天然イケメンとツンデレ大学生の絆が魅力:准教授・高槻彰良の推察(あらすじと読書感想)パート2

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今回ご紹介する作品はこちら

『准教授・高槻彰良の推察』シリーズ  澤村御影  角川文庫

このパート2では6、7作目と短編集『EX』の内容をご紹介しています。

第1作~第5作のあらすじと感想はこちらからどうぞ↓

シリーズの登場人物紹介はこちらからどうぞ↓

TVドラマもseason2まで放送されコミカライズも好調のようですね。原作が面白いので、映像化しても魅力的な作品が出来上がるのでしょう!

原作も既に8冊が出版済ですが、きっちりと面白さをキープしています。シリーズものはとにかくマンネリが怖いのですが、今のところその心配は無用です。面白さをキープしている秘訣は、一冊ごとにしっかりと話が前に進んでいるからだと思います。シリーズものの中には、とにかく焦らす! という方針の作品もありますからね……

『准教授・高槻彰良の推察』シリーズは、主人公の高槻と深町の仲も深まり、信頼し合うバディ感が増していきますし、2人が小さいころから背負う不思議な謎の解明にも進展があり、さらに脇役の佐々倉が実は怖がりだったりするなどキャラの意外な魅力も出てくるし、作品のモチーフである民俗学うんちくもどんどん深まってきて、毎巻、しっかりパワーアップしていってます!

私は小説も漫画も、買い続けているシリーズがとにかくたくさんあるんですが早く続きが出ないかと楽しみなシリーズの1つになっています。

それでは、あらすじと感想をご紹介していきましょう。

目次

1.シリーズ6作目『鏡がうつす影』
     第1章 お化け屋敷の幽霊
     第2章 肌に宿る顔
     第3章 紫の鏡
2.シリーズ短編集『EX』
     第1章 お人形遊びしましょ
     第2章 わんこくんのわんこの話
     第3章 俺の友達の地味メガネくん
     第4章 休日は本棚を買いに
3.シリーズ7作目『語りの底に眠るもの』
     第1章 違う世界へ行く方法
     第2章 沼のヌシ
     第3章 人魚の肉


1.シリーズ6作目『鏡がうつす影』

まずは簡単なあらすじからご紹介します。

その前に一つだけお知らせです。

『准教授・高槻彰良の推察』シリーズは1冊ごとに話が完結し、前の巻を読んでいなくても面白く読めるように工夫されています。しかし、6作目は5作目の最後からしっかりと話が続いていますので6作目だけは5作目を読んでから読むことをおススメします。

第1章 お化け屋敷の幽霊

前巻で起こった事件の衝撃を引きずり、元気がないままの高槻を心配した深町は、高槻にきていた怪奇現象の相談依頼を強引に受けさせる。

今回の依頼はお化け屋敷のスタッフからで、仕込みをしていないはずの鏡にお化けがうつっているとお客さんの間で噂になっているというもの。せっかく現地まで来たのだし調査のためにもなるからと、お化け屋敷に入ってみることにする。

深町はびびりながらお化け屋敷の中を進み、そして「例の鏡」にたどりつく……

第2章 肌に宿る顔

絶縁状態だったはずの高槻の従兄、優斗から怪奇現象についての相談が来る。

優斗の婚約者の肩に人面瘡(じんめんそう)という傷ができたという。

 (注:人面滄とは人の顔に見える傷のこと)

高槻の家庭の事情を知る深町は、この依頼を断るように高槻にすすめるが高槻はまずは婚約者に会ってみようと譲らない。

そして、高槻達は優斗の婚約者と対面するのだが……彼女の口から出た言葉に、緊張が走る。

第3章 紫の鏡

今回の依頼は怪談・紫の鏡にまつわるもの。紫の鏡とは、様々なバリエーションはあるものの、20歳になるまでに覚えていると死んでしまうというのが基本の怪談である。

依頼人の家には、その紫の鏡が置かれている納戸があり、実際に依頼人の母が、昔、その納戸の中で行方不明になったという。

実際にその鏡を前にした高槻と深町。高槻は普段と変わらず、依頼人と会話をしているが、深町はとある異変を感じていた……

表紙にも注目! 全体的に深町のターンです

一つ前の5作目、「ここで終わるんかーい!」な最後だっただけに、続きを早く読みたかった人が多かったのでは? と思います。

そして待望の6冊目、なにやら表紙から、いつもとは違う感じがします

これまで、全表紙に描かれてきた高槻は、その表情は常に ”微笑” 。彼らしい穏やかな表情ばかりでしたが、今回は微笑みが消えています。どこか遠くを見つめて物思いにふけるような、そんな表情をしています。

