大きな伏線の回収にドキドキしっぱなしです:ロマの血脈(読書感想)

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今回ご紹介する本はこちら

ロマの血脈  ジェームズ・ロリンズ  竹書房文庫

シグマフォースシリーズ4作目です。

今回は「お!? そうくる!?」と思わせる展開が冒頭すぐに待ち受けていました。本作では3作目の『ユダの覚醒』で張られた大きな伏線の一つを回収します。この伏線を回収するために書かれたと言っても過言ではないほど、全編通して「どうなるんだ~?」とドキドキハラハラさせられました。

他にもシグマフォース創立して以来、最大のピンチともいえる事態も起こり、今回もあっという間に読み終わってしまいました!

スリルある展開で彩られている反面、恋愛面はちょっとお休みです。しかし、5作目以降への期待も膨らむラストになっており、まだまだ夢中にさせられるシリーズですね。それでは、中身をさっそくご紹介していきましょう。

1.あなたは一体、今どこに?

3作目『ユダの覚醒』で、行方不明になったシグマメンバーがいたことを覚えてらっしゃるでしょうか? 任務遂行中に消息をたち、そのまま生死不明となって前作は終わってしまいました。

その人は必死の捜索もむなしく、死体はおろか、体の一部すら発見されていない……そんな状況が本作『ロマの血脈』の冒頭で語られています

行方不明になった人はシグマのメンバーにとってかけがえのない存在で、特にグレイは最後まで諦めきれませんでしたが、断腸の思いで捜索打ち切りを決断します。ここで、そのメンバーは死体の確認はできないまま、死亡を確定されてしまいます。

そんな……あの人が死んだなんて、ショック……と、悲しみもつかのま、その後、地球のどこかで目覚めたとある人物のシーンが入ります

その人は自分がどこにいるのか、そして自分が誰なのかもわからない……いわゆる記憶喪失状態です。しかし、読んでいる方にはすぐに「ぴーん!」ときます。この人は! もしや、まさか……!

その人物は記憶喪失のまま、自分を起こした3人の子どもたちに言われるがまま、自分が監禁されていた施設から脱走し、敵からの猛追や目に見えない致死的な毒が飛び交う外界を命がけで逃走する羽目になります。

たぶん、あの人だけど記憶喪失になってるんだよね……? そんな状態で銃を持った敵から逃げられるの……?

と、そんな不安を吹き飛ばすかのように、体に染みついた訓練の賜物により、その人物は子供たちという足手まといにもなりそうな存在を守りながら逃避行を続けていくのです。

お話は主人公のグレイの視点と、記憶喪失の人物の視点が交互に語られて進んでいきます。2人の冒険がどこで交わるのかも気になります。なにより記憶が戻るのか、そして子供たちと共に生還できるのか!?

本作では歴史と科学の謎よりも、その行く末の方が気になって仕方なかったです。

2.シグマ最大のピンチ、発生!

本作のもう一つの目玉(と、勝手に私が思っている)シグマ始まって以来の最大のピンチが訪れます。

ピンチが訪れるきっかけとなるのはお話の中盤以降のこと。なんやかんやあってシグマは本部に別組織の人間を招きいれざるを得なくなります。

そのことがシグマを壊滅状態に陥らせかねない大ピンチへと繋がってしまうのです

スパイものの醍醐味って、活動中のスパイたちのアクションだったり謎解きだったりだと思います。そういうお約束みたいなものがある中で、本作でえがかれたこの大ピンチは、かなり意表をつくものでした。

しかし、シグマにはグレイたち隊員以外にも頼りになる男がいます。

ペインター・クロウ。司令官ですね。

司令官と言いつつ、この人、けっこうアクティブに外で隊員並みの活動を繰り広げたりもしてくれていましたが、本作では(本来の役目通り(お留守番をしていました。そのことがシグマにとっては起死回生のチャンスとなったというわけですね。

ペインターはアクションも有能ですが、頭脳も冴えわたったキャラクターです。今思い出しても、「さすが司令官!」という鮮やかな活躍でした。

そのために本部を襲撃されてしまいます。

こういうシーンが度々登場するから、シグマフォースシリーズは止められないんです!

