読書感想|人にはそれぞれ歴史がある、弱虫ペダル SPARE BIKE6(渡辺航)

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弱虫ペダル SPARE BIKE6 渡辺航 (少年チャンピオンコミックス)

弱虫ペダルの公式スピンオフ作品がSPARE BIKEです。

本編の主人公・小野田が高校1年生だった時の3年生メンバーの過去のエピソードが採り上げられています。

これまで、巻島、新開、東堂、荒北、金城、 石垣、 待宮、もう一回巻島とピックアップされてきて、今回は田所迅でした。

読んだことのない方に軽く紹介しておきますと、弱虫ペダルは高校の自転車競技をテーマにしており、高校別に競うインターハイで優勝争いを繰り広げる熱いスポーツ漫画です。

SPARE BIKEでピックアップされるのは3年生メンバーなので、本編の方では強い! 速い!もう出来上がった選手として登場しているキャラクターたちです。

後輩たちを教え導いてきた3年生たちですが、そんな彼らにも当たり前ながら1年生だった時期があるわけで、伸び悩んだり挫折を経験したりと、最初から強かったわけではないのです。

彼らが壁にぶち当たりつつも、それを乗り越え、チームの主軸として成長するまでの過程が描かれているので、内容は熱いの一言。

そして、キャラクターの意外な一面も掘り下げられていたりして、ファンブック的な要素もあるわけです。

今回ご紹介するのはSPARE BIKEの最新6巻(2019年11月現在)です。

目次
 1.おおまかなあらすじ
 2.漫画を読む時に意識してみよう
 3.このあと何があったのか?


1.おおまかなあらすじ

今回の主人公、田所迅は高校3年時では平たんな道を誰よりも早く走り抜けることにすべてを賭けてきたスプリンターと呼ばれる選手になっています。

しかし、彼は最初からスプリンターを目指していたわけではなく、高校入学時点ではレースの最後に優勝を狙いにいく、平たんな道も山道もこなせるチームの柱、エースを目指していました。

エースを目指すには誰よりも速くなければならない。

自転車競技部に入部してやる気満々の田所は、入部記念の歓迎レース、1年生レースで同期で期待の新人、金城に勝とうと賭けに出ます。

得意の平たんな道をぶっちぎりで走り抜け、後半の山道までのアドバンテージを稼ごうとしたのです。

しかし、金城以下、他の選手に山道にあっさりと追い付かれ、結果はまさかのビリ。

落ち込む田所に話しかけたのは金城でした。

今回のレースでは逃げ切れなかったが、勝負のために賭けにでた田所はすごい、と金城に言われ、田所はやる気を取り戻し、金城と朝練を始めます。

そして、二人はともに1年生でインターハイメンバーに選ばれることを目標とします。

インターハイ出場選手は地獄の合宿、耐久レースを勝ち抜いた者から選ばれます。

山道対策にダイエットをして臨んだ田所は、今回もやる気十分です。

しかし、今度は栄養不足のために無念のリタイア。

どんなに練習しても、工夫しても、結果が出ずに情けない姿をさらしたことに沈み込んだ田所は退部を決意します。

退部届を部長に提出すると、やはり慰留され、「勝ちたいけど、もう精いっぱいやった」と涙する田所に、部長から一言。

「勝ちたいのにやめるなんて選択肢はない」

厳しい言葉に一晩悩み抜いた田所は、結論が出ないまま、部活に顔を出します。

それから田所は部長のアドバイスに従って、エースではなくスプリンターとしての道を極める練習を始めることになるのです。

2. 漫画を読む時に意識してみよう

小説や映画の脚本を書くときには、守るべきルールがいくつかあると言われています。

それは読者や観客に面白いと感じさせるためのテクニックと言ってもいいでしょう。

私は漫画にもこのルールは当てはまるのではないかと思っていて、読む時に意識しています。

そのルールというのが、主人公の変化のタイミングです。

人間は自分の置かれた状況により、同一人物であっても様々な一面を見せる生き物ですよね。

創作であってもそれは同じで、読者は変化していく主人公に共感することで物語を楽しむものです。

主人公の変化は物語全体を4分割して、25%、50%、75%の時点で起こすのが理想と言われています。

変化の仕方も重要です。

物語の基本構造は対立だと言われています。

主人公と、それに対する敵(悪の組織、ライバル、恋人の浮気、内面上の問題等々…)に対して主人公が徐々に撃退モードに変わっていくのがオーソドックスな手法です。

今回の田所迅の物語を例にすると、

敵:レースに勝てない自分自身

25%時点 根性で金城に勝とうとするが負け、1年生レースに絶対に勝つと意気込む。  

50%時点  1年生レースで敗北するも、金城との練習でレースに勝つにも工夫が必要であることを知る 。

75%時点 もう退部しようとするが、部長の一言でスプリンターを目指すことになる。

と敵を克服するために徐々に変わっていきます。

漫画はひとつひとつの話の区切りが見えにくく、なかなか変化の過程をたどるのが難しいのですが、わかるようになると読解力も、創作力もアップすると思います。

今回は1冊で物語が完結し、変化のタイミングもお手本通りの位置にありますので、すごくわかりやすく参考になりますよ。

3.このあと何があったのか?

さて、物語の構造云々はここまでにしておいて、読んでいてどうしても気になったことが一つ。

それは田所、巻島、金城の3人の関係性です。

同じ高校、同じ部活、同じ学年の3人なので、これからどんどん絆を深めていくのだろうな、ということは読み取れます。

特に金城と田所は、仲良くなっていく過程が伺える内容になっていました。

が、実は本編では田所と巻島の仲が比較的密で、金城はそこから一歩引いた関係、という風に描かれています。

金城と田所の関係が一歩引いたというか、あくまでライバルという一線をひいた関係になるのはわかりやすいのですが……

このあと、いったい何があって田所と巻島は仲良くなるんでしょう?

田所は巻島のことを変わった天才肌だと思っていますし、

巻島は田所のことを暑苦しい感じ、くらいにしか思っていなさそうです。

物語の最後でも巻島は田所のことをまだ「くん」づけで呼んでいて、田所っち、というこっそりつけたあだ名は本人には解禁していません。

うーん、気になります。

どうやって二人は距離を縮めていくんでしょう?

SPARE BIKEでその辺りが明かされるかは不明ですが、想像を巡らせてみるために、読みこんでみるのも楽しいですね。



いかがでしたでしょうか?

このSPARE BIKEは弱虫ペダルの公式スピンオフ作品で、珍しいことに本編と同じ渡辺航先生が描いています。

渡辺航先生は他にも連載を持っていて、さらに意欲的に自転車競技にも出場し、各種イベントや講演会もこなし……どうやって時間をひねり出しているのか、謎なほどご活躍をされています。

漫画とは関係ない部分ですが、先生のアクティブっぷりにも勇気をもらえそうですね。

ここまで読んでくださってありがとうございました!

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