変人同士の恋は面白くて……そして意外とキュンキュンできる!『WORKING!!』読書感想
こんにちは、活字中毒の元ライター、asanosatonokoです。
今回ご紹介する作品はこちら
WORKING!! 高津カリノ SQUARE ENIX
作品名は「わーきんぐ」と読みます。北海道の某地にあるファミレス「ワグナリア」を舞台にした4コマ漫画です。
私がこの漫画に出会ったきっかけは作者さんが運営するHP「うろんなページ」です(注)。
(注)「うろんなページ」は現在「うろんにらくがき」という新HPに生まれ変わっています。しかしサイト内に旧HPのリンクがあるので、ブログサービスが終了しない限りは「うろんなページ」も楽しめます。
作者さんがプロデビューする前にネット上で連載していた4コマ漫画が大量にアップされているんですが、それを読んで「ドはまり」しました。
強烈な個性(というか狂暴性)を持ったキャラクターたちによる面白おかしい日常×恋愛模様が私にはドストライクだったのです。
あ、ちなみに高津カリノさんの漫画は全てジャンルは「ラブコメ」です。前文がラブコメを読んだ感想には思えなくても、ジャンルは「ラブコメ」で間違いありません。
高津カリノさんにドはまりした私は今でも彼女の愛読者で、「作者買い」している数少ない漫画家さんの一人です(ちなみにあともう一人いて、天野明さんです)
とにかく高津カリノさんの漫画が大好きですが、中でも一推しなのが、『WORKING!!』。
出会って既に10年くらい経っていますが、未だに年に一度は読み返してしまう私の中ではレジェンド級の漫画となっております。
これだけ好きだと、「ここが好き!」とか「こんなところがおススメ!」と言語化するのが難しいくらいなんですが、このページに辿り着いてくださったあなたに、なんとか『WORKING!!』の良さを分かってもらおうと言語化を頑張りました。
読んでみてください、そしてできるなら『WORKING!!』を読んでみてください!
それでは、ご紹介していきましょう。
目次
1.簡単なあらすじ
まずは簡単なあらすじからご紹介しましょう。
物語の舞台は北海道の某地にあるファミレス「ワグナリア」。
ここに新人バイトとして入ってきた高校生男子・小鳥遊宗太(たかなしそうた)が主人公です。
新人の彼を出迎えたのは店長の白藤杏子(しらふじきょうこ)と種島ポプラ(たねしま)ら先輩バイト達。
新しいバイト生活がんばるぞ! ……と、本来ならここから青春バイト物語でも始まりそうなもんですが、そうはいかないのが『WORKING!!』
横暴な店長に週7シフトをいれられたり、刃物を常に携帯しているバイトチーフがいたり。
とにかく店長はじめ、ワグナリアのスタッフは奇人・変人ばかり。
極めつけは極度の男性恐怖症で、男とみれば持ち前の怪力で殴り倒す少女・伊波まひる(いなみ)の存在です。
出会いがしらで小鳥遊も容赦なくぶっ飛ばされ、小鳥遊の伊波への第一印象は最悪……
しかし、「小鳥遊君は遠慮なく殴れる」という伊波の一言で、小鳥遊は杏子から「小鳥遊は伊波の世話をして男性恐怖症を治してやれ」と無理難題を押し付けられてしまいます。
小鳥遊君、無事にバイト生活を送ることが出来るのでしょうか……?
2.ラブコメなんです
あらすじを書いてて、既に少々不安になってきましたが、『WORKING!!』のジャンルは「ラブコメ」です。暴力マンガじゃないよ。
ラブコメというと『いちご100%』とか『かぐや様は告らせたい』とか浮かんでくるわけですが、まあ、普通のラブコメって「ヒロインが可愛い」ことがお約束ですよね。
キャラデザが可愛いことはお約束ですが、性格がツンデレだったりシャイだったり、「この女の子に恋するのも無理ないな」と思える個性になっていることが多いんじゃないでしょうか(当たり前か)。
しかし、あらすじにも登場したメインヒロインの伊波まひるさんを始め、『WORKING!!』のヒロインたちは癖が強い!