3.気になる今後の伏線が今回も登場

『シグマフォース』シリーズでは次作以降へと繋がる伏線がよく登場しますが、本作でも登場しましたので触れておきましょう。

今回の伏線は「グレイの未来の予言」です。

本作には巫女というかシャーマンというか、予知能力めいた不思議な力をもつ人物が登場します。その人物が、グレイの持っていたとあるアイテムに注目して予言をくだすのです。

そのアイテムがドラゴンのペンダント。シグマの宿敵である組織・ギルドの象徴でもあり、本シリーズのヒロインの一人、セイチャンがグレイに託したものでもあります。

「これに気を付けて。あなたは死ぬ」

……不吉ですね、そして意味深です。

「これ」とは何を指し示しているのでしょう。ギルドなのか、それともセイチャンのことなのか。

どちらにも既に死ぬような目にあわされているし、ギルドもセイチャンも今後もシリーズに登場するのは間違いないありません。

主人公は死なない、という暗黙の了解がアクションものにはあったりしますが『シグマフォースシリーズ』ではどうなんでしょう? シグマのメンバーで殉死者も出ているし、今回も名前のあるキャラクターが一人犠牲になっているし……そこにグレイが加わらない保証はどこにもないわけです。

グレイの今後の運命がますます気になります。

4.あらすじ

本物の超能力者だったからことは深刻です。

主人公は死なない、が物語の不文律ではありますが、

意識不明の重体くらいにはなるかもしれない。

そして殺しに来るのは誰なのか、というのも気になります。

セイチャンなのか、それともまだ見ぬ刺客なのか……

グレイの運命が気になるところです。

4.あらすじ

最後に、『ロマの血脈』のおおまかなあらすじをご紹介します。その前に、『ロマの血脈』でピックアップされた歴史、科学のテーマに触れておきましょ。

まずは歴史のテーマから。今回は古代ギリシアのデルポイの神殿が登場します。古代ギリシアのデルポイ神殿には、神の言葉を聞くと信じられていた巫女たちがおり、予言をくだしてはギリシアの政治に大きな影響を与えていました。しかし、やがてローマ帝国の支配が及び、デルポイの神殿はすたれていき、その巫女たちもまた、歴史の闇へと消えていきました。

そしてここからが科学の要素が登場です。現在、デルポイの神殿跡の調査を行うと、幻覚作用のあるガスが発見されているそうです。どんなものかはわかりませんが、シンナーをどぎつくしたようなものかと思います。

この事実を踏まえると、デルポイの神殿の予言の信憑性に「?」がつきますね。巫女たちの予言は幻覚ガスが見せた幻、つまりでたらめだったのではないか? 幻覚作用のあるガスを吸った巫女たちの様子は平常状態とはかけ離れ、それが神がかった様子に見えただけではないのか?

真相はタイムマシンでもないとずっとわからないままでしょう。

『ロマの血脈』では、デルポイの神殿の巫女たちの能力が本物であり、受け継ぐ者たちがいる、という前提で動き出します。

それでは、おおまかなあらすじのご紹介です。

グレイの目の前で一人の男性が狙撃を受けて死亡した。男性の名前はドクター・アーチボルト。高名な神経学の教授であり、シグマフォースの隊長・ペインターの知り合いであった。ペインターはアーチボルトがなぜ、暗殺されたのか、その謎を解くためにグレイとコワルスキに彼の足跡を追わせることにする。アーチボルトは暗殺前に、どこかで致死量の放射線を浴びていたことがわかっていた。

アーチボルトは一体どこで、何を研究していたのか? グレイはアーチボルトの足跡を追ううちに出会った娘のエリザベス、アーチボルトと生前交流のあったジプシーの男性ルカと共に、生前のアーチボルトの研究内容を追い求めることになる。

一方、どこかはわからない研究所のような場所で、一人の男が目を覚ました。が、男は自分の名前も含めて記憶をすべて失っていた。そばにいたのは3人の子どもたち。彼らは研究所から逃げ出すために男の力を借りたいと言う。男はその依頼を受け、子どもたちと共に外へと脱出する。子供たちの不思議な力に導かれて、男の命がけの逃走劇が始まった。


いかがでしたでしょうか?

本書の中に書いてあったのですが、人間って誰でも予知能力を持っているそうです。どんな人でも、3秒くらい先なら見通せるのだとか。いわゆる「虫の知らせ」とかって、突き詰めると無自覚で発動した予知能力なのかもしれないですね。「使いこなせたらもっと便利なのに!」と思いましたが、どうでしょう? 転ぶ回数を減らすくらいの効果はありそうじゃないですか?

でも、年をとったら、自分の死期を直前に感じ取ってしまったり……やはり、先は見えなくていいのかもしれません。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

よろしければ、感想など、コメントに残していってくださいね。

当ブログ内でご紹介しているシグマフォースシリーズの記事はこちらからどうぞ!

本作の1作前、シリーズ3作目『ユダの覚醒』

本作の次の作品、シリーズ5作目『ケルトの封印』

シリーズ最新作、シリーズ15作目『タルタロスの目覚め』

シリーズの前日譚『ウバールの悪魔』