目指せ『ドグラ・マグラ』完全読破・理解への道!読むべきシーンを解説します(パート2)

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

今回ご紹介する作品はこちら

ドグラ・マグラ   夢野久作  青空文庫で無料公開中

読めば頭がおかしくなーる……

そんな噂がまことしやかにささやかれる日本文学史が誇る(?)超迷作『ドグラ・マグラ』完全読破・理解への道!のパート2です。本当は1つの記事の中で収めたかった(収まると思ってた)んですが、『ドグラ・マグラ』はそんなに甘い作品ではありませんでした……というわけでパート2にわけました。

パート2は主人公が正木の遺書を一通り読み終わった後のシーンから解説していきます。

冒頭から正木の遺書まではパート1でご紹介していますのでそちらをどうぞ

それでは、目まぐるしく変化する『ドグラ・マグラ』後半の世界を一緒に読んでいきましょう!

目次ですが、空白行で区切られた一塊の文章群ごとに基本的に読んでいきます。区切り方が分かりづらくてすみません^^;

1.遺書を読み終わった直後から若林の企みを聞くまで

長すぎる正木の遺書がやっと読み終わりました! しかし事件の謎は深まるばかり、主人公の正体に見当はついても確信は得られない……そんなもどかしさを感じた方が多いのではないでしょうか。

このもどかしさを吹き飛ばすのが、遺書を読み終わった直後に登場する人物です。

遺書を読み始めた時は若林が座っていたはずの椅子に、いつの間にか別の人物が座っていることに主人公は気が付きます。

生きて、動いて、主人公に話しかけてくる人物、その人物こそは

……正木博士!

嘘でしょ!? 一カ月も前に死んだと聞いてますけど!?

そんな驚きをよそに正木は、遺書で読んだ通りの不遜なキャラクターそのままにニヤつきながらここまで読んできた(もう本編を半分以上過ぎてます)前提を一気に覆してきます。

若林は「今日」を大正15年11月20日と言いましたが、正木は大正15年10月20日だと告げます(この日付は正木が自殺した日のはず)。

さらに正木は若林が主人公に意図して思い込みをさせることで、正木を破滅させようとしていたともいうのです。

若林が主人公に思い込ませようとした……?

主人公に、自分が2件の殺人事件の実行犯である呉一郎だと思い込ませようとした

その裏で糸ひく黒幕は正木だと思い込ませようとした

若林はこれ以前にも複数の事件を解決して名探偵と世間では思われているらしいのですが、関係者の心理を巧みに操って真相を暴くのではなく、作りだすことでその名声を築いてきたと正木は言うのです。

さあ、わからなくなってきました! 正木と若林の両博士の仲が、良いように見えて実は腹の底ではバチバチと火花を飛ばし合っている剣呑な関係であることはわかっています。お互いに相手にとって都合の悪いことばかりを主人公に吹き込んでいるようですが、真実はどっちなのか……? あるいは、どちらも真実ではないのか?

そもそも「今日」はいつなのか? というか、目の前に座る人物は本当に正木なのか? 幽霊や幻覚の類じゃないでしょうね? ……疑えばきりがありません。

ここはしばらく、主人公と同じように正木の話に耳を傾けてみた方がよさそうです。

2.正木の話の続きから両博士の知恵比べとわかるまで

正木の一方的な話はまだ続きますが、ほとんど直前に読んだ内容とかぶっているので流し読みで大丈夫です。

新情報としては若林が正木の企みは主人公と正木を利用することで、自分の論文「精神科学的犯罪とその証跡」を完成させることまで視野に入れているらしいことでしょうか。

正木は若林の企みを潰すために主人公の前に姿を現したようです。

いろいろ情報が多いですが、構造はシンプルです。『ドグラ・マグラ』は若林と正木の研究者人生を賭けた勝負だったということです。勝敗は主人公が自分を呉一郎と認めるかどうか、その一点にかかっています。

ここまでは若林のターンでしたが攻守交替します。正木が遺書の続きを話すことで主人公は呉一郎ではないことを認めさせるという流れに変わりました。どんな話が飛び出すのか、楽しみですね。

それにしても勝手に勝負の材料にされてしまい、気の毒な主人公。正木も若林も臨床には向いてませんね、大人しく研究室に閉じこもっていてほしいです。

ちなみに、完全に蛇足ですがちょっと補足を。正木がよく使う「面黒い」という言葉、ちゃんと辞書に載っているようです。意味は「1.面白いをしゃれていった言葉、2.つまらないをしゃれていった言葉」と正反対の意味のどちらでも使えるようです。ひねくれものの正木らしい言葉のチョイスですね。

3.主人公の記憶を取り戻す実験、正木Ver始まる

若林と同様に、正木も主人公の記憶を取り戻させる実験を開始しました正木に窓の外を見るようにうながされる主人公は、ふらふらと窓に近寄って……

そしていきなり驚きの展開が待っていました。

窓の外に見えたのは解放治療場の光景。遺書で読んだように鍬をふるう老人がいたりと、患者たちが思い思いに過ごす一見平和な風景が広がっています。

そこには、我らが呉一郎の姿も! 

