【超短文!】無料で始める読書生活

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

このページでは

読書を始めたいけど、何からよんでいいかわからない……

ちゃんと全部読めるか不安だから本を買いたくない、でも図書館に行くのも面倒。

移動時間にサクッと読み切れて面白い本、ないかな?

これらのお悩み解消に役立つ作品・著作をご紹介していきます!

このページで紹介している作品たちは全て「青空文庫」という著作権切れした作品ばかりを集めた電子本棚で全文無料公開されているものばかりです。

  • 無料で!
  • ネットやアプリで簡単に!
  • 移動時間で読み切れるほど短い作品で!
  • 面白い作品が楽しめる!

そんなものばかりをご紹介しています。

普段はガッツリと読書感想記事を書いていますが、こちらのページでは感想も「超短文」を目指しています。

「これから読書を始めようかな、でも自信がない……」というあなたにこそ利用してほしいページです。

ぜひ、のぞいていってみてくださいね。

また、このページは不定期ですが随時更新中です。時間が経ってからくると紹介されている作品が増えているかも……また遊びに来てくださいね。

作品ファイル1

野球界奇怪事 早慶紛争回顧録  吉岡信敬

こちらの著作は大学野球名物「早慶戦」が一時期中止になっていた頃に、その中止になった理由を記したものです。

著者である吉岡信敬は早稲田側の応援団長であり、当時は一学生でありながら日本全国に名前が響き渡るほどの人気を誇った人物です。しかし、彼が率いた応援団の過熱がもとで早慶戦は中止に追い込まれた(明治39年ごろ)……という背景があります。

つまり本文は早慶戦を中止にしたご本人による諸事情の告白というわけです。

弁解文でも書いてるのかな? と、思いきや、全然違いました。著者が言うには「早稲田側が折れて早慶戦の再開を望んでも慶應側が頑なに頷かない!」とのこと。 それに対する不満や憤りを熱く、熱く、語っておられます。

正直、書かれている内容については全然ついていけませんでした(笑) というか、もうちょっと言葉の上だけでも反省された方がいいのでは?

しかし感情むき出しの文章はやはり面白いのです。

著者は後に新聞記者となっただけあって文章はお上手です。

しかしこんな雑誌にちょろっと載っただけであろう文章まで収録しているとは……青空文庫恐るべし。

作品ファイル2

私の履歴書  日本経済新聞社

「私の履歴書」は日経新聞で人気の連載コラムで、起業、発明、発見などの偉業を成し遂げた偉人たちが月替わりで自分の半生をつづっています。日経新聞読者にとっては唯一、心から楽しんで読める貴重な記事とも言えるでしょう。なんと1956年から連載しているらしいです、すごい。

青空文庫で読めるのは2人分で、今回はそのうちの一人、井上貞治郎さんのものをご紹介します。ちなみに青空文庫では著者名は「井上貞治郎」ではなく「日本経済新聞社」で掲載されているのでご注意ください。

さてこの井上氏、最初に何を成し遂げた人なのかを申し上げておきましょう。段ボールなどを取り扱う大企業、レンゴー(株)の創業者です。そんな偉業を成し遂げるのだから、若いころからさぞかしすごい人物だったに違いない……

その予想はある意味当たっています、井上氏の若いころは本当に「すごい」。

あらゆる仕事を3日以内でやめ、思い付きで日本をあちこち引っ越してまわり勢い余って満州へ。自分の身を守るためなら人買いですら利用し、挙句の果てに海千山千の悪党であるはずの人買いにすら気味悪がられる始末。

ろくでもない生活を送っていたようですが、ずば抜けた行動力で落ち込む暇すらない井上少年。こんなに物語の主人公向きの性格もないかもしれないという荒唐無稽さでした。しかし人を惹きつける魅力もあって、気が付けば「負けるな!」と応援しています。

そんな風来坊・井上氏がいかに立身出世するのか!? 心配しかかけない息子を持った親の気持ちで読んでみてください。

作品ファイルその3

仁王門  橘外男

これだけは言っておきましょう、本作、掘り出し物です!

