文章も上手に、誘惑にも強くなる!?書かずに文章がうまくなるトレーニング(山口拓朗)読書感想

元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!

今回ご紹介する本はこちら↓

書かずに文章がうまくなるトレーニング  山口拓朗  サンマーク出版

「伝わらない悲劇から抜けだそう!」をモットーに活動する

文章術トレーナー、ライターとして活躍されている方の著述です。

この本の主旨はタイトル通り、

「書かなくとも、文章が上手になるために出来ることはたくさんあるぞ!」

というもので、全32のトレーニングが紹介されています。

さて、私は今、この記事を、『書かずに文章が~』を読み終えた時点で書いています。

……どうですかね? うまくなってますか?

「そんなもん、こんな出だしでわかるかーい!」という感じでしょうか。

では、この後、実践してみての実感や、思いがけないおまけの効果があったことを

ご紹介していきますので、その文章が

「うまいかな? 下手かな? わかりやすいかな?」

など、考えながら読んでみてくださいね。

目次 1.実践してみてどうだったのか?
   2.文章を見る目が変わってくる
   3.誘惑に強くなる!?

1.実践してみてどうだったのか?

『書かずに』とタイトルにあるくらいなので、ほとんどのトレーニングが

頭の中で完了できるものです。

例えば、「表現の引き出しを増やす」トレーニング。

これなんかは、掃除や料理をしている間の1分間でも

少し考えるだけで簡単にできちゃいます。

やり方は簡単。

例えば、料理をしている時に、甘い砂糖を使ったとします。

この『甘い』という言葉、他に、どう表現できるでしょうか?

  ・甘い
  ・甘ったるい
  ・口の中に幸せが広がる味
  ・疲れが取れる味
  ・アリが寄ってきそうな味
  ・舌がとろけるような味
  ・コーヒーが欲しくなる味

・・・・・・・

どうでしょう? これは実際に、この記事を書いている時、大体1分間で

私が思いついたものをそのまま列挙しています。

中には『甘い』という表現からずれていると感じられるものもあるかもしれませんが、

それはそれでOKです。

いろいろな表現をひねくりだして、引き出しを多くすることに、

このトレーニングの意味はあります。

別名「類語ひねり出しトレーニング」とも言い、表現の幅が広がれば、

それだけ文章で伝えたい内容を正確なニュアンスで伝えられるという

主旨で行うものです。

私はこのブログの他にもTwitterと小説を書いています。

特に小説では、トップレベルの作家になるほど、作品中に使用されている単語数が

他の作家に比べて多くなる傾向があることがわかっています。

それだけ、多彩な言葉を使用した方が読んでいる人に内容が届きやすい、

ということでしょう。

おそらくそれは、ブログやビジネス文章でも同じで、

もしかしたら好きな人に送るメッセージにすら応用できるかもしれません。

言葉の彩りが豊かになれば、相手に合わせた文章も書きやすくなるはずです。

このトレーニング、実は最初なかなか難しく、ネットの類語辞典のお世話になったこともありました^^;

しかし慣れというのは何にでもあるもので、徐々に引き出しが増えてきた実感があります。

なんと言ったって、家事をやっている数分間があればできてしまうトレーニングです。

思い立ったら気張らずにすぐにその場で出来る!

それで少しでも効果がでるなら嬉しいですよね。

こんな感じで、ちょっと頭をぼーっとさせておくにはもったいない時間を利用して、

少しずつですが、自分の文章が変わってきたなという手応えを感じています。

少なくとも、「私の文章、全然うまくならないなあ……でもどうしたらいいかわからない」と

下手なことだけ自覚して、どう努力したらいいかわからない、という状態は

本書のおかげで抜けだせたと思います^^;