しかも一郎も遺書の通り、鍬をふるう老人の姿を一心に眺めています。

え!? なんでそこにいるの!?

今は正木が死ぬきっかけになった事件の後じゃないのか!?

主人公は呉一郎ではないということなのでしょうか?

『ドグラ・マグラ』はついに時空さえも捻じ曲げてループ状態を作り始めたのでしょうか??

もう不思議すぎて主人公と一緒に思考が停止しそうになりますが、正木が話しかけてきたのでもう少し様子を見てみましょう。

4.正木に何を見ているのか問われる主人公

窓の外に広がる不思議な光景に息をのむ主人公に、正木が「何が見える?」と問いかけます。正直に答える主人公と思わせぶりな正木の会話が続きます。

この会話の最中にも、解放治療場にたたずむ呉一郎の容姿が主人公と瓜二つだったり、主人公が窓の外に見ている光景はそもそも幻覚だったことがわかったりと、混乱させるような展開が続きます。でもこの辺りはあまり重要な情報でもないかな……

このシーンで最も大切なのは、主人公が突然自覚した「痛み」でしょう。主人公は夜中に目覚めてから洗髪も散髪もしているのに、何故急に痛み出したのか? 前髪の生え際辺りに感じ出した痛みの正体は何か? これは記憶にとどめておいた方がよさそうです。 

5.問題の絵巻物の由来

正木にからかわれたり、正木とカステラを食べたりするうちに気分もほぐれてきた主人公。少し大胆になり、正木に質問します。

質問したのは、遺書に記されていた問題の絵巻物についてです。遺書には絵巻物をみた呉家の男子は心理遺伝の発作を起こすと書かれていました。そんな危険な絵巻物がいつから、どうやって呉家に伝わっているのかは謎でした。

その由来が、ついに正木の口から語られます。

絵巻物の由来

正木によると、時を遡ること1100年前、中国は唐の時代、玄宗皇帝の御世までさかのぼります。玄宗の治世の終わりは稀代の悪女・楊貴妃により乱れ、国は大いに荒れていました。そのころ呉青秀という絵描きの青年がおり、玄宗皇帝の命令を受け、各地の名勝をスケッチして献上します。そのスケッチが気に入られ呉青秀は黛という美女を妻にもらうことになりました呉青秀は玄宗皇帝の政治の乱れを憂え、一計を案じます。

それがまたトンデモナイもので、妻を殺し、その死体が腐乱していく様子を絵巻物に克明にスケッチすることで、玄宗皇帝に人間の儚さを思い出してもらおうという……なかなか苛烈なものでした。これに賛成してのはまさかの妻・黛で、2人は山奥のアトリエにひきこもり、呉青秀は本当に妻を絞殺してしまいます

計画通り死体のスケッチを始めた呉青秀ですが、予想以上に腐乱の進行が早く、黛の死体は試みの半ばにして白骨化してしまいました。

ここで諦めるなり妻の死を悼むなりすればいいのに、呉青秀は懲りずに女性の死体を求めて誘拐未遂、死体泥棒未遂などを繰り返し、ついに近所の農民たちから焼き討ちにあいます。この時、呉青秀がアトリエからもちだしたのが、未完成の絵巻物、夜光珠(ダイヤのことらしい)、青琅玕の玉、水晶の管などでした。

命からがら都の自宅まで戻ってきた呉青秀、ついに自殺を決意しますがそれを止めたのが妻そっくりの女性でした。妻・黛は双子で、妹の芬がいつの間にか姉夫婦の家に住み着いていたのでした。芬から既に玄宗も楊貴妃もこの世にいないことを聞かされ茫然自失となった呉青秀。彼の手を取り都を抜け出し、放浪の旅へと出る芬。流れに流れて、彼らは日本へ向かう船に乗り込みます。その航海の途中、呉青秀は死んでしまいますが、その時、芬は既に臨月を迎えておりめでたく船の上で男の子を生み落としました。母子は日本に降り立ち、絵巻物を子孫へと伝えましたとさ……

かなり長くなりましたが、ざっとこんな内容でした。この後の呉家のお話は、正木の遺書にあった「青黛山如月寺縁起」へと続くことになります(こちらの内容はパート1の方にまとめてあります)。また、青琅玕の玉、水晶の管など、呉一郎が解放治療場のグラウンドから掘り出したガラクタの意味が、ここでやっと繋がりました。

それに……呉青秀の行動は、呉一郎が起こした第二の事件、モヨコ殺人事件の行動そっくりそのままです。なるほど、これは遺伝だと言いたくもなります

破天荒な内容な『ドグラ・マグラ』ですが、こうしてたまに妙に辻褄があうところがあるので、面白さや続きが気になって読んじゃうんですよね^^; しかし呉家の祖先の話を聞いていくと、まあ心理遺伝うんぬんは置いておいたとしても、思いつめやすく極端な考えに至りやすい性格は確実に遺伝してる、と思います^^;

ここまで知らされた主人公は、さらに絵巻物の謎について突っ込みます。「なぜ、心理遺伝は男子にのみ起こるのか?」 この問いに答えるべく、正木は問題の絵巻物を主人公に差し出します……

6.絵巻物を見る主人公

いよいよ、問題の絵巻物が主人公の手に渡りました。呉一郎を発狂せしめたという絵巻物……一体どんなものなのでしょうか?

