読書感想|主人公が好きになれなくても(王都の落伍者、沢村凛)
元ライターが作家目線で読書する当ブログへようこそ!
今回ご紹介するのはこちら↓
王都の落伍者 沢村凛 新潮文庫
『ソナンと空人』シリーズの1作目です。
異世界で生きる一人の青年の流転の運命を追う、ファンタジー作品です。
全部で4冊ある長編ですが、このブログを書いている現在、2作目までしか
読んでおりません。
主人公が最後にどんな運命をたどるのか、気になるところですが、
積読順番待ち中になっています。
4冊で1つの大きなお話にはなっていますが1冊ずつ、小さなお話として
完結するように書かれているので、少し間を空けて読んでも大丈夫な作りになっています。
長編に慣れない人にも読みやすい作品と言えますね。
それでは、これ以降ネタバレありでご紹介していきます。
まずはあらすじから。
ソナンは王都の貴族の生まれであり、何不自由ない生活を送っていた。
しかし、父親との反りが合わず、得意の剣術以外は放蕩な暮らしを送り、
何度も勘当されては許されて、を繰り返していた。
ある日、酔っ払って仲間たちと戯れに女性に絡んでいるところを
警備兵に邪魔され、その男に大けがを負わせてしまう。
それから数日後、ソナンは父親に心を入れ替えるまでは家に帰るなと、
最後通告の勘当を申し渡されてしまう。
仕方なく悪友の家に向かうソナンは、そこで借金のかたに友人の妹が
売られそうになっていることを知る。
その友人の妹に好意を抱いていたソナンは、なんとか借金を返済しようと
実家にかけあうが追い返されてしまう。
これまでの自分の言動を呪うソナンだが、なんとか金をかき集め、
返済に向かうところに先日暴行した男とその家族・友人の集団に
出会ってしまう。
報復を受け、川に落ちたソナンは、そのまま溺れ死んでしまう。
ところが、ソナンが目を覚ますと空の上におり、そこには赤髪の不思議な男がいた。
赤髪の男は、「どこでも好きなところに生き返らせてやる」という。
ソナンは様々な国を眺め、戦の最中に籠城し、全員で餓死するか、戦場で
散るかの選択を迫られている砦を生き返る場所に選ぶ。
そこは六樽(むたる)という王様が治める国で、内乱の最中に国王軍が追い詰められていたのだった。
生き返ったソナンは最初、砦の人々に怪しまれるが、赤髪の男から与えられた
強力な光を放つ棒の力で砦の窮地を救うと、そのまま救国の英雄となって、
戦の勝利に貢献する。
ソナンは空人(そらんと)と名前を変え、六樽が率いる国の重臣の一人となり、
部下を持ち、全く新しい人生を歩み始めることになる。
しかし、戦の褒美に望みを聞かれたときに、思わず六樽の姫君の一人を妻にと
所望してしまい、国は大混乱になる。
よりによって、その姫君は多くいる姫君のなかでも最も位が高く、婚約者も
決まっている姫君だったのだ。
混乱したまま婚礼の儀が始まるが、花嫁は空人が希望した姫君ではなく、
別人であった。
裏切られた、と憤る空人だったが、空人が妻として所望した姫君を
取り違えていたことがわかり、国中が安堵し、空人は無事、
望んだ姫君との結婚を許されることとなった。
そして、姫君と共に、自分の領土をあたえられ、領地へと赴くのであった。
全4冊の1冊目なので、お話はまだまだ序盤、この本では主人公のソナン(空人)や
その他の主要人物がどんな性格なのかを知ることに重きを置かれています。
ですので、ここでも主人公を紹介してみようと思うのです、が。
最初に言ってしまいますが、本作品、特に本書の主人公の性格は、私は好きではありません。
理由は後述しますが、世間一般的に見てもあまり魅力的な性格だとは思えないんですね。
しかも、本書は4分冊の1冊目、ストーリー作りのルールにのっとれば、
主人公はほぼ成長せず、あるがままの性格で振舞うのがセオリーの段階です。
主人公は物語の中で 徐々に成長し、
あるがまま → 変わり始める → 大きく成長をし始める → ヒーローになる
の4段階を経ていくという基本があります。
それぞれの変化は物語を4等分し、その4分の1の物語の始めに起こります。
つまり、あるがままの主人公が変わり始めるのは、物語を読み進めて
ちょうど4分の1辺りから、ということです。
なので本書の主人公はあまり好ましくない性格のまま、成長は次巻を読まないと
期待できないのです。
それでも、わざわざ本書をブログに採り上げようと思ったのは、2冊目以降で
主人公も徐々に変わっていくことを確認済だからです。
主人公好きになれないなーと思っても、次の巻買いに行くのも面倒だし、
もういいか…となるのはちょっと勿体ないんです。
と、ここまで前置きしておいてから、主人公・ソナンの性格を
少し書き出してみましょう。
・無責任
・思慮に欠ける
・短絡的
・好きなことしかやらない
・生きる気力に欠ける
・思い付きで行動してしまう
・反省と後悔というものをしない
もうこの辺で止めにしておきましょうか。
私から見たソナンの性格はこんな感じです。
……ロクなヤツじゃない笑。
実際に物語の冒頭に登場したときは、チンピラとしか思えませんでした。
さすがに本書の中でもチンピラ感は脱しますが、箇条書きした性格は
おおむねそのままです。
一応、放蕩息子ではあるが、どこか憎めない男ではある……という設定では
あるらしいです。
この後の3冊で、主人公がどう変わっていくのか、注目ですね。
変わるきっかけは本書の最後でちらりと触れられる、結婚と領主への就任です。
どちらも無責任な態度ではいられない人生が変わる出来事です。
不安しかない主人公の行く末については、また2冊目『鬼絹の姫』についての
ブログでご紹介したいと思います。
それでは、今回はここで終わりです。
よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。
ここまで読んでくださってありがとうございました!