私が自覚していた文章の弱点として、

淡々とした文章を書きすぎて、あまり感情を出せていなかったところがありました。

自覚はしていましたが、じゃあどうするか!? が見えていませんでした。

本書の中にヒントを見つけ、改善していっている、つもりです(笑

文章は一生かけてうまくなるような職人芸的部分もあると思うので、

痛み止めのような即効性がある薬のようにはいきませんが、

方向性が見えただけでも助けられました。

自分の文章のどこが下手なのか、それが曖昧な人にも、本書を読めば

ヒントが見つかると思いますよ。

ちなみに、『書かずに~』の内容には文章の基本にあたる

「起承転結」 「接続詞の使い方」 「主語と述語は近くに置け」

といったものは一切出てきません。

そういった内容が知りたい方は、別の本を読みましょう。

2.文章を見る目が変わってくる

ここからは、「書く」ことへの影響ではなく「読む」面への影響を

お知らせしたいと思います。

「文章を書くトレーニングの本の紹介なのに??」と思われるかもしれませんが、

読むことと書くことは表裏一体、書く技術が高まれば読む技術もあがります。

なにしろ、本書には「文章を書く人が何に注意して書いているか」が

丸わかりになるように書かれているわけです。

トレーニングを積み重ねていくと、ちょっとした文章でも

「あ! このテクニックを使っているな!」とわかるようになっていきます。

そうすると、面白いことが起き始めます。

電車の広告でも、街角のポスターでも、雑誌のちょっとしたコラムでも、

「この文章はなかなか練られている」

「この文章はイマイチ、もっとこうしたらいいのに」

と、添削できるようになっていくのです。

街中で見かける文章を書いているのは、文章を書くことで

ご飯を食べている、いわば プロ の人たちです。

プロが書いた文章の良し悪しが分かるようになるんです、

これってなかなかの優越感ですよ笑

優越感はともかく、こうしてプロの書いた文章を採点できるようなると、

自分の文章の採点もうまくなっていきます。

こなればしめたもの、読むことが書くことの精度をあげ、

書くことでまた読むことの洞察も深くなり……と

正のスパイラルが起きます。

文章力が伸びたと、自覚できるほどに成長できるようになっていきますよ。

また、もう一つ、読解力が向上したと実感できたことがあったので、

具体例を紹介しておきます。

私が星野源さんの『働く男』を読んだときのことです。

星野源さん、音楽、演技、エッセイとマルチな才能を発揮して

大活躍されている男性ですが、『働く男』には

彼が仕事で書いた文章がまとめられています。

2年間、映画の紹介コラムを連載したときの文章も掲載されています。

「星野君に文才はないと思う」と言われ続けてきたらしいのですが、

文章への憧れがあり、ご自分で営業して仕事を取ってきたそうです。

この映画コラム、なかなかどうして、面白いんですが、

『書かずに~』を読んでから読むと、文章の出来に差があることがわかります。

「これは文章としてはうまい!」

「こっちは文章はそこまで……だけど感情が前面に出ててコラムとしては面白い!」

結局、星野さんクラスの人になると、多少の文章のノリに差があっても

面白く読めてしまうわけなんですが、

肝心なのは、文章の裏に潜む星野さん自身がよく見えたな、と思ったことなんです。

文章のテクニックが使われていることがわかれば、

そのテクニックを除いてみた時に、

文章を書く人が本当に伝えたかったことが残ります。

星野さんの場合、それは 「創作する時に根底にあるもの」 が

必ず文章の裏に潜んでいました。

文章、音楽、俳優、どんな表現方法でも、彼が大切にしている

根っこの部分は同じで、この根っこがしっかりしているから

彼の表現は多くの人の感情を揺さぶるのだろうな……と

文章を読んでいてスッと胸に入ってきました。

これは『書かずに~』を読んでいなければ、ここまで深読みは

できなかっただろうな、と思う部分でした。

次項では読む力アップによる効能をもっと具体的にふれていきます。

え? 結局、星野さんの根っこの部分は具体的になんだったのかって?

それは……内緒にしておきます(^^)

せっかくだから、読んでみてください。

『書かずに~』も『働く男』も普通に面白い本なので。

どうしてもという方は、Twitterにそのうちあげる読了ツィートを

見てください、たぶんそこでは触れる予定です。

3.誘惑に強くなる!?

