2023年大河ドラマ「どうする家康」を楽しむためにおススメの本をご紹介

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

このページでは2023年NHK大河ドラマ『どうする家康』をより楽しむための本をご紹介していきたいと思います。

徳川家康の名前を知らない、という方はほとんどいらっしゃらないでしょう。

「江戸幕府を開いた人」

「関ヶ原の戦いで勝った人」

「よく知らないけど古だぬきって例えられてるよね」

どれも正解ですね。

しかしこれらの家康についての情報は、実は彼が50代以上の当時にしたらかなりのご高齢になってからのことなんです。

織田信長のように輝かしい戦勝の経歴があったり、豊臣秀吉のように成り上がりの興味そそられるエピソードがあったり、ということは家康にはありません。

突然、50代になってから天下人に名乗りを上げてきた徳川家康、いったい若いころは何をしていたんでしょうか?

私が様々な家康に関する本を読んで知ったのは「家康、よく生き残ったなあ……!」という、危険と隣り合わせの幼少期から青年期の彼の人生でした。

幼少の頃、父から離れ人質として船旅の途中、別の大名にさらわれてみたり、友軍の命令で超強敵に最前線で立ち向かう羽目になったり……古だぬきと例えられる、ずる賢いイメージの家康の姿は、そこにはありませんでした。

むしろ不器用で清廉潔白な人、というのが家康の若いころのイメージです。

主演:松本潤さんという、「家康にしてはイケメンすぎない?」というキャストも、「なるほど!」とうなずけるようになりました。

そして、「若いころの苦労」を売れるほど抱え込んで常に苦しい選択を迫られる青年の家康像は、まさに「どうする家康」というタイトルそのもの

読めば読むほど、新鮮な家康像に迫る2023年の大河ドラマに期待が高まりますよ!

この記事では、実際に私が読んでおすすめできると思った本のみを採り上げています。

これから関連本も出版ラッシュを迎えると思いますので、少しずつ、ご紹介する本も増やしていく予定です。

どんどん読んで、充実させていきますのでまた覗きにきてくださいね

なお、徳川家康の本といえば有名な山岡荘八さんの小説があるんですが、全26巻とお財布にも時間にも優しくないので、選書からは漏れています、ご承知ください。

目次

目次 

   NHKから待望の大河ドラマハンドブックが発売されました!
   0.どうする家康 <徳川家康と家臣団たちの時代>(NHK出版)

   1.わかりやすく家康の生涯を知るには最適な本
     小説 『徳川家康』    松本清張  (角川文庫)
     小説 『覇王の家』上下巻 司馬遼太郎 (新潮文庫)
     小説 『峠越え』     伊東潤   (講談社文庫)


   2.読書が好きな人、家康についてより詳しい情報を求める方におススメ
     『家康』         安部龍太郎 (幻冬舎時代小説文庫)
     『徳川家康』       藤井譲治  (吉川弘文館)   
     『徳川家臣団の系図』   菊地浩之  (角川新書)
     『徳川家康と16人の子どもたち』 熊谷充晃  (祥伝社黄金文庫)
     『家康、江戸を建てる』  門井慶喜  (祥伝社文庫)
     『戦国日本と大航海時代』 平川新   (中公新書)
     『家康がゆく』      伊東潤ら6人(PHP文芸文庫)
     『誤解だらけの徳川家康』 渡邊大門  (幻冬舎新書)
     『家康を愛した女たち』  植松三十里 (集英社文庫)
     『家康、人づかいの技術』 童門冬二  (角川文庫)


   3.今すぐ無料で読める作品はこちら
     『家康』         坂口安吾  (青空文庫)
     『二流の人』       坂口安吾  (青空文庫)


   4.戦国時代についてより詳しく知りたい方におススメ
     『日本の歴史』シリーズ  (中公文庫)
      『日本の歴史11 戦国大名』 杉山博  (中公文庫)
      『日本の歴史12 天下一統』 林家辰三郎(中公文庫)
      『日本の歴史13 江戸開府』 辻達也  (中公文庫)
     『武田三代』 平山優 (PHP新書)

2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を楽しむためにおススメの本はこちらからどうぞ↓

2024年大河ドラマ『光る君へ』を楽しむためにおススメの本はこちらからどうぞ↓


0.どうする家康 <徳川家康と家臣団たちの時代> (NHK出版)

来年の放送開始へ向け、NHKから大河ドラマファン向けのムックが発売されました。内容はかなり盛沢山でした。いかにざっと内容を記しておきます。

  • 時代考証者と安倍龍太郎の対談
  • 家康の生涯
  • 家康の家臣団
  • 大戦の最新研究
  • 家康の外交
  • 家康の逸話の真偽
  • 戦国時代の終わりの築城
  • 江戸の建築
  • 家康をテーマにした小説の変遷

これまで、かなりの家康本を読破してきましたが、それでも知らないこと、最新の研究で判明した新事実など、目新しい知識がけっこうありました。

とりあげているテーマも幅広くお得感があります。各テーマを担当している執筆者の著作も紹介されていましたので「もっとこの分野について詳しく知りたい!」
という方には読書案内としても使えます
よ!