青空文庫って一生かかっても読み切れないほどの作品が公開されているんですが、数が多いだけに中には「うーん……イマイチ」というものも相当数存在しています。その中で「これは!」と思う作品を見つけ出すのが楽しさの一つでもあるんですが、この作品はまさにそれ。ダイヤモンド発見した気分です。

冒頭がまず印象的。事件現場に残されていたらしき一冊のノートを刑事が読み始めるのですが、それは1人の男の独白文でした。遺書なのか日記なのか手紙の下書きなのか……ミステリアスな演出に惹きつけられます。

ノートの書き主である男は出世の道も、美しい女性との結婚も約束された身。バラ色の未来が待っていたのですが、ふと立ち寄った故郷で待ち受けていたのは思いがけぬ母の死と、それにまつわる黒い噂でした……

ミステリであり、家族愛の話であり、差別や純愛の話であり……好奇心、憤怒、悲しさ、やるせなさ……とにかくいろいろな感情を引き出される良作でした。中編くらいのボリュームでこれはすごい。

作品ファイルその4

貝殻  芥川龍之介

超短い短編のことをショートショートと呼んだりしますが、『貝殻』はそのショートショートの詰め合わせです。中にはショートショートとも呼べない、数行で終わってしまう作品もあるんですが中身はぎゅっと詰まってます

人の感情、世界の切れ端、そんなものを表現した15作品が揃っているのですが、表現の仕方が素晴らしいんです。

伝えるのに必要な言葉をギリギリまで削って厳選してあります。だからこそ超短文でも作者の意図が伝わるし、分かる! 芥川龍之介の文章力・表現力の極みを堪能できました。

長文はどうしても苦手、いわゆる古典作品は苦手、という方にもこれなら簡単に、そして面白く読めると思います、おススメ!

ちなみにタイトルの『貝殻』という作品は登場しません。短編集のタイトルが『貝殻』とのことのようです。小さい貝の中に感情や世界の断片をぎゅっと閉じ込めた、それだけで完成された世界……というようなイメージでつけられたタイトルかなと思うのですが、どうでしょう?

作品ファイルその5

仮面  正宗白鳥

正宗白鳥は明治から昭和にかけて活躍した小説家です。

『仮面』は主人公の男が爆発しそうなくらいイライラとした様子で家を飛び出すところから始まっています。

男はそのまま、普段は進んで話にも行こうとしない妹に会いに行き、イラだったまま冷たい言葉を彼女に投げかけます。

しかし、男がいったい「何に」そんなにイラだっているかは、なかなか明らかになりません。

男が何にそんなにイラだっているか……という好奇心で読み進めていくことになるのですが、その過程で分かってくるのが男の抱えている「闇」です。

甘え、不安、寂寥、孤独、そして依存。

男のうちに潜む複雑な心情が息を詰めるように迫ってきて、短編ながら心かき乱す傑作です。

作者の正宗白鳥は自身も幼少期から虚弱体質で、生への不安を感じながら生きていたような人で、その不安定な心持ちが本作にも色濃く反映されています。

文豪一流の心情描写をぜひ堪能してみてください。

作品ファイルその6

正午の殺人  坂口安吾

坂口安吾は多くの傑作を遺した小説家です。

『堕落論』『桜の森の満開の下』『白痴』『不連続殺人事件』などなど、彼の代表作は数多かれど、ここに名前をあげたタイトルすべて、ジャンルが違います。実にいろいろな作風を書きこなした大文豪と言えるでしょう。

