文章を買っているのではない

読書感想ですが、けっこうひどいことを書くつもりなのでタイトル等は伏せます。ジャンルは育児書で、部数を見る限り、超ヒット本です。
著者自身、男の子を2人育て上げ、その育児方法に相当にこだわりを貫いたようで、そのこだわりの内容を本にまとめています。
本文中には明示されませんが、一応科学的根拠もある、とのことです。

育児書ですので、世の中のお母さんたちは「どう子供を育てるべきか」「こういう壁にぶち当たった時、どう解決すべきか」といったことを求めて、本書を手に取っています。本書では「運動」「手先の器用さ」「絵を描く」など、幼児のうちに発達させておきたい事項をかなり詳細にわけ、一つ一つに項目は4P以内におさめ、簡潔に、持論を展開しています。
読みやすい構成にはなっていますし、時間の無い母親たちには、たった4Pで一項目が終わってくれるのはありがたい、ですが、日本語がひどい。
思いついたまま、書いて、あまり推敲もされてないんじゃないでしょうか? 文章がものすごくへたくそでした。仮に増刷も何回もされているであろう部数を誇る本なのだから、どこかのタイミングでリライトすればよかったのに、とさえ思います。
そして、一番ひどいのは、それぞれの項目に対して結論らしきものを纏めていないことです。事実として「こんなことがあった、からこうした」ということは書いてあっても、だからなに?状態で読者、本書の場合は母親は放置されてしまうのです。著者の経験したような事象がすべての母親に起こるとでも、この著者は思っているのでしょうか? 仮にも育児書なら、育児に対するエッセンスを明記すべきです。経験から何を学んで、どこがポイントで、普遍的に生かせるような結論を導き出す。ここまでが著者の仕事です。読者にそれを求めるのは、ジャンル的にもお門違いでしょう。

とまあ、ここまでてひどく批判していますが、今回読んだ本は、売れているのです。爆発的ヒットと言ってもいい部数を売り上げたのです。
つまり、読者はこの本のひどい日本語や結論のない論調に対しては、あまり気にならなかった、ということなのです。
では、読者はこの本の何に対してお金を払ったのでしょうか?
答えはこの著者の経歴にあります。
詳細を述べるとタイトルを伏せた意味がなくなってしまうので、ここもモザイクのかかった言い方をしますが、著者が育て上げた息子二人は客観的に見ても立派に育っているのです。既にロールモデルのいる育児法である、ということが本書の売り上げを支えているのです。

これは、私にとって朗報なような、悲報のような、正答のない禅問答を突き付けられたような気分になりました。
文章が下手、内容が薄くても本は売れる。
読者は本の内容にお金を出しているわけではない。
私には文才も、読者を引き込むような圧倒的なプロットや構成を練れるわけでもありません。
しかし、そんなものがなくてもどうやら本は売れるらしい……
ただし、それには客観的に「すごさ」がわかる特長がなければならない。
実は文才と構成に秀でていても、ぱっとした特長がないがために埋もれている名著があるのではないか……その本は今後、作者の没後でも認められる可能性が残っているのだろうか……

考え始めると、文章など書く気が起きなくなりますね。ただ、自分の書いたものを信じるのみとするのが、実はまっとうな作家・ライターへの道なのかもしれません。

読んでくださってありがとうございました!

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。

前の記事

なんか怖い

次の記事

案外いるのかも