シグマフォースシリーズの前日譚はこの順番で読みましょう(ウバールの悪魔)読書感想
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ウバールの悪魔 ジェームズ・ロリンズ 竹書房文庫
殺しの訓練を積んだ科学者たちが工作員として、
地球規模の災害やテロの防止に活躍するシグマフォースシリーズの
前日譚にあたる作品です。
主人公はシグマフォースシリーズでもおなじみのペインター・クロウ。
シリーズ本編の主人公・グレイの上司であり、シグマの司令官になっている人物です。
作者自身の手によるとはいえ、スピンオフ的作品なので、
過去に他の作品で肩透かしを食らったことがあるんだよな…
という苦い思い出がある方もいらっしゃるでしょう(私もあります)。
しかし安心してください。
『ウバールの悪魔』ではシリーズ本編に見劣りすることなく、
それどころか一部本編をしのぐほどのクオリティをみせています。
私がシリーズ本編と比べても「これは圧倒的……!」と
作者の描写力に感服したのが、
大自然の脅威、巨大竜巻との戦いを描いたシーンです。
小説というあくまで「文字」だけを武器にした媒体でありながら、
シグマフォースシリーズ通して、最大級の自然大災害に襲われる様子を
精密に、大胆に、表現しつくしています。
絵や映像だったらもっと簡単に表現できるのに……!
文章を書くときに、誰しもが一度は思ったことのあるであろう、
このジレンマを、作者は渾身の表現力で超越することに成功しています。
もちろん、アクションシーンや歴史と科学に基づいた謎解きも満載で、
シグマフォースシリーズのファンなら読むべき面白さだと保証できます。
この作品は、母国アメリカではシグマフォースシリーズ第1作の
『マギの聖骨』よりも前に出版されており、
日本ではシリーズ4作目の『ロマの血脈』の後に出版されています。
こうなってくると、悩むのが 「読む順番」 です。
基本的には出版された順番に読めばいいじゃない、というのが
私のスタンスですが、今回は「この順番がおススメ!」と
思うところがありましたので、それについて書きたいと思います。
目次 1.『ウバールの悪魔』を読むべきタイミングとは
シリーズ1作目『マギの聖骨』の後に読んでほしい理由
シリーズ2作目『ナチの亡霊』の後に読んでほしい理由
少なくともシリーズ4作目『ロマの血脈』の前には読んでほしい理由
2.おおまかなあらすじ
1.『ウバールの悪魔』を読むべきタイミングとは
結論から言うと、
シリーズ第1作目『マギの聖なる骨』の後、
シリーズ第2作目『ナチの亡霊』の前、
がおススメです。
少なくともシリーズ第4作目『ロマの血脈』の前までには
読んでほしいと思います。
理由もいくつかあるのですが、
多少、『ウバールの悪魔』を含めた、
シリーズ4作目までのネタバレになる部分もありますので
理由を読む時はご注意ください。
シリーズ1作目『マギの聖骨』の後に読んでほしい理由 シグマフォースシリーズお馴染みのあの組織
シリーズ1作目『マギの聖骨』で、
ヒロイン・セイチャンが所属するギルドという
世界各国に工作員を配置し、金や権力、武力の臭いがすると
ハイエナのように漁りに来る危険な組織が出てきます。
その後も、シグマフォースシリーズを通して、主人公たちを
苦しめてくる宿敵ともいえる組織ですが、
このギルドが『ウバールの悪魔』にも登場します。
もちろん、主人公・ペインターの敵として立ちふさがるのですが、
ただ、その登場の仕方がかなりあっさりしていて、
ギルドがどれだけ危険な存在なのか、
『ウバールの悪魔』単体だとわかりづらいです。
ギルドの危険性をしっかり理解した上で読んだ方が、
ペインターの置かれている状況や危機感が
より迫って感じられて『ウバールの悪魔』の面白さが増すと思います。
これが、『マギの聖骨』の後に読むことをおススメする理由です。
シリーズ2作目『ナチの亡霊』の後に読んでほしい理由 現場に出てきちゃう司令官・ペインター
シグマフォースシリーズ本編でも活躍の場がたくさん用意されている
ペインターですが、シリーズ本編での彼の役職はあくまで「司令官」です。
司令部に閉じこもって、隊員たちを指揮したり後方支援したりするのが
役割の人、のはずなんですが、
彼は度々、隊員たちと同じように現場に出向いています。
「指令室に閉じこもってるのなんて性に合わない!」
「司令官でも、俺のやり方でやるぞ!」
と言う感じの、現場に出てきちゃうタイプの上司なんですね。
「出てきちゃって大丈夫なのか?」それの是非はさておいて……
そんな 「現場に出てきちゃう司令官」ペインターが
いかにして作られたのかが、わかるのが『ウバールの悪魔』です。
元々隊員の一人で、しかも現場でこんなに生き生きと活躍してたら、
そりゃ指令室に閉じこもるのはつまんないでしょうね……
と、納得できるものがありました。
ペインターが本編で第2の主人公ともいえる役割で大活躍するのは
第2作目『ナチの亡霊』です。
『ナチの亡霊』の前に、『ウバールの悪魔』を読んでおくと
ペインターのことを事前によく知ることができるので、おススメです。
また、ペインターは『ウバールの悪魔』、『ナチの亡霊』で
恋に落ちそうになる描写があるのですが、
その恋模様の結末からすると、
やはり『ウバールの悪魔』→『ナチの亡霊』のほうが、
読後感に優しい、と思います。
少なくともシリーズ4作目『ロマの血脈』の前には読んでほしい理由 とある人物の未来について
『ウバールの悪魔』、シリーズ本編ともに登場する人物で
シリーズ4作目『ロマの血脈』にて衝撃の未来を迎える人がいます。
その人とペインターとの関係が、一番丁寧に書かれているのが
『ウバールの悪魔』です。
ペインターにとって、その人がいかに大事な位置を占めているのかを
知っていたほうが、『ロマの血脈』の衝撃度も増しますし、
その後のペインターの行動にも説得力がより感じられると思うので、
ぜひとも『ロマの血脈』の前までには読むことをおススメします。
ここまでが大体の読む順番についての理由です。
他にも、細かいことを言えば、作家も執筆が後になればなるほど、
経験値を積んで文章やプロット運びが上手くなるという傾向にあり、
それはジェームズ・ロリンズほどの筆達者でも同様です。
執筆順で言えば一番最初になる『ウバールの悪魔』は、
やはりその後に執筆された『マギの聖骨』以降の作品と比べると、
文章は多少ぎこちなく、プロット運びも違和感を感じる部分があります。
(あくまでちょびっとですけどね!)