中身は絵巻物の由来として伝わっている通り、女性の死体が腐乱していく様子を克明に描いたものが6体分、そしてその後に素人には読みようもない漢文がびっしりと1メートル以上埋められていていました。

内容を知っていても絵のインパクトは強く、主人公は直視できなかったようです。

意外にも絵巻物を見ても劇的な展開はありません。しかし、この後の主人公と正木の会話はかなり面白い。

主人公が絵巻物を見終えた後、主人公と正木によるモヨコ殺人事件緒推理合戦のようなものが繰り広げられます。

ざっと2人の推理(?)をまとめてみましょう。

主人公の推理 呉一郎は被害者説

呉一郎は絵巻物により心理遺伝発作を誘導され犯行に及んだ。絵巻物を見せたのは呉一郎以外の第三者であり、その人物こそが真犯人である。

この説の根拠として絵巻物に書かれている漢文を呉一郎が独力で読み下すのは到底不可能であったことがあげられている。第三者が読み聞かせたに違いなく、その人物こそが真犯人であるということだ。

この場合、問題となるのは誰がその第三者であるかなのだが、主人公はこの第三者の候補として、自分自身をも候補にあげている。

呉一郎は双子であり、外見上は見分けがつかないと仮定する。双子の片割れはモヨコに横恋慕しており、呉一郎に絵巻物を見せて心理遺伝を起こさせたのではないか? しかし自分も呉家の男子であるため、絵巻物の影響を受け、心理遺伝発作を起こしてしまったのではないか? この説がもし正しければ、主人公は呉一郎かもしくは双子の片割れのどちらかであることになるが、現状、どちらか特定できる材料に欠いている。もしかしたら正木と若林も主人公がどちらなのか判断を突きかねており、これが両博士が主人公の記憶に異常にこだわっている理由なのかもしれない……

正木の推理

呉一郎は先祖である呉青秀とその妻となった双子、黛夫人と芬夫人の遺伝を色濃く受け継いでいるのではないか。さらに黛夫人とモヨコは外見上、とてもよく似ており、心理遺伝発作の結果を強化した可能性がある。

心理遺伝発作自体が幻覚のようなものなのだから、呉一郎が自分とそっくりの人物がもう一人いると錯覚してもなんらおかしくない

さきほど、無人の解放治療場に呉一郎と他の患者がいると錯覚した主人公のように……

正木の推理は明言こそは避けていますが、「主人公は呉一郎であり、お前が主犯だ」と言っているに等しいという気がしますね。もっとも、その辺りの真相は正木は「ゆっくりと記憶を取り戻すに限る」とこの場で語ることは拒否の姿勢を見せています。

これには鼻白んだ主人公。朝からずーっと自分の記憶喪失に振り回されていますからね、そろそろ限界なのでしょう。「自分で事件を解決してやる!」とまで憤慨し正木と対立するほどの強気を見せます。

7.犯人は〇〇だよ

自分で事件を解決すると息巻く主人公。ここまで得た情報をもとに簡単ですが推理を組み立てます。主人公は呉家の関係者以外の人間が犯人では、と推測。さてはて、この推理は当たっているのか……?

主人公の問いかけに、爆弾を落としたのは正木でした。

正木

犯人は俺だよ

…………え?

「時が止まる」という感覚を味わいました。いやいやいや、ビックリしすぎて思考も一瞬止まりましたが、次の瞬間にツッコミがあふれ出てきました。

確かに、真犯人はおそらく心理遺伝に詳しい人間で、正木はそれに当てはまります。

また、心理遺伝の実在の確かめたいという強い動機もあるはずなので、犯行動機もあることになりますね。

でもでも、さっきまで「犯人は呉一郎だよ」って名指ししてないだけで、ほぼそうだと主人公にすり込もうとしてましたよね? というか、正木は呉家のことを事件前から知ってたんですか??

そしてこれは主人公も思いついたことですが、犯人像に当てはまる人物なら、若林だっているんです!

しかし、正木は「犯人=若林」説を一言のもとに切って捨てます。

そして、正木は犯人の自白を含めた事件の調書を差し出すのです。

正木

これのせいで罪を引き受ける気になった

罪を引き受けるってものすごいひっかかる言い方をしているのが気になります。。。本当は自分が犯人じゃないよって言ってるようなもんじゃないでしょうか?

さすがもう残りページも少なくなってきて怒涛の展開になってきました。

ここまで辿り着いた多くの読者が「ここまで諦めずに読んでよかった!」と思い始めるのもこの辺りではないでしょうか。

もうあと少しです、一緒に頑張りましょう!

ちなみに、ここで正木が披露する「犯人が自白をしてしまう心理」は、鋭く人間心理を解説してある部分です。夢野久作は追い詰められた人間心理を洞察するのにめちゃくちゃ長けた人だったんだな、と『ドグラ・マグラ』もそうですが、他の作品を読んでもそう思います。

8.犯人はWかMか?

