女性の願望、詰まってます『わたしの幸せな結婚』読書感想

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今回ご紹介する本はこちら

わたしの幸せな結婚  顎木あくみ  富士見L文庫

花が舞い散る中に2人の男女。長身の男性は背を向けて色素の薄い美貌を無表情に伏せており、女性は長く美しい黒髪に花飾りをつけて着物の柄も鮮やかな花模様。しかしその顔はどこか憂いをおびて沈んでいる……

華やかな色彩に繊細な線描、それでいてどこかはかなげで哀愁を感じさせる美しい表紙絵に飾られた本、それが『わたしの幸せな結婚』です。

女性でこの表紙に惹かれない人はいないんじゃないかってくらい、超! 美麗な表紙絵です

この表紙に惹かれて思わず手に取ってしまった私ですが、話も中盤くらいで思ったことは一つ。

「大当たりだ!!」

話の内容をザックリ言ってしまうと、不幸せな美人がスパダリな婚約者に大切にされることで幸せになっていく、というもの。帯に書かれている「和風シンデレラ物語」そのままの内容です。

とにかく ”萌えのかたまり” のような作品です。女性、特に大人の女性に読んでみてほしい作品です。仕事や家事で疲れた合間に、癒されること間違いなしです。

それでは、以下、作品の魅力についてご紹介していきます。


1.おおまかなあらすじ

まずは簡単なあらすじからご紹介しましょう。

話の舞台は、今よりちょっと昔の時代の日本。ですが、そこには「人に害をなす異形」の存在があり、異形に対抗する力 ”異能” を持った人々が尊ばれるという、ちょっとファンタジックな設定も織り込まれています。

この異能を持った人が生まれる家系は貴族のような扱いを受けているわけですが、主人公・斎森美世の生家もその一つです。何不自由なく名家のご令嬢として育つはずだった美世ですが、彼女には異能がありませんでした。さらに、腹違いの妹が異能を持っているとわかってからは、美世は使用人同然の扱いを受け、虐げられていました。

優しくしてくれるのは斎森家と同じく異能持ちの家系で名家の辰石家・次男の幸次だけ……

幸次に淡い恋心を持っていた美世でしたが、運命は残酷です。19歳になると妹と幸次の縁談が決まり、自分は父親が決めた婚約者のもとに行かされることになります。つまり体よく実家を追い出されてしまったのです。

しかも、美世の嫁ぎ先が大問題でした。

嫁ぎ先は久堂家。久堂家の当主は当代随一の異能使いである清霞(きよか)であり、彼が美世の結婚相手でした。

文句なしの名家である久堂家ですが、清霞につきまとう噂は不穏なモノばかり。

清霞は冷酷な性格をしている。

何人も嫁入りしに久堂家に入ったが、3日と持った女性はいない。

美世も当然、清霞のもとに行くことを恐れるわけですが、彼女は勘当同然の身の上、どこに行くあてもなく久堂家の門をくぐるしか選択肢はありません。

意を決して美世は清霞に会いに行くのですが……結果は散々。初対面から冷たい言葉を投げつけられてしまいます。った食事すら口に入れてもらえません。

それでも美世は、追い出されるまではここに置いてもらおうと、家事を黙々とこなしていき、やがて清霞の心が少しずつとけていきます。そのきっかけは、食事。

実家にいた時も食事を作らされていた美世は、久堂家を訪れて数日後にやっと自分の手作りのご飯を清霞に食べてもらえるのです。

清霞から味の感想を聞かされ美世は思わず泣いてしまいます。実家ではついにかけてもらえなかったたった一言を、清霞は言ってくれたのでした。

一方、清霞も名家のご令嬢らしからぬ美世の外見と態度に疑問を持ちます。これまでの清霞の身分、容姿、財産などに惹かれていた婚約者たちと、美世は決定的に違う……

2人は少しずつ共にいる時間を増やしていき、互いに歩み寄っていきます。

美世は幸せとはこういうものかと、清霞との夢のような日々を噛みしめるように暮らしていくのですが……

2人の間を引き裂こうとする不吉な足音も忍び寄っていたのです……

2.ここが萌ポイント!

