あの大文豪の作品も紹介しています!子供に読ませたい本:小説編
元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!
このブログでは私の読んだ本をご紹介していますが、その中でも「子供にも読んでほしい!」と思った作品をまとめました。
私には息子(2023年3月現在7歳)が一人います。小学校で毎週本を借りてくるようになった息子。内容は絵本や迷路といったものから伝記までと幅広いジャンルを借りてきてくれるので私も「次は何を借りてくるかな?」と楽しみにしています。
少しずつ難しい本にも挑戦しだし、大人の読んでいる本にも興味を持ちだした息子を見て、将来親子で読書を楽しめるようになるのかな、と期待が高まっています!
一緒に読めるようになったらどれをお薦めしようかな……と考えたセレクションを、ここでもご紹介したいと思います。
世の中には良い本がたくさんあるので、何冊まで、と絞ることはせずに、「これは読んでほしい!」と思った作品を随時アップしていきたいと思います。(多くなってきたらわけます)
親目線で選んでいますので、あまり触れさせたくない描写のあるものには(例えば性的なもの、極度の暴力や怖い表現など)注意表記をする、もしくはそもそも選ばない、というスタンスでセレクトしていきますのでご安心ください。
それではさっそく、ご紹介していきますね。
(最終更新日 2023年3月27日)
1.アルケミスト(パウロ・コエーリョ、角川文庫)
少年が宝物を探しに旅に出る話ですが、その途中、いろいろな困難に出あいます。しかし、少年は宝物を探すという夢を常に忘れず、自分の心の声を聞き、世界をよく見ることでその困難を乗り越えていきます。
自分の叶えたい夢を大事にして生きることの大切さ、時に弱気になる心と共に、人生を歩む術を教えてくれる本です。
ファンタジックな雰囲気に、大人だと面食らってしまうこともあるかと思います。
むしろ子供の方が、生きる上で自分を大切にする気持ちを作品からくみ取れるのではないかと思います。
おススメ度 ★★★★☆
表現の安全度 ★★★★★
推奨年齢 小学校高学年から
(読書好きな子は小学校中学年から)
2.モモ(ミヒャエル・エンデ、岩波少年文庫)
町はずれの円形劇場に住み着いたモモ。彼女は不思議な存在で、彼女のそばにいると楽しい遊びが思いついたり、喧嘩をやめて仲直りできます。モモの周りはいつも友達でいっぱい、しかし、街に時間泥棒がやってきて、モモから友達を襲います。時間を奪われ生きる楽しみを見失った友達を助けるため、モモが勇気を出して奮闘する、という内容です。
現代の資本主義社会への強烈な皮肉のこもった作品で、人生に必要なお金以外のものを教えてくれます。
もともと児童向けなので子供向けに優しい語り口で書かれているのも嬉しいところです。
大人も読んで、読書感想を話し合うのにぴったりな一冊です。
おススメ度 ★★★★★
表現の安全度 ★★★★★
推奨年齢 小学校高学年から
(読書好きな子は小学校中学年から)
3.蜜柑(芥川龍之介、青空文庫で無料公開中)
機関車に乗っていた男は、後から乗り合わせた小汚い格好の少女のことがなんとなく気に入らない。しかも、その少女はこれから電車がトンネルに入ろうというのに窓を開け始める。案の定、男は窓から入ってきた煙でむせ返ってしまう。トンネルを抜け、少女を怒鳴りつけようとした時、通りかかった踏切に彼女の弟たちが待ち受けていた。
この後どうなるのか、ぜひお子さんと一緒に読んでみてください。