そして中身を読むと「あ、納得」でした。

本作では、「明るく深町を支えてくれる」いつもの高槻は少な目で、「どうしたらいいのかわからず迷子になっている」高槻が見られます。それだけ、5作目で起こったことがショックだったんでしょう。一冊通して、少々落ち込み気味な様子の高槻です。

高槻がそんな調子だと、もしや全体的にくらーい雰囲気になっているのかな……と思われるかもしれませんが、そこでもう一度表紙に注目してみましょう。

もう一人の主人公、深町も描かれていますが……おや? 少し口元に笑顔が浮かんでる……?

これまでの深町のイラストは無表情で、微笑む高槻とは正反対の悩める青年の印象を与える表情ばかりでしたが、今回は逆転、笑顔か、あるいはもっと違う意味が込められているのか、正確な感情を読み取るのは難しいですが、初めて表情らしきものが浮かんでいるんです。

そして、これも内容を読めば「あ、納得」です。

これまでそばにいて前向きな言葉で支え続けてくれた高槻のピンチに、恩返しをするように、高槻の心を明るくしようと奮闘する、そんな一皮むけた深町がたくさん詰まっていました

今まで人と深く関わることを避けて生きてきた深町だけに、最初は遠慮がちに、徐々に大胆に、時にそれはやりすぎだよ、と思われるほどの行動力を見せ、どんどん深町なりに高槻への親愛をみせるように変化していきます。

5作目の感想で、「高槻の覚悟に深町はどう応えるのか?」と書きましたが、まさに本作はその「答え」を見せてくれる内容でした。深町は高槻のために、ある重要な役割を果たすようになりますし、高槻の「保護者」の一人として佐々倉と共同戦線を張ろうとしたり、明らかに今までよりも何歩も踏み込んだ人間関係を築こうとしていました。

高槻は作中「生意気になった」と表現していますが、たくましくなったというか、強くなったというか……深町の一生懸命な姿に、癒される一冊でした。

個人的に一番ほっこり来たのは、高槻の、「面白そうな怪奇現象の話を聞いたときの暴走」の止め方が様変わりしたシーンですね。

いや、本来はこれくらい強気で止めるべきだったんだろうけど、「あの消極的だった深町君が……」と笑いながらもほろりとくるシーンでした。

深町君の成長により、高槻も徐々に調子を取り戻して、2人のバディ感がより強まった6作目。しかし、不吉な影も勢いを増して忍び寄っているような描写も多くなっています。

次はいよいよ、高槻の過去にも、少しは踏み入るような話になっているのでは!? と、今から期待しています。

それにしても、繊細な心情を書き込む小説家もすごいですが、イラストレーターさんもすごいですね。ちょっとした表情のつけ方で、見事に作品の内容を表現されていました。

クリエーターの凄腕に脱帽です。

2.シリーズ短編集『EX』

『EX』(エクストラ)は、そのタイトル通り、本編から離れた短編集になっています。本編の時系列のどのあたりのお話なのか、補足しておいたので読む時の参考にしてみてください。

まずはあらすじからご紹介しましょう。

第1章 お人形遊びしましょ

※時系列的には2作目の「第1章 学校には何かがいる」の1週間後のお話です。

高槻と同じ青和大学の教授である三谷が蚤の市で売られていた市松人形について相談に来た。購入した三谷の元に、元の持ち主から返してほしいと連絡があったのだが、その市松人形は動き回ったり髪がのびたりと、不気味ないわくつきの代物だった。