今回ご紹介するのは短編のミステリです。

ある昼下がり、編集者が作家の家に原稿をもらいに行くところから話が始まります。ところが原稿をもらってからすぐ、作家が殺されてしまいます。

犯人は誰なのか? 電話の謎、聞こえなかったピストルの音……殺人事件を彩る要素が短い文章の中にもしっかりと練りこまれていて、ちゃんとした推理小説となっています。

「青空文庫には小難しい古典作品ばかりなのでは?」と敬遠されている方もいらっしゃるかもしれません。しかし、中にはミステリや群像劇といったエンタメ作品も多いのです。

サクッと読める本作『正午の殺人』のような作品もたくさんありますのでのぞいてみてくださいね。

作品ファイルその7

老工夫と電灯  小川未明

作者は「日本児童文学の父」とも言われた人で、今回ご紹介する作品にも副タイトルとして「大人の童話」という言葉が入っています。

お話は1人の老境にさしかかった男がトンネルの中へ入って行くところから始まります。男は人生に疲れ切っており、ふと、トンネル内の電灯に目を向けます。

老工夫

「何の変化もなく、光ってさえいればいい電灯になりたい……」

と、少々、いやかなり悲観的になっているようです。

そんな男と電灯の間に、小さな事件が起きるのですが……

「大人の童話」と銘打っているだけあって、ごく短い作品ながら、いろいろな人生訓を得られる作品だったと思います。

どんな人生訓を受け取るかは読んだ人次第だと思いますが、私は、というと「この世で変化のないものなどない」というものでした。変わっていく中に身を置くしかないのよね……

あと、「この老工夫はたとえどこにいても自らの望む平穏を得ることは難しいだろう」とも思いました。

童話とはいえ、大人向けだけあって手厳しい作品だったなと思います(笑)

作品ファイルその8

逗子物語  橘外男

様々なジャンルの作品が収録されている青空文庫より「怪談」をご紹介です。

妻の死をきっかけに、都会から逗子へとやってきた男。彼は仮の住まいからほど近い、近所の人もあまり寄り付かないような寂れた寺に散歩に通うようになります。そこで墓参りに訪れている奇妙な3人組に出会います。

老人、女中、そして美少年の3人組で、特に美少年はこの近隣では珍しいような洗練された雰囲気を持っています。

主人公の男

彼等は一体何者なんだろうか……?

好奇心を感じた男は世話になっている夫妻に心当たりを尋ねてみるのですが……

その後、この男がどうなるかはぜひ読んでみてください。男が興味を持ったように、3人組も、中でも美少年が男に強く関心を持ったようで、いろいろと距離が縮まっていく展開は、古き良き日本の怪談を堪能させてくれました。

……ただし、それなりに怖いところもありますので要注意です

作品ファイルその9

似而非物語  山本周五郎

作者の山本周五郎は現在でも文学賞にその名を残した大文豪の一人です。長編も面白い作品が多いのですが、本作品は短めな上に、杢助というユニークな主人公が辿る奇跡を追うユーモアあふれる作品になっていて、おススメです!

タイトルの読み方ですが「えせものがたり」と読ませるようです。

本作品の主人公は、山奥の村に生まれた杢助(もくすけ)という男で、彼は超がつく面倒くさがり屋。勉強・遊び・家の手伝い・仕事はもちろん、美女からのお誘いまで「めんどくさい」の一言で断る始末。そんな彼が村を出て、何十年後に帰郷した後のお話が語られます。

きっかけは杢助が出会った一人の達人と呼ばれる剣の使い手。引退しても隠居しても、全国から教えを乞う侍たちがやってくることに辟易した達人は、杢助に入れ替わりを提案します。

杢助は「ただ寝ておればいい」という達人の言葉を真に受けて入れ替わりに同意します。しかし、杢助を達人と信じてやってくる客人たちは思いのほか厄介で……

しかし、この面倒くさがり屋、奇跡を起こします。

読みやすいのでぜひ手に取ってみてくださいね。

ちなみに、文学賞の「山本周五郎賞」受賞作品はエンタメ小説として面白いものが非常に多いです。興味のある方は検索してみてください。私のおススメは『ぼっけえ、きょうてえ』(岩井志麻子)、『夜は短し歩けよ乙女』(森見登美彦)です。

