める作品ばかりですよ。

青空文庫は、日本で著作権切れになった作家の作品をボランティアの方がデータベース化し、ネットやアプリ上で無料公開しているサービスのことです。私もほぼ毎日利用させてもらっています。スマホやパソコン上で気軽に名作を楽しむことができますよ。

源頼朝  吉川英治  青空文庫

吉川英治は著名な歴史小説家で、『三国志』『宮本武蔵』『李陵』など数々の名作を残しています。『源頼朝』では、彼の少年期から義経が平氏を追い詰めるまでが描かれています。

頼朝と義経は、平氏滅亡後にたもとを分かつことになりますが、その理由を吉川英治なりの解釈で文章化してあるのが印象的でした。

他の作品は、義経が頼朝から離れる理由を彼の功名心や若気の至りで片付けがちですが、吉川英治はしっかりと、義経に頼朝の意に背く理由を与えています。

これだけでも、読む価値があると思います。

右大臣実朝 太宰治 青空文庫

大がつく文豪も鎌倉時代を舞台にした小説を書いています。主人公は源頼朝の次男、3代目将軍の実朝、の従者の少年です。

少年の目から見た、実朝のすばらしさを語っています。

政子、義時、広元ら、実朝を取り巻く人物の人となりも、少年の目を通して分かるように書かれていますよ。

基本的に、義時の描写が厳しめで、ちょっと実朝を美化し過ぎるのでは? と読んでいて思いましたが、『鎌倉殿の13人』の時代考証人は実朝が名君であった、という説を唱えているので、太宰が描いた立派な実朝像はドラマと近い印象になるかもしれませんね。

修善寺物語  岡本綺堂  青空文庫

半七捕物帳シリーズなどの怪奇小説で知られた岡本綺堂による2代目将軍・頼家最期の一夜の物語です。頼家が自分そっくりの面を職人に作らせますが、名人芸の職人がどんなに技巧を凝らしても面は死相を浮かべている……という不吉な出だしから始まります。

その後、最期の一夜が劇的になるように作品は盛り上がっていきますが頼家が暗殺された場所、暗殺者たちの黒幕は史実通りになっています。

フィクションとはいえ、作中で語られる頼家の鎌倉への思いや志半ばで政敵に負けてしまった無念などは彼の本心とそう変わりなかったであろうと思える実感のこもったものでした。

歴史を知る上で参考になる作品ではないですが、作品の持つ物悲しい雰囲気と、主要人物たちの人生を全うしようとする執念が読みごたえがあって、作品自体が面白かったので紹介しておきます。

ちなみに、岡本綺堂は他の作品も面白いものが多く、特に私は半七捕物帳シリーズをおススメします。中編くらいの長さでサクッと楽しめるのでいいですよ。

いかがでしたでしょうか?

冒頭にも書きましたが、この記事は、私が関連本を読みおすすめできると思えば、追加でアップしていくつもりです。

大河ドラマに向け、これから関連本の出版もラッシュになっていくと思いますので、可能な限り、読んで、ご紹介していきたいと思いますので、また覗きにきてくださいね。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

感想など、よろしければコメントに残していってくださいね。

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