表紙を見ても、内容を読んでも、本作は完全に女性向けの作品です。

主人公の美世はあなたの分身、ぜひ彼女に感情移入して読み進めていってほしいと思います。

美世は物語の冒頭では、不幸のどん底にいます……

しかし、その後の彼女の逆転人生はかなりすごい!

婚約者の清霞の存在が重要であることはもちろん、その他にも美世の運命には羨ましくなるような要素が用意されています。

言葉をかえれば、それらは本作の萌ポイント! 3つ、ご紹介していきましょう。

萌ポイントその① 清霞が美世にだけ、優しい

もう一人の主人公であり、ヒロイン美世の婚約者になる清霞の設定はチートそのもの世の女性の願望が詰め込まれた王子様のような存在です。

イケメンであることはもちろん、家柄も高く異能の能力もナンバー1高身長高収入将来の出世も間違いなし!

誰でもこんな人と結婚したいよ…!と言いたくなりますよね。

しかし、スペックだけ見ると完璧な清霞ですが、人間らしい欠点もあります。

清霞の欠点、それは人に誤解されやすいということ

清霞は人付き合いが下手で口もうまくない不器用人間のため、本人にその気はなくとも他人には冷たい態度とみられてしまいやすいのです。昔から知っている女性や部下には清霞は本当は思いやりある人物だとバレていますが、初対面の人間にはまず勘違いされます。

また、幼いころから女性にモテまくってきたため、女性不信気味でもあるようです。どうせ外見だけ、家柄だけしか見てないのだ…そんな諦観を抱いています。さらに、清霞のこれまでのお見合い相手は当然名家ご出身のお嬢様ばかり。我がままだったり態度が横柄だったりと、もう相手をするのもうんざりしていたようです。

そこに出会ったのが、ヒロイン美世です。彼女もまた名家のお嬢様、ではあるのですが、実家では使用人同然扱いでしたから、高慢どころかむしろ卑屈な態度で外見もやせ衰え髪もぱさぱさ……清霞じゃなくても違和感を覚える第一印象なんです。本来マイナスに働きそうな美世の状態ですが、かえってそれが清霞の関心をかい、彼女に関心を持つきっかけとなるのです。

そして、清霞は美世の悲惨な過去や彼女の謙虚で傷つきやすい内面を知っていくことになるのですが……

その過程で、清霞に起こる変化が萌えポイントその①です。

清霞は、美世にだけ、素直な態度を見せるようになるのです。

この、だけ、がポイントです。

本来優しい清霞ですが、その優しさや素直さをストレートに見せることは昔馴染み相手にですらありません。照れ隠しなんでしょうが、ぶっきらぼうな態度をとってしまい苦笑されがちです。でもそれが美世相手だと、これまでの彼女の半生を思い、気遣い、優しさをわかりやすく伝えようとしてくれるんです。美世は清霞の対応にドギマギ……ですが読者はドキドキと嬉しい気持ちになれる、というわけです。

私の特におススメなのは2人での初めてのお出かけのシーンです。その様子はお姫様をエスコートする王子様……ニヤニヤが止まりません。

萌ポイントその② 美世はモテる

清霞という素敵な男性と心を通わせていく美世ですが、彼女をとりまく男性は清霞だけではありません。

元々美世が淡い恋心を抱いていた幼馴染の幸次という青年が冒頭に登場します。

幸次は美世の実家のご近所であり、家柄もよく……と清霞ほどではないにしろ、名家のご令息です。さらに美世が実家で苦しんでいる時に、彼女に優しく接していた数少ない人間の一人なんですが……これだけいろいろフラグがたったような設定をしているわりに、登場時の印象はよろしくありません。

幸次は美世の想いを薄々感じ取りつつも、気弱な性格のため父親の意向には逆らえず、美世の妹との結婚を承諾してしまうのです。

これによって、結婚をして家を出る、とか自分を思いやってくれる人と結ばれる、という普通の幸せは自分には訪れないのだ、と美世は物語開始早々に絶望してしまいます……

結果的には、そのおかげで美世は清霞に出会うことになるので、幸次が物語に果たす役割としては「幸せになるきっかけをつかむ前に絶望の底に一度落とす」という、なんとも損な役割だったのかなと思っていました。

