黒の福音

松本清張の作品を読みましたので感想を書いていきます。

この後はネタバレを含みますので嫌な方はブラウザバックをお願い致します。

松本清張といえば昭和の大ミステリ作家ですが、完全オリジナルの作品はもちろん、現実に起こった事件を捜査、推理し、一つの小説に仕上げた作品もあります。
今回紹介する黒の福音もその一つです。
黒の福音では、外国人神父による日本人スチュワーデス殺人事件を根底に、作品が仕上げられています。

実際の事件

昭和34年、東京都杉並区の河川域で国際線スチュワーデスの女性の死体が発見されました。最初は自殺と思われたのですが、解剖の結果、首を絞め殺された可能性が高いということで、一躍マスコミの注目の的となった事件でした。
捜査線上に浮かびあがったのは一人の外国人神父で、外交問題などの恐れから捜査はマスコミには非公開で行われましたが、容疑者情報が洩れ、騒ぎ立てるマスコミを避けるように、容疑者の神父が母国へ帰国してしまい、迷宮入りとなりました。

黒の福音では

実際の事件が起こる前、容疑者である外国人神父が所属するカトリック系教会が戦後の混乱に乗じて闇物資を取り扱い、裏社会とのコネクションを広げていく描写から始まります。
そして、問題の外国人神父と被害者であるスチュワーデスが出会い、恋人として関係を深めていく過程が描かれますが、教会の裏の顔に二人の仲が利用されそうになり、結果的に教会の秘密を守るため、恋人に殺されるまでを第一部として、犯人目線で書かれています。
第二部は事件後、警察とマスコミがいかにして閉鎖的で攻撃的な様子を見せる教会相手に犯人に迫ったかを、松本清張ならでは地道な捜査による説得力たっぷりの緻密な推理描写により描いてあります。

本書のみどころ

本書のみどころは「昭和の雰囲気を感じろ!」です。
そもそも、松本清張の作品というだけで面白いことは折り紙つきですが、事件は私も生まれる前の昭和34年のできごとであり、社会背景も経済状況も異なる日本を疑似体験できます。今ならこんなの科学捜査で一発じゃない? とか、相手が外国人といえど今ならこんなにびくびくとした捜査をしないんじゃないか? など、現代から見ると不便なところが多い過去の捜査状況が浮かび上がります。しかし、だからこそ、捜査陣もマスコミも、熱心な取材や聞き込みにより、地道な成果をあげていく様子を、読者も我がことのように「やった! これで一歩前進した!」という喜びを感じながら読んでいくことができます。

長編作品ですし、文庫でも少し分厚い作品ですが、面白いことは保証します。
夏休みの読書にいかがでしょうか?
ここまで読んでくださってありがとうございました!

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