私が特に嬉しかったのは小説案内ですね。どれを読もうか悩ましいほどけっこうな数の作品が紹介されています。
それだけでも読書狂の私には嬉しいのですが、面白かったのは家康の人物像が作品の成立年によって大きく違うことです。多くの作家、作品に取り上げられてきた家康ですが、その人物像は時代によってかなり異なっているようです。時代が求める人物像にアレンジされて家康作品は楽しまれてきたんですね。このブログでもたくさん小説をご紹介していますが、作品がいつ頃作られたのかまでチェックすると、作品成立時の世相まで理解できてより深く楽しめそうです。

広く浅く知識を得られるムックですが、文章がかためなのは少し玉に瑕かなとは思います。

読書が好きな方にはおススメです!

1. わかりやすく家康の生涯を知るには最適な本

小説 『徳川家康』  松本清張  (Kindle版のみ) 角川文庫で新装版が復刻

松本清張といえばミステリ小説というイメージですが歴史小説もたくさん書いています。

そのうちの一つに徳川家康の生涯を描いた本作があります。

松本清張は小説家になる前は新聞記者をしていたので、その経歴を生かした文章力で読みやすさ、面白さは抜群です。

家康にまつわる主だった事件も網羅されており、史実を知る上でも十分に参考になります

また、家康は年齢により、性格が変わってしまうように思える不思議な人なのですが、その辺りの変化も小説家の想像力も駆使して、説得力がでるようにきちんと構成されています

エピソードの数や人物像の掘り下げ方は、この後に紹介しております司馬遼太郎の作品の方が一枚上手という印象ですが、文章量は松本清張バージョンの方が少なく、徳川家康についてサクサク読んで楽しく知りたい、という方にはおススメです。

また、豊臣秀吉死亡後の、豊臣家 VS 徳川家の対決の模様と江戸幕府の基礎を築いた辺りの描写を司馬遼太郎はばっさりと省略してしまっているので、その辺りも知りたいという方も松本清張バージョンをお読みください。

作品としてのレベルも高く、万人におススメできる本なんですが、惜しいのは、刊行年が古すぎるのか、絶版になっているらしいことです。

紙の本はおそらく古本でしか手に入らないでしょう。

2022年11月現在、角川文庫から新装版が復刻しております、紙の本が好みの方には朗報ですね。

幸いにもKindle版がありますので興味のある方はAmazonで検索してみてください。

kindle版も引き続き販売されています。紙か電子か、選べるのは嬉しいところです。

小説 『覇王の家』上下巻  司馬遼太郎  (新潮文庫)

歴史小説といえば、司馬遼太郎は欠かせません。

直木賞を始めとする数々の輝かしい受賞歴を持ち、絶大な人気と信頼を歴史小説家ファンから集め、亡くなった後もなお、人気の作家さんですね。

彼の手による徳川家康の一代記が『覇王の家』です。

タイトルの「覇王」は当然、家康のことをさすわけですが、大層な言葉を選択したわりには、拍子抜けするくらい、家康は凡人で等身大な人物として表現されています

織田信長や武田信玄を傑物として描く一方、家康は突出した才能がない分、バランスのとれた人物としてとらえていたようです。

この辺りは「どうする家康」で描こうとしている家康像に近いかもしれませんね。

上巻では他の武将との政治上の駆け引きを、下巻では天下人をめぐる豊臣秀吉との戦争をメインに書かいています。

私はこの作品を読んで「戦国時代って合戦だけじゃないんだ!」と戦国英雄たちの水面下での腹の探り合い、駆け引きの面白さに気づき戦国時代について「もっと知りたい!」と思うようになりました。

欲を言えば、作品の体裁が小説というよりは、平易な文章で書かれた歴史書という感じなので、少し読書慣れしていないと、とっつきづらく感じるかもしれない点と、秀吉没後の豊臣家との戦いと江戸幕府の基礎を築いた辺りをばっさりと省略してしまっているので、その辺りも知りたい方は松本清張バージョンの『徳川家康』一代記の方がおススメです。

