読んで自分の作品をレベルアップさせよう『荒木飛呂彦の漫画術』読書感想

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

今回ご紹介する本はこちら↓

荒木飛呂彦の漫画術   荒木飛呂彦  集英社

『ジョジョの奇妙な冒険』は1986年の連載開始から

2021年12月現在まで、ずっと連載が続いている

ご長寿漫画です。

読んだことがある、大好きだ、もはやバイブルだ、と

多くの方が知ってらっしゃるのではないでしょうか。

もし、知らない・読んだことないという方でも

おそらく「絵」を見れば「ああ! これか!」と思うに違いありません。

それくらい荒木先生の画風は特徴的で目を惹きつける魅力があります。

そんな超人気作『ジョジョの奇妙な冒険』を描き続けている

漫画家の中でもトップクラスの人気と実力を持つ荒木先生が

自らの手で書いた「漫画術」の本です

この本が発売されたのは2015年ですが、その当時も話題になりました。

業界のトッププロであり、自身がカリスマ的人気を集める漫画家による

本だったということももちろんですが、問題はその中身。

「え……? ここまで書いちゃっていいの?」

それくらい、漫画をどうやって作っているのか、

漫画にとって大切なものは何か、が細部にわたって書かれています。

荒木先生自身も「企業秘密を公にするのだから、正直、不利益な本」と

冒頭で述べられていますが、本当にその通りだと思います。

この本は漫画家を目指す人や『ジョジョ』ファンは当然ですが、

小説や動画など創作活動をしている方にも必読です。

さらに言うなら、以上の条件に該当しなくとも

「なんか最近仕事のモチベーションがあがらん……」と

少しスランプを感じている方にもおススメなんです。

それでは、それぞれの方に、おススメの理由をご紹介していきましょう。

目次  1.漫画家を目指す方、『ジョジョ』ファンの方へ
    2.創作活動をされている方へ
    3.なんだか最近モチベーションが上がらない、スランプだという方へ


