ブログで紹介していい作品なのか?問題児的内容の『夜の黒豹』読書感想

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

今回ご紹介する本はこちら↓

夜の黒豹   横溝正史   角川文庫

このブログのあちこちで「この作家さん大好き」と

連発しまくっている私ですが、

何を隠そう、横溝正史先生、大好きです!

我が家の本棚の一角は横溝正史で埋まっております。

中でも金田一耕助シリーズが大好物なんですね。

まだ子供の頃、お正月といえば、こたつに入りながら観る

横溝正史原作の『八つ墓村』『女王蜂』『犬神家の一族』などの

スペシャルドラマを毎年、楽しみにしていました。

現在まで続く推理もの好きは横溝正史先生が原点といっても過言ではありません。

今回ご紹介する『夜の黒豹』も金田一耕助シリーズの1作であり、

しかし他の金田一耕助シリーズとは少し趣の異なる作品でもありました。

舞台は山奥の因習残る田舎村ではなく、東京。

呪われた一族も登場せず、被害者は都会の女性たち。

最後に皆を集めてあっと言わせる名推理の披露もなく、

しかし金田一耕助の警察を出し抜くスタンドプレーあり。

などなどなど! 新しい金田一耕助の世界をみせてくれる作品でした。

ファンなら読んでおいて損はない1冊、

あらすじと感想と共に、ご紹介したいと思います。

目次   1.おおまかなあらすじ
     2. 中盤までは問題児、でもそれ以降が面白い!


1.大まかなあらすじ

事件の始まりはとあるホテルの1室で起こった殺人未遂事件だった。

一人の女が男に首を絞められ殺されかけた姿で発見された。

女の胸には犯行を誇るかのようにトカゲの絵が描かれていた。

発見したホテルのボーイは、被害女性が「誰にも言わないで」というのを

聞き入れ、この夜の出来事は幻となった。

しかし、1週間後、別のホテルで殺人事件が発生する。

被害者の女性の胸にはトカゲの絵が描かれ、首を絞められて殺されていた。

金田一耕助は警察と共に捜査に乗り出すことになる。

事件が新聞にのると、最初の殺人未遂事件の発見者である

ホテルボーイが警察にやってきて、冒頭の事件の話をする。

彼は犯人と思われる男も目撃しており、

男の姿は全身黒ずくめで、顔を隠し、

黒豹のようなオーバーを着ていたという。

犯行現場の様子から見て、同一犯である可能性が高く、

世間はロンドンの殺人鬼、ジャック・ザ・リッパーのような殺人鬼が現れたと騒ぎ、

捜査本部も変質者による犯行とみて捜査を進めていた。

しかし、金田一耕助は一人、残されたトカゲの絵の謎が気にかかるようであった。

そして次なる犠牲者は犯人を目撃していたホテルボーイであった。

ホテルボーイのガールフレンドの証言で、

最初の被害者はスーツケースを持参していたことがわかった。

金田一耕助は、その中身が何だったのか、一人、考えを巡らせていた。

その後、第4の事件が起きる。

今度の犠牲者はまだ若い少女であった。

犠牲となった少女の身辺を調査すると、

彼女の複雑な家の事情と、奔放な生活がわかってきた。

思春期に実母が再婚したことに始まり、

その実母に横恋慕していた従兄との荒んだ交際、

その後の実母の事故死などなど……

彼女の素行が荒れるに十分な複雑さであった。

そして警察は有力な容疑者として、

少女の元交際相手でもある従兄の存在に目をつける。

しかし、金田一耕助はその説には同意せず、

一人、別の方面から事件に迫ろうとする。

警察が従兄の自宅に向かうと、

彼はどこかへ消え去った後であった。

彼は一体どこへ消えてしまったのか?

警察がその行方を必死で追う中、

金田一耕助は警察の捜査からは離れ、

彼独自のツテを使って追い詰めていく……

2.中盤までは問題児、でもそれ以降が面白い!

突然ですが、カストリ雑誌って言葉をご存知でしょうか?

戦後に流行った、性的刺激と猟奇的刺激に溢れた雑誌のことです。

本作品の序盤から中盤すぎまでは、まさにこのカストリ誌的雰囲気が漂っています。

横溝正史もカストリ誌的要素を作品に取り込んだ作家ではありますが、

「これは少々……やりすぎでは?」と

食傷気味になる感じのえぐみが前面に出ていました。

この時点では正直、悩んだのです。

「この作品、ブログで紹介できるのか?」、と……

万人におススメできるとは言いかねるし、

同じようなテイストの文章が続いて中だるみもしてるしな……

と、思っていたのです、が。

物語も後半に入り、金田一耕助が動き出すあたりから

がらりと雰囲気が変わります。

それまでの犯人の異常性はなりを潜め、

実は知能犯による計算された犯行であることが分かってくるのです。

しかもその犯人の描いた犯罪地図はかなりの大きさなんです。

それこそ年単位の昔から、犯人の犯罪は始まっています。

真相が明らかになるにつれて、

事件の奥深さに驚きの連続でした。

さらに、本作では金田一耕助が徐々に犯人に迫っていく

緊迫感のある捜査の様子がしっかりと書かれています。

実はこれ、金田一耕助シリーズでは珍しいんじゃないかと思うんです。

金田一耕助の活躍は最後の最後、「名探偵、皆を集めてさてと言う」

という言葉がぴったりの、推理披露がほとんどで、

その他のシーンは事件に首を突っ込んで「まだわかりませんなあ」と

言っていることが多いイメージです。

しかし本作では、仲良しの等々力警部にも

「僕は単独で動きますね」と宣言をして、

警察には不可能な危ない橋を渡ったりする姿が読めるんです。

しかも、本作は読者も推理に参加できる内容の小説に仕上がっています。

金田一耕助シリーズは推理小説とジャンル分けされていると思うんですが、

実際にシリーズを読んで推理しながら読んでいる読者はそんなに

いないんじゃないかな……と思います。

というのも、作品の傾向の違いで、アガサ・クリスティーのような

読者に堂々挑戦を突き付けるような作風ではそもそもないわけです。

それこそカストリ誌的刺激を散りばめ、ドキドキワクワクさせてくれる

読んで面白いことが1番のエンターテイメント性の方が重視されています。

でも、この作品では様々なヒントをばら撒いてくれているので、

真相に金田一と共に辿り着く読者もいるのではないかな、と思います。

こうして終盤は金田一耕助の活躍につられるように一気読み状態になり、

「これは紹介しなければならない!」

と思い直し、今この記事を書いています。

中盤すぎまでのカストリ誌的雰囲気は事実なので

苦手な方にはおススメしません。

しかし、それでも金田一耕助ファン、横溝正史ファンには

一読の価値ある面白い作品だったと、断言できる終わり方でした。


いかがでしたでしょうか?

重ねて言いますが、

『夜の黒豹』は中盤まではえぐみが強い作品です。

それを乗り越えた後にある面白さは

「さすが大横溝! 構成力がすごい!」

と太鼓判を押せるのですが、

苦手な方は気を付けてくださいね^^;

横溝正史には『八つ墓村』のような代表的作風の

作品以外にも面白いものがいくつもあるので、

いつかご紹介させていただきたいと思います。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。

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