徹夜を覚悟して読み始めてください『ボーン・コレクター』読書感想

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

今回ご紹介する作品はこちら↓

ボーン・コレクター(上下)  ジェフリー・ディーヴァー  文春文庫

ドンデン返しの名手として知られる作者による長編サスペンスです。

デンゼル・ワシントンとアンジェリーナ・ジョリーで映画化されています。

映画化は2000年……ということは、原作小説が発表されたのはそれ以上前、

アメリカでは1997年、日本で翻訳版が出版されたのは1999年のことでした。

この記事を書いている現在が2021年なので、けっこう古い作品ということになりますね。

しかし、今読んでもボーン・コレクターはとても面白い!

ジャンルで言えばミステリで、科学捜査を駆使して凶悪犯に迫る警察小説でもあります。

昔の科学捜査の話を、より技術が進歩した現代に読んで面白いのか?

と思われるかもしれませんが、作者は取材力に定評のあるベストセラー作家、

科学捜査の詳しい技法にまで描写が及んでおり、

今読んでも古さを感じさせないリアリティがあります。

本作ではそれに加えて、被害者の命を救えるかどうかの瀬戸際を競う

時限付きサスペンスの要素もあり、

主人公のリンカーン・ライムとヒロインのアメリア・サックスの

一風変わったロマンスありと、

いろいろな要素で楽しませてくれる素晴らしい作品です。

読み始めたら、徹夜も覚悟してくださいね……!

