目指せ『ドグラ・マグラ』完全読破・理解への道!読むべきシーンを解説します(パート2)

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今回ご紹介する作品はこちら

ドグラ・マグラ   夢野久作  青空文庫で無料公開中

読めば頭がおかしくなーる……

そんな噂がまことしやかにささやかれる日本文学史が誇る(?)超迷作『ドグラ・マグラ』完全読破・理解への道!のパート2です。本当は1つの記事の中で収めたかった(収まると思ってた)んですが、『ドグラ・マグラ』はそんなに甘い作品ではありませんでした……というわけでパート2にわけました。

パート2は主人公が正木の遺書を一通り読み終わった後のシーンから解説していきます。

冒頭から正木の遺書まではパート1でご紹介していますのでそちらをどうぞ

それでは、目まぐるしく変化する『ドグラ・マグラ』後半の世界を一緒に読んでいきましょう!

目次ですが、空白行で区切られた一塊の文章群ごとに基本的に読んでいきます。区切り方が分かりづらくてすみません^^;

1.遺書を読み終わった直後から若林の企みを聞くまで

長すぎる正木の遺書がやっと読み終わりました! しかし事件の謎は深まるばかり、主人公の正体に見当はついても確信は得られない……そんなもどかしさを感じた方が多いのではないでしょうか。

このもどかしさを吹き飛ばすのが、遺書を読み終わった直後に登場する人物です。

遺書を読み始めた時は若林が座っていたはずの椅子に、いつの間にか別の人物が座っていることに主人公は気が付きます。

生きて、動いて、主人公に話しかけてくる人物、その人物こそは

……正木博士!

嘘でしょ!? 一カ月も前に死んだと聞いてますけど!?

そんな驚きをよそに正木は、遺書で読んだ通りの不遜なキャラクターそのままにニヤつきながらここまで読んできた(もう本編を半分以上過ぎてます)前提を一気に覆してきます。

若林は「今日」を大正15年11月20日と言いましたが、正木は大正15年10月20日だと告げます(この日付は正木が自殺した日のはず)。

さらに正木は若林が主人公に意図して思い込みをさせることで、正木を破滅させようとしていたともいうのです。

若林が主人公に思い込ませようとした……?

主人公に、自分が2件の殺人事件の実行犯である呉一郎だと思い込ませようとした

その裏で糸ひく黒幕は正木だと思い込ませようとした

若林はこれ以前にも複数の事件を解決して名探偵と世間では思われているらしいのですが、関係者の心理を巧みに操って真相を暴くのではなく、作りだすことでその名声を築いてきたと正木は言うのです。

さあ、わからなくなってきました! 正木と若林の両博士の仲が、良いように見えて実は腹の底ではバチバチと火花を飛ばし合っている剣呑な関係であることはわかっています。お互いに相手にとって都合の悪いことばかりを主人公に吹き込んでいるようですが、真実はどっちなのか……? あるいは、どちらも真実ではないのか?

そもそも「今日」はいつなのか? というか、目の前に座る人物は本当に正木なのか? 幽霊や幻覚の類じゃないでしょうね? ……疑えばきりがありません。

ここはしばらく、主人公と同じように正木の話に耳を傾けてみた方がよさそうです。

2.正木の話の続きから両博士の知恵比べとわかるまで

正木の一方的な話はまだ続きますが、ほとんど直前に読んだ内容とかぶっているので流し読みで大丈夫です。

新情報としては若林が正木の企みは主人公と正木を利用することで、自分の論文「精神科学的犯罪とその証跡」を完成させることまで視野に入れているらしいことでしょうか。

正木は若林の企みを潰すために主人公の前に姿を現したようです。

いろいろ情報が多いですが、構造はシンプルです。『ドグラ・マグラ』は若林と正木の研究者人生を賭けた勝負だったということです。勝敗は主人公が自分を呉一郎と認めるかどうか、その一点にかかっています。

ここまでは若林のターンでしたが攻守交替します。正木が遺書の続きを話すことで主人公は呉一郎ではないことを認めさせるという流れに変わりました。どんな話が飛び出すのか、楽しみですね。

それにしても勝手に勝負の材料にされてしまい、気の毒な主人公。正木も若林も臨床には向いてませんね、大人しく研究室に閉じこもっていてほしいです。

ちなみに、完全に蛇足ですがちょっと補足を。正木がよく使う「面黒い」という言葉、ちゃんと辞書に載っているようです。意味は「1.面白いをしゃれていった言葉、2.つまらないをしゃれていった言葉」と正反対の意味のどちらでも使えるようです。ひねくれものの正木らしい言葉のチョイスですね。

3.主人公の記憶を取り戻す実験、正木Ver始まる

若林と同様に、正木も主人公の記憶を取り戻させる実験を開始しました正木に窓の外を見るようにうながされる主人公は、ふらふらと窓に近寄って……

そしていきなり驚きの展開が待っていました。

窓の外に見えたのは解放治療場の光景。遺書で読んだように鍬をふるう老人がいたりと、患者たちが思い思いに過ごす一見平和な風景が広がっています。

そこには、我らが呉一郎の姿も! 

しかも一郎も遺書の通り、鍬をふるう老人の姿を一心に眺めています。

え!? なんでそこにいるの!?