この違和感は、本編シリーズを先に読めば読むほど、
強くなっていく類のものなので、
『ウバールの悪魔』を読もうと思っている方には、
「できるだけ早く消化したほうがいいよ」
「あまり積読にしておかない方がいいよ」
と、アドバイス申し上げます。
結論をもう一度言うと、
シリーズ第1作目『マギの聖なる骨』の後、
シリーズ第2作目『ナチの亡霊』の前、
がおススメです。
少なくともシリーズ第4作目『ロマの血脈』の前までには
読んでほしいと思います。
2.おおまかなあらすじ
『ウバールの悪魔』のおおまかなあらすじをご紹介します。
ロンドンの大英博物館で大爆発が起こった。
学芸員として働くサフィアは博物館に駆け付け自分が担当するブロックの
展示物がほぼ全壊していることにショックを受ける。
そこに親友であり、展示物の所有者でもあったキャラがやってくる。
キャラは、爆発が起こった時の映像を確認し、
過去に自分の父親が砂漠で巻き込まれて行方不明になった時の
爆発現象との類似点を見つけ、父親の死の謎が解けるのでは?
と博物館で起きた爆発の原因究明に乗り出す。
サフィアたちは、爆発の中心部にあった像の中に
鉄製の心臓を見つけた。
心臓には古代都市「ウバール」の名が刻まれており、
キャラはウバールに調査隊を派遣することに決める。
調査隊の隊長にはオハマというサフィアの元婚約者を指名する。
一方、シグマフォースも大英博物館で起こった爆発に興味を持ち、
爆発を引き起こした物質が「反物質」であることを突き止める。
「反物質」は古代都市「ウバール」に鉱脈のように眠っていると考えられ、
もしそれらが不安定になり、博物館と同じように爆発を起こせば、
地球が壊滅的な打撃を受けてしまう。
シグマは危機的状況を回避するために、キャラの調査隊に
ペインターを隊長とする隊員を送り込むことにする。
キャラ、サフィアと合流し、オマーンへ向かうペインターたちは
襲撃を受ける。
襲撃をしてきたのはギルドの一員であり、ペインターの
元相棒・カサンドラだった。
ギルドも「反物質」を兵器として利用するために狙っているらしい。
無事オマーンへはたどりついたものの、ギルド以外にも、
ペインターたちを狙う第3のグループの存在が明らかになる。
最初の目的地であるサラーラへ向かう船の中で、カサンドラの襲撃を受け、
鉄の心臓とサフィアをカサンドラに奪われてしまうペインター。
サラーラからエイティン山へ、古代人が隠したウバールへと導くヒントを
見つけながら、カサンドラとペインターの追いかけっこが始まる。
エイティン山でペインターはサフィアを奪還しかけるが、
キャラと共に、サフィアは第3のグループ・謎の女たちに
連れ去られてしまう。
ペインターは、カサンドラを止めるため、サフィアたちを救うために、
ウバールへと向かう。
「反物質」の鉱脈を巡って、すべての決着はウバールの地でつけられることになった。
そしてウバールの地では、数々のアクションシーンはもちろん、
謎解きあり、大規模な自然災害のド迫力シーンもあれば、
ロマンチックな恋愛シーンもありで、
いろいろとてんこ盛りなクライマックスを迎えることになります。
どんな決着がつくのか、それはぜひ読んで確かめてみてください。
文章だけでインディ・ジョーンズのような壮大な冒険活劇を味わえますよ。
いかがでしたでしょうか?
スピンオフ作品はどこで読もうか悩ましいものがありますが、
少しでも参考になれば、と思います。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
よろしければ、感想など、コメントに残していってくださいね。
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