旧版から10年以上…新版は内容も分かりやすさも大幅レベルアップ!『新大学生物学の教科書』読書感想
元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!
今回ご紹介する本はこちら
新大学生物学の教科書 D・サダヴァ 講談社ブルーバックス
10年以上前、同レーベルから『大学生物学の教科書』(全5巻)が出版されました。
MIT、ハーバード、スタンフォードといった世界の超名門校で使用されている生物学の教科書の翻訳という触れ込みで出版され、30万部以上を突破したというシリーズです。新書サイズの本は1万部も売れたらすごい、の世界のはずなので、30万部は化けものみたいなもんです。私も10年と数年前、このベストセラーシリーズを買い込んでせっせと読んでみた30万分の1人でした。
そして現在、『新大学生物学の教科書』として1~3巻目までの改訂版が出版されております!!
これはですね、ブルーバックスレーベル好きにはたまらない話なんですよ。
とにかく小難しくても、多少(では済まない時も多々あるが)内容が理解できなくとも、最新の科学的研究について知りたい、かじりたい!という知的欲求を満たしてくれる本シリーズの中でも『大学生物学の教科書』シリーズは世界的に認められている本というお墨付きですからね。
改訂版が出たとなれば内容も最新にアップデートされていることだろうし、「欲しい!」と反射的に思ってしまうものなのです。
しかし、ここで少し問題が。
旧版と新版の違いは?
そもそも旧版が超むずの内容だったのに新版を理解できるのか?
元々分厚かったのにさらにボリュームアップしてる!(値段もあがってます…)
……などなど、旧版を買ってしまったがゆえに、新版に手を出すのをためらう理由もあるわけです。
そこで今回は、旧版・新版の両方を読んでみて、感じた違いや新版は買うべきかどうかを、検証してみたいと思います。
1.そもそもどんな内容?
『大学生物学の教科書』の新版と旧版の違いを述べる前に、まずは『大学生物学の教科書』シリーズにはどのような内容が記されているのか、簡単にご紹介しましょう。
シリーズは全5巻あり、そのうち1~3巻が細胞の仕組み、遺伝、エネルギー合成や代謝の仕組みといった、ミクロレベルの生物の仕組みについて解説し、4巻と5巻では進化や生態系といったマクロレベルのお話が中心になっています。
全5巻の内、新版が出版されたのは1~3巻で、4、5巻についてはまだ新版は出版されていません。今後、新版が出るかどうかは版元である講談社次第でしょう。(ファンは待ってますよ!!)
旧版は既に10年以上前に読破済ですが、今回新版の3巻分を新たに読み直して、月並みな表現になってしまいますが「生物の仕組みって本当に素晴らしいな」というのが率直な感想です。
例えば1巻では私たちの身体を作り上げている細胞1個1個の中で、どのような活動が行われているかを見ていくのですが、細胞1個1個の中に消化のための器官も排泄のための器官もあると言ったら、正直驚きませんか?
細胞1個なんてめちゃくちゃ小さいわけですよ。その中に人間の体にあるような胃腸や大腸みたいな器官がしっかりと備わってるんですよ? さらに消化したものを細胞1個1個がエネルギーを取り出して使用してるんです。細胞1つ1つが1人の人間の身体全体の仕組みをそっくりそのまま持っているようなもんです。目に見えない小さな世界でとてつもないダイナミックな活動が生きている間中、ずーーーっと行われているわけです。
『大学生物学の教科書』シリーズを読むまで、1個1個の細胞の中にそんな精巧な仕組みがあるとはまったく知りませんでした。私たちの身体って、思っているよりはるかにすごいんですね。
本の内容は、決して簡単ではありません。私も、書いてある内容すべてを理解できているわけではありません。しかし少しでも理解できる箇所から、生物の仕組みの素晴らしさを感じられると思います。
小説や漫画でも細胞の仕組みとかを題材にした作品はありますが、噛み砕いた内容ではなくガッツリと専門的な内容を学ぶことでしか感じられない「理解できた!」という感覚は難しい本を読みこなしてこそのものだと思います。ほんの少しでも脳に栄養を与えるつもりで読み進んでみてください。
2.旧版と新版の違い
ここからは旧版と新版の違いについて触れていきます。
まず、見てわかる変化からいきますと、ページ数が増えています。特に第1巻は100ページ以上の増加です(笑)これだけページ数が増えたのには理由があるのですが、その理由は次の項で説明します。
次に細かいことですが、触った感じ、紙質もレベルアップしていると思います。旧版は厚みがあってしっかりしている分、めくりづらかったのですが、新版では薄くなりめくりやすく手に馴染みやすい触感の紙に変更になりました。細かいところですが、このシリーズは読み始めたら読了まで1カ月を超えることはざらなので^^;手触り感がよくなってくれることは素直に嬉しいですね!