今は正木が死ぬきっかけになった事件の後じゃないのか!?

主人公は呉一郎ではないということなのでしょうか?

『ドグラ・マグラ』はついに時空さえも捻じ曲げてループ状態を作り始めたのでしょうか??

もう不思議すぎて主人公と一緒に思考が停止しそうになりますが、正木が話しかけてきたのでもう少し様子を見てみましょう。

4.正木に何を見ているのか問われる主人公

窓の外に広がる不思議な光景に息をのむ主人公に、正木が「何が見える?」と問いかけます。正直に答える主人公と思わせぶりな正木の会話が続きます。

この会話の最中にも、解放治療場にたたずむ呉一郎の容姿が主人公と瓜二つだったり、主人公が窓の外に見ている光景はそもそも幻覚だったことがわかったりと、混乱させるような展開が続きます。でもこの辺りはあまり重要な情報でもないかな……

このシーンで最も大切なのは、主人公が突然自覚した「痛み」でしょう。主人公は夜中に目覚めてから洗髪も散髪もしているのに、何故急に痛み出したのか? 前髪の生え際辺りに感じ出した痛みの正体は何か? これは記憶にとどめておいた方がよさそうです。 

5.問題の絵巻物の由来

正木にからかわれたり、正木とカステラを食べたりするうちに気分もほぐれてきた主人公。少し大胆になり、正木に質問します。

質問したのは、遺書に記されていた問題の絵巻物についてです。遺書には絵巻物をみた呉家の男子は心理遺伝の発作を起こすと書かれていました。そんな危険な絵巻物がいつから、どうやって呉家に伝わっているのかは謎でした。

その由来が、ついに正木の口から語られます。

絵巻物の由来

正木によると、時を遡ること1100年前、中国は唐の時代、玄宗皇帝の御世までさかのぼります。玄宗の治世の終わりは稀代の悪女・楊貴妃により乱れ、国は大いに荒れていました。そのころ呉青秀という絵描きの青年がおり、玄宗皇帝の命令を受け、各地の名勝をスケッチして献上します。そのスケッチが気に入られ呉青秀は黛という美女を妻にもらうことになりました呉青秀は玄宗皇帝の政治の乱れを憂え、一計を案じます。

それがまたトンデモナイもので、妻を殺し、その死体が腐乱していく様子を絵巻物に克明にスケッチすることで、玄宗皇帝に人間の儚さを思い出してもらおうという……なかなか苛烈なものでした。これに賛成してのはまさかの妻・黛で、2人は山奥のアトリエにひきこもり、呉青秀は本当に妻を絞殺してしまいます

計画通り死体のスケッチを始めた呉青秀ですが、予想以上に腐乱の進行が早く、黛の死体は試みの半ばにして白骨化してしまいました。

ここで諦めるなり妻の死を悼むなりすればいいのに、呉青秀は懲りずに女性の死体を求めて誘拐未遂、死体泥棒未遂などを繰り返し、ついに近所の農民たちから焼き討ちにあいます。この時、呉青秀がアトリエからもちだしたのが、未完成の絵巻物、夜光珠(ダイヤのことらしい)、青琅玕の玉、水晶の管などでした。

命からがら都の自宅まで戻ってきた呉青秀、ついに自殺を決意しますがそれを止めたのが妻そっくりの女性でした。妻・黛は双子で、妹の芬がいつの間にか姉夫婦の家に住み着いていたのでした。芬から既に玄宗も楊貴妃もこの世にいないことを聞かされ茫然自失となった呉青秀。彼の手を取り都を抜け出し、放浪の旅へと出る芬。流れに流れて、彼らは日本へ向かう船に乗り込みます。その航海の途中、呉青秀は死んでしまいますが、その時、芬は既に臨月を迎えておりめでたく船の上で男の子を生み落としました。母子は日本に降り立ち、絵巻物を子孫へと伝えましたとさ……

かなり長くなりましたが、ざっとこんな内容でした。この後の呉家のお話は、正木の遺書にあった「青黛山如月寺縁起」へと続くことになります(こちらの内容はパート1の方にまとめてあります)。また、青琅玕の玉、水晶の管など、呉一郎が解放治療場のグラウンドから掘り出したガラクタの意味が、ここでやっと繋がりました。

それに……呉青秀の行動は、呉一郎が起こした第二の事件、モヨコ殺人事件の行動そっくりそのままです。なるほど、これは遺伝だと言いたくもなります

破天荒な内容な『ドグラ・マグラ』ですが、こうしてたまに妙に辻褄があうところがあるので、面白さや続きが気になって読んじゃうんですよね^^; しかし呉家の祖先の話を聞いていくと、まあ心理遺伝うんぬんは置いておいたとしても、思いつめやすく極端な考えに至りやすい性格は確実に遺伝してる、と思います^^;

ここまで知らされた主人公は、さらに絵巻物の謎について突っ込みます。「なぜ、心理遺伝は男子にのみ起こるのか?」 この問いに答えるべく、正木は問題の絵巻物を主人公に差し出します……


いかがでしたでしょうか? 現在の更新はここまでとなっております。

次回更新日は12月14日の予定です。

またぜひのぞきに来てくださいね。

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