爽快感No1、全国トップを目指す青春部活ストーリー『ラブオールプレー』読書感想
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今回ご紹介する本はこちら
ラブオールプレー 小瀬木麻美 ポプラ文庫
タイトルだけを見て、なんの小説かわかりますか?
経験者にはすぐに意味がわかるこのタイトル、バドミントンの試合開始のコールです。
審判が「ラブオールプレー」と宣言して、バドミントンの試合は始まるのです。
……偉そうに言ってますが、全部今回ご紹介する本、『ラブオールプレー』から仕入れた知識でございます。
この本との出会いは本屋を物色していた時、「バドミントンの小説だよ」と書いてある帯が目に飛び込んできたのがきっかけでした。
バドミントンの本って、とても珍しいと思いました。
これまで長年読書してきて、小説や漫画という媒体でバドミントンを取り扱っているのを読んだことがない。
バドミントンなんて子供の頃誰しも1回はやったことがあるだろうし、観戦するのもとても面白いのに、です。
そういえば2021年東京オリンピック、混合ダブルスのわたがしペアが銅メダルをとって、すっかりファンになったんだよね……なんてことを思い浮かべながら家に連れて帰りました。
読んでみて、素晴らしき青春ストーリーで、すっかり魅力にハマってしまいました。
バドミントン、小説にしても面白いですよ!
それでは、あらすじと感想を交えながら作品をご紹介したいと思います。
1.おおまかなあらすじ
まずはおおまかなあらすじからご紹介しましょう。
主人公は中学3年の夏を迎える男の子、水嶋亮。
彼は中学生活のすべてを賭けたバドミントン部を引退して、燃え尽き症候群の真っ最中。
親友でありダブルスの相棒である静雄と同じ高校に進学しバドミントンを続けようと考えていた。
しかし、そこに強豪高校である横浜湊の監督・海老原先生から推薦の話が来る。
大した戦績もない自分になぜ推薦が来たのだろうか?
戸惑う主人公だが海老原先生の言葉に心が決まる。
「君に必要なのは経験と良き指導者。うちの高校なら両方を提供できる」
横浜湊への進学を決めた主人公はそこで全国トップのスター選手である遊佐、その相棒の横川という偉大な先輩たちと個性豊かな5人の同期と出会う。
自分には全国で戦うイメージすらわかない、と消極的だった主人公だが、才色兼備で超強気の姉・里佳の叱咤激励を受け、まずはレギュラーを目指そうと主人公はバドミントンにのめりこんでいく。
この物語は主人公が厳しい練習に耐え、仲間との絆を深めながら急成長していく青春ストーリーである。
2.ぜひ、主人公に感情移入して欲しい!
『ラブオールプレー』は主人公の成長物語です。
最初の主人公は県大会でベスト4どまり。
「弱くはない、しかし決して強くない」それくらいのレベルです。
しかし、ここから主人公の快進撃が始まります。
最初に主人公の才能を見出したのは進学先の監督、海老原先生です。
海老原先生は強豪校とはいえないレベルだった横浜湊高校のバドミントン部を鍛え上げ、全国常連の強豪校に育て上げた一流の指導者です。
その彼からご指名を受けるのだから、主人公への期待が膨らみます。
海老原先生は約束通り、「今の1秒の大切さを知りなさい」などの多くの名言で、経験と良き指導を主人公にもたらします。
全国でもトップクラスの選手である遊佐のプレーを毎日体験し、的確なアドバイスをいろいろな先輩や同期からもらい、主人公はメキメキと成長していきます。
感情移入しやすい私は、主人公がよい環境に恵まれるだけで嬉しくなり、いい気分で小説を読むことが出来るんですが、『ラブオールプレー』ではさらに、テンション高く作品を楽しめるようになっています。
その理由が主人公が持って生まれてきた「最強メンタル」です。
前にも書いた通り、彼は最初、強くないんです。
周りには同期も含めて強いプレイヤーばかりで、その中でしごかれるのって正直辛いだろうし、校内のランキング戦で勝ち上がるだけでも一苦労なわけです。
そんな「萎えそう、めげそう」な環境でも彼はすべてを前向きに受け取ります。
悔しいことも、辛いことも、全て「こんないい環境にいられてありがたい」と前向きな思いに変えて練習に励むのです。
練習環境の良さももちろんですが、主人公のこの素晴らしい「最強メンタル」が彼の急成長の一番の理由では?と本当に見習いたいと感心しながら読んでいました。
強いメンタルを持った主人公は『ONE PIECE』のルフィや『ハイキュー!!』の日向翔陽など、読んでいて前向きな気持ちをもらえるので、快晴の空を見上げているような気分になれますよね!
