妖怪うんちくと、豆腐小僧の愛らしさでできた作品(豆腐小僧双六道中 ふりだし)読書感想

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今回ご紹介する本はこちら↓

豆腐小僧双六道中 ふりだし  京極夏彦  角川文庫

これはまた珍妙な小説に出会ってしまった。

それがこの本を読み始めた時の感想です。

「有名作家の作品だし、映画化もされている作品だし、これは期待できるぞ!」と

思って読み始めると、裏切られます。

「本屋から連れ帰ったのは小説だったはずなのに……」

読んでいる感覚としては小説より、新書に近いんです。

妖怪とはなんぞや! と京極先生から講義を聞かされている感覚になります。

妖怪をモチーフとした他作品とは一線を画す作品であることは間違いありません。

しかし、最後まで読んでいくと、小説らしい、思いがけない感動を味わうことになります。

二重で妖怪に化かされたような作品、それが『豆腐小僧双六道中 ふりだし』です。

それでは、内容をご紹介していきましょう。

目次 1.妖怪ってなあに? そぼくな疑問に答える作品
   2.主人公は可愛い豆腐小僧
   3.あらすじと、豆腐小僧に残された大きな疑問について

1.妖怪ってなあに? そぼくな疑問に答える作品

妖怪をモチーフとした創作は、古今問わず人気のようです。

これに異を唱える人はいないでしょう。

現代では漫画『夏目友人帳』はアニメ化が第6期まで放映され、

小説『しゃばけ』はシリーズ発行部数800万部越え、

他にも故・香月日輪先生の『妖怪アパートの幽雅な日常』シリーズなど

妖怪人気は健在です。(どれも私が大好きな作品です)

しかし、ふと考えてみましょう。

「妖怪ってなあに?」と改めて5歳児の質問に答えてみる気持ちで考えると、

意外と困りませんか?

「お化け? いや、そうすると、お化けってなあに? ってなるしなあ」

「河童とか、座敷童とか……個体ならなんとか説明できる。

 でもまとめて ”妖怪” となると……? ちょっとわからない」

でも大丈夫、この一冊を読めば子供にも説明できるようになります。

なぜなら、この問いに答えるために生み出された小説、

それが『豆腐小僧双六道中』だからです。

この小説には数多くの妖怪が登場し、かつ、その妖怪が一体何者であるのか、を

懇切丁寧に説明してあります。

例えば 鳴屋(やなり)。

古い家屋をギシギシ鳴らす、いたずら妖怪のことですね。

この妖怪はギシギシ音を説明するために生まれた妖怪です。

「古い家ってなんか怖い、ほら、またどこかでギシギシ不気味な音がしてる!」

現代なら「今日は風が強いみたいだな」くらいで納得してしまいそうですが、

昔は「鳴屋がいるに違いない!」と理由づけていたんですね。

ここではあっさり書きましたが、作品内では20ページほどを使って、

鳴屋とはなんたるかについて、もっともーっと詳細に説明してあります。

他にも、ざっと、作品内で紹介されている妖怪の名前をざっとご紹介しますと……

豆腐小僧、魑魅(ちみ)、死神、火の玉、雷獣、八百八狸、達磨、

見越しの入道、ろくろ首、一つ目小僧、司馬衛門狸、猫又、すだま、

幽霊、納戸ばばあ、袖引き小僧、三太郎狸、久太郎狐、紅白狐、伯蔵主、

管狐、飯綱権現、貴狐天王……

これだけの妖怪、全てに、個々に存在している理由が記されています。

すごいですね、妖怪ってものすごい種類の存在理由があるんですよ!

読んでいる途中、バリエーションの多さに感動すら覚えました。

これだけの妖怪について説明していたら、小説っぽくなくなる理由も、

お察しいただけたでしょうか?

そう、本書の半分くらいは妖怪うんちくでできているのです。

そして最後には、全部ひっくるめて「妖怪が人間社会で果たしてきた役割とは何だったのか?」

を論文を締めくくるようにまとめてあります。

これを読めばきっと、子供からの説明にもきちんと答えられるようになることを保証します。

2.主人公は可愛い豆腐小僧

しかし、妖怪とはなんぞや? ばかりを書いていては作品になりません。

確かにうんちくは多いけれど、そこは京極先生の手腕で、小説として、

きらりと光るものがある作品に、きちんと出来上がっています。

この作品の主人公は 豆腐小僧 という妖怪です。

見た目は小さい子供で、もみじのついた豆腐をのっけたお盆を手にしています。

そして、彼がするのは、その豆腐を舐めること。ただそれだけ。

元々は江戸時代の絵草子(絵つきの娯楽本)で、創作された妖怪で、

一時期大人気だったけど、あっという間に下火になり、忘れ去られてしまった……

という、なんともいえない切ない気持ちになる来歴を持っています。

この豆腐小僧、果たしてこの作品を読む前から知っていた人はどれだけいるのか?

