読みたい本が増えちゃう、積読メーカー本『若い読者のための文学史』読書感想

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

今回ご紹介する作品はこちら↓

若い読者のための文学史  ジョン・サザーランド  すばる舎

皆さんは、文学史って詳しいですか?

私は全然詳しくないです。

ロマン派とか、写実主義とか、

それっぽい用語がいくつか頭に残っている程度で、

高校までに習った知識は、とっくに記憶から消え去りました。

だからこの本を読んで勉強し直すぞ!

……というのがこの本を手に取った動機なら、止めておいた方がいいかもしれません。

文学史とタイトルにはありますし、

確かに文学史としか呼べない内容ではあるのですが

内容がかなり大胆に偏っています。

〇〇派、とか□□主義、のような芸術の時代を表す用語も

全くでてこないわけではないですが、

ちょこっと出てくるくらいでほぼ省略。

世界的に有名な作家も名前が出てきただけで作品名も紹介されないことも多く、

特にアジア地域の作家はほぼとりあげられていません。

しっかりと学問として文学史を勉強したい方は、

他にもっと親切かつ、世界中の作家を網羅した本があります。

そちらを読みましょう。

では、この『若い人のための文学史』では

何を知ることができるか、なのですが、

「文学の発展の歴史」とでも言いましょうか。

神話から始まり、詩が生まれ、古代悲劇が生まれ、

小説という形を取り始め、

最初は作者の身近な話題しかとり上げなかったのが、

段々と作品に描かれる世界も広がりを持つようになっていき、

どこかの国の文学が、他の国に影響を与えて……と

最初は本の小さな芽だった文学という樹が、

徐々に幹が太く高くなり、そしてたくさんの枝に別れ、

多くの葉っぱを繁らせていくような、

文学の成長をイメージさせてくれる内容です。

この本自体が、文学の成長物語として、

一つの文学作品のようなストーリー性を持って書かれています。

本書は全部で40章にも分けて文学のいろいろな成長局面を

紹介していくのですが、

そのセレクションがかなり偏っています。

前半のほとんどはイギリス作家しかとり上げていないし

(筆者はイギリス人だからかもしれない)

他の文学史本では大々的にとりあげることはなさそうな

「検閲が文学に与えた影響」なんかも、

ちゃんと一つの章を使って持論を述べています。

そして筆者の持論もなかなかに個性的。

例えば、筆者は、「ロシアの名作は検閲制度が生んだもので、

むしろ検閲がなくなった後に、どれだけの名作が

生まれるかが気になる」と考えているのだそうですよ。

かなり筆者の個人的意見丸出しの内容ですよね。

こんな感じで、本書は文学史といいつつも、

論じている内容は読者がイメージする文学史とはズレている気がするし、

紹介している作家、作品への意見も一般的な評価ではなく、

あくまで筆者個人の見解を述べています。

ここまで読むと、「そんなにおススメの本ではないのかな?」と

思われたかもしれません。

いえいえ、そんなことはありません。

私はこの本は読書好きはもちろん、これから読書が好きになりたいと

思っている方には、読んでみてほしい本だなと思って書いています。

なぜなら、この本を読むと、猛烈に「ある症状」に襲われるからです。

その症状とは「とにかく紹介されている作品が読みたくなる」症状です。

本書で紹介されている内容は偏っているし、

筆者の個人的見解が中心ではあります。

でも、これ、筆者はわざとやっていると思うんですよね。

読んでいると「あれ? あの作家が全然紹介されてない!」とか

「この作品の解釈はこれで合ってるのか?」とか、

疑問、反論(あともちろん共感も)が浮かんでくるんですね。

文学史などという小難しいものを読まされているはずなのに、

筆者の好みや意見が丸出しになっているおかげで、

かなり心を揺さぶってくる内容になっているんです。

これは文学の面白さというものが、

心をいかに動かすかにある、ということをよく知っている人の所業です。

この本の真の狙い、それは文学史を解くことではなく、

この「本が読みたい!」という渇望を読者に起こさせること、にあるのでしょう。

まさにタイトル『若い読者のための文学史』通りの本だと思います。

文学史というのは単なる本を開かせるための釣りの餌みたいなものですね。

「もっと多くの古典作品を読んでほしい」

筆者のそんな願いがこもっているであろうこの本は、

「古典作品を読んでみたいけど何から読んでいいか分からない人」や

「古典作品って難しそうで無理と決めてかかっている人」におススメです。


いかがでしたでしょうか?

ちなみに、この本を読書好きが読むと、

積読が溜まることになりますので気を付けてください(経験者談)。

しかし、本というのは、読んでくれる人がいなくなると、

あっという間に歴史の流れの中に消え去ってしまうものでもあります。

これも、この本を読むと気づかされる事実です。

読書離れが言われて久しいですが、読む人あってこその作品ですので、

どんどん積むことだって文学にとっては良いことのはずです!

(たとえ部屋が物置状態になろうが、

 家族にいい加減にしろと言われようが……)

この本を読んでさらに読書を楽しみましょう~^^

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。

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