スポーツのトッププレーヤーの内面に迫る『ラブオールプレー風の生まれる場所』読書感想

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

今回ご紹介する本はこちら↓

ラブオールプレー風の生まれる場所  小瀬木麻美  ポプラ文庫

バドミントンに賭ける高校生たちのまぶしい青春を堪能できる『ラブオールプレー』の続編です。

主人公は、前作『ラブオールプレー』にも登場した遊佐賢人です。

遊佐といえば、高校では全国トップのバドミントンプレーヤーであり、おまけにイケメンという高スペックでありながら、コートの外では後輩たちに残念な絡み方をして「ちょっとうざい」と思われている少し面倒な先輩というキャラクターでした。

しかし! 本作ではスーパープレーヤーだって悩むんだ、後輩たち含め、チームのみんなのこと大好きで頼りにしてるんだよ! ……という、遊佐の内面に迫っています。

他にも、前作のメインキャラクターたちも多数登場していますよ。

主人公が変わっているので、いきなり2作目の本作から読んでも十分面白く、さらに前作からのファンには嬉しいプレゼントもたくさんな作品でした!

それでは、あらすじと感想を交えながら、ご紹介していきましょう。

前作『ラブオールプレー』のあらすじと感想はこちらの記事へどうぞ↓


1.おおまかなあらすじ

物語の始まりは遊佐賢人、中学3年の時から始まります。

この時既に賢人は全中王者に輝き、バドミントン界のプリンスという立場です。

そんな彼が、大した実績もない横浜湊高校のバドミントン部をめざして一般入試を受けようと決意します。

理由は、

  • 監督の海老原先生が尊敬も信頼も出来るから。
  • 同期になる横川と一緒ならダブルスでも全国一を狙えそう。

などありますが、一番のお目当ては水嶋理佳。

遊佐の1年先輩であり、横浜湊高校の才色兼備のマドンナです。

遊佐は無事横浜湊高校に進学し3年間、バドミントン部で大活躍した後、横川と同じ大学に進学します。

高校までとの環境の違いに悩んだり、時には負ける悔しさを味わうことになる遊佐。

バドミントンの試合中でも、練習の時でも、トッププレーヤーだからといって、常に完璧なメンタルでいられるわけでありません。

しかし落ち込んだ時は、相棒の横川に甘えてみたり、母校・横浜湊高校の練習に顔を出したりしてやる気を取り戻します。

大学生の夢舞台、インカレの個人優勝・団体優勝を目指して懸命にバドミントンと向き合う遊佐ですが、彼の身にバドミントン人生最大のアクシデントが襲い掛かります……

2.スターだって悩むのだ

前作『ラブオールプレー』では「確実な1勝」をチームにもたらす、シングルスでもダブルスでも文句なしの全国トップ、完全無欠のエースだった遊佐

それなのにコートの外では後輩たちがせっかく同期だけで遊びに行こうとしてるのに、「ついてっちゃおうかな~♪」と超めんどくさい絡み方をして後輩たちと読者を苦笑させていました。

彼の弱点と言えばただ一つ、片思いの理佳になかなか振り向いてもらえないことくらいでイケメンで頭もよくて、ものすごく高スペックな人、というのが前作までの彼の印象です。

きっと、バドミントンに関することなら、なんでも超強気でストイックに考えているんだろう、具体例で言うなら羽生結弦選手やイチロー選手みたいな?

