読書感想|今読んでも面白い昭和文豪、赤ひげ診療譚(山本周五郎)

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赤ひげ診療譚 山本周五郎 青空文庫

山本周五郎は読んだことがなくても、「山本周五郎賞」受賞小説は読んだことがある方は多いのではないでしょうか?

「山本周五郎賞」はエンタメ系作品に贈られる文学賞の一つで、個人的にはレベルの高い作品が受賞していると思っています。

賞の名前に冠されるほどの大作家ですが、今回ご紹介する『赤ひげ診療譚』が初読みでした。

せっかくですので、作品とともに、作家の生涯や、賞の概要をご紹介させていただきますね!

目次
 1.山本周五郎の生涯
 2.山本周五郎賞とは
 3.『赤ひげ診療譚』は優れた医療人情もの


1.山本周五郎の生涯

山本周五郎は1903年に山梨県で生まれ、一家は山梨県内、東京都、横浜市と転々とします。

そして横浜市内の小学校に通っている周五郎4年生の時、担任の先生より「お前は小説家になれ」と言われたのがきっかけで、周五郎は小説家を志し始めます。

小学校卒業後は東京都内に戻り、商店で徒弟として働き始めます。

この商店の名が「山本周五郎」という名前でした。

その後、企業就職し働く傍らで執筆をつづけ、『文芸春秋』に掲載された『須磨寺附近』が広く認められ、小説家としての出世作になります。

これが1926年の出来事で、日本は戦争を経験していく時代になりますが、周五郎は眼が原因で徴兵を免れ、執筆活動を戦時中も継続していきます。

数多くの雑誌に連載を持ち、真面目に作品を世に送り出していく周五郎は、1943年『日本婦道記』で直木賞に選ばれますがこれを辞退、今日に至るまで直木賞を辞退したのは周五郎のみです。

その後もいろいろな文学賞に選考されますが、ことごとく辞退していたようです。

山本周五郎の主な年譜はこの通りで、プライベートでは二度の結婚(一度目の妻とは死別)をし、2男2女の父でもありました。

どうやら相当の人嫌いであったらしく、文学賞辞退もそれが理由だったようです。

特に親しい文豪仲間もいなかったようですね。

この時代の文豪にしては大人しく羽目をはずすことのない作家だったようです。

なお、山本周五郎はペンネームであり、他にも多くのペンネームを使っています。

出世作である 『須磨寺附近』 が雑誌掲載されるときに出た住所に、当時勤めていた「山本周五郎店」の名がはいっており、それがペンネームと誤解された、というのが逸話として残っています。

2.山本周五郎賞とは

自身は文学賞を辞退しまくっていたのに、なぜ文学賞の名前に冠されることになったんでしょうか?

気になったので調べてみました。

山本周五郎賞の創設は1988年、対して周五郎の没年は1967年で、賞ができたことと本人の意向はまったく関係ないようです。

山本周五郎賞は文芸春秋社の直木賞・芥川賞に対抗して新潮社が開催したもので、1987年までの日本文学大賞の後継とされています。

山本周五郎の作風である大衆小説・時代小説にちなんで、受賞作品は優れたエンタメ性を持つ作品が選考されやすいです。

ちなみに、同時に純文学を対象とした三島由紀夫賞も創設されています。

山本周五郎の主な受賞作品はこちらです。

覘き小平次 京極夏彦(2003年)
夜は短し歩けよ乙女 森見登美彦(2007年)
ふがいない僕は空を見た 窪美澄(2011年)
残穢 小野不由美(2013年)
ユートピア 湊かなえ(2016年)

3.『赤ひげ診療譚』は優れた医療人情もの

日本の著作権は死後50年経つと無効になり、没年が1967年の山本周五郎の作品も青空文庫に掲載されています。

その中で私が読んだのは『赤ひげ診療譚』で、江戸時代中期の小石川養生所を舞台にした医療人情ものです。

山本周五郎の特徴である、大衆性が高い時代小説を味わえる作品になっています。

主人公は2人で、一人が小石川養生所の所長である新出去定(にいできょじょう)、新人の医者である保本登(やすもとのぼる)です。

新出去定
小石川養生所の所長。ぶっきらぼうで小石川養生所の診療・運営方針の一切を独断で決めることから暴君のようにも見えるが、本当は人情に厚く腕も確かな熟練医である。

保本登
長崎で医療を学んだ新人医。長崎留学中に許嫁のちぐさに裏切られ、留学後にはお目見医になるはずがそれも反故にされ小石川養生所で働くことになってしまう。
最初は去定に反抗するが、その人柄に触れていくにつれ尊敬し、小石川養生所で勤めたいと思うようになる。

『赤ひげ診療譚』は1話完結型の連作短編で全8話あるのですが、8話ですっきり終わり切っていないような感じでして、もしかしたら掲載紙の都合か何かで連載継続できなかったのでは?と思います。

とはいえ、内容はとても面白く、ドラマ化、映画化が繰り返されているのも納得の作品です。

ここでは第1話「狂女の話」のみご紹介します。

一応、この後はネタバレありになりますのでご注意ください。

『狂女の話』
長崎留学から江戸に戻ってきた保本登は許嫁に裏切られ、お目見医になる約束は反故にされで踏んだり蹴ったりの状況。
加えて勤務が命じられた小石川養生所は貧乏人が列をなした質素な診療所で、そこでは暴君めいた新出が君臨し、留学で得た知識も無条件で差し出せと言われ、腹が立った保本は、養生所の規則に反抗を見せ、酒に溺れていく。
養生所の一角には狂女・おゆみが監禁されており、その侍女お杉と親しくなっていく保本。
幾人もの男を殺したというおゆみに興味を持つ保本だが、診療は新出にしか認められておらず、お杉からおゆみの様子を聞き出そうとする。
そして、ある日、したたかに酔っぱらった保本に、お杉はおゆみの過去について話し出す。
おゆみは幼いころより男たちに弄ばれ傷つき、それが原因で男を殺しているのだという。
話している最中に自分の様子がおかしいことに気が付いた保本は、お杉と思っていたのが実はおゆみで、おゆみ用に調合されたきつい薬を酒とともに飲まされたことに気が付く。
自分を殺そうとするおゆみに抵抗もできずにいる保本。
そこに間一髪、新出が助けにやってきて、保本は命拾いする。
翌日、新出からどのように申し渡されるかとびくびくする保本だが、新出は特に何も言わず、いつも通りに保本に接する。
そのことに深く感じ入った保本は、これ以降、徐々に新出を尊敬していくことになる。

一見ヒールに見える新出が実は優れた人格の持ち主であり、まだ青臭い保本の視点を通して新出の器量を少しずつ知っていくことになる『赤ひげ診療譚』。

8話目では、新出は保本をお目見医にしようとしますが、保本は養生所に残ると決めます。

これ以降、保本がどう成長していくのか、苦境に幾度も立たされる養生所を新出は守り切れるのか、など気になるところで終わってしまうのです。

8話までしかないのが惜しいですね、もっと続きが読みたかった…!


いかがでしたでしょうか?

時代を感じさせない面白さと読みやすさを兼ね備えた『赤ひげ診療譚』、青空文庫に掲載されていますのでスマホやPCで簡単に無料で読めます。

ぜひ一度目を通してみてくださいね。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

よろしければ感想など、コメントを残していってくださいね。

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