ここまで読んできてよかった……最終巻はシリーズ最高傑作!『心霊探偵八雲12 魂の深淵』読書感想
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心霊探偵八雲12 魂の深淵 神永学 角川文庫
心霊探偵八雲シリーズ、最終巻です。
前巻の『魂の代償』の衝撃のラストから、一体その後どうなったのか……すべてが明らかになります。
宿敵・七瀬美雪との対決や春香の安否、そして八雲と春香の恋の行方も、全てに決着がつきます。
最終巻ということで収束に向かって一直線、かと思いきや怒涛の展開の連続でした。特に序盤は感情が追い付かないほど。
謎解き要素にしろ、感情の揺さぶられ度にしろ、最終巻にしてシリーズ最高傑作だと思います。
それでは、あらすじと感想をまじえながらご紹介していきましょう。
1.おおまかなあらすじ
まずは簡単なあらすじからご紹介しましょう。
前作『魂の代償』の最後で、大変なことになってしまった春香。彼女は一命をとりとめはしますが、意識不明の重体に陥ってしまいます。このままで脳死判定もありうるかもしれない……八雲はその事実にうちのめされて、誰に行く先を告げることもなく孤独に春香や後藤たちの元から消え去ってしまいます。
失意の八雲に連絡をしてきたのは宿敵であり、全ての悲劇の元凶である七瀬美雪。彼女は散々八雲をいたぶっておきながらまだやりたりないようで、彼にゲームを仕掛けるような口調でこう言います。
「始まりの場所で待ってる」
春香を失ったと思い詰めた八雲に残されたのは復讐心のみ。彼は七瀬美雪の残酷なゲームにのり、彼女を追いかけます。
一方、後藤たちは八雲と春香を心配しつつも、何をすべきかわからず戸惑うばかり……しかし、そんな時、各々に気になる情報を入手します。
それらの情報の示す先は……七瀬美雪の過去でした。
2.もうやめてくれ、な序盤
前作では春香の身に悲劇が起こり、本作はその直後の話から始まっています。春香は必死の救助と救命のかいなく意識不明の重体……この時点で「ウソでしょ!?」な感じです。これまで何度となく危険なめにあってきた春香。それでもほとんど怪我もせずに生還してきていたのに、ここにきて大ピンチです。
これまでシリーズを明るく照らしてくれていたヒロインがいきなり死にかけてショックなのは私だけでなく、春香のことを誰よりも想っていた八雲が一番うちのめされています。
春香と出会ってから、彼女の明るい光に照らされて孤独から少しずつ歩み出ていた八雲でしたが、ここで一気に逆戻り。今や親代わりと言っていい後藤からの連絡にも応えようとしません。
そして、ここから感情も追いつかないほどの怒涛の展開が始まります。
失意のうちで「何か」を決意する八雲。何かは明示されませんが嫌な予感しかしません。
それに追い打ちをかけるように、サディストっぷりを遺憾なく発揮する七瀬美雪。彼女の「とある行動」とそれによって起こった「一つの現象」に八雲は最後に繋ぎとめていた感情のよりどころを完全に失ってしまいます。
自暴自棄になった八雲と、そこに運悪く出くわしてしまったのが石井です。八雲は石井に、これまでの彼からは考えられないような振る舞いをします。
これには本当にショックでした。口は悪いけど理性的で暴力を嫌っていた八雲なのに……春香の存在の大きさを改めて感じるとともに、八雲がこれからどうなってしまうのか、気が気ではありません。
こんな自暴自棄な八雲、信じられないし見たくなかった、もう彼を傷つけるのは止めて!
そんな目を覆いたくなるようなシーンでした。このまま八雲は闇落ちしてしまうのか!? しかし、そこから物語は別の展開を見せていきます。
3.シリーズ最大の謎、解ける
失意に沈んだ八雲はみんなの前から完全に消息を絶ってしまいます。当然、後藤たちは八雲を案じて彼を取り戻そうと必死になるわけです。そこに、序盤に伏線が張られていたいくつかの心霊現象が重要な手掛かりとなってきます。
その手掛かりというのが、宿敵・七瀬美雪に関するもの。
八雲の今の心情を考えれば、彼が七瀬美雪を追いかけている可能性は高い。つまり七瀬美雪を追って行けば八雲を保護できるかもしれない!
後藤たちは八雲を失意の底から救い出すために心霊現象について調査を開始します。それは図らずも、「始まりの場所で待ってる」という七瀬美雪のヒントを追いかける八雲の追跡行とリンクしていきます。
こうして八雲と後藤たちはそれぞれ別の視点から七瀬美雪を追いかけていくのですが、そのなかでシリーズ最大の謎が明らかになっていきます。
その謎というのが、「七瀬美雪とは何者なのか」というものです。
そう言えば七瀬美雪について分かっていることと言えば、幼いころは家族から虐待を受けていたこと、いつからか八雲の父と一緒にいたこと、とんでもなく歪んだ性格のサディストであること……くらいです。過酷な人生を歩んできたであろうことは想像できますが、具体的に彼女がどんな環境で育ってきたのか、実は謎でした。
今回の謎解きのメインは「七瀬美雪の過去」そのものです。
これもまた衝撃的な内容です。……なんというか、彼女もまた、可哀そうな女性だなと同情すらしてしまいました。もし彼女が別の家庭に生まれていたら、もし彼女が出会ったのが八雲の父でなければ、もし、もし……
そんなもしが重なっていけば七瀬美雪もまた、普通の女の子として生きる道もあったのだろうなと切なくなります。
彼女が最後にみせる慟哭も忘れられません。想像の産物とは思えないほど、彼女のこれまでの人生とそれによって作り上げられた性格や個性は真に迫ったものに感じられました。
4.そして2人は……
シリーズファンには寂しくもあり、「同時に待ってました!」という期待も高い最終巻。終わってしまうのに「待ってました!」とは? 待ってたのはもちろん、八雲と春香の恋物語の結末ですよね!
この2人、最初は春香の片思いが強かったのですが、シリーズが進むにつれて「これもう両片思いじゃん」と、「早く素直になっちゃえよ!」「もう付き合っちゃえよ!」状態になり、読者を悶えさせておりました(笑)
そのもどかしい恋の決着も本巻でやっと、やっとこさつくことになります。
長かった!!
本当に、よくここまで焦らしてくれたなあ(笑)
さて、どんな決着の仕方をしたのかは本文を読んでください。決着がつくまでにかなりハラハラドキドキさせられることかと思いますが、ここでは「読後感は良し!」とだけ言っておきましょう!
シリーズ本編の最終巻に相応しいフィナーレだったと思います。書いているうちに少しニヤけてきました。こういう時、リアルで語り合える友人がいないのは辛い(TuT) 「2人の恋路を見守ってきたよ」というこのブログを読んでくれているそこのあなた、少しでも思いを共有できればうれしいです。
いかがでしたでしょうか?
シリーズ最終巻は謎解きや展開の面白さも、表現の豊かさも、そして八雲と春香の恋路の決着も……とにかくすべてがシリーズ最高レベルでした! このシリーズを読んできて本当によかった、15年もの月日、作者の神永学先生は本当にお疲れさまでした、そしてありがとうございました!!
それではここまで読んでくださってありがとうございました。
よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。
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