私はちっとも知りませんでした。

むしろ、知らなかったからこそ、「豆腐小僧? なんだそれ?」 と思って

本を手にしたくらいかもしれません。

そんな見も知らぬ妖怪を主人公に、はたして感情移入できるものなのか……

そう、そこに京極マジックがあるんです。

物語は、元豆腐屋の廃屋で、いきなり豆腐小僧が現れるところから始まります。

この豆腐小僧、子供の姿をしていることもあり、作品中では

頭空っぽの、少し間の抜けたキャラクターとして描かれています。

さらに、出現する前の記憶もほぼなく、メモリは真っ白状態です。

物語は、出てくる妖怪すべてが豆腐小僧に対して「私はこういうものでござい!」と

説明していき、豆腐小僧が「そうなんだ!」といろいろ学習していく、という

流れで進んでいきます。

さらに、豆腐小僧は出現した廃屋から外の世界に飛び出して、

妖怪と出会う以外にも、人間の生活を見ながら、人生経験をも積んでいきます。

男女の逢引きを見たり、死ぬところに遭遇したり、悪だくみの相談を覗いてみたり……

次第に、真っ白だったメモリに容量が増えていき、

お馬鹿さが愛嬌に、間の抜けたところが一生懸命さに変わっていき、

何とも可愛らしいキャラクターとして、生き生きと動き出していくようになります。

最後には友達まで出来ちゃったりして、「よくここまで育ったなあ」と

子供を見守る気分にさせられました。

ここまで感情移入した豆腐小僧、最後には大活躍するんですよ。

拍手喝采を贈りたくなる、見事なラストでした。

さすが京極先生、裏切りません!

3.あらすじと、豆腐小僧に残された大きな疑問について

この後はざっとしたあらすじをご紹介します。

ネタバレも含みますのでご注意くださいね。

そして、あらすじの前に、この作品だけでは明かされなかった、

豆腐小僧についての大きな疑問について、少し語っておこうと思います。

妖怪とは、人間が感知することで初めて存在できるもの、というのが

本書で繰り返し述べられています。

つまり、豆腐小僧も、人間が「豆腐小僧がいるな!」と思っていなければ、

存在し続けられない、という理屈なのです。

しかし、豆腐小僧は作品中でいったん出てきたが最後、

みんなに「なんでお前はまだいるの?」と首を傾げられながら、

消えることなく、存在し続けます。

果たして、その理由はなんなのか?

答えは続編 『豆腐小僧双六道中 おやすみ』にて明かされることになるのですが…

ここで、ちょっとだけヒントです。

『豆腐小僧双六道中 ふりだし』において、誰目線で語られている物語なのか。

これが豆腐小僧が消えなかった理由と繋がっています。

ぜひ、考えてみてくださいね。

では、あらすじのご紹介です。

(あらすじ)

豆腐小僧は元豆腐屋の廃屋で、逢引きしに来た男の想像から、湧いて出た。

豆腐小僧はそのあと、廃屋を飛び出して、様々な妖怪に会っていくことになる。

そして自分の出自も少しずつ知っていく。

見越しの入道という大妖怪を父に持ち、姉はろくろ首、親戚に一つ目小僧と

超有名妖怪一家のサラブレッドとして絵草子にて創作された、

それが豆腐小僧である。

彼は様々な妖怪に出会いながら、幕末の不安定な時代に生きる人間たちの営みを

垣間見ていくことになります。

討幕を志す武士崩れたち、田舎の農民たちに文明開化の教育を施そうとする学者、

その学者をこらしめてやろうとするヤクザ者たち。

豆腐小僧は知らず知らず、人間たちのいざこざに巻き込まれてしまい、

死人が出かねない危険な状況に立ち会うことになってしまいます。

そして、人間たちの悪意に染まった妖怪たちもまた、大乱闘を起こしそうになり……

しかし、豆腐小僧は元々絵草子生まれの無害な妖怪。

彼を見て怖がる人間はそうはいない。

それを利用してあっという間に人間たちから毒気を抜き、

妖怪たちからも悪意が抜けもとの穏やかな様子に戻る。

大活躍した豆腐小僧は、また旅に出る。(続く)


いかがでしたでしょうか?

豆腐小僧の珍道中、ちょっと分厚い本ですが、

面白いですので少しずつ、長く楽しむつもりで

読んでみてくださいね。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!

よろしければ、感想など、コメントに残していってくださいね。

続編『豆腐小僧双六道中 おやすみ』の記事はこちらからどうぞ↓

『豆腐小僧 その他』の記事はこちらからどうぞ↓

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