前項で『書かずに~』を読むと、文章が上手くなるだけでなく、

読む力もアップすると言いましたが……

これには日常生活ですぐに役立つ、別の効能もあるんです。

それは、 誘惑に強くなる です。

私たちの身の回りは文章で溢れています。

本や雑誌を読まないという人でも、

テレビや動画のテロップ、ネットの記事、

何かを買おうと思った時に調べる口コミ、

LINEやメール……

文章に目を晒さずに生きることは不可能でしょう。

そして、恐いのは、文章がすべて善意で書かれているわけではない、

ということです。

詐欺のような特殊な犯罪に限った話ではありません。

あなたに何か買わせよう、契約させようとする甘い誘惑の文章、

心当たりはありませんか?

「これを飲めば痩せます」

「これを買えば資産が増える」

「この会員になると恋人ができます」

ほら、見覚えありますよね?

「でも、自分は大丈夫、誘惑されてるってちゃんとわかってるから……」

と思いましたか?

本当にそうでしょうか?

難しいのは、本当にうまく誘惑している文章は、

誘惑していることを読む人に気づかせない文章だということなんです。

気が付けばさりげなく誘導されていて、欲しくてたまらなくなっている……

詐欺ではないけど、不必要なものへの欲求が高まる文章は危険です。

文章が巧みな人というのはいるもので、

つい読んでいると欲しくなっちゃう、ということはよくあります(私も!)

これに少しでも対抗する手段はないのでしょうか?

そこで『書かずに~』を活用してみましょう。

この本の中のトレーニングを知ると、文章が上手い人が

あなたを誘惑するために、どうやって文章を書いているのか、

そのテクニックがよくわかるわけです。

この知識があるだけで、さりげなく誘惑してくる巧みな文章にも

抵抗力がつきます。

『書かずに~』の中には、著者がブログで紹介した本の紹介文が

お手本としてマルっと転載されています。

この紹介文、大評判だったそうで、「わたしも興味を持ちました!」

「紹介されていた本、買っちゃいました!」とかなり売り上げに貢献されたみたいです笑。

私もその紹介文を読んだわけですが……

そこまで心を動かされることはありませんでした。

紹介文自体は面白く、文章としてもうまいんです。

ただ、文章を読む時に、

「ふむふむ、ここにこのテクニック、あ、こちらにはあのテクニック……」と

文章を書いている人の視点を加えて読んでいたんですね。

紹介文を先に読ませるための、そして紹介した本が魅力的に映るように

ピカピカに磨き上げられた文章だということがよくわかりました。

しかし、すると、どうなるでしょうか?

誘惑する文章の効力が弱まり、

「ああ、これは自分を誘惑しようとしている危険な文章だな?」と、

罠に引っかかりにくくなっていた、というわけなんです。

こうなれば読んでいる人の勝ちです。

本当にそこに紹介されているものが、自分にとって必要か、

冷静に判断が下せるようになります。

この効能は、おそらく『書かずに~』を読めば得られるものだと思います。

実際にトレーニングをするかどうかは、文章があなたの生活に

どれくらいのウェイトを占めているかで、決まってくると思います

(多くの自己啓発本が読んで1週間後にはやらなくなるのと同じように!)

しかし、読んだ知識は上手な文章による誘惑へのワクチンとなって、

あなたの中に蓄積されます。

単行本一冊の値段なんてたかが知れたものです。

読んでみる価値はあると思います。


いかがでしたでしょうか?

今回ご紹介した本は、文章を書くことに苦手意識を持っている人、

もっと文章が上手くなりたいけどどうしたらいいかわからない人向けの本です。

一冊あると、バイブルのように手元に置いておきたくなる本なので、

ビジネスマンもブロガーも、彼女にラブレターを書きたい人も、

活用してみてくださいね。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

よろしければ、感想など、コメントに残していってくださいね。

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