『峠越え』  伊東潤  (講談社文庫)

近年で最も注目を集めている時代作家のひとり、伊東潤による家康小説です。

幼いころ、今川家の人質であったころ、師である雪斎に「お前は凡庸だ」と言い切られるシーンから始まっています。

厳しい言葉ですが、雪斎の言葉には続きがありました。

「凡庸であるからこそ、己を知り、勝負所を見極められるだろう」

家康の将来を予見するようなこの言葉を胸に刻み、戦国の世を凡人ながら生き抜こうとする家康の姿が描かれます

対戦相手は天敵・武田ではなく、同盟相手である信長です。

史実ではこの2人が戦で矛を交わしたことはありません。

なので本書では、戦は戦でも、心理戦で信長 VS 家康を描いています

互いに同盟相手とは認めているものの、信長はいつ家康を裏切ってもおかしくはなく、信長が家康に無理難題を吹っかけるシーンを多く盛り込むことで緊張感のある関係を表現しています。

その緊張感が最高潮に達するのが、本能寺の変、直前。

伊東潤による「新解釈・本能寺の変」には本当に驚かされました

なるほど、そうきましたか。

この小説の惜しいところは本能寺の変直後の「伊賀越え」で終わってしまい、家康の全生涯を書いているわけではないところのみです。

しかし、史実を知っていてもハラハラドキドキできる展開に仕立て上げられている上に、目新しさもあるのでこちらの小説、かなりおススメです。

2.読書が好きな人、家康についてより詳しい情報を求める方におススメ

『家康』  安部龍太郎  (幻冬舎時代小説文庫) 現在文庫で1~7巻まで刊行済

直木賞を受賞した歴史小説家による家康の一代記です。

作者さんはこれまでにも『信長燃ゆ』など、家康と同時代人を取り上げた作品を書いています。

安部龍太郎さんの『家康』を読んでみてユニークだなと思ったのは、家康が「どうして天下人になりたいと思ったのか」そして、「天下人になって何がしたかったのか」をしっかりと作品に落とし込んであるところです。

これまで読んだ家康を主人公にした作品では家康が「どうやって天下人になったのか」が書いてあったんです。

これはこれで、読者としては知りたい情報なのは間違いないです。

小大名でしかなく、しかも元服しても自身の領地に戻れず人質としてくすぶっていた家康が、そこからどうやって人生の大逆転をしたのか、ワクワクするテーマですよね。

でも、家康は天下人になった後、300年も続く江戸幕府の基礎を築いた人でもあるわけです。

子孫に優秀な人が多かった、というのも理由の一つなのでしょうが、土台を作った人にもきっと、「国の治め方とはこうあるべきだ」という理想があったはずなんです。

その理想がどのように種となって家康に宿り、芽が出て育っていったのか、安部龍太郎版の家康は説得力たっぷりに語っています

その説得力を出すために、信長という英雄をうまく使っているんですね。

どこまで史実なのかは、素人である私には判断しかねるのですが、家康にとって、信長はただの同盟者ではなく、信頼で結ばれた兄貴分だったという位置づけにしています。

そして、信長を国際感覚豊かな人物であり、また大きな世界の中で日本という国がどんな立場にあるのかを想像できる視野の広い人物としてえがくことで、家康も信長から世界の中の日本という視点を学んでいきます

やがて家康は、信長が抱いていた「日本はこのままではまずい」という危機感と「日本が世界で生き残るには新しい国に生まれ変わらなければならない」という理想を受け継ぎつつも、自分なりの理想をミックスした天下統一を実現させていくという過程になっています。

作者の歴史観が色濃く出た作品ともいえますので、家康の生涯を知りたい!という方より、家康についての本を既に何冊か読んだ後に、新しい視点で面白い作品を読みたいという方向けです。

ちなみに、この『家康』まだ未完です。

現在発売しているのが本能寺の変後の秀吉への臣従までで、それ以降は新聞紙上にて連載中だそうです。

また、購入の際にAmazonで検索すると混乱する方がいらっしゃるかも、と思いましたので、新聞で連載上のタイトルと単行本、文庫本のそれぞれの対応関係を表にしてみました。

