金田一耕助シリーズトップクラスの凶暴な犯人!『スペードの女王』読書感想
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今回ご紹介する本はこちら
スペードの女王 横溝正史 角川文庫
名探偵の代名詞、金田一耕助が登場します。
話は金田一の元に実に不思議な体験をした男の話が持ち込まれることから始まります。
これが実に横溝正史らしい蠱惑的なエピソードでシリーズファンとしては一気に物語に惹きこまれます!
しかも、そのエピソードが後に起こる殺人事件の重要な鍵となってくるから序盤から大いに気分が盛り上がったまま読み進められました。
本書の読みどころは
- 次々と起こる殺人事件
- 金田一耕助シリーズ史上トップクラスの犯人の凶暴さ
- ひと工夫された「顔のない死体」の謎
- 多数登場する正体不明の人物たちの謎
と、こんな感じです。
スピード感と、犯人の魔の手が金田一にまで及ぶ緊迫感にスリルがあってたまらなかったです!
それでは、あらすじと感想をまじえながらご紹介していきましょう。
1.おおまかなあらすじ
まずはおおまかなあらすじからご紹介していきましょう。
冒頭にも書いた通り、お話は金田一の元に、とある男の不思議な体験談が持ち込まれるところから始まります。
持ち込んだのはその男の奥さん。
男は通称「彫亀」で有名な腕のいい入れ墨師です。
数カ月前、彫亀のもとに、顔を隠した謎の女から奇妙な依頼がまいこみます。
その依頼というのが、謎の女が足に入れている入れ墨と同じものを、別の女にも彫れ、というもの。
その入れ墨の柄は「スペードのクイーン」でした。
彫亀がその依頼を受けてしばらく経った頃、彼は不審な事故死を遂げます。
しかし、いくら不審な死とはいえ、なぜ彫亀の死から数カ月も経ってから奥さんは金田一の元を訪れたのでしょう?
実はその頃、鎌倉で首から上が切断された女の「顔のない死体」が発見されていたのです。
その女の特徴は足に入っている「スペードのクイーン」の入れ墨……
この事件の記事を読んだ奥さんは、彫亀の死が単なる事故ではないと確信したのでした。
金田一はさっそく、捜査のために相棒の等々力警部のところへ向かいます。
警察は死体の身元を既に特定していました。特徴的な入れ墨が決め手になったのです。
ですが、もう一人同じ入れ墨をいれた女がいるという情報が金田一により警察にもたらされ、事態は一気に混迷を深めます。
入れ墨を入れた死体は誰なのでしょうか?
そして謎の女の正体とは?
その謎が解けぬまま、事件はこの後、急展開を続けます。
2.金田一史上、トップクラスに凶暴な犯人
「顔のない死体」が発見されて、その捜査が金田一によりほぼ振出しに戻ってしまった後、次々と殺人事件が起きます。
これはすごい! 殺人事件大量発生。
大変なことだけど……大歓迎!!
不謹慎にも、ミステリ小説大好きな私は「殺人事件の件数はどうせなら多い方がいい」というのが本音です(笑)
いいんです、だって小説ですから!
現実で味わえないものを体験できるのが、フィクションの醍醐味であり良さです。
それにこの事件の連続が物語にスピード感を出す効果もあってどんどん読み進められるんだから、いいことばかりです^^
次々と殺人を犯す凶暴な犯人ですが、その魔の手が金田一にまで及ぶのではないか? という疑惑が持ち上がります。
これには金田一本人も、相棒の等々力警部も大慌てです。
金田一は無事、危機を切り抜けられるのか?
緊迫した展開と犯人の想像以上の凶暴さに息が詰まります。
殺した人数といい、事件に首を突っ込んだだけの探偵を狙うところといい、犯人は金田一耕助シリーズ史上、トップクラスの凶暴さであることがわかります。
金田一も思わず「犯人は邪魔者をみんな殺すつもりじゃないか?」と言い出す始末。
怖いですね、短絡的というか、倫理観どこいったというか……
物語も最後の方で、犯人の動機もちゃんと判明するんですが、その動機もかなり「アレ」な感じでした^^;
いやあ、こんなスリルはフィクションの中だけで十分です。
3.顔のない死体もの
本作はミステリのジャンルで言えば「顔のない死体」ものになります。
死体が発見されたけど、どこの誰か分からない……というのがポイントということになりますね。
『スペードの女王』では死体の首を切ったうえに、さらに念を入れて、「同じ入れ墨を持つ2人の女」という仕掛けも組み合わせ、より謎解きが難しくなっています。
一般に、「顔のない死体」を作り出す意図としては ”Aさんが死んだと見せかけて、実は死んでいたのはBさんだった。 Aさんはまんまと自由の身になれた。”というものが多いです。
Aさんはこの後、自分のことを誰も知らない土地へ行き人生をやり直したり、場合によっては死んだことになっていることを活かして自由に殺人を続けたり……というのがミステリでよくあるパターンです。
本作はどうでしょう?
実は、どちらのパターンも当たらずも遠からず、です。
真相は人間のエゴや保身にまみれて「いつものパターン」通りとはいきません!
なかなか自力で真相に辿り着くのは難しいでしょう。
私はかすりもしないどころか、途中で推理を金田一に投げました^^;
なぜなら『スペードの女王』は「顔のない死体」以外にも「誰なのさ!?」が多い作品なんです。
4.あなたはだあれ?
真相にたどりつくのを阻んでいるのが、作中にたくさん登場する「正体不明人物」です。
読んだ後に思い出する限り、あげてみました。
- 謎の女に使われる運転手
- とある女性に脅迫電話してきた相手
- 伊丹という男
- 「スペードの女王」という異名を持つ女
- 金田一襲撃を企む男
もしかしたらもっといたかもしれません。
このすべてに、作中で別人として登場する人物がちゃんと当てはまります。
こっちはあの人で、そっちはこの人で……あれ? これとこれは同じ人……?
ああああ! もうややこしい!!
私の頭の中で積み木が崩壊してしまいました。
金田一はこんなのよく頭だけで考えてるなと思います、すごい。
この人物照合ゲームも乗り越えて真相に辿り着けた人は相当すごいですよ、ぜひ挑戦してみてください!
いかがでしたでしょうか?
私の本作の一番のおススメポイントは「連続発生する事件」ですね。
作品に緊張感も疾走感もでて、「次はどんな展開が待っているんだろう?」とワクワクできます。
起こってるのが殺人事件なので不謹慎ではあります……が、いいんです、フィクションですから^^
凶暴な犯人のスリルをぜひ味わってみてくださいね。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました。
よろしければ感想など、コメントに残していってくださいね。