怪奇現象のことなら高槻の出番、というわけで高槻は気乗りのしない深町と共に、人形の元の持ち主の家へと出向くのだった。

第2章 わんこくんのわんこの話

※時系列的には1作目の「第3章 神隠しの家」の後のお話ですが、内容のほとんどは深町の子供時代の思い出になっています。

高槻の研究室においている犬のマグカップをきっかけに、昔飼っていた犬のことを深町は思い出す。

6歳の誕生日に子犬をもらった深町。子犬はレオと名付けられ、一人と一匹は大親友になった。

深町が嘘を見抜く力を持つようになり、友達や両親ともうまくいかなくなった後、レオは深町にとって唯一の心のよりどころとなっていた。

しかし、深町が中学生の時、レオの体調がおかしいことに気づく……

第3章 俺の友達の地味メガネくん

※時系列的には難波が免許をとったすぐ後の話、6作目の「第3章 紫の鏡」の辺りと思われます。

難波は語学クラスが同じだった友人たちから飲みに誘われる。その話題の中心は、意外にも深町。

深町の数少ない友人の一人である難波は少々面倒なお願いごとをされてしまうが、友達想いの難波はとりあえずは深町を飲みに誘うことにする。

2人で飲みに行くのは初めて。そこでの会話は少々面倒なお願いごと……にはならず、難波の意外な一面をのぞかせるものになる。

第4章 休日は本棚を買いに

※時系列的には6作目の「第1章 お化け屋敷の幽霊」の後に行われた家飲みのシーンから始まっています。

佐々倉は高槻に「本棚を一緒に買いに行ってほしい」と頼まれ、次の佐々倉の休みの日に行くことを約束する。とはいえ、なかなか休みが取れない警察官である佐々倉は約束を果たせないままでいた。

そんなある日、佐々倉は仕事終わりに同僚に誘われ飲みに行くことになった。最初はただの雑談だったが、話題は次第におかしな方向へと向かっていく。その話題とは、高槻にも関係することだった……

高槻・深町コンビ以外の魅力が詰まってます!

「キャラクターの魅力満載のスペシャル番外編!」(裏表紙の紹介文より抜粋)ということで、今回は本編からは離れた短編集、となっていました。

いつもは深町の視点からお話が書かれていますが、今回は難波や佐々倉といった、もはやシリーズに欠かせない存在となった脇役2人の視点で書かれたお話も収録されています。

だからこそキャラクター達が「普段、こんなこと考えてたんだ!」という新しい発見がありました

特に難波はイメージが変わりましたね。

これまでも、度々、深町を手助けしてくれたり、彼女に優しい一面は見えていたので、彼のことは「いい奴」とざっくりとそう思ってはいました。しかし、「第3章 俺の友達の地味メガネ君」を読むと、「難波、本当にいい奴!」と印象が濃くなりました。難波が本当に仲が良いというわけでもない深町になんで肩入れしてくれていたのか、その理由がよく分かる作品なんですね。

その理由が「らしい」というか、彼本来の少しチャラっとした軽い印象は損なわずに、それでも「難波が現実にいたら友達になりたい!」と思わせる深イイ理由なんです。

……と、ここまでは難波自身も自覚している彼の長所なんですが、他にも、難波にはいいところがあると思うんですよね。

それは、「他人の意見に左右されないところ」

「第3章」では、飲みながら深町の話を、本人がいないところでするシーンがあります。深町は周りからできるだけ浮かないように、しかし目立たないように生きているため、周囲からは「いたっけ?」「話したことない」と難波以外の人間からの評判は好意的とは言えません。そんな空気の中でも、難波は「深町は普通だよ」という姿勢を崩しません。みんなの低評価に、「俺の深町への評価は変なのかな?」と不安になったり、「深町はそういう奴だよなー」と場の空気に流されたりもしません本当に仲がいいわけでも、よく知っているわけでもないのに、しかもお酒も入っている場で、自分の言動をふらつかせないって、地味にすごいな、と私は思うんです。話を盛るとか、話に乗っかるとか、お酒も入っているシーンではやりがちなことを難波は絶対にしないんですね。友達がいのある男だなと、このシーンを読んでいて思いました。

難波の他にも、深町の過去話も泣けるいいお話です。

そして佐々倉が主人公の話では、シリーズ本編にも今後深く関わってきそうな新情報が飛び出してきました……

詰まっているのはキャラの魅力だけじゃないですね。

短編集とはいえファンにはお得な情報満載の充実の1冊です!