新聞連載時のタイトル単行本タイトル文庫本タイトル
『家康』自立篇『家康』(一)自立篇 『家康』(一)信長との同盟
『家康』(ニ)三方ヶ原の戦い
 ※単行本を2分冊して副題も変更
『家康』不惑篇『家康』(ニ)不惑篇『家康』(三)長篠の戦
『家康』(四)甲州征伐
 ※ 単行本を2分冊して副題も変更
『家康』知名篇単行本出版はなし『家康』(五)本能寺の変
『家康』(六)小牧・長久手の戦い
 ※新聞連載を加筆・修正したもの
『家康』飛躍篇
 ※現在連載中
単行本出版はなし『家康』(七)秀吉との和睦
八巻は2023年2月発売予定

平たく言えば、全部読みたかったら文庫本7巻分買えばいい、ということになります。

新聞連載中の飛躍篇も順次、出版予定です。大河ドラマの放送を受けて大盤振る舞い中ですね、これはありがたいです。

『徳川家康』 藤井譲治  (吉川弘文館)

吉川弘文館からは「人物叢書」といって、300人以上の歴史上の人物、一人一人にスポットライトをあて、その人物についての生い立ち、性格、関わった出来事などを詳述するシリーズが出版され、現在300冊を超えています。

『徳川家康』はもちろん、出版済みです。

徳川家康の生まれてから死ぬまでを時系列に沿って、記述してあります。

かたい文章なので、小説と比べてしまうと読みにくさはありますが、その分、作品を構成するうえで漏れてしまった微細な部分も書かれているので、より詳しく知りたい、という方向けです。

また、この本は歴史書にしては珍しい、著者の顔が見えない文章になっています。

歴史には解釈がつきものなので、歴史書には良くも悪くも、著者の考察が見え隠れするものなのですが、本書はできるだけその当時の資料から読み取れて、客観的に確認できる史実を中心に書くように、著者は心掛けられたそうです。

そのおかげか、本当に事実の列挙になっています。

そうすると、本としての面白さは欠けてしまうのですが、他の小説やドラマを見て、時代考証に疑問を感じた時などに、事実確認に活躍できる一冊になっていると思います。

『徳川家臣団の系図』  菊地浩之  (角川新書)

これはマニアックな本を見つけてしまったな、という一冊です。

タイトル通りの本で、家康本人も含め、彼の家臣たちの家系図を読み解いていく内容です。

なのでメインになるのは「結婚」ですね。

戦国時代は一夫多妻制でしかも一人の女性が今よりずっと子供をたくさん産んでいます。

息子であれば、誰が家を継ぐのか?が大事になります。

そして、残った男子と娘たちは、親のため、お家のために、他家に養子に出されたり嫁いだりして、いわば政治の道具として使われていました

教科書で誰もが一度は見たことがあるでしょう。

近親婚や政略結婚のために超がつくほど複雑化した家系図!

本書はあれで埋め尽くされています。

しかし、家系図のややこしさにめげずに読み解いていくと、家康がお気に入りの家臣たちに、少しでも箔を付けようと身分が高い家と結びつけるためにお見合いおばさんばりの活躍をみせていたことがわかったりして、興味深かったです。

本書は歴史的事件や歴史上の人物たちの性格・活躍は完全にオマケ程度くらいにしか書いてありません。

なので家康個人の生涯はもちろん、その主だった家来たちの名前くらい前知識として頭に入ってないと、チンプンカンプンで終わってしまうでしょう

大河ドラマの予習のための読書なら、明らかに不要な一冊なんですが、切り口がものすごく個性的なので、あえてご紹介しています。

この本をドラマ鑑賞に活かすとすれば、家臣同士の身分の差には詳しくなれるので、「あいつは結婚相手は身分が高いけど、本当は下級武士の出のくせに!」といった、人間関係の機微が分かって面白いかもしれませんね。

果たして大河ドラマが、そこまで掘り下げて作られているのかはさておいて、ですが。

『徳川家康と16人の子どもたち』 熊谷充晃 (祥伝社黄金文庫)

徳川家康には男12人、女4人の16人もの子どもがいました。

2代将軍の秀忠や、信長によって自害させられた信康、結城家の養子に出された秀康は知っている方も多いでしょう。

しかし、その他の子どもたちがどんな人生を歩んだのか、ご存知の方はそう多くはないと思います。

本書では家康の16人、全ての子どもたちの生涯を簡単にまとめてくれています

他にも、家康の生涯と妻妾たちのことも書いてあるので、家康の家族のことについて知りたい方にはこの本はうってつけでしょう。

ただ、本書の最初の方に家康最初の正妻について他のどの本も採用していない説を述べていますので、その点は少し「この本大丈夫かな……?」と驚かされました。

最後の方まで読むと、なぜわざわざ主流ではない説を採用したのか、きちんと筆者のこだわりが書かれていましたので安心はできましたが^^;