作品ファイルその10

物凄き人喰い花の怪  国枝四郎

バルビューさんの亡霊が市中へ出るという噂が、誰からともなく云い出された。

本文より引用

こんな印象的な出だしから物語は始まっています。

ここからお話はスペインはマドリッドで起きた奇妙な連続行方不明事件の解明へと動いていきます。

作者は怪奇小説や探偵小説の書き手として知られる国枝史郎。

知名度では江戸川乱歩らに劣るかもしれませんが、この人の作品は面白いんです。

ファンタジックで、どこからか奇妙な魔物が襲い掛かってくるような危うさを含んだ世界観は独特な魅力があります。

作品は長編が多いですが、今回ご紹介した『物凄き人喰い花の怪』は短編ですぐに読み終われる分量です。

国枝史郎の怪しき世界の入口を覗いてみるのにピッタリです。

作品ファイルその11

臨終まで  梶井久

タイトル通り、1人の死にかけている人間が亡くなってしまうまでのわずか数日の様子のみを記したエッセイです。

死にかけているのは1人の若い男性。

作者はその母です。

こう書くと、息子を失いつつある母の悲しみや絶望にあふれた文章なのかな? と思われるかもしれません。

しかし、本文が表現しているのは冷静な観察です。

それも文体はごく淡々としており、医者に見せても「症状の進行具合がよくわかる」と言ってもらえそうなほど。

悲しみをこらえた上でのこの文章力、作者はタダモノではない!

作者の苗字でピンときた方もいらっしゃるかもしれませんね。

梶井久さんは若くして亡くなった天才作家・梶井基次郎のお母さまです。

さすが、大文豪の母。梶井基次郎の文才はお母さま譲りだったのかも。

作品ファイルその12

健康を釣る  正木不如丘

「釣りを科学する」

副タイトルをつけるならこんな感じでしょうか。

釣り=健康にいい、を熱く語っています。

しかも、筋肉の動きがとか、疲労物質がどうの~と、妙に科学的なんですね。

それもそのはず、著者の正木不如丘(まさき・ふじょきゅう)は医師でサナトリウム病院の院長にまでなった人物です。

そろそろ健康が気になる歳になってきた私は本文を読んで無性に「釣りに行きたい!」気持ちにさせられました。

青空文庫を共に釣りをするのもいいかもしれませんね。

作品ファイルその13

幸福の彼方  林芙美子

男女の緊張の出会い、お見合いのシーンから物語は始まっています。

めでたくお見合いは成立し男女は結婚することになるのですが……幸せな日々に影を落としたのは「とある秘密」でした。

作者・林芙美子は自身の波乱万丈な人生をもとに『放浪記』『浮雲』といった極貧に苦しむ赤裸々な生活模様を表現した小説家です。

代表作は苦しいながらも生きる希望を失わない灯火のような作風なのですが、本作は幸福の中に不幸の種子がぽとり、と落ちたような感覚に仕上がっています。

本作はごく短いので男女の行く末がどうなるか、未知数のところで終わっていますが、不幸の種子を宿した男女が今後どうなるか、考えてみるのも面白いです。

作品ファイルその14

方子と未起  小栗虫太郎

小栗虫太郎といえば日本三大奇書の一角を占める『黒死館殺人事件』が超有名です。

しかしこの作品、とっても読みづらいんですよね……安易におススメできない魔物の住む密林みたいな作品なんです。

そこで、小栗虫太郎の他作品で読みやすくて短めのものを!と思い、探し出したのがこちら『方子と未起』です。

お話は1人の少女が母を殺され、そしてまた自分も殺されようとしているのではないか……? という疑いも持つところから始まっています。

小栗虫太郎独特の大仰な言い回しや奇術的なトリックを短文で楽しめる内容です。

作品ファイルその15

監獄部屋  羽志主水

北海道の過酷な工事現場が物語の舞台です。

奴隷扱いを受けている労働者たちは、行政の監査が入ると聞いて「これでお上に劣悪な環境を訴えられる」と歓喜します。

さて、労働者たちの訴えは通じるのでしょうか……?

お話の結末は意外な方向へ向かいます。

作者・羽志主水は寡作な作家で、本作が代表作となります。

同時代の作家たちから『監獄部屋』は絶賛されたそうです。

本作は一見、プロレタリア文学のようですが、最後まで読むと意外な仕掛けに驚かされます。

プロレタリア文学には面白い作品が少ないので、本作は貴重な1作です。

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