それでは、内容をあらすじと感想と共にご紹介していきましょう。

目次  1.おおまかなあらすじ
    2.読書感想:本作ならではのイチオシのラブシーン


1.おおまかなあらすじ

本作の主人公はリンカーン・ライム(男性)。

彼は類まれなる頭脳の持ち主で、以前は鑑識のプロフェッショナルとして

犯罪捜査に貢献する警察官でもありました。

しかし、その彼を悲劇が襲います。

事件現場での鑑識捜査中に事故が起こり、脊髄を損傷。

首から上と左手の薬指を残し、全身の神経がマヒし、

ベッドで寝た切り状態の生活を余儀なくされたのです。

鑑識の本を書いたり、映画や音楽鑑賞に凝ってみたり……

彼はなんとか生活の楽しみを見出そうとしましたが

すべて失敗。

元妻や友人たちを遠ざけ、世捨て人のような生活を送っています。

そして最近、自律神経の発作が起きるようになり、

いつ植物人間になってしまうかわからない恐怖に怯え、

安楽死させてくれる医師を探し求め、やっと一人、

手助けしてくれる医者を探し当てました。

その医者に会うことだけが希望の日々。

そんなところから物語は始まっています。

それでは、おおまかなあらすじをご紹介します。

※ネタバレ防止のためところどころ、わざととばしたりぼかして書いています。

線路脇で埋められた死体が発見される。

不可解な現場の状況に、ニューヨーク市警のロン・セリットーと

その相棒ジェリー・バンクスはリンカーンの元を訪れる。

鑑識のプロで、寝たきりになった今でも冴えわたる頭脳の持ち主である

リンカーンに鑑識をしてもらい、事件の捜査指揮をしてほしいと

依頼しに来たのだ。

しかし折しも、リンカーンは待ち望んだ安楽死を幇助してくれる医師との面会中で

邪見にロン達を追い払おうとする。

しかし、目に入った証拠物件から、

つい、犯人が次の犯行現場と犯行時刻の予告を残していると、助言してしまう。

ロン達はそれをとっかかりにリンカーンを説得し、

リンカーンのために最高のメンバーを揃え、捜査チームを結成する。

そのメンバーの中には、パトロール警官で広報課に異動するはずだった

ヒロイン、アメリア・サックスも含まれていた。

彼女は動けないリンカーンの代わりに、犯行現場へ向かい、

リンカーンの目、鼻、耳、手足となって鑑識作業を行うように命じられる。

「なぜ鑑識など縁がない私が?」

戸惑うアメリアだが、第1の犯行現場で、他の警官が誰もやろうともしなかった

現場保存を、唯一、彼女だけがやろうとしたことがリンカーンの目に留まったのだ。

リンカーンは第1の犯行現場の証拠から、第2の犯行現場を特定した。

ロン達にまじり、アメリアも一緒に現場に直行する。

そして、アメリアはインカムを通してリンカーンの指示のもと、

鑑識作業を行うよう命じられる。

現場は吐き気を催すほどひどい状態で、それでもアメリアは

我慢を重ねて現場から犯人の残した次の犯行予告を回収していく。

しかし、リンカーンの要求は留まるところを知らず、

犯人になりきって考えるよう言われたり、

ついには被害者を冒涜するような指示を受け、

堪えきれなくなったアメリアは現場を放棄、

上司の元に行き、リンカーンの横暴を訴えた。

しかしリンカーンはアメリアのそんな様子を意に介すことなく、

集められた証拠物件を検証していく。

リンカーンの横暴な様子にアメリアは怒りと疑問を感じるが、

リンカーンは鑑識捜査に信念をもっていた。

ロカールの法則と呼ばれる、犯罪の加害者と被害者は、

どんなに気を付けていても

互いにわずかなものであれ、物体を交換し合っているというものだ。

リンカーンはその法則に従い、全ての証拠も見逃すまいと、

アメリアに厳しい指示をだしていたのだ。

そうは言っても鑑識捜査を全てにおいて最優先するリンカーンの

捜査方針に反発心を抱くアメリア。

リンカーンは構わず、証拠品から特定に成功した次の犯行現場へと

アメリアを送り出す。

そして彼女は、自分の意に反して、リンカーンの指導の元、

鑑識捜査の腕をメキメキとあげていく。

ところが、そこにFBIの横やりが入る。

FBIはアメリアが訴えたリンカーンの横暴な捜査を弱みに

強引にリンカーンの元から捜査権、証拠品、そしてアメリアを

奪い去っていく。

失意にくれるリンカーンはやけ酒に浸る。

一方、リンカーンを裏切る形になってしまったアメリアは

FBIの捜査方針に疑問を抱き、大胆な行動にでるのである……

このあと、物語はスピード感を増して、ピンチの連続になるのですが

それをリンカーンとアメリアがどう乗り越えていくのかが読みどころです。

リンカーンは膨大な専門知識を武器に、アメリアは柔軟な思考と抜群の行動力という

違った持ち味を活かして活躍してくれます。

謎解きの面白さと、アクションシーンの激しさが交互に繰り返されて、

徹夜しても読みたい面白さ抜群の展開になっています。

2.読書感想:本作ならではのイチオシのラブシーン

本作の魅力をあげよ、と言われれば、

かなりの数があげられます。

 ・リアリティある科学捜査

 ・動機不明の犯人の不気味さ

 ・被害者の命がかかった時限付きの謎解き

 ・リンカーンの障がい者でありながら平等で率直な態度を求める複雑な性格

 ・どこか影のあるアメリアの謎

 ・リンカーンは自殺を思いとどまるのか

などなど……まだまだ書けますが、とにかくあらすじには落とし込めきれない

多くの魅力が詰め込まれた作品です。

メインの凶悪犯との追いかけっこが面白いのはもちろんなんですが、

それ以外にもリンカーンとアメリアの絆が徐々に育っていく過程も

本作のお楽しみ要素の一つです。

出会い方も、その後の交流の仕方も普通の男女のやり取りとは

著しく離れた内容から始まった2人ですが、

心の距離が縮まって信頼関係を結んでいく様子は

殺伐としたメインストーリーとは別のドキドキ感を与えてくれます。

ここでは数ある2人の心揺り動かしてくるシーンの中でも

私が1番「素敵だ……!」と思ったシーンをあげておきます。

それはアメリアの裏切りがリンカーンにバレたのちに

2人が仲直りし、なんだかんだあった後、

リンカーンの自殺をアメリアが止めた直後のシーンです。

アメリアは、それまでにリンカーンに反発したり、暴言を吐いたこともありましたが、

彼の平等で率直な意見を好む聡明な思考や鑑識捜査へかける熱意に触れ、

彼に恋愛的意味で好意を持ち始めています。

そして、リンカーンも自分の代わりに現場に立ち、

予想以上の成果をあげてくれるアメリアの賢さに

彼女に惹かれていることを意識しています。

恋愛感情を持ちあった男女が2人きりの室内にいるシーンになるわけです。

他の小説であれば、見つめあって手を重ねたりして……

みたいなラブシーンになるのかもしれませんが、

リンカーンはベッドから動くことはできません。

よくある煽情的なシーンにはなりえるはずがないんです。

それでも、このシーンはものすごくロマンティックなものに

私の目にはうつりました。

彼等は触れ合ったりする代わりに、

長い、長い会話を重ねます。

話題はお互いの過去の話です。

結婚、離婚、仕事での取り返しのつかないミス、人の噂……

中には人には話したくないであろう傷も含まれています。

でも、お互いに知りたい、知ってほしいと語り合い、

その傷を癒し合うようにまた、言葉を重ねます。

話されている内容は全く甘美なものではありません。

むしろその逆に位置していると言っていいくらい痛々しいものです。

でもそれだけに、2人が心をさらけ出していることが良く伝わるんです。

素直になった心にどんどん互いに思いが募り、

静かに情熱を交換し合う素敵なシーンだと感じました。

今まで多くの作品を読んできましたが、

ただ会話しているだけのラブシーンというのは珍しいと思います。

甘くもない内容の会話だけで、こんなにもドキドキさせられるものなのだなと

作者の筆力に驚かされました。

この記事を見てくださっている皆さんにも

どんなふうに感じるか、

読んでみてほしいイチオシのシーンです。


いかがでしたでしょうか?

ボーン・コレクターは、人気がでたのか、作者が気に入ったのか、

この後シリーズ作品が次々発表され、日本でも翻訳版が出版されています。

本作に登場したニューヨーク市警のメンバーやFBIのフレッド・デルレイなどは

シリーズ通して活躍し続けるので名前を覚えておくといいですよ。

はずれがないくらい面白い作品ばかりなので、おススメです。

読んだらこのブログでもご紹介したいと思います。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。

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