それはちょっと言い過ぎかもしれませんが、全国トップに君臨し続ける遊佐は人間離れしたメンタルの持ち主に違いない、と思い込んでいました

しかし、本作で遊佐が主人公になり、物語を彼目線で読むことになって、それが大きな勘違いであったことがわかりました。

遊佐、意外にモロいところがあります。

試合前に言われたちょっとした嫌味が影響して自分らしいバドミントンができなくなったり、相手チームの応援に押されてプレッシャーを感じたり……

「あれ、そんなに鋼の精神ってわけじゃなかったのね」とわかります。

さらに、大学へ入ってからはチームの選手層が薄くなり、遊佐にかかる負担は高校以上になってしまいます。

試合ともなれば、1日に何度も行われる激闘に体力も削られるし、応援してくれる人数も少ないからメンタルも削られて……

そんな中で、確実な1勝を期待されている遊佐のプレッシャーは半端じゃありません。

うまく勝てるばかりではなく、負けることもあります。

さらに、後半には「これからバドミントン選手としてどう生きていくのか?」を真剣に考えなければならなくなる大きなアクシデントまで起こります。

とにかく、1冊通して、遊佐のバドミントンへの想いを試されるようなシーンがいっぱいあるんです。

遊佐はそれらの困難を簡単に乗り越える時もあれば、1人では乗り越えられず、分厚い壁の前で立ちすくむ時もありました。

でも、その姿に意外だな、とは思いましたが、がっかりしたな、とは思いませんでした。

むしろ「トップに君臨するようなすごい人でも悩むんだ」と遊佐のことを身近に感じられました

そうやって遊佐を身近に感じられるシーンの中でも、ものすごく共感したシーンがありました。

試合のことで落ち込んで遊佐が相棒の横川とともに、母校の横浜湊高校バドミントン部を訪ねるシーンです。

懐かしい環境に戻り、リフレッシュ……かと思いきや、そこで待っていたのは自分たち以上に頑張る後輩たちの姿でした。

試合中、最後には体力がものをいうと、極限まで体を追い込む後輩たちに「自分にもまだまだできることがあるんじゃないか?」と遊佐は刺激とやる気をもらっていました。

自分も卒業した後に部活を訪ねた時のことを思い出しました。

自分が安心できる場所でありながら、頑張ってる後輩たちの姿って、すごく勇気をもらえるんですよね。

なんというか、遊佐はトップ選手でありバドミントン界のカリスマではあるんですが、イチローのような本当の手の届かない遠いところにいる存在ではなく、すごいけど、同じ人間として親近感を感じることのできる、絶妙な性格に描かれているなあと思いました。

これまで読んできたスポーツ系の作品『ハイキュー!!』や『ベイビーステップ』『DAYS』などに出てくるトッププレーヤーって、ものすごくメンタルが強い人ばかりで、しっかりとトッププレーヤーの葛藤に向き合った作品というのは珍しいのではないかと思います。

でも、だからこそ、遊佐が主人公でも「どうせ勝つんでしょ」と思わずに彼がバドミントンで勝つか負けるかに、熱くなることができました。

作品を最後まで読み終えた時に、熱くなった余韻と、「自分も頑張ろう」という気持ちをもらえて、遊佐には「ありがとう」と言いたいです。

3.前作ファンに嬉しいプレゼント

本作には、前作の主人公・水嶋亮をはじめ、多くのキャラクターが引き続き登場しています。

それだけでも前作から読んでいる読者にはご褒美ですが、それだけではない嬉しいプレゼントが作中にたくさんありました。それが、前作の続きを知れるところ、です。

前作のラストは、水嶋たちが岩手でのインターハイ団体決勝戦に挑み、試合開始のコール『ラブオールプレー』が宣告されたところで終わっていました。

「勝ったの!? インハイ優勝できたの!?」と、少し名残惜しかったんですが、その結果が、本作で分かります!

それだけではありません、水嶋と彼にずっと片思いをしていたマネージャーの花ちゃん、2人の恋の行方も判明しました。

いやいや、それだけではなく、水嶋の相棒の榊や、息の合った双子ダブルス東山兄弟、マネージャー兼名参謀だった晃たちの進路もわかるし、横川にもまさかの展開があるし……

前作ファンの方、必見です。

あ、遊佐と麗しのマドンナ理佳さんのなれそめ(?)とその後どうなったのかも、わかりますよ。


いかがでしたでしょうか?

ずっと上を目指して駆け上がっていく話だった前作とは違い、本作はずっとトップにいる選手の内面に迫る内容だったため、ピンチに陥るところもありましたが、読んで面白く爽やかで前向きな気持ちになれるところは前作と変わりありません。

やる気を出したいときには最適の1冊です。

ぜひ、手に取ってみてくださいね。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。

次作『ラブオールプレー夢をつなぐ風になれ』のあらすじと感想はこちらの記事をどうぞ↓

スポーツのトッププレーヤーの内面に迫る『ラブオールプレー風の生まれる場所』読書感想” に対して2件のコメントがあります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。