他にも「これは筆者の意見なのか、発表されている学説なのか」、記述があいまいで、文章は多少読みづらい部分はありました。

しかし、家康の子供たちに着目し、子供全員についてまとめ上げた本は、本当に珍しいので興味のある方は手に取ってみてください。

『家康、江戸を建てる』  門井慶喜  (祥伝社文庫)

第155回直木賞候補作です。

家康の小説と言えば、武田や豊臣を相手にした戦争をメインにして書かれることがほとんどですが、本作は違います。

作品は秀吉の天下統一後、家康が秀吉から領地を三河から江戸に変えるよう打診を受けるところから始まっています。

相談された家康の家臣たちは「断りなされ! 殿!」と即答です。

それもそのはず、その頃の江戸と言えば何本もの川が流れ込むどろどろの湿地や沼地がほとんどで使えない土地ばかり。

しかし家康は秀吉に「諾」と応じて江戸へと向かい、こう言い放ちます。

「江戸を、大阪のような大都市にする!」と……

呆れ果てる家臣たちの中、家康がまずは江戸の地を人が住みやすい土壌に変えるために抜擢したのは、居並ぶ優秀な武将たちではなく、文官の伊奈忠次でした。

本作には他にも小判の鋳造を始めたり、上水道を整えたりと江戸を大都市に発展させるために必要不可欠な大事業に挑む男たちが登場します。

彼等は皆、職人や文官で、戦国の世には日の目を見ない人材でしたが、名誉でもお金でもなく、ただプライドのために大仕事に挑みます。

人生を仕事に賭ける男たちの生き様がカッコいい作品でした。

家康は正直脇役なんですが、人材を見抜く力や江戸の街づくりにも持ち前の忍耐力を発揮したりと、その人となりは光っています。

平和な世にあっても有能な政治家であった家康の姿を感じてみてください。

『戦国日本と大航海時代』  平川新  (中公新書)

この本、家康も登場はしますが彼が話題の中心という本ではありません。

テーマは、大航海時代において日本は世界という視点ではどのような立ち位置にいたのか、というものです。日本が戦国時代のころ、世界ではスペインとポルトガルを中心にヨーロッパ諸国が大航海に乗り出し、地球上のあらゆる土地を植民地にせんと野心を燃やしていた時代でした。日本は世界のそんな状況を知らずに国内の領土争いに明け暮れていた……と、思い込んでいませんか?

本書を読むと、戦国大名たちが豊かな国際感覚を持って、その目を日本の外に向けていたことを教えられます。
特に、信長、秀吉、家康、そして伊達政宗の4人は、それぞれに海外戦略を持って外交を行っていたことがわかります。

「秀吉の朝鮮出兵は狂気の沙汰」という評価は正しいと言えるのか?
まずこの疑問を切り口にして、信長の外交構想を推測し、その後を受けた秀吉の強気外交が世界に与えた衝撃を分析、その後に日本の「皇帝」となった家康の外交方針の錯綜を詳説してあります。

大河ドラマで外交の話まで扱いきれるかはわかりませんが、読むと戦国時代の新たな面白さに気づかされる本でしたので選出となりました。

『家康がゆく』 伊東潤ら6人  (PHP文芸文庫)

伊東潤、松本清張ら豪華執筆陣6人による短編小説集です。

短編は時系列に沿って収録されており、読み通すと家康の生涯をざっと知ることができる連作小説のような構成になっています。

家康の生涯を詳しく知るという本項の目的には不足した内容ながら、作家それぞれの持ち味を存分に活かした傑作揃いで小説として優れていたので選出となりました。

例えば、伊東潤なら入念な下調べをもとにした斬新な歴史解釈を盛り込み、関ヶ原の戦い前後の家康と三成の薄氷を踏むような腹の探り合いを緊張感たっぷりに表現してあり読み応えアリです。

私のおススメは新田次郎さんの『伊賀越え』です。家康の生涯で3つあったとされる大ピンチの一つである伊賀越え、織田信長暗殺直後の混乱を家康がどう乗り越えたのか、がメインになりがちなお題ですが、こちらの作品は一ひねり加えてあります。伊賀越えの際に途中まで共にいたとされる穴山梅雪という武将がいたのですが、この人、他の作品ではおどおどした情けない性格の人にされがちです。しかし新田次郎さんの穴山梅雪はかなりの曲者です。他の作品には見られないヒールな穴山梅雪が読めますよ。