3.シリーズ7作目『語りの底に眠るもの』

まずは簡単なあらすじからご紹介しましょう。

第1章 違う世界へ行く方法

高槻の講座を受講している学生からの相談が寄せられる。酔った勢いで友人と一緒に、「異界へ行ける方法」を試したところ、次の日からその友人と連絡もとれず、行方不明になってしまったのだという。

「異界へ行ける方法」とは、エレベーターを使用したもの。

高槻はまず、その方法を試したエレベーターへ行ってみようと言い出し、深町も巻き込んで「異界へ行ける方法」を試すことになるのだが……深町の番の時、異変が起きる。

第2章 沼のヌシ

不動産屋の遠山から開発中の山にある池の祟りについて相談される。高槻は目を輝かせて、問題の池を見にいこうとノリノリである。

遠山は祟りなど信じていないが、確かに現場では奇妙なことや妨害行為めいたことが起きている。

さらに池では、その昔、神隠しまで起きていた……

第3章 人魚の肉

食べれば不老長寿の力を得られるという人魚の肉。その肉を料理として提供するレストランがあるという噂を聞きつた高槻。

深町と共にレストランを訪れるが、そこで意外な人物との再会が待っていた。

人魚の肉の正体とは何か? 高槻はレストランの特別メニューを探るべく、推理を働かせる。

(感想)

前作で大事な約束を交わした高槻と深町。本作はそれを確かめ合うような内容でした。お互いに辛く、その上人には簡単に話せない秘密を持つ者同士、「これからも自分の前からいなくならないで」と絆を確認しあう3つの短編だったと思います。

が、それはあくまで「表」のテーマ。

作者さんの中には「裏」のテーマが存在していたのではないかな? と読みながら感じていました。

そのテーマを象徴するような一言が、「人形の肉」に登場するあるキャラクターが呟く一言に集約されています。

「自分を人だと思い続けないといけないよ」

この一言、すごく印象的です。高槻や深町でなくとも、考えさせられるものがある一言でした。

人を、人たらしめているものとは何でしょう? 生物学的に。遺伝子的に。自分自身を人間だと認識しているから。いろいろな答えがあり得ると思いますが、本作で表現されていたのは「人は人との関係があって人間でいられる」というものです。

例えば、「明日一緒に学校行こう」とか「今度漫画貸して」、「来週の月曜日美容院の予約がある」でもなんでもいいです。誰かとの約束があるというだけで、人と人とは繋がっていますよね。こんな些細な繋がりが、実は大事なんだよ、というメッセージを感じさせました。

これは「亡くなった人が心の中で生き続けている」というようなものにも適応できると思うんです。人は死んでしまうと、新たに約束を結ぶことができません。有効なのは生前に交わした約束だけです。「死んでも忘れない」「天国で待っていて」映画なんかでよくささやかれるこれらの約束は、約束したうちの片方が生き残っている間は、その人の心の中では果たされるべき約束としてとどまり続けることでしょう。約束を交わしたどちらかが生きている間は有効な約束、とも言い換えられると思います。この約束がある限りは、一方は亡くなっても、もう一方の心の中で生き続けることになり、亡くなった人は「人間でいられる」わけです。

屁理屈っぽいでしょうか?しかし、前述の印象的な一言を呟いた登場人物の境遇を考えると、誰かとの繋がりを持つ、ということの大切さをしみじみと感じさせるものがありました。

特に約束なんて思いつかないという人も大丈夫。本シリーズの8作目を待つ、というのも作者と読者との間に交わされている約束です。早く本屋に並ばないか、一緒に待ちましょう。


いかがでしたでしょうか?

このページではシリーズの刊行の都度、内容をアップしていきますので、しばらく経つと内容が更新されているかも……

ぜひ、また遊びに来てくださいね!

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