読書感想|本格ミステリなのにアイツがでてきます…屍人荘の殺人(今村昌弘)

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本日ご紹介するのは、4つのミステリランキングで4冠を達成し、デビュー作で50万部突破した話題性たっぷりの作品です。

屍人荘の殺人 今村昌弘先生作 創元推理文庫出版

今村先生は第27回鮎川哲也賞を同作品で受賞後にデビューし、あれよあれよというまに有名作家になりました。

「屍人荘の殺人」は本格ミステリなので、ファンからの支持は期待できますが、それだけじゃ50万部もいきませんよね。

この作品、ただの推理ものではないのです。

アイツ、がでてきます。

ネタバレありで書いていきますので、アイツの正体が気になる方は続きをどうぞ!

目次
 1.「屍人荘の殺人」が受賞したタイトルがこちらです
 2.本格ミステリとアイツの融合
 3.名探偵とワトソン君


1.「屍人荘の殺人」が受賞したタイトルはこちらです

鮎川哲也賞を射止めたばかりか、デビュー作で驚異の4冠達成!

なんだかすごうそうな響き、ですが、具体的にどんなタイトルなんでしょう?

どんなタイトルを受賞した作品なのかちらりとご紹介します。

・鮎川哲也賞

まずは鮎川哲也賞から。

本作品が第27回ということで、現在第30回の作品公募がされています(2019年10月末まで)。

鮎川哲也先生は既に故人ですが、こうして賞の募集は続いています。

生前は本格ミステリを中心に書いていたそうで、鮎川哲也賞でも長編ミステリにジャンルを絞って募集されています。

過去の受賞者をざっとみますと、パッとめについたのは

 ・相沢沙呼(代表作:小説の神様)
 ・相川晶(我が家の蔵書:六月六日生まれの天使)
 ・北森鴻(我が家の蔵書:狐罠)

どの方も受賞後、ミステリを中心にシリーズものを書かれて活躍されていますね。

「屍人荘の殺人」もすでに続刊が出ていますので、これから長期シリーズになるかもしれません。

ちなみに、私は第2作も買うつもり満々です。

・国内ミステリランキング4冠

第1位を取ったのは以下の4つのランキングです。

→の後は、同ランキングの過去の代表的なグランプリ作品です。

 ・このミステリーがすごい(2018年度版)
    →模倣犯(宮部みゆき)、容疑者Xの献身(東野圭吾)

 ・週刊文春ミステリーベスト10
    →告白(湊かなえ)、悪の経典(貴志祐介)

 ・2018 本格ミステリ・ベスト10
    →鉄鼠の檻(京極夏彦)、折れた竜骨(米澤穂信)

 ・第18回本格ミステリ大賞
    →女王国の城(有栖川有栖)、涙香迷宮(竹本健治)

過去の受賞作品と受賞者名のそうそうたるや……!

これで4冠達成がものすごい偉業だったことがよくお分かりいただけたと思います。

2.本格ミステリとアイツの融合

エンタメを作るときに、一番考慮しなければならないことは、その作品が既存作品と「どこが」違うのか、ということだと思います。

もう既に似たような作品があるなら、2番煎じ、最悪、模倣やパクリとも言われ兼ねません。

趣味で書いてる分にはそれでもいいのでしょうが、商売にしようと思うなら、何か新機軸を打ち出さねばならない。

しかし、本格ミステリと言われる分野でそれをやるのは、なかなか難しいことだろうなというのは想像がつきます。

誰が犯人か(フーダニット)、なぜやったのか(ホワイダニット)、どうやったのか(ハウダニット)と、謎解きの中心になるトリック(密室やアリバイ)は既にジャンル分け済みですし、誰も思いつきもしない驚異のトリック!なんてそう簡単に思いつくものでもありません。

実は、この作品でもトリックや犯人当てのロジック構築については、そこまで目新しいものではありません。

理論整然と組み立てられていて、なるほどな、という謎解きの快感はもちろんありますが、綾辻行人先生の「十角館の殺人」ほどの衝撃はありません。

でも、ですよ。

この作品は読者を驚かせることに十分成功したのです。

キーポイントは、アイツ、です。

いろんなSNSでもアイツの正体は伏せられているそうですが、映画化もされるそうだし、もう50万人が読んでるらしいし、ばらしてもいいでしょう。

嫌な方はここで読むのをやめてくださいね!