女性キャラの中でも恋愛絡みでどうのこうのある2人を簡単に紹介すると↓のような感じになってしまうのです。
男性恐怖症で男とみれば殴りかかる伊波まひる。
常に刃物を携帯して店長の杏子のためなら闇討ちも辞さない轟八千代(とどろきやちよ)。
……犯罪者予備軍ですね。八千代に至っては常に銃刀法違反状態(笑)。いや、伊波も暴行罪か。
バイオレンスなヒロインたちですが、そんな彼女たちに恋をしたりされちゃったりして、男性陣が怖い目を見ながらバイトする。それが『WORKING!!』です。
ラブよりコメディの要素が強すぎる? 確かに序盤はそうかもしれません。
でも、安心してください。
『WORKING!!』、あなたが思っている以上にキュンキュンさせてくれる漫画だということを、次の項で語っていきましょう。
3.変人同士の恋、だけど……
思っている以上にキュンキュンさせてくれる『WORKING!!』と書きましたが、その前に一つだけ、言わせてください。
『WORKING!!』には変人しか出てきません!
バイオレンスなヒロインたちだけでも十分変ですが、男性陣も、恋愛に直接絡まない女性陣も、みんな変人です。
代表格に主人公の小鳥遊宗太に出てきてもらいましょう。
彼は眼鏡をかけた真面目そうな高校生男子。学業成績も優秀で、掃除・洗濯・料理も完璧にこなす家事のエキスパート、当然ファミレスのウェイターとしても優秀で真面目に働き研修バッジも1カ月ほどでとれる、一見して優秀な青年です。
が、しかし、彼には致命的ともいえる難点がありました。
それが「異常に小さいものが好き」ということ。
例えばぬいぐるみとか。例えば子供とか。例えば花とか。例えば虫とか。
例えば、ミジンコとか。
急にヤバいヤツになりましたね(笑)そう、小鳥遊君は変な子なんです。
ワグナリアでバイトするきっかけになったのも、彼の「異常な小さいもの好き」が原因ですし、小鳥遊には「小さいモノ好き」を隠そうという心もなく、バイト先の人間に早々にドン引きされていました。
①恋の障害が大きすぎる
この小鳥遊君のヒロインになるのが「超男嫌い」の伊波まひるです。
小さいもの好きの男が普通サイズの女の子に恋するようになるのかも疑問だし、そもそも伊波は男嫌いのくせに男性と付き合えるのか、など、この2人が普通の高校生たちのように付き合っている姿は、序盤はまったく想像がつきませんでした(笑)
いろいろな漫画を読んできましたが、恋の障害がここまで大きい漫画は見当たりません。
お互いに恋愛対象外同士の恋とも言えるこの2人を読むと名作『ロミオとジュリエット』の恋路の障害も霞んで感じられます。
貧富の差? なんとかなるでしょ。お互いに惹かれあってるんだから。
②変わっていこう、あなたのために
序盤は「こりゃ無理ゲー」な感じだった小鳥遊と伊波の恋路ですが、少しずつ、変化していきます。さすがに変化しないと恋できないですからね!
