読書感想|ある意味すごい?赤裸々に書きすぎな私小説(泡鳴五部作、岩野泡鳴)
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泡鳴五部作 岩野泡鳴(いわのほうめい) 青空文庫で無料公開中
19世紀末から20世紀初めに活躍した詩人、作家です。
泡鳴五部作はその名の通り全部で5部に分かれており、
読み通すとかなりボリュームのある作品です。
その内容はというと、全編、ものすごいダメ男の日々が
描かれています。
仕事もまともにせず、女性関係にもだらしなく、
友人知人からは借金をしまくり……
しかし、このダメ男、ちゃんと現実にモデルがいるんです。
それでは、そのモデルとなった男の生涯からご紹介していきましょう。
1.岩野泡鳴の人生
岩野泡鳴は1873年、現在の兵庫県に生まれます。
小学校を卒業後、大阪の中学でキリスト教の洗礼を受け、
その後父親の都合で上京、明治学院で1年学んだ後、
専修学校(現在の専修大学)を卒業します。
この時に学んでいたのは法学と経済学でしたが、
卒業後は詩や小説を書き始めます。
1895年、最初の妻・幸子と結婚し、離婚するまでに四男二女をもうけます。
英語教師をする傍ら、作品を書き、彼独特の文学論である
評論『神秘的半獣主義』を発表します。
下宿を経営していた父が死去し、その跡を継ぎますが、
実際の経営は妻任せにしたいたようです。
妻とは不仲であり、田舎から上京してきたしも江という女性を
家にひきとり愛人関係となります。
しも江とは別れる別れない、他の男と浮気したしない、と
いざこざが絶えず、一度は服毒自殺騒ぎにまで発展します。
その後、妻やしも江から逃げるように、新事業・カニの缶詰工場を
経営しに、樺太へ向かいますが事業は失敗。
失意のままだらだらと過ごしていた北海道にまで
しも江は追いかけてきて、心中しようとしますがこれも失敗。
二人は上京しますが、上京途中で別れを選択します。
その後、女権運動家である清子、筆記者である英枝と妻を
次々と変えつつ、愛人・郁子も作り、生涯を通して
女性との乱脈した関係はつきませんでした。
1920年、腸チフスで入院中に死去しました。
2.泡鳴五部作のモデルとは
ここまで読まれて、勘のいい方は察せられたかもしれません。
泡鳴五部作の主人公・超ダメ男のモデルは作家自身、
泡鳴、その人になります。
具体的には、彼の生涯のうち、
妻と不仲になり、しも江を愛人にした辺りから、
北海道まで追いかけてきたしも江と完全に縁が切れるまでの
時期が描かれています。
あらすじ=泡鳴の人生、といってもいいくらい、
赤裸々に自分のダメっぷりが丁寧に書き込まれています。
私小説と言われる、自分の体験を小説の形に落とし込んだ作風は
よく見かけますが、それにしてもある意味すごい。
よくぞここまで自分を貶めて書いたものだと感心します。
普段から奇妙な言動が目立っていたと言われている泡鳴は、
その作風も変わっていて当然なのかもしれませんが……
読んでいて楽しい気分になる作品ではないかもしれませんが、
なかなか切れない男女の縁や、ふとした瞬間に見せる愛情のかけらなど、
人間臭さが前面にでていて、ところどころ共感してしまう
不思議な作品でした。
そして、岩野泡鳴には、彼の文学論を表明した『神秘的半獣主義』という
評論があります。
私はまだ未読なのですが、難解な言葉で
霊肉一致、刹那主義などについて論じてあるそうで……
読まなくとも、なんとなく泡鳴五部作から感じられる
彼の生き様から、主張の内容を察せられる気がしています^^;
『神秘的半獣主義』も青空文庫で無料公開中です、
私もそのうち読んで、感想をあげようと思いますが、
興味のある方はぜひ紐解いてみてください。
いかがでしたでしょうか?
岩野泡鳴は、以前読んだ小山清の私小説の中に名前が登場していたのを
みかけて、読むきっかけとなりました。
田山花袋らと並んで、その時代の文学シーンを彩った存在ですので、
青空文庫好きには一読の価値はある作家だと思います。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
よろしければコメント等、残していってくださいね。
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