読書感想|太宰治好きなら読んで損はしません(メフィスト、小山清)
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メフィスト 小山清 青空文庫で無料公開中
作者の小山清は太宰治の門人の一人で、
戦争中に太宰が疎開している間、留守宅を守っていたのが
小山清です。
『メフィスト』は、小山清が留守宅を守っている折に、
起こった珍事を小説化したものです。
本当にこんなことが起こったのか?と思うほど
ユーモラスな話で(事実はもはや確かめようもないですが)
作品単体でも十分に楽しめます。
その上、師匠である太宰治のことを意識しまくって書いている文章なので、
弟子から見た太宰治像が見えてきます。
太宰治好きな人は一読の価値があると思いますよ。
それでは、まずは簡単なあらすじからご紹介します。
戦争中に太宰治宅の留守を守っていた小山清は、日々、太宰を目当てに
訪ねてくるお客にうんざりしていた。
自分も曲がりなりにも文士であるのに、訪ねて来られるのは太宰のみ。
しかも、訪問客には女性が多いから余計に面白くない。
特に今日は、米の配給日だというのに、先方の手違いだとかで
小山だけは米を受け取れなかった。
ますます、いじけた小山はあることを企む。
どうせ太宰のことなど、訪問してくる客はよく知りもしないのだ。
ならば、自分が太宰の振りをしてもバレないのでは?
小山はその時訪ねてきた美人に太宰治として会うことにした。
美人は小山を太宰と思い込み、熱心にメモなどとりながら
質問し、話を聞いてくれる。
美人なうえに話しやすい女性を前にして、
小山も調子に乗って、太宰ならどう答えるかを考えつつ、
回答していく。
女性から「太宰さんは写真よりも実物の方が素敵ですね」
などと言われて舞い上がるのであった。
そして女性が帰るとき、これは雑誌の取材であり、
今回の会話は纏めて来月号に掲載されると、爆弾発言をする。
大いに慌てた小山は、「太宰先生に破門されてしまう!」と
自ら墓穴を掘るのだった。
師匠の留守宅で何をやってるんだ笑、という話ですね。
小山が墓穴を掘ったところで小説は終わっているので、
騙されていたと分かった美人記者がどう反応したかは
想像するしかありません。
たぶん、爆笑して帰ったのではないか…と私は妄想しましたが、
どうでしょうか?
小山は留守宅を任されるほどなので、門人の中でも
信頼されていた人なのかもしれませんが……
太宰が知ったらどう反応するか、これも想像してみると面白いです。
この話を読むと作者の小山清という人は愛嬌のある
面白い人、という印象ですが、その人生はなかなか
波乱万丈です。
1911年、生まれは新吉原で、実家は貸座敷業を営んでいました。
学校を出た後、洗礼を受けたり、母の死と共に家族が離散したりと
落ち着かない人生を送ります。
島崎藤村の紹介で日本ペンクラブの書記にもなりますが、
公金を使い込み、それがバレて収監されてしまいます。
その後、太宰の門人となり、留守宅を任され、
その時のことを小説化したのが『メフィスト』ですね。
戦後は炭鉱夫として働きますが、その間に師匠である太宰が死に、
その頃から自身の原稿が日の目を見始めます。
『メフィスト』とは全く作風の違う『落穂拾い』などの
私小説で作家としての地位を築き、芥川賞候補にも何度か
選ばれます。
結婚もし、やっと人生が落ち着いたか…?というときに、
大病を患い、妻の収入を頼りに生活を送り、
妻がノイローゼで自殺した数年後、1965年に急性心不全で
亡くなりました。
最後に、小山清の代表作である『落穂拾い』もご紹介しましょう。
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『落穂拾い』はユーモラスなメフィストとは違い、
透明感のある文章で、日常の心の揺れ動きを繊細に表現した作品です。
古本屋を営む少女と知り合い、その子との交流や健気に働く様子をみて、
恋に近いような、尊敬に近いような、清らかな好意を抱く主人公の
心情が見事に表現されています。
『落穂拾い』も『メフィスト』とは全く違った魅力を持つ作品ですので、
ぜひご一読してみてください。
いかがでしたでしょうか?
同じ作家でも全く毛色の違う作品を書くあたり、
小山清は太宰と似ている気がします。
太宰も『走れメロス』と『人間失格』では全然
作風が違いますもんね……
弟子は師匠に似るもんなんでしょうか?
よろしければ、感想やご意見など、
コメントに残していってくださいね。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!