他の本を読んで家康の生涯を頭に入れた後に読むとちょうどいい1冊だと思います。

『誤解だらけの徳川家康』  渡邊大門  (幻冬舎新書)

戦乱の世を制し天下人となった家康には数多くのエピソードがあります。有名どころでは武田信玄との直接対決、三方ヶ原の戦いで敗走する羽目になった家康が騎乗で脱糞してしまったというもの(汚い話ですみません)

インパクトも面白さもあるエピソードなので歴史書や小説でもたくさんとりあげられているのですが、実はこれ、ウソだったかもしれないんです。

真偽を検証するために、そもそも三方ヶ原のエピソードの発信元はどこなのか、様々な史料から考察していきます。考察した結果はどうだったのかは、ぜひ本書を手に取ってみてください。

こんな感じで家康に関する他の逸話・伝説を様々な史料から真偽を検証していく一冊です。

家康の生涯を追いながら検証していくので、家康の人生を追体験することもできますよ。

しかしこの本を読むと、家康についてのアレコレが「まゆつばものだったのでは……」と知ることになります。長篠の戦や最強と名高かった武田の騎馬隊についても見直しが進んでいるそうで。従来なら迫力満点の演出が期待されますが、大河ドラマではどうなるんでしょうか? 楽しみです。

『家康を愛した女たち』 植松三十里 (集英社文庫)

タイトル通り、家康と深い関係にあった女たちが主人公の小説短編集です。登場するのは家康の祖母、正妻、母、秀吉の妻、側室、孫、家光の乳母の7人です。時代的にまだ女性の立場が弱く、一人では戦国の世を生き抜いてはいけない女性の諦念が作品全体からしみじみと感じられます。しかし、それでいて自分のできる範囲で強くあろうとする女性の凛とした一面をそれぞれの主人公たちがもっており、7人の女性全員が魅力的な人物造形に仕上がっていました。

歴史を知る上でも、一つの事件を一人の主人公の視点で語り、その次の主人公が別の視点で語り……と、立場を変えることで同じ事件でもいろいろな側面が見られるように工夫されています。

1冊通して小説としてのレベルが高く、読書を満喫してしまいました。

ただ、女性の視点に偏っているため、歴史を知りたい、家康の生涯を知りたい、という動機で読むには適しません。

他にいろいろ読んで、一風変わった個性ある作品を求めている方には手に取ってみていただきたい1冊です。

『家康、人づかいの技術』  童門冬二 (角川文庫)

家康は本人の資質も素晴らしかったが家来たちも粒ぞろいだった、と言われています。本書はその粒ぞろいの家来達に焦点を当てた一冊になります。

登場するのは総勢11名の家臣団。彼らが具体的に家康をどのように支えたのかが詳述してあります。

ところで皆さん、家康の家来たち、何人名前を挙げることが出来ますか?

そして、その人たちが具体的に何を成した人たちなのか、説明することはできますか?

私は1人か2人くらいが限界です(笑) 既に20冊近くは家康本を読んだにもかかわらず!です^^; 他の本や小説でも家来たちは多数登場するのですが、いかんせん覚えられない……と私も悩んでいたところにこの一冊に出会いました。

本書の特色は家来たちの事績を紹介するのみならず、その性格にも踏み込んで記述しているところにあります。

彼等がどう考え、何を思い家康という大器に人生を賭けて仕えたのか、彼らの性格や思考にまで踏み込んだからこそ、出来のよろしくない私の記憶にも定着しました。

文庫本サイズですが中身は新書のような内容です。家康の家来たちのこともよく知りたい、という方におススメです。

3.今すぐ無料で読める作品はこちら

こちらの項目では青空文庫で公開中の作品をご紹介します。

青空文庫は著作権切れになった作家の作品を全文無料でWeb、アプリ上で公開している、読書好きにとっては神様のような存在です。

私も毎日のようにお世話になっています。

『家康』 坂口安吾  (青空文庫)

坂口安吾は20世紀前半に活躍した小説家で、『堕落論』『不連続殺人事件』『桜の森の満開の下』など、今でも読み継がれている作品を多数残しています。

推理小説や幻想的な小説など、様々なジャンルを書いた人で、歴史小説もいくつか残しており、そのうちの一つが『家康』です。

『家康』では、時代が戦乱から平和へと移り変わるにつれ、家康の性格がいかにマッチングしていったか、という視点で書かれています。

坂口安吾の文章は正直、読みやすいとはいえず、ある程度の前知識を持ってから読まないと置いてけぼりにされるような作品ではありましたが、なんといっても、無料、ネットが使えるならすぐ読めるのが大きいですね。

