弱虫ペダル #63

渡辺航先生が少年チャンピオンで連載中の大人気自転車ロードレース漫画、最新刊を読みました。
いよいよ長かった2年目のインターハイの総合優勝チームが決まります……!
優勝チームが決まり、そのあとの選手たちの様子と表彰式まで収録されており、巻末には次の新展開予告も告知されていたので、2年目インターハイ編はここで綺麗に完結、といったところでしょうか。
それでは感想を書いていきますね。

※この後は軽微なネタバレ(勝敗の結果は記していません)を含みますので、嫌な方はご注意ください。


簡単なあらすじ

ゴールまであと300メートルを主人公の小野田坂道とライバルの真波山岳が死闘を繰り広げる。
この一言につきます。
後ほど触れますが、前巻までで、2人がこの最後の勝負に賭ける思いや、これまでの過去の振り返りはほぼ出し切りました。

ですから、純粋にゴール前で繰り広げられる勝負だけがクローズアップされています。

この巻で最も大切にされたもの

それはスピード感です。

これまでの弱虫ペダルの傾向だと、けっこうギリギリ、ゴール手前数10メートルとかいうレベルのところで回想シーンが入ったりしていました。
なぜ、今、このキャラクターはこの勝負に勝ちたいと思っているのか、という理由を過去を振り返ることで読者に納得づけ、応援させる気持ちにさせるためですね。

勝負決着の直前にキャラクターたちの心情を描いた方が、読者には親切です。
私にはありがちなのですが、結構漫画の最新刊が出て、読み始めると前巻までの展開をすっかり忘れている……ということがよくあります^^;
なので場面最大の盛り上がりである勝負の決着の前にキャラクターたちの心情描写を置いてくれると、私みたいな忘れっぽい読者にはちょうどいいのです。
ですが、これだと当然のことですが少し間延びします。
展開が遅く感じられる、ということですね。

そして、インターハイ最終日の総合優勝が決まる場面、勝負しているのは主人公とその最大のライバルという、状況的にも設定的にも最高に盛り上がる状況で、あえて回想シーンはすべて前巻までで終わらせたうえで、ラストスパートの様子のみに描写を絞りました。
なぜでしょうか?

それが最初に書いた、スピード感を大切にするためだったのではないかと思います。
ずっと連載を追い続けた読者は既に知っていることですが、主人公小野田とそのライバル真波は昨年、1年目のインターハイ決勝でも最後の勝負を競い合っています。
つまり、あらすじだけ書くと1年目も2年目も同じ展開になっているのです。
展開が同じであるからこそ、作者は1年目と2年目の2人の勝負の差がどこにあるのか、読者にしっかりと理解してもらうらために、これまでに2人のライバル関係や、優勝後の小野田の戸惑い、敗者になった真波の後悔が何度も触れられてきました。
前回の勝負から1年経って、明らかに2人は成長し、勝敗に賭ける覚悟も一回り大きくなって、2回目の勝負に挑んでいます。
今回こそは絶対に負けられない、勝ちたい、2人の気持ちは1年目のインターハイの終わりからずっと読者に訴え続けられてきました。
だから、勝負決着の直前に過去も心情の描写が一切なくても、読者は2人の死闘に浸りきることができるようになっていたのです。
お互いの存在を肌で感じながら目の前のゴールだけを見続ける2人の勝負の姿は、読んでいて本当にしびれました。読後は2人一緒に走り切ったような爽快感すら感じました。
何十話と重ねたこれまでの描写の厚みと、勝負のみを描いたラストがあったからこそだと思います。

すべての読者を納得させることはできない

2年目もあらすじだけ書けば同じ展開で、賛否両論あっただろうな、と思います。
弱虫ペダルは60巻以上続く長編作品で、メディアミックスも盛んにおこなわれ、魅力的なキャラクターが多数登場する、多くのファンを魅了してきた作品です。
それゆえに、どんな決着をつけようと、すべてのファンを納得させるようなラストには、どうあがいてもならなかったのではないか、と思います。
本音を言えば、自分の好きなキャラクターに活躍して、勝ってほしいと思うのがファンというものです。私も手嶋先輩にゴールスプリントを走ってほしかったです笑。

2年目のインターハイを通して、作者である渡辺航先生に求められたのはバランス感覚だったと思います。
魅力的なキャラクターたちをそれぞれ活躍させ、勝つにしろ、負けるにしろ、そのキャラクターが最高にかっこよくなるように魅せる展開を考える。
さらに、メインの3校、総北高校、箱根学園、京都伏見のチームのパワーバランスと選手層の厚みを考慮した勝敗の配分。
考えるべき要素はたくさんあります。これを3日間の各勝負所にそれぞれ落とし込んでいく。
気の遠くなるような繊細な作業です。
表彰式の前に各校が取得した勝負のまとめがでてきますが、よく見ればちゃんとしたバランスがとれた結果になっています。
最初にどこまで決めてあったのかは、読者である私にはそれこそ推し量ることしかできませんが、大ヒット作を創作する実力のある作家さんにしかできないバランス感覚というものがあるのだと思います。

いかがでしたでしょうか?
弱虫ペダルは私の大好きな作品です。もしまだ読んでない方がいたら、とてもおススメです。
メンタルが強いキャラクターが多数出てくるので、明日は勝負の日!というときに読むと、熱い気持ちで臨むことができそうですよ。
ここまで読んでくださってありがとうございました!

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