一緒に働いているうちに良いところが見えてきたり、変人だと思っていたけどいざとなると頼りになるところだったり、小鳥遊も伊波もお互いに意識し合っていくようになります。
ここから付き合うまでのすったもんだが始まるわけです! ラブコメの一番面白いとことですね(笑)
『WORKING!!』も思う存分(?)すったもんだしてくれるんですが、普通のラブコメにはない良さがあると言う気がします。
それが「あまりに恋の障害が大きすぎる」ことにも関連しています。
例えば小鳥遊に恋するようになる伊波ですが、まあ、お相手の「小さなもの好きすぎる」だけでも相当な障害ですが、まずは自分の「超男嫌い」を治さないとどうしようもないですよね。
伊波の場合、恋愛小説を読むのはむしろ好きなようなので、男嫌いというよりは男アレルギーといった方が正確かもしれませんね。恋愛感情には普通の女の子らしく興味があるわけです。
でも、たとえそれがイケメンだろうと、恋する小鳥遊であろうと、男とみれば殴らずにはいられないという病気(!)がある限り、デートはおろか一緒にバイトするのも一苦労してしまうわけで……
そして伊波は決意するわけです。
「男嫌い、治そう!」
よく決意した! と、褒めてあげたいところですが詳しくは作品を読んでいただくとして、これ、本当に可能なのかな、と思うくらい、伊波の男嫌いは根深いんです。物心ついたころからの男嫌いをどうやって治すのか!?
当然、簡単には治せないのですが、そこに小鳥遊も絡めてすこーしずつ、ちょっとずつ、伊波は変わっていきます。
その過程が、なんというか、いじらしくてとっても可愛い!
恋すると女の子は可愛くなるなんて巷では言いますが、本当なんだなと伊波さんを見ていると思えます。
伊波は初登場から小鳥遊を殴って登場してきたので、登場した当初は好感度低かったと思うんですよ、なんたってただの暴力女ですからね^^;
でも、そこから小鳥遊に恋をして、少しずつ変わっていこうとする伊波は、彼女本来の優しさ・思いやりが出てきて、女の私でもこう思いました。
「恋する伊波さんは可愛い!」
伊波だけでなく、小鳥遊も変わろうとしますし、他のキャラクターも恋する誰かのために変わっていこうとする……その過程が『WORKING!!』ではとても大切に描かれています。
ラブコメならではのすったもんだもありつつ、恋する人のために努力する姿って、とっても可愛らしくて微笑ましいものなんだなと、読んでいる間はほっぺか緩むこと間違いなしです。
③恋愛ものが苦手な方でもこれならいける!
あと、これは付け加えておきたいのですが、恋愛がメインのお話には抵抗を感じる方もいらっしゃると思います。
そんな方にこそ、『WORKING!!』はおススメしたい!
私も実は、ものすごくドロドロした恋愛物語は苦手です(『NANA』とか、読めなくはないが一度読めば十分な人です)。
しかし、『WORKING!!』にはドロドロは存在しません。
誰が誰に恋して、というカップリングが明確に決まっており、キャラクターも恋した相手に一途なのでドロドロになりようがないんですね。
周りも、恋する2人を温かく見守っていこうというスタンスで、横やりを入れてくるキャラクターもゼロです。
最初から最後まで安心して楽しめるラブコメ、それが『WORKING!!』です。
4.広がる『WORKING!!』ワールド
ここまで『WORKING!!』を推してきましたが、作者さんが漫画を描くのが大好きなために『WROKING!!』ワールドはネットでも書籍でもかなり大風呂敷を広げてしまっているので、少し整理しておこうと思います。
どこから読めばいいのか、参考になれば嬉しいです。
『WORKING!!』(ヤングガンガン連載版、通称「犬組」)
まずはここから読み始めるのが一番いいと思われるのが、『WORKING!!』のヤングガンガン連載版です。もう一つのWeb連載版の『WORKING!!』と区別するために通称「犬組」とも呼ばれています。
ここまでおススメしてきた『WORKING!!』はこのヤングガンガン連載版の内容です。
こちらは高津カリノさんのプロデビューした作品で、彼女の代表作でもあります。
コミックスにして全13巻。アニメ化もされていて全3期、最初から最後まで原作に沿って製作されており、アニメ版もおススメです(声優が豪華なんだこれが)
『WORKING!!』(Web連載版、通称「猫組」)
無料で高津カリノ作品を試してみたい方にはこちらもおススメです。作者さんがプロデビューする前に自身のHP上でコツコツ連載されていたWeb連載版の『WORKING!!』です。
高津カリノさんのHP「うろんにらくがき」から旧HPの「うろんなページ」へとリンクが貼ってありますので、そちらから読めます。(注)
(注)「うろんなページ」は現在「うろんにらくがき」という新HPに生まれ変わっています。しかしサイト内に旧HPのリンクがあるので、ブログサービスが終了しない限りは「うろんなページ」も楽しめます。
ヤングガンガン連載版の舞台となるファミレス「ワグナリア」の別支店のお話で、店名も同じ「ワグナリア」。そこで働いているバイトさんたち恋愛・日常を面白おかしく描いているところもおんなじです。でも、登場するキャラクターは違っています。
プロデビュー前の作品なので、作画も、ストーリー構成も、デビュー後と比べてしまうと作りこみが荒いかな……と思いますが、高津カリノさんの作風の良さは十分感じられます。こちらもまさかのアニメ化されましたしね!
