平和なクリスマスを守るのは、猫!?『通い猫アルフィーの贈り物』読書感想

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今回ご紹介する作品はこちら↓

通い猫アルフィーの贈り物  レイチェル・ウェルズ  ハーパーBOOKS

可愛い猫・アルフィーが主人公の心温まる物語シリーズ第7作目です。

「通い猫」という聞きなれない言葉がタイトルに使われているこのシリーズ、

まず最初に、本シリーズの説明を簡単にしておきましょう。

アルフィーは子猫のころ、飼い主が亡くなり野良猫になってしまいました。

その時の辛い経験が身に染みたアルフィーは通い猫となって、

複数の飼い主の家を行き来し、もう決して野良猫にならないように工夫した生活を送っています。

現在、アルフィーが住んでいるのはイギリスのエドガー・ロード。

そこの住人に可愛がられながら、息子のジョージ、

ガールフレンドのスノーボールや他のたくさんの猫仲間と共に暮らしています。

少し離れた通りにも人間と猫の友達がいて毎日楽しい……はずなのですが、

人間の世界にはトラブルがたくさん発生します。

賢いアルフィーは平和な暮らしを守るために、

毎回知恵を絞って、トラブル解決に奮闘する……という物語になっています。

トラブルを解決すると言っても、赤川次郎の『三毛猫ホームズ』シリーズのように、

猫がスマートに活躍する……とはいかないところが、

アルフィーの世界観です。

猫には出来ることに限りがあるし、おまけにアルフィーはちょっとうぬぼれやさん。

「これくらい僕には簡単に解決できるよ」と得意気にひげを動かしているくせに、

「……まだ何も思いついてないけど」と付け加えるところがチャーミングです。

そしてアルフィーがいかに賢いといえど、その行動は猫そのもの。

解決法を一応は考えながらも「そろそろお腹空いた」と餌をねだりにいったり、

「疲れちゃった」と言って寝てしまったりと、

けっこう気まぐれ……笑。

でも、そんなところが「とにかくかわいい!」シリーズになっています。

今回ご紹介する『通い猫アルフィーの贈り物』はクリスマスを目前にした

楽しい期待にソワソワする時期から始まっています。

アルフィーもクリスマスのご馳走を楽しみに呑気に暮らしている……

わけにはいかないのが、エドガー・ロードの住人達です。

今回は3つも問題が発生してしまいます。

1つ目が、トミーの反抗期。

トミーはアルフィーの通い先の一つである夫婦の子供で、

10代半ばにさしかかり、学校でも家庭でも不貞腐れた言動で

ほとほと両親は手を焼いている状態です。

10代の反抗期は誰しも、心当たりがありそうですが、

トミーはカンニングがばれて停学処分を受けてしまうほどだから、

少しシャレにならない状況です。

これにはアルフィーも、ちょっと前の息子・ジョージの反抗期を

思い出してハラハラと心配していました。

ジョージはもうだいぶ落ち着いたとはいえ、一時期まともに会話すらしてくれない

時期もあったので他人事(他猫事?)とは思えなかったのでしょう。

そんなアルフィーの、息子ジョージへの思いがつづられた文章が

笑っちゃうくらい共感できたので、少しだけ引用しておきます。

 ”正直言って、最近のあの子は手に負えないモンスターになってきた。

 でもすごくかわいい。うっとうしいけれど、かなりうっとうしいけれど、

 愛くるしいとも言える。”

親から見た子供って、ほんとこんな感じですよね。

息子を思い浮かべながら「わかる!」と呟いてしまいました^^;

でもこれ、あまりに率直な意見すぎて、

人間がSNSなどで発信してしまうといろいろ問題になりそうです。

でも、可愛い猫が少ししょんぼりとしつつ「にゃあ……」と

ぼやいてる姿を想像してみてください。

なんだか許せるものに大変身してしまう感じがしませんか?

「猫も人間も似たような苦労してるんだな」と

育児の大変さに共感しつつも、軽く笑い飛ばせる冗談になって、

そんなところもアルフィーシリーズの良いところだなと思います。

そして問題の2つ目が、クリスマスのチャリティー企画です。

トミーのお兄ちゃんであるアレクセイと、その恋人コニーが

ホームレスシェルターに見学に行き、

「何か支援をしたい!」と思いついたのが募金活動です。

シェルターで暮らす人たちのために寄付金を集めるにはどうしたらいいのか?