正木による千世子とモヨコ殺人事件の(まともな)検証が始まります。アリバイの有無や犯行に至るまでの準備の方法など、考察していきますが犯行は若林にも、正木にも、どちらにも可能な状況であることが明らかになっていきます。

そして検証の矛先は問題の事件調書にも及びます。この事件調書、私たちはまだ読めていないのですが、正木によると問題点が2つ、あるそうです。

問題点① 事件の容疑者の特定が呉一郎の記憶復活にのみかかっているところ

言い換えれば、呉一郎の記憶が戻らなければ両事件共に迷宮入りだとさじを投げているということですね。確かにこれは不自然です。

問題点② 呉一郎の生年月日になぜか特別の注意がはらわれているところ

種々の情報から推察していくと、呉一郎の誕生日は明治39年の後半から明治40年いっぱいの間に絞られます。しかし、これがいったいなんだというのでしょうか? 呉一郎の誕生日と両事件に一体何の関係があるのでしょうか?

疑問にかられたところで、ここでも正木は小さな爆弾を落とします。

正木

呉一郎が生まれたと思われる年、それは正木が大学を卒業した年にあたるのだ……

……

へー、偶然ですね。……というわけにはいかないでしょう。

この正木の一言が示している可能性を端的に指摘すると、それは呉一郎の父親は誰なのか? に関わってきます。

9.正木、若き日々

正木が続いて話し出したのは正木が大学生の頃のお話です。

これまで明示はされていなかったと思うのですが、正木と若林は大学に同期入学しています。若いころから優秀ではあった2人は、法医学と精神医学で専攻こそ違うものの、首席同士ライバル関係にあったそうです。

そんな2人が辿り着いた研究テーマは偶然にも一致していました。

そう、呉家の呪いです。

皆さんは如月寺を覚えていらっしゃるでしょうか? 呉家由来の寺であり、呉家の男子を惑乱させる絵巻物を保存していたお寺です。若林と正木はその寺に通い、呉家の縁起を調べたり、絵巻物がないかと探し回ったりと、フィールドワークといえばカッコは良いですが、要はいろいろと探りをいれていたようです。

そして、2人は絵巻物が呉家の千世子によって持ち去られていることに勘づきます。

2人は今度は千世子へと接近します。最初の目的は絵巻物だったのでしょう。

しかし、2人の目的は次第に別のものへと移ります

それが千世子、その人自身でした。

ここからの流れは想像もたやすいでしょう。千世子さんは最初に若林、次に正木とお付き合いし、一郎を妊娠します。

呉一郎の生誕日は明治40年11月22日。

逆算してみても、父親が2人のうちのどちらなのか……特定することは不可能です。

今は遺伝子検査も可能ですが、この頃は血液型程度の検査が限界だったようです。しかし、そういった検査は若林の専門で、正木は手が出せません。

正木

自分は一郎の父親なのかもしれない……

正木は当然、そう思ったことでしょう。そうなると、2件の殺人事件について「自白せざるを得ない」ところまで追い詰められたのもうなずける気がします。

状況証拠も、動機も十分です。

たとえ違っていたとしても、最有力の容疑者であることは間違いありません。

この後、まだまだ正木による過去の衝撃告白は続きますが、ここで閑話休題。

本文中に「紅葉山人の金色夜叉や、小杉天外の魔風恋風」と他作品について言及されている箇所があります。

前者は尾崎紅葉の『金色夜叉』で男女の愛憎劇をえがいた作品で、青空文庫で無料公開中です。ただ、未完の作品で、「ここからが面白いのに!」というところで終わっているので、読み始める時はその点は覚悟してください^^;

後者の小杉天外の『魔風恋風』も青空文庫で現在作業中となっていました。公開が待ち遠しいですね……!

10.千世子の告白

一郎が生まれてからも正木は千世子と付き合いを続けていました。正木はこの頃もまだ絵巻物の行方を探しており、千世子に何気ないふりをして「呉家の男児を呪う絵巻物について知らないか?」と問いかけました。

千世子も子供を、しかも男の子を出産したためか、絵巻物の呪いについて恐れを抱いており、正木に絵巻物について知っていることを話してくれました。

千世子の告白

子供の頃、絵巻物の噂を聞きつけてご本尊から確かに絵巻物を盗んだ。

中身は恐ろしい絵ばかりだったが、表装はとても素晴らしかったのでしばらく手元において刺繍の練習にマネしていた。

それもマスターすると、元通りご本尊に絵巻物を戻しておいた。

千世子は呉家の男児に伝わるという呪いを怖がり、正木に研究して呪いを解き明かしてほしいと願っていた……

千世子の話も含めて絵巻物の行方を考えてみると、正木たちがご本尊のそばをうろついていた頃は千世子の手もとにあり、2人の捜索対象が千世子に移ってから絵巻物がご本尊に戻された、ということになるでしょうか。