アイツの正体は

ゾンビ、です。

何かの例えではありません。

バイオハザードでお馴染みの、頭を吹っ飛ばされるまで死人の姿で襲い掛かってくるおぞましいモンスター、ゾンビのことです。

このゾンビが、作中でとても重要な役割を果たします。

主人公らが滞在するペンションを取り囲み、ペンション自体を密室状態にする仕掛けがゾンビたちなのです。

ミステリには「クローズド・サークル」と呼ばれる、事件現場が何らかの理由で孤立してしまう状態のことを指す用語があります。

通常は大雪で閉ざされた山小屋や、台風で船が出せなくなった無人島などが舞台に選ばれるのですが、本作が選んだのはゾンビという、パニックホラーとの融合でした。

殺人者が内部にいるかもしれないという、それだけで危機的状況を感じさせるのに加え、パニックホラーの要素まで付け加えたのです。

しかも、ただペンションを取り囲み、主人公たちを閉じ込めただけがゾンビの役割ではありません。

他にも、謎解きにかかわる重要な役割を彼ら(?)は果たしています。

これ以上のネタバレはしませんが、この作者のすごいところは、ゾンビにしろ、他の何気ない描写にしろ、一つも作品を構成するうえで無駄にしていないところです。

ミスリードというものがほぼ(あるいは全くかも)ありません。

作中のどこかに、この伏線は有効活用されている。

そんな緊張感をもって読める作品、突飛なアイディアによって誤魔化されているわけではない、本格ミステリとなっています。

3.名探偵とワトソン君

この作品はやっぱりゾンビに目が行きがちなのですが、もう一つ、ならではの要素があるなと思ったのは、名探偵のキャラクター性です。

主人公はワトソン役で、ミステリオタクで、古今東西の様々なトリックが頭に入っているので、その知識で探偵役を助けます。

ワトソン役の主人公はわりと普通の青年なのですが、名探偵役がちょっと変わっています。

名探偵役は主人公と同じ大学に通う剣崎比留子という女性で、すでに学内でも探偵少女として有名で、警察にも捜査協力をしている、という触れ込みで登場します。

そして、名探偵らしく、ワトソン役の主人公を事件へと巻き込むのですが、この女性が探偵役となった経緯が面白いのです。

名探偵といえば、自分から事件に好んで関わりたがったり、あるいは身内に警察関係者がいるなどして、強制的に関わらざるを得ない状況にしたりと、作者はどうにかして名探偵を事件の関係者に仕立て上げます。

作中でも、主人公のミステリ愛好会の先輩、明智恭介はこの従来までの名探偵役の個性を与えられた人物です。

しかし、剣崎女史は違います。

彼女は、好きで関わっているわけでも、身内に警察官がいるわけでもなく、事件を呼び起こしやすい体質だ、という設定なのです。

ただ、そこにいるだけで事件が起こる、巻き込まれる。

ですから彼女は両親によって家族からも隔離され、一人で数々の事件に対処してきました。

すべては彼女自身が巻き込まれた事件から生き残るために、犯人をいち早く特定し、身の安全を図るために名探偵にならざるを得なかったのです。

なんと可哀そうな女性なんでしょう。

女性で名探偵役で、探偵役をしている理由が理由だけに、ちゃんとヒロインにもなりうる!

なんだか美味しいとこ取りのキャラクターですね。

本人は大変でしょうし、変わりたいとは全く思いませんが笑。

名探偵とワトソン君のコンビが男性と女性なので、今後シリーズが続いていけば恋愛要素も出てくるかもしれませんね。

ラブコメ好きの私としては、期待してしまうところです。


いかがでしたでしょうか?

本屋に行けば、「屍人荘の殺人」は平積みしてある可能性大です。

ゾンビが出てきてしまうので、苦手な方は注意かもしれませんが、そこまで怖い描写は…なかったと思いますよ。

かくいう、私もゾンビは苦手です。

彼ら、しつこいじゃないですか……

でも、なんともなく読めましたので、

・一風変わった本格ミステリを読みたい方、
・本格を読んでみたいけど何を読んだらいいかわからない方
・推理しながら読んで、犯人当てるのに意欲を燃やしている方

には特におすすめですよ!

ブログの内容はもちろん、「屍人荘の殺人」の面白さや気になったところなど、コメントいただければ嬉しいです。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!

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