読書感想|ドラマ化も納得?!大人気ミステリ火村英生シリーズ、英国庭園の謎(有栖川有栖)

元ライターが作家の目線で本を読んでいく当ブログにようこそ!

斎藤工さんと窪田正孝さんのW主演でドラマ化された火村英生シリーズの1冊をご紹介します。

『英国庭園の謎』 有栖川有栖先生作 講談社文庫より出版

火村英生シリーズの中でも、タイトルに国名が入っているものは「国名シリーズ」と名付けられており、本書はその4作品目にあたります。

このシリーズはミステリの中でも本格派に分類され、きちんと読んでいけば読者でも謎ときに参加できるようになっています。

ちなみにわたしのVS有栖川先生の勝敗は?戦全敗……難しい。

なんとなく犯人はわかることがあっても、それは漠然と文章の印象から当たっただけで、推理が当たったとかではないのが悔しい><

『英国庭園の謎』は短編集なので、1作品ずつ、感想を書いていきますね。

目次
 1.雨天決行
 2.竜胆紅一の疑惑
 3.三つの日付
 4.完璧な遺書
 5.ジャバウォッキー
 6.英国庭園の謎
 7.この作品が好きな方へおススメする本

※火村英生がどのように真相にたどり着いたのか、までネタバレすることはありませんが、真犯人が誰だった、くらいは感想の中で触れることもありますので、嫌な方はご注意ください。


1.雨天決行

簡単なあらすじ

夜の公園で女性エッセイストが殺された。その日は雨が降っており、犯行の前後で止んだことがわかっている。現場の周囲には謎の足跡も残されているが犯人のものかは不明である。編集者や旧友、レストランのシェフが容疑者としてあげられるが……

名探偵といえば助手がつきもの

火村英生シリーズは、火村英生が名探偵として活躍するシリーズです。

名探偵につきものなのが、助手役。ホームズに対するワトソンですね。

火村英生シリーズでは有栖川有栖という作者と同名の、職業も同じミステリ作家が助手としてでてきます。

この有栖川有栖くん、助手としてはあまり役に立ちません(異論がある方はごめんなさい)。

ミステリに対する造詣が深いせいか、かえってトンチンカンな推理をしたりするくらいです。

しかし、作中では迷助手の有栖川有栖も、作品という視点で見ると、大変優秀な助手に変わります。

誰の目線で見るか、そう、作者です。

会話以外の地の文は、大体が有栖川有栖の一人称になっています。

火村英生と一緒に容疑者に聞き取りするときも、現場検証をする時も、有栖川有栖の一人称で語られるわけです。

つまり、読者は強制的に有栖川有栖の視点で事件を見ることになるわけです。

容疑者や事件にたいする感想を、有栖川有栖は雄弁に地の文で語ってくれますが、これがかなりのミスリードを担っているわけです。

この雨天決行でも、まんまとしてやられました。

だから謎解き難しいのか……

2.竜胆紅一の疑惑

簡単なあらすじ

作家の竜胆紅一は身の回りに頻発する不審な事件に、家族に殺されるのではないか、という疑惑を抱いている。
竜胆宅で起こった放火事件をきっかけに、火村英生と有栖川有栖のもとに、調査依頼がくる。
確かに、家族全員に彼を殺す動機も機会もありそうなのだが…… 作家の神経過敏か、それとも殺意が彼を襲っているのか?

短編はそもそも難しい

どんでん返しの名手として知られる作家にジェフリー・ディーヴァーがいますが、彼は作家志望者にたいする講義もしていたりします。

その講義の中で語られた言葉の中に「そもそも長編と短編では書き方がまるで違う」というものがあります。

これは創作活動を試みたことがある人なら頷けるのではないでしょうか?

短編の方がより難しい、とわたしは感じました。

そもそも、尺が短いなかで読者が驚く、あるいは楽しめるような伏線を張ったりすることが、難しいのです。

しかし、この『英国庭園の謎』は短編集ながら、間違いなく面白いです。

『竜胆紅一の疑惑』を題材にして、どんな仕掛けがしてあるか見てみましょう。

この作品のミステリ上の分類は「未必の故意」ってところでしょうか?

一つ一つは可能性の低い罠でも、たくさん仕掛けると、殺人に至る可能性は高くなる、というやつです。

家族が容疑者としてあがり、家族へ念入りな聞き込みをします。

しかし、家族の誰が真犯人という指摘もしないままに、火村英生は作家に簡単なアドバイスをしたのみで作家宅を去ります。

そして、ここまで残り数ページというところで、物語は急展開します。

犯人は家族ではなく隣人で、冒頭にちらりと出たほかは、作家宅を去る直前にまた少し出てくるくらいです。

犯人が、聞き込みまでして、しっかりと性格まで作られた家族ではなく、隣人だったことだけでも意外ですが、仕掛けはまだあります。

犯人はなぜ作家を殺そうとしたのか? その動機にタイムリーさや、背筋が寒くなるような怖さが秘められています。

ここまで仕込んで、やっと面白い短編の出来上がりです。

やはり短編は難しい……

3.三つの日付

簡単なあらすじ

有栖川有栖が3年前に出会った男が殺人事件の容疑者で、そのアリバイを裏付けている写真に自分も一緒に写っていたことが判明する。
写真と、その時に書いたサインの日付を見る限り、アリバイは成立しているようにみえるが、容疑者は犯人ではないのだろうか?