言わずと知れた大文豪、芥川龍之介の短編で数分あれば読み切れる短さです。
心が温まり、小さな感動を覚える素敵な作品になっています。
青空文庫の作品はネットやアプリで検索すれば、簡単にスマホやタブレットで無料で楽しめますよ。
おススメ度 ★★★★★
表現の安全度 ★★★★★
推奨年齢 小学校高学年から
文章自体は短いですが難しい漢字が多く使われています。
読み聞かせであれば低学年からどうぞ。
4.ペンギン・ハイウェイ(森見登美彦、角川文庫)
小学4年生の男の子が主人公で、日々、ノートをつけながらいろんなことを研究しています。賢くて好奇心旺盛、少しおませな男の子が街に現れる謎のペンギンの秘密を追う物語です。
日本SF大賞を受賞している作品で、物語の中にSF的要素が散らばっていますが、主人公の目線を通して分かりやすい言葉に置き換えて説明されています。
また、この作品では主人公の初恋が大事な要素として書かれており、初恋相手のお姉さんとの交流が楽しくも切ない物語となっています。
科学や世界への興味、関わり方のお手本となるとともに、切ない初恋物語としても子供の心に残る一冊になると思います。
おススメ度 ★★★★☆
表現の安全度 ★★★★☆ ※
推奨年齢 小学校高学年以降(文章量が多いです)
※ごくたまに、主人公が女性の胸を気にしているシーンあり
個人的には問題ない範囲だと思います。
5.小さき者へ(有島武郎、青空文庫で無料公開中)
『惜しみなく愛は奪う』などで有名な小説家が、幼い我が子たちへ宛てた愛情あふれる手紙です。
有島武郎は3人の子供の父ですが、子供たちが幼いころ、妻を結核で亡くしています。訳の分からぬうちに母とその愛情を失った子供たちへの憐憫と、妻にも子供たちにも何をしてやることも出来なかった自分の無力さ、しかし不幸の中でも強く生きていってほしいという子供たちへの強い願いが赤裸々につづられています。
子供を持つ方なら、涙なしには読めないほど、感情むき出しの愛情が胸を打つ内容です。大人になったころに、子供時代にどれだけ両親から愛されていたかを知ってほしいという意図で書かれた手紙なので、そもそも、子供向けの文章ではありません。
しかし、この文章を私は一人の子供の母になってから初めて読みましたが、「もっと若いころ、子供時代に一度読んでおきたかった」というのが正直な感想でした。
おそらく、意味は半分も分からないでしょうし、涙を流すほど感情も揺さぶられることもなく、ピンとこないという感想に終わるとは思います(苦笑)
しかし、自分がどういう思いで育てられているのか、それを少しでも知っておきたかったなあ、そうしたら「あんなこと言っちゃった、やっちゃった」という後悔を少しでも減らせたんではないかな!? と思うのです。
おススメ度 ★★★★☆
表現の安全度 ★★★★★
推奨年齢 小学校高学年~(漢字が多いです)
6.新美南吉作品 (青空文庫で多数、無料公開中)
戦前に活躍された有名な絵本作家さんです。「ん? 絵本? そもそも子供向けでは?」とツッコまれるとその通りなんですが、ここであえて選出した理由は2つあります。
1つが、彼の作品は既に著作権が切れているということです。著作権切れになった作品は、日本が誇る電子本棚、青空文庫で無料公開されるんです!(ボランティアの方が作業されていますので、全作品というわけにはもちろんいきませんが)新美南吉作品も多数、Web上で無料で簡単に読めます。文豪の傑作が無料で読めるなんて、青空文庫って素晴らしい……!