ついに正木が絵巻物の在処を突き止めた瞬間でした。

11.正木の退室まで

絵巻物の在処を千世子から聞き出すことに成功した正木の独白(自白?)は続きます。

正木は如月寺へ赴いたそうです。そしてその結果……

正木は千世子の元に一度戻ったものの、口から出まかせで彼女を丸め込み単身上京、そのまま千世子から逃げるように海外へと飛び出してしまいます。

この辺りの正木の日々は以前に記述があったと思いますが、正木は精神分析学などを学びながら世界を放浪してまわったそうです。

その後、正木、若林、千世子がどのように考え、行動したかが手短に述べられるのですが……

このくだりは超重要です! 今までに主人公を通して聞かされてきた・読まされてきた情報がここで繋がります。

例えば、正木の遺書の中に含まれていた例のチャカポコ文章(「キチガイ地獄外道祭文」)にも、正木にとっては精神病患者の現状を訴える以上の意味が込められていたことがわかります。

そうだったのか……人間らしい感情もあったんだね、正木……(一応)

その辺りの驚きは本文をぜひ読んでいただくとして、正木がここでいくつか事件の核心をつくことを述べていますのでまとめておきましょう。

事件の核心

  • 正木・若林は呉家の遺伝発作を一郎の成長を待って実験しようと企んでいたこと
  • 千世子は両名が自分に近づいてきた意図を知り、一郎を守ろうと必死になっていただろうこと
  • 千世子の存在は実験のためには邪魔であり、それが千世子殺害事件の動機だったこと
  • 正木は研究成果を発表するために教授の地位が必要と考え、おそらく斎藤博士を殺害したこと

最後の斎藤博士のくだりはあくまで「おそらく」です。正木自身が言葉でもって自白したわけではありませんが、文脈上、そうとしか受け取れないという流れになっています。

さて、ここまで読んできて、実は肝心なことがわかっていません。これはわざと作者・夢野久作によってぼかされている部分です。

絵巻物は誰が手にしたのか?

正木が千世子から聞き出して後、彼が所在を確かめには行ったのですが……そこに絵巻物がちゃんとあったのか、もしあったならそれをどうしたのか? そこは「言っても仕方ない」と正木は詳しくは述べてくれませんでした。

正木が手にしたのか? あるいは正木の動向を敏感に感じ取った若林の手に渡ったのか?

どちらの可能性もあるというあいまいさを残したまま、正木の自白は終わってしまいます。

いや、そこが一番肝心!!

ここを誤魔化すとはさすが『ドグラ・マグラ』!

正木は言いたいことを言い終えた後、再び主人公に「この研究結果を発表してくれ」と願い、そのための記憶の復活には「モヨコと結婚することが一番」だと言い出したりと、もう言っていることはメチャクチャです。

これにはさすがに頭にきた主人公が、正木に涙ながらにお説教し、そこにちょうどタイミングよく再登場した小使と入れ替わるように正木は1人、退室します。

長かった正木の自白が終わり、次からは新しい展開へと移ります。

……と、その前にここで一つ気になる伏線のようなものがあったのですが、皆さんも見つかったでしょうか?

それは小使のセリフの中にあります。

小使

……それに昨日からは又あの解放治療場で大層もない御心配ごとが出来まして(以下略)

一見、読むと「ああ、一郎が解放治療場で暴れたことね」と思い当たります。しかし、「又」と彼は言っているのです。

……また?

大事件が何回か、少なくとも2回は起こっているような口ぶりです。そんな事実は聞かされていません。

頭の中に引っかかりを覚えたまま今度は1人残された主人公に注目です。

12.その時、時刻は……

正木が退室後、気になる発言を残して小使も退場します。

独り残された主人公がどうなったかというと、正木との対決という極度の緊張感から解放されて、少しおかしくなってます(笑)

笑ってみたり、過去のことをとりとめもなく思い出してみたり……

こういう精神の不安定さが「君の正体はやっぱり」と思わせる処であり、『ドグラ・マグラ』を読むと頭がくらくらしてくる所以でしょう。

しかし、緊張感から解放されたことで少し思考はクリアになった部分もあるようです。

そもそも、2件の殺人事件をつなげて考える必要はあるんかいな? ということに気が付きます。

古代から続く精神的な遺伝がうんぬん……とややこしく考えるよりも、2つの事件は別々に発生したものであり、呉一郎の発狂はたまたまだったと考えた方がすっきりするし、常識的だと思えますよね

そんなことをつらつらと考えつつ、ふと視線をずらせばそこに目に入ったのは、例の絵巻物です。

この絵巻物の存在に、何人の人間が振り回されてきたのでしょう? 正木も若林も、呉家の人間を弄んだことは間違いないですが、それもこの絵巻物の存在があるが故です。

主人公は、今一度、絵巻物に手を伸ばします。

と、ここで時計を確認した主人公。時刻は12時10分前。

12時は昼の12時でしょう。そう、昨日(と正木は言い張っている)の同時刻に解放治療場で大惨劇が起きた時刻が迫ってきました……

絵巻物の内容は前に見ていますが、今度のは匂いをかいだり紙の状態を確認したりと、なめまわすように観察します。といっても、犯人のヒントになりそうなのは「香水の匂いがする」くらい。