1. 漫画家を目指す方、『ジョジョ』ファンの方へ

本書のタイトルにもある通り、荒木先生がこれまでの

漫画家人生で得てきた教訓やテクニックを詳細に説明してあります。

詳しい内容はここではあげずに

ザックリとどんな内容が書かれていたかだけを

ご紹介しておきます。

まずは漫画で一番大切な1ページ目の作りこみ方を解説し、

漫画を作る上で大切な4大要素を挙げてそれぞれ詳細に説明を加え、

投稿してプロを目指す人はどんな漫画を目指すべきかも丁寧に解説し、

最後には荒木先生自身の打ち合わせからネームを経て、

漫画が完成するまでの流れまで公開しています。

特に、荒木先生がデビューする前、投稿で編集部の目に留まるために

苦労した時代のエピソードやその経験から得た教訓は

現在進行形で漫画家を目指している方には必見だと思います。

なんたって、今や荒木先生はデビュー作品の選考を任されるほどの

活躍をみせているトッププロです。

「『ジョジョ』のような作品求む!」の触れ込みで

「荒木飛呂彦漫画賞」までできちゃうくらいですからね。

荒木先生が漫画作りでどんなところを肝だと考えているか、

おさえておくに越したことはありません。

それに、書かれている内容は荒木先生独特の考え方ではなく

「ストーリー作りは起承転結が大切」という

基礎中の基礎だと思えるものが多いです。

基礎中の基礎ならわざわざ荒木先生の本でなくとも……と

思えるかもしれませんが、やはり激しい人気争いに

揉まれてきたトッププロが語ると、

基礎だからこそ、いかに大事かよくわかるというものです。

それに、基礎って案外おろそかになりがちなものです。

しっかりと荒木先生に「基礎は大事!」と叩き込んでもらいましょう。

また、プロとしてずっと生活してきたからこその厳しい現実に

触れているところもありました。

「漫画を描くと、どれくらいのお金がもらえるのか?」

プロを目指す方ならぜひ知っておきたい情報ですよね。

ただ、これは現在ではなく、荒木先生がデビューされた当時の報酬の話なので、

現在の新人漫画家がどれくらいもらえるものなのか、そこまではわかりません。

ただ、やはり漫画「だけ」で生活するのは今も昔も厳しいというのは

変わっていないんじゃないかな……と、ライターの端くれになったことが

ある身としては、そう思います。

プロとしてデビューして、でもそれだけでは生活できなくて、

そういった漫画家には何がまっているのか、「厳しい現実もある」という

部分はよく読んで、真摯に受け止めましょう。

そして、本書では荒木先生の代名詞『ジョジョ』の各シーンや

キャラクターがどうやって作られたのか、教材として多用されています。

シリーズ屈指の人気を誇る「空条承太郎」にはどんな思いが込められているのか、

「東方仗助」と「吉良吉影」のラストバトルの苦労話など、

荒木先生本人の口(筆?)で語られています。

ファンなら読むだけでテンション上がる内容です。

何を隠そう、私も家に『ジョジョ』をおいてちょいちょい読み直している人なので

読みながらファンとしても大興奮しておりました……

そして当然『ジョジョ』のような人気作の作り方には

これから漫画を描こうとしている方にも創作のヒントがたくさんあります。

ぜひ、読み込んで『ジョジョ』越えの名作づくりの糧にしてほしいと思います。

2.創作活動をされている方へ

漫画家を目指される方はもちろん、なんらかの創作活動をしている人、

小説、映画、動画、絵画、音楽、デザイン……

なんでもいいです。

そういう方にも本書はおススメです。

前項で漫画家を目指す方向けにも書きましたが、

本書に出てくる「漫画術」は基礎中の基礎からかいてあります。

ですから、漫画術なので漫画を描く人しか関係ないと思ったら大間違い。

私自身、小説を書いていたりもするのですが、

読んでいる間中、ずっとメモとってました。

最初はこのブログに感想をあげるために取り始めたのですが、

気づけば必要以上のメモの量になっていました。

それくらい、創作活動に役立つこと「しか」書かれていません。

例えば、「漫画は1ページ目で読んでもらえるかどうかが決まる!」という

ことを丁寧に説明している章があります。

「これは漫画の1ページ目は絶対に最高の自信作に練り上げなければならない」と

読めば納得の理由や厳しい現実が書かれているのですが、

これは小説や音楽でも同じことですよね。

試しに読んでみた時、試しに聞いてみた時、冒頭で興味が惹かれないと

その後は見向きもしないというのは、

誰にでも思いあたるふしがあるのではないでしょうか?

「冒頭ですべてが決まる」、多くのことに共通する真理だと思います。

このように書かれているのは漫画術でも、創作活動に共通する普遍的な真理が満載です。

他にも、漫画ならではのキャラクターの絵の描き方なんかも

参考になる刺激がたくさん含まれていたと思います。

カッコよい絵を描くのか、かわいい絵を描くのか、

他にもいろいろな特徴を持った絵の描き方がありますが

例えば、文章に転用しても同じですよね。

気取った文章もあれば丁寧な文章もある、心理描写に気合をいれたり

風景の美しさに気合をいれたり……

こんな感じで、参考にできる部分がたくさんありますので

ぜひ作品のレベルアップに取り入れていってほしいと思います。

3.なんだか最近モチベーションが上がらない、スランプだという方へ

最後になりましたが、最近モチベーションがあがらない、

スランプだと感じている方にも本書は読んでみてほしいです。

というのも、本書が論じているのはあくまで「漫画術」なんですが、

その文章から荒木先生の漫画への熱き情熱が感じられるからです。

正直、本書を読んでいると「漫画って描くのむちゃくちゃめんどくさいな!」

と思ったりするんです^^;

たった1ページ、あるいはほんの小さなセリフでさえ、

考えなければならないこと、配慮すべきことは山ほどあるんです。

何気なく読み飛ばしている漫画の表紙、

あれに作者がどれだけの神経とアイディアを注ぎ込んでいることか。

読者が見るのはどうせ「1、2秒」にもかかわらずです。

苦労に対する見返りとしてそれはどうなんだ、と思えます。

それでも、荒木先生は漫画を描き続け、すでに還暦を過ぎられましたが

それでもまだまだ現役を続けているんです。

素直にすごいと思います。

何がそこまで荒木先生を駆り立てているのか。

もうそれは単純に漫画への愛、情熱です。

文章からひしひしとそれが伝わってきます。

本書の中には『ジョジョ』以外にも他の漫画だったり

映画などの話がたくさん参考としてでてきます。

それだけ『ジョジョ』という名作を作り上げる上で

他の作品を読んで、見て、考えて、

その上で漫画を描きまくったんだろうな、とよくわかります。

そこまで書き込まれてはないですが、

膨大な荒木先生の努力の歴史が文章の間から滲み出ている気がします。

そんな努力家の荒木先生でもデビュー前は苦労したし、

デビューした後も苦労したし、

なんだったら『ジョジョ』の連載が始まった後でも苦労しているわけです。

ご自分では天才だとは思っていらっしゃらないようですが、

私から見れば荒木先生は十分に「天才」です。

天才が努力しているのに、凡人の私たるや……と

日々の生活を少しでもいいから、頑張るようにしようと

そういう意味でも刺激を受けました。

同じように、刺激を受けて日々の活力を取り戻すのにも

最適な一冊だと思います。


いかがでしたでしょうか?

いろいろ書きましたが、シンプルに、本書は面白い本だと思います。

荒木先生、漫画だけじゃなくて文章力まであるんです。

面白い上に、人生にプラスになる刺激をもらえて

本当にいい本だと思います。

普段あまり漫画に興味がない方も

手に取ってみてくださいね。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。

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