話を元に戻して、選出の理由2つ目が、新美南吉作品の持つテーマの難解さにあります。彼が生涯をかけて書き続けてきたテーマは、「生存所属を異にするものの魂の流通共鳴」です。簡単にいうと、「生きる世界が違うものどうしのふれあい」になるかと思います。動物と人間だったり、人間と神様だったりが出会い交流した時に、何が起こるのかを作品中で追及しているんですね。このテーマを踏まえて新美南吉作品を読むと、受ける印象がかなり違ってくると思います。そして、テーマを知って読んだとしても、作品の真意を読み取るのは大人になった今でも……正直なかなか難しい、というのが私の本音です^^; しかし、難しいということは、ストーリーを楽しむだけでなく、さらに踏み込んで親子で「どう思うか」を話し合って、感想を深めていける楽しさがあるということでもあると思うんです。
話し合っていくと、どんどん感想が深まって純粋に楽しいと思いますし、子供から「そんな視点があったのか!」という感想が飛び出したりして、驚かされることもあるでしょう。
私の読んだ中でおススメは『最後の胡弓弾き』です。胡弓という楽器を演奏してお金を集めて回るのが好きな主人公が、最後には時代の流れで胡弓弾きを諦めなければならなくなり、胡弓自体も手放してしまうという、切ない物語です。
しかし、そんな悲しい物語からも、前向きなメッセージというのは引き出せるものですし、子供には、どんなものからも前向きな何かを引き出せるようになってほしいものです。
ぜひ、親子で考えてみてください。
おススメ度 ★★★★★
表現の安全度 ★★★★★
推奨年齢 小学校低学年~
(『最後の胡弓弾き』は少し長いので小学校中学年からがおススメです)
すぐに読み終われる短い作品も多いですよ。
7.ラブオールプレー(小瀬木麻美、ポプラ文庫ピュアフル)
横浜湊高校の男子バドミントン部を舞台にしたバドミントンに燃える男の子たちの青春ストーリーです。主人公である水嶋亮は中学まではパッとしない選手でしたが、顧問の海老原先生にスカウトされて横浜湊高校へ進学、そこで高校バドミントン界のトッププレーヤーとしてメキメキ頭角をあらわしていく、というストーリーです。
主人公水嶋のストイックなバドミントンへの取り組み方に自分も頑張ろうと勇気をもらえますし、好きなものに全力で取り組む姿勢を教えてもらえます。
一番のおススメポイントは水嶋とその同期が少しずつ「チーム」になっていくところにあります。性格もバドミントンのプレースタイルもバラバラの水嶋たち、最初は仲良くなれるのか不安になりましたが、バドミントンが大好きであるということだけは、みんな同じ。個人プレーのイメージがあるバドミントンでも、応援や練習を通して仲間になっていく過程が丁寧にえがかれます。
さらに、みんなで宿題に取り組んだりバーベキューをしたりと、学生時代ならではのザ・青春なイベントももりだくさんです。
ぜひ子供にもこんな体験をしてほしいという具体例が詰まっていて、これから、主人公たちと同年代になる小学校高学年から高校生のお子さんに読んでほしい作品です。
シリーズ化もされていて全4作が出版されていますが全作主人公が異なります。高校バドミントン界のトッププレーヤーの葛藤であったり、それを支える相棒の思いやりであったり、バドミントンに燃える青春というテーマのまま
少しずつ作品のおもむきが違っていきます。
爽快感のあるストーリーで面白く、そして感動できますのでシリーズ全作、まるっとおススメできます!
おススメ度 ★★★★★
表現の安全度 ★★★★★
推奨年齢 小学校高学年~
8.非凡なる凡人(国木田独歩、青空文庫で無料公開中)
一人の青年が自分の友人を自慢げに語りだす、そんな場面から物語が始まっています。
非凡人ではない。けれども凡人でもない。さりとて偏物でもなく、奇人でもない。非凡なる凡人というが最も適評かと僕は思っている。
『非凡なる凡人』本文より引用、青空文庫参照
ものすごく優れた人ではないけれど平凡な人間とは程遠い、というその友人、いったいどんな人なんでしょうか?
このあと、文章は友人がいかなる性格をして、どんな言動をとる人物なのかを詳しく説明していくのですが、この友人、本当になかなかの人物です。
まず、有言実行。たとえ他の人が投げ出してしまいそうな状況であっても、一つ「これをやる!」と決めたら年単位の計画も倦むことなく着々とこなし、本当に成し遂げてしまいます。
さらに、品行方正。自分の置かれている環境に満足し、不満を持つどころかそれを楽しみ、自分の手の届く範囲は可能な限り居心地のいい空間に作り上げてしまう適応力の持ち主です。
そして、影響力。友人のことを自慢げにかたる青年自身もそうですが、友人と接する人は皆「この人がこれだけがんばっているのだから、自分も」という気にさせる何かを持っています。
人生の中で、こんな友人に恵まれてほしい。
いや、この友人のような人になってほしい。
理想となる人物像が表現されています。
文章は漢字が多く、固い印象ですが短いので読み聞かせでもいいかもしれません。
おススメ度 ★★★★★
表現の安全度 ★★★★★
推奨年齢 自分で読むなら小学校高学年から、読み聞かせなら低学年でも〇
このページは、私が実際に読んで、内容を吟味してから掲載しますので不定期更新です。
これからまだまだお薦め作品を増やしていきますので、また覗きに来てくださいね。