これ、誰の香水の匂いなんでしょうね? ぱっと候補にあがるのは千世子とモヨコです。これまで記憶を復活させようと試みながらも、いっこうに効果が見られなかった主人公も、どこか記憶を刺激されるらしく「身近な女性の匂い化もしれない」と考えをめぐらせていました。

そして観察していくうちに、主人公は呉一郎がこの絵巻物を手にした時に見せていたという様子を思い出し、閃きます。

13.絵巻物の秘密

ここで過去を思い出してみましょう。モヨコ殺人事件の前、呉一郎が絵巻物を見つめていた時のこと、その様子を目撃した人物によると「呉一郎は絵巻物を開き、白紙の部分を見つめていた」と……

白紙の部分を見つめるなんて変わっているなあ、というのが目撃談を読んだ当初の感想でした。しかし、絵巻物の実物を見た後となっては、少々おかしいと気づきますね。

なぜなら、絵巻物は広げるとすぐに女性の死体の絵が6連発目に飛び込んでくるはずなんです。普通の人なら、そこでもう先を見るのを止めるでしょう。

しかし、呉一郎は「白紙」の部分を見つめていた、つまり絵巻物の死体の絵を通り過ぎ、その先の部分を見ていたことになります。

もしやそこに何か秘密が隠されているのではないか?

そう閃いた主人公は絵巻物をどんどんと広げ、白紙の部分を見ていきます。

その時、時刻は12時4分前。

いい加減、馬鹿々々しくなるほど白紙を見つめ続けていくと、最後に綺麗な女文字が出てきます。書いたのは千世子。そして、書いてあったのは子を思う母の気持ちでした。一郎が生まれた数日後に書かれたものです。

これだけなら千世子が絵巻物を手にするかもしれない我が子を思って、書きつけておいたと思えるのですが、問題はそこに書かれている「宛先」でした。

千世子は誰に向けて書きつづったのか?

正木宛です。

ここで名前が出るということは……一郎の父親は……!

「そうだったの!?」と読んでいる側も驚きますが、なお一層動揺したのは主人公でした。

彼は取り乱しまくり部屋を飛び出し、建物を飛び出し、解放治療場の入口に立ちました。

その時、時刻は12時ちょうど。解放治療場で惨劇が起きたとされるその時刻です……

と、お話が盛り上がりまくっている中に、少し冷静に突っ込んでおくと、母親だからといってお腹の中の子供が誰の子かというのは、複数の候補者が思い当たる場合、分かるもんではないですよね。千世子が書きつけたからといって、正木が本当に一郎の父親とは限りません。分かるのは「千世子が正木が父親に違いないと信じていた」あるいは「正木が父親の方が都合がよさそうだ」と思っていたことくらいでしょう。

あと主人公の反応も気になりますね。何もそこまで動揺せんでも。君の両親の話とは決まってないんですよ?

主人公の普通は理性的なのに、急にかーっとのぼせあがるように動揺したり興奮したりする性格は『ドグラ・マグラ』の世界観にピッタリですよね。そして誰かさんを彷彿とさせる仕掛けとしてもピッタリです……

14.錯乱する主人公

解放治療場から街へと勢いに任せて飛び出してしまう主人公。ここからの描写は闇雲に街を走り回ったためか、それとも主人公が錯乱状態にあったためか、ひどく曖昧で具体的なことは何もわかりません。ただ、主人公の周りは雑然として、何か騒ぎを巻き起こしていることだけが伝わってきます。

主人公は周囲への知覚・配慮をほとんど遮断して、自分の頭の中で事件について、絵巻物の最後の歌について考えをめぐらせています。

犯人は正木教授だった!

主人公は一途にそう思い込んで街中を突っ走っているのです。

なるほど、絵巻物の最後に千世子から名指しで書付が遺してあれば、そう思いたくもなるでしょう。

でも、これって状況証拠にもならないというか、事件の真相に何か影響ってあるんですかね……? 千世子は正木が一郎の父親だと思い込んでいた、というだけで、事件の犯人が正木だっていうことになるんでしょうか? なるのかしら?

これは少し前に正木自身が「どこかに一郎の父親がどこの誰だか、書き留めておいてくれたものはないのか?」という主旨の発言をしていましたが、それが念頭にあってこその主人公の暴走というやつでしょう。

冷静に考えれば、むしろこれは正木をはめるための最後の大仕掛けという気がします。絵巻物の最後まで見た可能性のある人物として千世子、正木、そして若林があげられますが、千世子は書付を残しているので確実として、おそらく正木は書付に気づいていない可能性が高い。そうすると、残る若林が書付を発見し、これを利用すれば「正木=真犯人」という印象を強く植え付けられる、と企んでいたとしておかしくはないでしょう。発見されなくとも状況は正木が犯人ではないかという疑いが濃いですし、発見されたら万々歳くらいに思って放置していたのではないか……?

事件への考察はこれくらいにしておきまして、主人公が街中を走り回るシーンで気になる点を一つ、挙げておきましょう。

それは再び感じた「頭の痛み」です。どこかにぶつけた記憶もないのに蘇る頭の痛み、この痛みの原因は一体なんなのでしょうか?