物語は進み、清霞と美世の心が少しずつ近づいていき、幸次のことはすっかり忘れたころ、彼は再登場します。

再登場してからの幸次は、冒頭とはがらりと印象が変わります。彼がどんな思いで美世と接してきたのかを知ると……清霞とは別の意味で頼もしさを感じさせる存在に様変わりするんです。

さらに、続編も読んでいくとわかるのですが、実は『わたしの幸せな結婚』は若干「逆ハーレム」の要素があります。つまり、美世はモテるんです。

1作目は王子様やナイトのような優しく頼れる男性たちでしたが、ミステリアスだったりヤンデレだったりと、タイプの異なる男性が登場してきます。

モテるってやっぱり気持ちのいいもんです(笑)これで萌えないわけがない。

萌ポイントその③ じつは美世は…

物語開始当初、美世は長年虐められてきたせいか性格も臆病で自分に自信がなく、容姿もみすぼらしく……はっきり言って魅力的には描かれていません。

これはもちろん、作者がわざとやっています。最初が非・魅力的であればあるほど、その後の変化がきわだって感じられますからね!

物語が進んで、美世がどう変わっていくのか? その過程も本作の魅力の一つです。 

変化をもたらすのは、もちろん清霞。

美世のために慣れない女物を見繕ってプレゼントしてくれたり、ちょっと買い物と言いつつ街に連れて行ったり……清霞に手を引っ張られるように、美世はどんどん、綺麗の階段をのぼっていきます。

清霞を昔から知る気心の知れた人たちの美世への評価も見逃せません。「磨けば光る」「手放してはいけない」……女性なら一度は言われてみたい言葉ですよね。磨いてくれるのが王子様な清霞ですから、嬉しさは倍増です。

さらに、磨かれるのは外見だけではありません。美世は清霞に大事にされることによって、少しずつ、少しずつ、本来持っていた内面の輝きも取り戻し始めます。

物語のクライマックスでは大きな成長をみせるのですが、これはお決まりの展開ではあります。しかし美世のこれまでの人生を思うと思わず「がんばれ! 負けるな!」と読む手にも力が入りました。

とはいえ、美世の幸せな運命はまだまだ出発地点。内面の輝きが本格的に戻るのは2作目以降です。毎作、美世がしなやかに強くなっていきますよ。

さらに、これも2作目以降のお楽しみ要素ですが、美世には何やら秘密があることも本作ではほのめかされています。詳細は明らかにはならないものの、どうやらそれは異能に関するものらしく…ライトノベルやゲームではよくある「主人公だけが持つ特殊能力」が美世にも備わっているの……のかも?

美世は清霞にとっても特別な存在となり、さらに秘密の力も備えていて……と、誰もが一度は思う「特別な存在になりたい」欲求にも応えてくれる作品になっています。

3.富士見L文庫ってどんなレーベル?

忙しい中、本を読む時間を確保するのも大変なら、どの作品を読めばいいのか悩むのも大変だと思います。レーベルの特徴を知っておくと本を選ぶ時の参考になりますよ。

というわけで最後に、富士見L文庫の特徴について、少し解説しておきます。

富士見L文庫はKADOKAWAが2014年に創設した新しいレーベルです。コンセプトは大人女子向けのライトノベル文芸。

”L”はライトノベル(Light nobel)と文学(Litarature)の2語からとられています。文芸作品ほど構えずにさらっと読めるけれど、ライトノベルほど若年層向けではない、20~30代の忙しく働く女性層をターゲットにした作品群になっています。

『わたしの幸せな結婚』シリーズもそうですが、富士見L文庫の表紙はどれも美しいイラストに仕上がっています。眺めているだけで気分が華やぎますし女子力あがる感じがしますが、本文中には挿絵はいれず、そんなところも大人向けを意識した作りです。同じくKADOKAWAから出版されているメディアワークス文庫よりもターゲット層をより絞った感じになっています。

ドキドキ感、ワクワク感を期待するならメディアワークス文庫、萌感や胸キュン感を期待するなら富士見L文庫、がお薦めでしょうか。


いかがでしたでしょうか?

『わたしの幸せな結婚』はシリーズ化して、5作目まで発売が決定しています(2021年5月現在)。2作目、3作目も期待を裏切らない出来になっていましたので、いつかご紹介したいと思います。

それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!

よろしければ感想など、残していってくださいね。

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