アルフィーも知恵を貸して思いついたのがクリスマスコンサートです。

歌アリ、演劇アリ、ごちそうアリの楽しい企画を詰め込み、

チケット販売による儲けを寄付しようというもの。

準備は大変ですが、街中の助けを借りて、アレクセイを中心に

人間たちは、忙しく働きまくります。

アルフィーたちも劇で役をもらい、毎日練習を頑張るんですよ。

その役どころがなんだったのか? はぜひ読んでみてください。

「え? なんで? 無理あるでしょ!」という役をもらっています。

まあ猫なら何をやらせても可愛いからいいと思われたのかもしれません。

そしてこのクリスマス会のおかげで、1つ目の問題、トミーの反抗期も改善します。

忙しくさせてみれば、不貞腐れてる暇もないだろう、という理屈で

半ば強制的に準備を手伝わされるのです。

そして、この思惑が大当たりします。

クリスマス会に限らず、お祭りの準備って、楽しいですよね。

文化祭の前日とか、今思い出してもその時のワクワク感が思い出されます。

そういうワクワク感って伝染して、普段クラスでそこまで協力的ではない男子でも

最後の追い込みくらいは手伝ったりするんですよね。

トミーもそんな心境だったのか、徐々に笑顔を取り戻します。

よかったよかった、これで問題はすべて解決……

と思った時に出てきたのが3つ目の問題、

エドガー・ロードの新しい住人、バーバラです。

彼女と最初にコンタクトを取った住人はアルフィーでした。

新しい住人が来たらとにかくチェックして、新しく通える家にできないかな?

と考えてしまうアルフィーは、ワクワクしながらバーバラの家へ向かいます。

ところが、彼女はどうやら猫嫌いのようで、

持っていたゴミ袋を振り回してアルフィーを追いかける始末。

アルフィーもこれには懲りて、なるべくバーバラのそばには近寄らないようにと

ジョージや他の猫仲間にも伝えます。

ところが、バーバラはクリスマス会に参加したいと、オーディションに顔を出すのです。

そして「演劇経験があるから」と、目立つ役に変えろと言ったり、

セリフを増やせと言ったり、いわゆる「問題児」ってやつですね。

そして、彼女はクリスマス会に大問題を引き起こすわけなんですが……

これ以降はネタバレ防止のため書きません。

何が起こって、アルフィーがどう解決する(首を突っ込む?)のか、

ぜひ見守ってあげてください。

ただ、一つ保証できますのは、

『通い猫アルフィーの贈り物』は、タイトル通り、

読み終えたあなたへの贈り物になるような、

素敵な本だということです。

いくつも問題が起こって、バーバラのようなできればご近所づきあいしたくない

と思える人間が登場し、少し心がざわつくシーンもあるでしょう。

でも、読み終わった時には、そんな感情は消え失せて、

いくつもの幸せな気持ちに包まれていること間違いなしです。

私は、この本を発売直後のクリスマスちょい前くらいの時期に読みましたが

早めのクリスマスプレゼントをもらったような嬉しい気持ちになれました。

そして、誰かにクリスマスプレゼントを用意して気持ちをわけたい、という

気持ちにもなりました。

この気持ちが、このブログを通して、

少しでも伝わっていけばいいなと思っています。


いかがでしたでしょうか?

アルフィーシリーズは猫好きな人にはもちろん、

犬好きな方でも思わず「可愛い!」と思ってしまう魅力があると思います。

あ、そういえば一匹だけ、子犬も出てきます。

人間も、猫も、犬も、みんな幸せになれる

とっても癒されるシリーズなので、

『贈り物』以外も読んでみてくださいね。

ちなみに、シリーズ1作目は『通い猫アルフィーの奇跡』です。

『贈り物』に出てくる反抗期少年トミーは、

この時まだミルクを飲んでいました。

どこから読んでも面白いですが、最初から読むと

感慨深いものがありますよ。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。

よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。

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