坂口安吾は戦国時代が好きだったようで、『家康』の他にも『織田信長』(ただし未完)、『黒田如水』という同時代人にスポットライトを当てた作品が現在公開中です。

『信長』『真書太閤記』(ただし未完)『狂人遺書』などの戦国時代を舞台にした作品がありますが、残念ながらこれらの作品はまだボランティアの方が掲載を目指して作業中の状態ですので、もし、掲載開始したら読んで、ここでお知らせしたいと思います。

ちなみに『『信長』作者のことば』という、あとがきのような文章は既に公開されています。

ごく短い文章ですが、信長についての坂口安吾の考察が書かれており、興味深い文章でした。

こちらも興味のある方は読んでみてください。

『二流の人』  坂口安吾  (青空文庫)

上記の『家康』以外にも坂口安吾が家康について言及していて青空文庫で公開中の作品が見つかりました。

『二流の人』の主人公は豊臣秀吉の参謀役として有名な黒田如水です。

黒田如水は出家後の名前で、通称・黒田官兵衛の名前の方でご存知の方も多いでしょう。

如水は秀吉亡き後、秀頼ではなく、家康のために動き、関ヶ原の戦いで家康軍の勝利に一役買っています

如水がなぜ、秀頼ではなく家康に味方したのか。

その理由を坂口安吾なりの切り口であぶりだした作品です。

史実の中でも、秀吉の北条氏攻め、朝鮮遠征、関ヶ原の戦いをピックアップして各出来事の中で、如水はもちろん、秀吉と家康など数多くの武将たちの動きや性格を書き込んでくれているので歴史を知る上でも参考になりました。

タイトルの『二流の人』というのは黒田如水その人のことで、戦争マニアであり、才能はありながらも時流に乗り切れなかった残念な人としてえがかれています。

ちなみに、坂口安吾の考える一流の人とは、豊臣秀吉、石田三成、徳川家康の3人であり、石田三成を中に含める着眼点が面白いなと思いました。

ちゃんと理由も書かれていますので、ぜひ読んでみてください。

4.戦国時代についてより詳しく知りたい方におススメ

『日本の歴史』シリーズ 中公文庫

1970年代に出版されてから、ベストセラーかつロングセラーとなった『日本の歴史』シリーズは、今なお、新刊が手に入ります。

それだけ歴史ファンの間で愛され続けており、歴史書を読むと、最後の参考文献欄に、必ずと言っていいほど、『日本の歴史』シリーズは名前を連ねています。

全26巻ですが、全巻、作者が違っており、その時代の研究者の中でも第一人者が執筆者として選考されています。

なので、全巻を通して読んでももちろん面白く、興味のある時代のところだけを読んでも、十分楽しめるようになっています。

徳川家康に関連するのは11巻~13巻です。

『日本の歴史11 戦国大名』 杉山博  中公文庫

徳川家康に関する記述が最初に出てくるのが『日本の歴史11 戦国大名』です。

室町幕府が形骸化し、日本各地で大名が乱立し、徐々に地方ごとに有力者が絞られてくる過程が書かれています。

そのため、徳川家康が出てくるのはラスト1章、ページ数にして30ページ強と、家康のことが知りたいという目的であれば、本書は適しません。

しかし、その代わり、上杉謙信、武田信玄、北条家、伊達家といった有名どころの大名たちがいかに戦国時代で名を挙げてきたのかといった、周辺情報を詳しく知ることができます。

他にも、合戦には欠かせない軍略や軍規について、領地の経営や築城について、戦国時代の村の様子や女性の在り方など、実に広範囲な視点から戦国時代を眺めることができます

その分、ページ数もかなり多く、やや硬い文章なので読み通すのは骨が折れます、が……

他の本を読んでみて、戦国時代そのものに興味を持たれた方には、ぜひ挑戦いただきたい一冊です。

『日本の歴史12 天下一統』 林家辰三郎 中公文庫

続く12巻ではいよいよ、みんな大好き、あの3人の武将たちが本格的に登場します。

徳川家康は人質時代から、織田信長は桶狭間の戦いの鮮烈なデビューから、豊臣秀吉は信長の家来になる経緯から、3人の天下人たちの記述が始まります。

本書で取り扱うのは関ヶ原の戦いの直後までなので、主役級に扱われるのは信長と秀吉の2人で、肝心の家康はというと、控えめです。

しかし、裏で着実に実力をつけ、気が付けば無視できない逸材にのし上がっている家康の姿は不気味な存在感を放っています。

武将たちの駆け引きや合戦の様子など、戦国時代にこそ見逃せない面白さもありますが、そこはこのシリーズならではの視点である農村や文化、宗教もきちんととり上げられています

個人的には、千利休に代表される茶の湯文化が、政治上の道具として、いかにパフォーマンス的に活用されたか、という視点が面白かったですね。

優れた茶道具を揃えるのも、天下人には必須だったらしいですよ……?