この痛みの正体が示唆されるのも、もうまもなくです……

15.衝撃的な号外

街中を暴走していたらしき主人公、そのまま意識もうろうとなり、次に正気付いた時は元の教授室にいました。

一体いつの間に戻ってきたのか? それとも街に飛び出したのは夢だったのか?

ここから主人公が自分と教授室の様子を丹念に観察する様子が語られますが、その結果がなんとも矛盾しています

主人公の服装、体はボロボロ状態で、街中を乱暴に駆け回ったかのような痕跡が見られます

教授室の中はというと、これは綺麗なもので、読んだはずの資料、飲み食いした後、たばこの吸い殻……それら人が過ごした形跡が跡形もありません。

誰かが主人公が飛び出した後に片付けてくれたのか? いいえ、どうもそうではないようです。主人公が読み漁っていたはずの資料の山には埃がたまり、長期間、誰の手にも触れていなかったことが明白な状態でした。

主人公は、教授室で正木と語り、資料を読み漁り、その結果街へ飛び出すことになりました。その痕跡は教授室に一切ありません。

それなのに、自分の身体には街に飛び出したとしか思えない痕跡が残っている……

この矛盾をどうとらえていいものか、主人公も読者もわからないまま、主人公は先ほどまではなかったはずの紙を発見します。

それは新聞の号外でした。号外の日付は正木が自殺したと言われていたその日になっています。

号外その① 正木自殺する!

正木の溺死体が発見される。自殺と断定されている。

正木の自殺の前日、解放治療場で患者の少年が他の患者・看護人を死傷せしめた事件も露呈。

号外その② 呉一郎、発狂

正木が自殺した前日の正午ごろ、解放治療場で起きた大惨事の詳細。

呉一郎が鍬を用いて解放治療場にいた患者や看護人を死傷せしめた。

号外その③ 呉一郎、自殺を企てる

解放治療場での事件後、急報に駆け付けた正木により呉一郎は自身の病室に監禁されるも、自ら頭を強く壁に打ち付け自殺を図る。

なんとか一命はとりとめたが、正木はその間に行方不明になってしまった。

号外その④ 正木博士の足取り

解放治療場での事件後の正木の足取りはこうだ。

彼は学長室まで出向き「解放治療場の実験は大成功」と放言し、「解放治療場は今日をもって閉鎖とします」と、言いたいことだけ言って退室したらしい。

その後、泥酔したのち下宿をふらっと抜け出したことがわかっている。

号外その⑤ 正木博士の足取り2

正木博士は翌朝、出来死体となって海岸で発見された。

手足には枷がはめられた状態であり、死後数時間が経過しており、駆け付けた警察、大学関係者によって身元と死亡が確認された。

かけつけた大学関係者の中には若林学部長の姿もあったという。

号外その⑥ 正木と呉一郎

解放治療場での凶行後、自室に戻っていた呉一郎だが、様子を見に現れた正木の姿を見て意味深なセリフを吐いていたという証言がある。

「お父さん、この間あの石切場で、僕に貸して下すった絵巻物を、も一ペン貸して下さいませんか。こんないいモデルが見つかりましたから……」

本文より、一郎のセリフ

これを聞いた正木は動揺し、一郎少年が自殺したと聞くまで悄然としていたという。

号外その⑦ 呉家、如月寺の大火

解放治療場の惨劇の同日、呉家で火災が発生。その火が如月寺にまで延焼した。

火元は放火であり、呉八代子のしわざとみられている。彼女は娘・モヨコの殺害事件より精神を失調していたが、甥・一郎の凶行を聞きさらに深い錯乱状態に陥ったことが放火の原因と思われる。

なお、呉八代子は燃え盛る如月寺に飛び込み、焼死を遂げている。

号外の内容は衝撃的ですね。しかし、まだまだ衝撃は続きます。

号外を読み終えた後、主人公は一枚のはがきを発見します。

はがきの内容はごく短いものです。

はがきの内容

S先生と最後に酒を酌み交わしたのは自分であるという意味深な言葉。

そして、息子と嫁を頼むと家族のことを心配する言葉。

宛先はW、書き主はMと、イニシャルのみが記されています。

ここまで登場してきた人物たちの名前からして、S先生=斎藤博士(若林・正木の恩師)、W=若林、M=正木ととらえて差し支えなさそうな気がします。

これを踏まえてはがきをもう一度読むと、はがきに記されていたのは「正木による斎藤博士殺害の自白、そして呉一郎・モヨコを案じながらも自殺を選んだ」という主旨に読み取れるのです。

おお、これですべての事件の犯人がハッキリしたのではないか!?

しかし、それでも解けないのは今朝からの主人公の体験してきた不思議です。

今は「何月何日」なのか?

主人公が会った正木は何者なのか?

号外やはがきが急に現れたのは何故なのか?