目次にも注目してみましょう。目次、つまり各章、項目ごとのタイトルなのでここだけ見てどこが変化したとはわかりづらいのですが、大胆に変化している部分も見受けられます。例えば旧版では第1巻に収録されていた光合成についてが、新版では第3巻へと移動しています。読みやすさや読む順番を考慮して構成しなおしてくれたようです。
3.読みやすさが大幅アップ
肝心の中身の違いを見ていきましょう。
まず、これはまえがきにも書かれていましたが、旧版が出版されてから10年以上経過し、その間に科学はどんどん進んでいます。それは本シリーズが対象としている生物学も例外ではありません。実際に翻訳する前の原典の方は科学の進歩に合わせて内容の大幅変更を繰り返しているようです。新版にも可能な限り最新情報にアップデートしてくれいます。
日本人の記憶に深く残っているであろうところを例にあげるとiPS細胞があります。新版にはiPS細胞に関する記述も追加されています。
おそらく細かく読み比べていけばまだまだ新発見されてアップデートされたところが見つかるのでしょうが、すみません、そこまでは手が(頭が?)回りませんでして……
しかし、内容の面ではもっとわかりやすく大きな変化がありました。
前項でご紹介したページ数の大幅増加の要因でもありますが、新版は旧版に比べて、読みやすさが大幅にアップしています!
旧版は良くも悪くも、専門的な教科書という体裁で編集されていました。美しい図に詳細に、しかし専門用語が飛び交う本文は、マニアックな好奇心が大いにそそられる素晴らしい内容でした。
が、しかし、難しいものは難しい! 旧版を読みこなすにはメモ必須。読みこなすにはかなりの労力が必要とされたことは確かです。
その点、新版は読者側にかなり歩み寄った内容となりました。まず第1巻の最初で、科学の基礎的な知識(おそらく高校生レベル)を詳述してくれています。旧版では「これくらい知ってて当然」とされていた前提を新版では説明してくれているという感じです。おかげで読む分量としては増えたのですが、理解しやすさはアップしたと思います。
また、専門的な内容の説明に関しても、かなり読みやすさを重視して構成してあるという印象です。繰り返しになりますが、旧版はあくまで教科書として編集されていたものが、新版は読み物として構成しなおされています。『ニュートン』という科学雑誌はご存知でしょうか? 最新研究や学術論文をわかりやすくリライトし直して紹介してくれている雑誌なのですが、旧版が学術論文と同等の難しさだとしたら、新版はニュートンと同じかそれよりも少し高めのレベルにまで理解しやすく内容を噛み砕いてくれているという感じです。
わかりやすさ、そして読みやすさが大幅アップしていますので、挑戦する側のハードルも大きく下がりました。
新版を読む時には、メモをとらなくてもなんとか読み通せたのが何よりの証拠です(でもメモを取った方が理解しやすいのは間違いない)。
内容に関してもう一つ細かいところを補足すると、各章末にあった「確認問題」が本格的になっていました。旧版では問題に選択肢で解答する簡単なものだったのが、新版では実験を行い、その結果を示すグラフや表を読み取り、そこから何がわかるか文章で説明させる問題に変化しています。
これ、一応毎回考えていましたが、難しかったです。ちゃんと読んだ内容を記憶・理解していないとわかりません^^; 逆に言えば問題にある程度解答できれば相当理解できているということです、ぜひ挑戦してみてください!
4.結論、新版は買うべき、しかし…
結論として、『新大学生物学の教科書』シリーズは買う価値あり!の名著です。旧版をすでに手元に持っている方にも刺激的で面白い読み物になっていると思います。
ただ、ここで少し悩ましいのは「旧版はどうする?」という問題です。
何しろ旧版と新版を合わせて並べると15センチ以上の幅になります。分厚い……本棚も圧迫されます。古本屋さんへレッツゴーしたくなります。
しかし、私はあえて「旧版も残しましょう!」とおススメします。
内容は古くなっているとはいえ、旧版には旧版の専門書的難しさという魅力があります。自己満足ではありますが、蔵書の知的レベルを数レベル底上げしてくれる優越感とでも言いましょうか(笑)
今回はそこまで読みこみませんでしたが、旧版と新版を比べながら読むというのも楽しそうです。
そして何より、また10年経って「新々版」が発売された時に並べてみたい!!
旧版は既に新品では手に入りにくくなっていますので、本棚が許す限りは手元に置いておこうと思います。
いかがでしたでしょうか?
『新大学生物学の教科書』は専門的な内容をわかりやすく一般読者層向けに編集し直してある良書です。旧版をお持ちの方にもおススメできるほど目覚ましく進化していました。
ぜひ手に取ってみてくださいね。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
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