徳川家康が江戸幕府を開府するのは13巻へ持ち越しです。

『日本の歴史13 江戸開府』  辻達也  中公文庫

徳川家康が主役の巻がこちら13巻目です。

家康の生い立ちから記述が始まり、彼が死ぬまでの全生涯が記述されています。

家康のことをまずは知りたい、という方はこの巻から読むことをおススメします。

本巻では家康が乱世をどう生き抜いたのかもわかりますが、諸法度、幕藩体制、鎖国などの江戸幕府の土台をいかに築き上げたかの方に重きが置かれています

家康は稀代の戦争上手と褒め上げられていますが、彼の素晴らしいところは戦国時代という乱世のみならず、平和な時代にも活躍できるほどの治世能力を持っていたことでしょう。

それがよくわかる一冊になっています。

また、『どうする家康』ではどう描かれるか分かりませんが、2代目将軍秀忠を、家光の前の単なる中継役ではなく、有能でやる気のある将軍像として記述していることも特徴です。

江戸幕府の土台作りは家康だけの功績ではなく、続く、秀忠、家光の活躍があってやっと大枠が成し遂げられたそうで、本書も家光の代までの江戸幕府の治世が書かれています。

お父さん(家康)に頭が上がらなかった秀忠におじいちゃん(家康)大好きだった家光と家族間の微妙な関係にまで話が及んでいて興味深く読めました。

『武田三代』  平山優  PHP新書

徳川家康の宿敵と言えば、武田信玄です。信玄は家康を命からがら敗走させたことのある数少ない武将の一人ですね。

戦国武将の武田信玄と聞けば「最強」、あるいは治水工事も行ったりして政治家としても有能な完璧な武人というイメージでした。しかし、武田信玄も人間、戦では最強でも人間らしい苦悩を見せていた部分もあるようです。

そんな信玄を中心に武田家の歴史をまとめたのが『武田三代』です。

信玄の父であり武田家繁栄の基礎を築きながらも追放の憂き目にあった信虎。

名武将として家康を震え上がらせる実力を持ちながらも、実はお家問題に頭を悩ませていた信玄。

信玄亡き後の勝頼の苦悩。

武田三代の人間らしい一面を垣間見えて、その意外性が面白かったです。

さらに、長篠の戦いの敗因は「鉄砲隊の有無」ではなかったといった、分析まで飛び出してきて、大河ドラマの予習という域を超えて丸っと一冊楽しめてしまいました。

文章量は多め、お堅い文章の本なので読書慣れした方向きですが、家康を読みすぎて飽きてきたころにもいい1冊です(笑)

著者は『どうする家康』の時代考証人にも名を連ねている平山優さんであることも高ポイントですね。


いかがでしたでしょうか?

これからもどんどん関連本を読んで、ご紹介できる本を増やしていきますのでまた覗きに来てくださいね。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

2022年大河ドラマ『鎌倉殿の13人』を楽しむためにおススメの本はこちらからどうぞ↓

2024年大河ドラマ『光る君へ』を楽しむためにおススメの本はこちらからどうぞ↓

2023年大河ドラマ「どうする家康」を楽しむためにおススメの本をご紹介” に対して3件のコメントがあります。

  1. さち より:

    とても分かりやすく興味深く読ませていただきました
    大河ドラマどうする家康が決まりドラマを楽しめるくらいは知識を持たなくてはと思いましたがそもそも歴史にあまり興味がなかった為かなりハードルが高く恥ずかしながらまずはマンガから入ったところです
    まだまだ勉強中ですがこちらも是非参考にして幾つか読めたらなと思っています
    ありがとうございました

    1. asanosatonoko より:

      コメントありがとうございます!
      少しでも参考になったのなら、嬉しい限りです。私も歴史は教科書程度の知識しか持っていませんでしたが、いろいろ読み進めていくとどんどん面白くなってハマってしまいました。私もマンガは大好きです。また覗きに来てくださいね。

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