わからないことがまだまだ多すぎて大混乱です……

16.そして『ドグラ・マグラ』へ……

衝撃的な号外とはがきの内容に私が衝撃を受けている間に、主人公がここまで得てきたすべての情報を駆使して一つの仮説にまとめてくれました。

主人公の仮説

解放治療場の事件があった翌10月20日、主人公はまだ暗い時分、今朝自分が目覚めた時刻に同じく正気を取り戻したに違いない。ただし、その時すべての記憶を失っていたのだろう。

そこから今日と同じ一日を過ごしたのではないか。若林に治療の名目で過去の話を聞き、資料を読み、そしてその時はまだ生きていた正木に会って話をしたのではないか。

主人公が窓から事件前の解放治療場の様子が見えたのは、正木の言う通り離魂病にかかり直近の過去を思い出していたに過ぎないのではないか。

正木と最後に交わした糾弾の会話により、正木は自殺を決意してしまったのではないか……

そして再び1か月後の今日11月20日、自分は事件直後のように記憶をなくして目覚め離魂病の作用により1カ月前の過去を追体験していたのではないだろうか。

なるほど、主人公の仮説は『ドグラ・マグラ』という作品の世界観の中では筋の通ったものに感じられますね。しかし、この仮説は恐ろしい現実を主人公に突きつけもするのです。

主人公

自分が10月20日を追体験したのは、はたして1回だけなのだろうか?

恐ろしいことに気が付いてしまいましたね。そう、主人公のたてた仮説なら、何回でも10月20日を繰り返していておかしくない。

主人公

自分は、呉一郎、類まれな祖先の記憶をもち、犯罪に手を染めた男ということになる……

これこそが『ドグラ・マグラ』最大の謎にして、最後まで残された謎です。ここまで読んできた主人公の印象、記憶によれば「主人公=呉一郎」は確定路線なのではと思いたくなりますね。正気の時の呉一郎の性格と、ここまで見てきた主人公の言動は同一人物と考えてもよさそうな印象です。

とはいえ、少々気になるのは「主人公の記憶の中に実際に犯罪を犯した時の記憶がない」ことですね。

正木によれば犯罪を犯している時、主人公は呉一郎ではなく、呉青秀あたりのご先祖になりきっているわけですから記憶が残っていないのも頷けてしまうところではあるのですが……

どうなのでしょうか?

………………

さて、物語はいよいよ終わりです。

最後、主人公は動揺したまま自室の7号室に戻ります。

そして聞こえてきたのは「ブ……ン……」という時計の音。

そう! 『ドグラ・マグラ』の冒頭に聞こえてきたあの音です!

そして目に見えたのは「正木」の顔。これはもしかしたら解放治療場の事件後、慌てて駆け付けた正木に主人公が「お父さん」とよびかけた、まさにその時の顔かもしれません。

そして次々に現れるのは千世子、モヨコ、解放治療場の患者たち、八代子……すべて、本作の犠牲者たちです。

これらの死に顔を見た主人公はたまらず飛び上がり、どこかに頭を強く打ち付けて昏倒します。

最後に見えたのは自分によく似た青年、もした彼は呉青秀か。

というところでお話はおしまいです。

最後の最後で、犠牲者たちの死に顔まで見えてしまった主人公。これはもう主人公=呉一郎で間違いないか!?

でも、ここまできておいてなんですが、八代子の死に顔まで主人公に見えちゃってるのは気になりますね……主人公はいつ、八代子の死に顔を見るチャンスがあったのでしょうか?

呉一郎に八代子の死に顔を見るチャンスはなかった……と思うんですけど、どうなのでしょうか?

最後まで読んできて確信も核心も与えてくれない夢野久作と『ドグラ・マグラ』、さすがです。

おそらく、次に主人公が目覚めた時も、記憶を失い若林や正木と出会う同じ一日を繰り返すんだろうな……とは思います。

これぞ堂々巡り! 『ドグラ・マグラ』です!


いかがでしたでしょうか? 

本編はこれで終了です。感想や私なりの解釈など、更新するなり、新しく記事にするなどしてアップしたいと思っています。

いつになるかはわかりませんが^^;

このただただ長々しく『ドグラ・マグラ』を追いかけた記事を全部読んでくださった奇特な方がいらっしゃるかどうかわかりませんが、少しでも読んでくださった方、このページまで辿り着いてくださった方、全ての方に感謝を捧げます。

ありがとうございました!

目指せ『ドグラ・マグラ』完全読破・理解への道!読むべきシーンを解説します(パート2)” に対して3件のコメントがあります。

  1. chiki より:

    はじめまして。
    私も先日ドグラ・マグラをなんとか読み終えました。こちらの考察記事のおかげで内容をやっと理解することが出来ました。ありがとうございました!

    ひとつ気になったのですが、最後の八代子の死に顔。
    柾木博士を糾弾した後、主人公は錯乱状態のまま外に飛び出してましたよね?その時に八代子の所に向かったのかも…?と思いました。八代子が亡くなったのはちょうどそのタイミングだったので。
    もしかしたら主人公は八代子も手にかけたのか…?

    色々と深読み出来て面白いですね!

    1. asanosatonoko より:

      はじめまして、当ブログにようこそ!
      『ドグラ・マグラ』の読了おめでとうございます、なかなか最後まで辿り着くだけでも大変ですよね……

      八代子の死に顔の見覚えがあるということは、おっしゃっているタイミングで八代子のところに行くしかないですよね。
      「主人公、お前、まさか……」という感じですね^^;

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