『ラブオールプレー』ではさらに、主人公の成長カーブは羨ましいくらい真っ直ぐに上に向かって伸びており、爽快感や高揚感もすごかったです。
これだけでも主人公に感情移入して読んでほしい理由として十分なくらいですが、もうひとつオマケの理由があります。
詳しくはネタバレになるので書きませんが、高校生らしい恋愛に関することです。
もうとにかく本作は「主人公、無双だな……」と呟いてしまうくらいいいところを持っていくんですよ。
気持ちよく読めること、間違いなしの作品です。
3.もう一つのテーマ「そして、チームになる」
この物語は主人公の成長物語でもあるんですが、実はメインテーマは別にあると思っています。
そのテーマというのが横浜湊高校バドミントン部が徐々にチームとして完成されていく過程です。
特に、主人公も含めた同期6人の絆が太くなっていくのが頼もしく、最後には感動をもたらしました。
主人公たちの出会いはまだ入学前、高校の練習に参加した時から始まりますが、正直、主人公にとって、同期の第一印象はそこまで良くはないんです。その第一印象のまとめがこちらです。
- 主人公とダブルスが組みたいと熱いラブコールを送る榊
- クールぶってあまり皆の輪に入ろうとしない松田
- マイペースでお互いが一番の双子、東山兄弟
最後の1人は入学後に出会うのでまた後で紹介します。
主人公も含めた5人は、練習に参加した後、なんとなく一緒に帰るのですが、その帰り道の会話のぎこちないこと!
お互いに様子見状態なのがバレバレです。
初顔合わせの様子を読んだ時は、あまりのよそよそしさに「この後、ライバルとして同期同士でぶつかる、みたいな話もでてくるのかな……」とドロドロした展開が少し苦手な私は心配になりました。
が、そんな心配は無用です。
彼らは物語が進むにつれ、遠慮がなくなって仲良くなっていきます。
同じ部活で毎日顔を合わせてればそうなるのも当然かもしれませんが、本作では6人目の同期・内田を登場させることで同期を繋ぐパイプが目に見えて太くなったのが分かりやすく表現されていました。
この内田君はバドミントンを高校から始めた初心者ですが、熱心にみんなのサポートをすることで、同期6人を一つにまとめる重要な柱の役目を果たしてくれます。
内田も加えた6人で、バドミントン部の同期としてチームになっていくんです。
バドミントンって個人競技、一緒にコートに入るにしてもダブルスくらいなのに、チームになるってどういうこと? と思われるかもしれません。
しかし、『ラブオールプレー』ではバドミントンの試合経過と同じくらいに、試合を応援する様子がみっちり語られています。
それはそれは、一緒に試合会場で大声出して応援したくなるほど、応援にかける主人公たちの思いが伝わってくる熱の入った文章なんです!
バドミントンはたとえシングルスでも、孤独に戦っているわけではないと『ラブオールプレー』に教えてもらいました。
この応援の様子も、物語の前半と後半では登場人物たちの想いの込め方が変わっていったのが分かるように、実に丁寧に表現が変えてあるので、ぜひ注目してみてほしいところです。
4.こんな人に読んでほしい!
『ラブオールプレー』は主人公の成長、そして同期がチームになる過程を描くザ・青春ストーリーです。
部活に熱く燃えるシーンが読み応えたっぷりなのはもちろんのこと、それ以外の例えば勉強とか、みんなでバーベキューとかするシーンもあり自分の高校生時代を思い出し懐かしくなりました。
大人にとっては「あの日に帰れる」ストーリーでしたが、この本はぜひともこれから高校生になる中学生の皆さんに読んでほしいです。
高校はいろんな過ごし方ができる場所です。
勉強に燃えるもよし、
部活に燃えるもよし、
恋愛に燃えるもよし。
ただ、人生の中で、友人たちとわき目もふらずに何かに全力投球できる、ほぼ最後のチャンスだと思います。
(大人になると「それだけに没頭」、っていうのは本当に難しくなるのです)
どんなことに夢中になるにしても、本書の中にはその時の助けになるメンタルの在り方、モチベーションの保ち方など、お手本になるものがぎっしり詰まっています。
海老原先生の愛ある厳しい言葉もぜひ記憶に残してほしいです。
これから高校生活を迎える皆さんに、エールとなる作品です。
一方で大人の方にはノスタルジーを味わうにはもってこいの作品です。
ただ、本作はやはり若者向けであることは間違いなく、主人公たちは目立ったピンチなく、上へ上へと向かっていくストーリーなので大人には少し物足りないのは否めません。
その分ストーリーからもらえる疾走感、爽快感は半端ないので「明日は勝負の日だ!」と気合を入れたいときに読んでみるのはいかがでしょうか?
まず間違いなく、テンションは上を向くストーリーなのでおススメです。
いかがでしたでしょうか?
まだまだ、主人公のお姉ちゃんの年齢の割に渋い叱咤激励の言葉であったり、海老原先生の名言集や主人公の元相棒・静雄との爽やかなライバル関係などおススメポイントはつきませんがこの辺にしておきます。
ぜひ、読んでみてください、本当にいい本です。
そして『ラブオールプレー』には続編が3冊あります(主人公は変わっちゃいますが)
1冊読むと、全部読みたくなる魅力があるシリーズだと思いますよ。
早く試合開始のコールが聞きたくなります。
『ラブオールプレー』
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。
2作目『ラブオールプレー風の生まれる場所』のあらすじと感想はこちらの記事をどうぞ↓
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