ちなみに、Web連載版は通称「猫組」と呼ばれていますが、店長が猫を飼っている設定だから「猫組」なんだと思います。ヤングガンガン連載版の「犬組」は店長とその取り巻きの名前が「犬」の名前っぽいものからつけられているから「犬組」なんだそうです。
猫組はネットで無料で読めますが、コミックス化もされています(全6巻)。
前半の3巻が本編で、後半の3巻がWeb連載とは別に、作者さんがTwitterにあげていたおまけ漫画だとか、犬組と猫組のコラボ漫画だとかが収録されています。
『WORKING!! Re:オーダー』
ヤングガンガン連載版『WORKING!!』の続編のような位置づけの1冊です。
コミックス発売時に各店舗の販促用として特別に書き下ろされたオマケ漫画が全部収録されています。全部ですよ、すごくないですか? いいんですかね、これ。
それに加えて、本編収録後の後日談も載っています。
みんながあれからどうしていたのか……気になる方はぜひ読んだ方がいいです。後日談には「猫組」のキャラクターも特別出演しています。
『WORKING!!』15th
プロデビューする前から漫画を描きまくっていた高津カリノさん。彼女の『WORKING!!』の始まりがいつなのか、実はご自身でもよくわかっていないそうなのですが、シリーズ15周年を記念して発売された1冊です。
いろいろなところで描き下ろされたイラストや、グッズとして発売された「365日日めくりカレンダー」の全イラストが収録されているなど、これまたいいんですかね、これ……です。
「犬組」「猫組」の両方が登場します。
ちなみに「犬組」は本書のために特別に描き下ろされた漫画も収録されていたのですが、驚きの展開でした。まじかい。
『WORKING!!』はこの順番で読む!
ここまで、コミックス化されているもののみをご紹介しましたが、もしかしたら作者さんのtwitterとかHPとかを漁れば未収録の落書き漫画が出てくるかもしれない……
それはもう『WORKING!!』ワールドにハマってしまった方に自主的にマイニングしていただくとして、コミックスだけでもどこから読もうか悩むと思います。
特に「犬組」「猫組」の両方のキャラが登場してからむ漫画は、知らなくても楽しめるけど、両方の作品を知っていた方がより楽しめますからね。
というわけで、「この順番で読むのがおススメ」という私的順位をここに書き残しておこうと思います。あくまで参考です。
①『WORKING!!』ヤングガンガン連載版 全13冊
②『WORKING!!』Web連載版1~3巻
③『WORKING!! Re:オーダー』
④『WORKING!!』Web連載版4~6巻
⑤『WORKING!! 15th』
この順番で読むと「誰この人?」ということが起きずに、読み進められると思います。③と④はひっくり返して読んでも可です。
いかがでしたでしょうか?
『WORKING!!』の魅力が伝わりましたか?
え? 変人同士が恋する漫画だということは分かった?
それで十分です(笑)
あとはぜひ手に取ってみてください!
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。