たかがショーユ、されどショーユ、醤油を求めて三千里『異世界居酒屋のぶ四杯目』読書感想
こんにちは、活字中毒の元ライター、asanosatonokoです。
今回ご紹介する作品はこちら
異世界居酒屋のぶ4杯目 蝉川夏哉 宝島社文庫
異世界で日本の居酒屋を開いてみたらすごく繁盛した『異世界居酒屋のぶ』シリーズ4作目です。
毎度、居酒屋のぶの店内で繰り広げられるハートウォーミングな出会いと縁結びがほっこりとした気分にさせてくれるシリーズですが、今回は今までとは一味違っていました。
なんというか、世界観が広がった……という気がします。
居酒屋のぶが繋がっている異世界の事情がちらっと垣間見えたり、そもそも異世界と繋がっている不思議についての裏設定とか……読むとより、居酒屋のぶワールドについて具体的にイメージできるようになりました。
あと、読み終わると無性に卵かけご飯が食べたくなるかも(笑)
それでは内容をご紹介していきましょう。
1.ショーユを求めて
四杯目もいろいろな出会いがあり、ほっこりとしたエピソードばかりでしたが、今回、一番のキーワードとなったのは「ショーユ」です。
ショーユ、しょうゆ、醤油。
そう、日本料理には欠かせない黒い調味料ですね。
居酒屋のぶでも毎日のように使われていることでしょう。
ところでこのショーユ、日本では当たり前のように手に入りますが、異世界ではどうなんでしょう……?
実は、のぶが繋がっている異世界では今まで手に入らなかったそうなんですね。
(過去作のどこかにそんなこと書いてあったかも……私は覚えてないです(笑)
ショーユの原材料は大豆。大豆の子供は枝豆。そういえば1作目の最初に枝豆食べて感動する、っていうエピソードがありました。枝豆が珍しいならショーユはもっと珍しいのか。
このショーユがないと、のぶの味を真似ることは不可能!
日常で慣れ親しんでいるショーユが、異世界では超重要アイテムだった、というのが四杯目のメインになります。
異世界のどこかに大豆さえあれば……そうしたらショーユが日本経由じゃなくても手に入るようになるのに!
登場人物の一人がそんな野望を燃やし、ショーユを巡る出会い、縁結びが連鎖していき、思わぬ奇跡を引き寄せることになる、そんな展開が待っていました。
たかがショーユ、されどショーユ。
次はミソを追い求めるお話になるのかな?(笑)
2.どこにでもチャンスはある
今回の新キャラクターとして登場した人物の一人に、大商人がいます。
その名をロンバウト・ビッセリンク。
ビッセリンク商会という大商会を率いている一族の長男です。
ビッセリンク商会はのぶが開店している古都より西の方に流通網を持って大成功しており、この度めでたく古都にも支店を開くことになり、送り込まれてきたのがロンバウト、という設定です。
しかし、これまでのぶシリーズを読んできた方はご存知の通り、古都には古都で、ちゃんと流通網があり、そこのボスたちが商機を探すべく、のぶで話し込んだりしていましたよね。
つまり、のぶの常連さんたちにとって脅威的なライバルとなり得る存在が乗り込んできてしまった…! というわけです。
ああ、常連さんたちは大丈夫かなあ?^^;
しかし、このロンバウト、大物感たっぷりに登場しますが、可愛らしい部分もあるようで(笑)
このロンバウトと居酒屋のぶ、そして常連さんたちがどう絡み合っていくのか、このエピソードも楽しく読めました。
商人たちどうしのやり取りもそうですが、ロンバウトにとってはのぶで意外な出会いも待っていたようです。
こちらの意外な出会いは本当にいいエピソードで、心の底から「よかったなあ…!」と思えるものでした。
真面目に頑張っている人間が報われるドラマは、いいものですね。
3.世界は繋がっている…かもしれない
これまで『異世界居酒屋のぶ』シリーズでは「異世界で日本の居酒屋が開店したらどうなるか?」をテーマに主に居酒屋の中での出会いをメインに語られてきました。
だからなのか「そういえば居酒屋のぶがある古都って、異世界の中でどの辺にあるの?」「周辺にはどんな町や国があるの?」なんて疑問はあまり気にならなかったのですが、思いついてみればちょっと気になりますよね^^;
今までも他国や宗教関連で古都の治安が悪くなったりなど、異世界にもいろいろ事情がありそうなところま垣間見えたはいましたが……今回、やっと(?)「地図」が登場しました。
へえー古都ってこんなところにあったんだ。
東王国って古都と比べてこんな位置にあったの!?
……など、私のイメージしていたのとはかなり違っていました^^;
地図を見ると、今まで名前しか知らなかった東王国とかの場所もわかるし、どの辺りで国同士が隣接しててーとかわかっていいですね!
物語の世界の中に没入できる要素が増えて嬉しい限りです。
さらに、本作では異世界と日本が繋がる不思議について、ちょっとした裏設定のようなものを知ることが出来ました。
この裏設定が明らかになる過程にも一人の男の悲喜こもごもの人生が絡み合っていたりして思わず少し泣けてしまいました(::)
これまで一つの店と一つの町の中でこじんまりとおさまっていた物語の世界観がパーッと広がっていく冒険に出た巻です。
これから、もっと異世界の事情などを取り入れたお話が登場してくるかもですね、それも楽しみです。
いかがでしたでしょうか?
いつも通りの美味しくほっこりとしたのぶの雰囲気も楽しめつつ、より世界観を広げてきた4作目でした。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。