例えて言うなら

3歳の息子との日々を小説風に記していく、小説風育児日誌です。
ではどうぞ!


2日前から息子が風邪をひいている。
熱と咳と鼻水という典型的な風邪症状で、起き上がる元気もなく、ごろごろと居間に敷いた布団に寝て安静にしている。
3歳の男の子ともなれば、普段は猿のごとく部屋中を走り回り、危ないという制止も聞かずに高いところにやたら登りたがり、「ママ! ねえ! 見て!」と5分間に10回は言ってるんじゃないの?というせわしなさ、のはずなのだが、さすがに風邪で高熱が出ているときは大人しい。
布団に転がって指をしゃぶりながら、一言も発せず、ぼけーっとしている息子の姿は、大変哀れを誘う。
ちょうど土日だったので、パパも一緒に看病をしていたのだが、本人がほぼ寝ているだけで、たまに飲み物を欲しがるくらいしか欲求を示さないので、看病とはいえ、ただそばにいるだけである。
退屈なのかと絵本を読んでも、普段は2回3回とねだるのに、1回聞けばもう十分、といった表情だ。
普段はうるさくせがまれると困ることもあるが、こうもしおらしいと物足りなくなってくる。
家族3人、そろって週末を迎えているのに、家の中の空気は重く感じられた。
「なんか、さあ、息子が風邪ひくと、家中の火が消えたみたいだな」
ぽつりとパパが呟いた。
それはよく聞く比喩表現だが、この場合、とても当てはまるように思えた。
火が消えた……そう、家の中に何かが足りない感じがするのだ。
もちろん、息子の元気な姿がそうなのだろうが……
「あ、そうか」
そこで思いついた。我が家に必ずあるものが、ここ数日姿を消している。
それは息子の笑顔だった。
風邪をひいてから息子の笑顔を見ていない。
普段はにこにこと笑ってとても愛想のいい子なのに。
「なんだか息子は我が家の天照大神みたいだね」
天照大神は日本神話の神様である。女神さまで太陽の化身でもあり、気性の荒い女性でもある。ある日、弟神の乱暴な振る舞いにはらをたて、岩の中に閉じこもり、世界は闇に閉ざされてしまうのだ。これでは困ると、ほかの神々があの手この手で彼女を岩の中から引きずり出そうと苦労する話が有名だ。
息子は神話の女神さまのように横暴なところもあるけれど、笑顔が隠れてしまうと家の中は、こんなにも暗い。
「早く良くなってね」
頭をなでると力なくコク、っと頷いてくれた。

そして、この3時間後、昼寝から目覚めた息子は、熱が下がり、猿みたいな活躍を家中で披露し、これはこれで困った、とやはり私の頭を悩ませるのだが、元気が何よりである。

以上です!
子供って体調崩す時もあっという間ですけど、治るときもあっという間ですよね。
若い回復力がうらやましい、母35歳です。
ここまで読んでくださってありがとうございました!

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