どうやって思いついたの?

トリックとか云々の前に、どうやって思いついたのかな?というネタでした。

日付の誤解や写真に一緒に写っていたカレンダーに謎解きのヒントがあるのですが、普通に生活している人には発想すらないネタだと思います。

あとがきを読むと、どうも作者の実体験をもとに書かれたもののようで、作家ならでは、そして作中の有栖川有栖がミステリ作家である、という設定が生かされている作品でした。

4.完璧な遺書

簡単なあらすじ

犯人の一人称で語られる、少し毛色の異なった作品。
犯人は犯行を自殺にみせかけるため、遺書をでっちあげることにする。
完璧に見えた遺書だが、火村英生にあっさりと見破られてしまう。
その理由は?

読者が気に入らない個性を演出

本を読んでいると、いつの間にか主人公に肩入れしたりすることが多いと思います。

ましてや、三人称ではなく一人称の「俺」で語られる物語ならなおさらです。

この作品は珍しく、犯人の一人称により語られていますが、この作品の「俺」に感情移入する人はまずいないかと思います。

そもそも犯人だということが読者に最初からわかっている、ということもありますが、「俺」の性格にも仕掛けがありそうです。

「俺」は自分のことを賢いと思っている。

「俺」は卑怯な性格をしている。

「俺」は陰湿な性格をしている。

などなど、読者は彼の一人語りから「なんかこいつ、嫌なやつだぞ」という印象を植え込まれます。

そして、「早く火村英生にこんなやつの作った遺書なんて見破ってほしい」という期待感が煽られるのです。

最後には読者の期待通り、スカッと、犯人のトリックは見抜かれ、謎が解けた快感と、嫌な奴が成敗された爽快感の両方を味わうことになります。

5.ジャバウォッキー

簡単なあらすじ

前に警察に協力したときに、逮捕に至った犯人が有栖川有栖と火村英生に電話をかけてくる。
電話の内容は支離滅裂ながらも、なにか大事件を起こそうとしていることと、実は止めてほしいという願いが見え隠れしている。
犯人が話した内容に、彼の居所のヒントが隠されているようだが……?

言葉遊びの暗号が面白い

個人的には一番好きな作品です。

アリスシリーズでよく知られるルイス・キャロルの作品にでてきそうな言葉遊びのような暗号が特徴的です。

犯人の焦りと精神不安定さがよく表現されたセリフの中に隠されたわずかなヒントをもとに、火村と有栖川が彼の居所を突き止めようと頭を絞ります。

言葉遊びが面白くて、推理の方はほとんど自分ではせずに、探偵役2人の解説を読んで楽しんでしまいました。

このシリーズには珍しく、タイムリミットがある焦燥感が新鮮でもありました。

常人には解けそうもない、難解で感覚的な暗号を作る犯人ですが、冒頭の火村のセリフ「人間そう簡単にひとりきりになれもしないのさ」に救われたのだろうな、と思うと最近起こる様々な事件にも通じるものを感じます。

6.英国庭園の謎

簡単なあらすじ

英国風の庭を持つ大富豪が殺された。大富豪は自宅で自作の暗号に基づく宝探しを、親族・友人たちとしている最中だった。
火村と有栖川は犯人を突き止めるためにも暗号解読と宝探しを行う。

解けるかもしれない暗号

読者に与えられたのは、犯人探しではなく、暗号の謎です。

これが本書の中では一番、解ける可能性が高い謎なのではなでしょうか?

ただ、読んでるだけでは絶対無理ですね。

紙と鉛筆を用意してください。

紙と鉛筆の用意が必要なこと、そして作中で誰かがヒントをぽろっと言っています。

この作品はミスリードの嵐で、伏線かと思っていたものがただの描写だったりと、本当のヒントを捕まえるのは難しいですが……

ミスリードの嵐といえば、『謎解きはディナーの後で』の東川篤哉先生もうまいですよね。

久しぶりに読みたくなりました。

7. この作品が好きな方へおススメする本

この作品が好きな方は、おそらく本格派のミステリが好みだろう、と思いますので、本というか作家名をいくつかあげさせていただきます。

・綾辻行人(特に『十角館の殺人』から始まる「館シリーズ」)
・三津田信三(『厭魅の如き憑くもの』から始まる刀城言耶シリーズ)
・法月綸太郎(作家名と同じ「法月綸太郎シリーズ」)

我が家の本棚で見つかった本格派の推理作家さんです。
先生たちの作品には、名探偵がでてくるシリーズありますので、お気に入りの名探偵が、見つかるといいですね!


いかがでしたでしょうか?

有栖川有栖先生の「火村英生シリーズ」はドラマも新シリーズが始まるようで、原作ファンとしてはうれしい限りです。

読んでいると、脳内で斎藤工さんと窪田正孝さんが演技してくれるのも嬉しいですね笑。

「火村英生シリーズ」は全作読破したいと思っていますので、読んだらまた感想を書きたいと思います!

みなさんの感想もコメント欄で書いていただけると嬉しいです(ちゃんとお返事しますよ)。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

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