読書感想|創作意欲が刺激されること間違いなしです、ぐるぐる問答(森見登美彦)
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ぐるぐる問答 森見登美彦 小学館文庫
森見登美彦先生と著名人との対談集です。
ぐるぐる問答とは、自称:対談が苦手な森見先生が、対談しながらテンパってぐるぐるしている様子を揶揄してつけられたタイトルらしいのですが、内容は全然ぐるぐるしていません笑。
それどころか、森見先生が小説家なので、対談相手も小説家、もしくは創作を仕事にしている方が多く、創作についてのあれやこれやを語ってくれていて、大変興味深い内容となっています。
しかも、その対談相手のラインナップの豪華なこと!
ちらりと例をあげておきますと、万城目学先生、綾辻行人先生、辻村深月先生……
人気作家同士の対談で、しかも創作秘話まで語ってくれるのです、面白くないわけがない。
それでは、内容をご紹介していきますね。
目次
1.どんな内容がメイン?
2.読むと思い知ること
3.小説家という人種
1.どんな内容がメイン?
冒頭でも書きましたが、森見登美彦先生と小説家の対談が主となっています。
他にも女優さんやアナウンサーも対談相手にいらっしゃいますが、やはり創作家同志の対談の方が内容が濃くなっております。
創作家同志で話すことと言えば、生みの苦しみについて、がメインになります。
その苦しみ方は各先生によって違いますが、分類すると3つに分けられそうです。
①デビュー前はどうしていたか?
②どうやって創作するか?(環境や方法)
③デビュー後、どうやって活躍の場を広げていったか?
今や人気作家の森見先生たちですが、当然デビューという関門があり、プロになり、そこから幅を広げていくという過程を皆さん通過してきたからこそ、大活躍されているわけですね。
どのステージにいるときにどんな苦労をしていたのか、創作物からは読み取ることのできないこれらを惜しみなく語ってくれています。
本好きの方は自分でも書いてみたい、今現在創作にチャレンジ中だ、という方も多くいらっしゃると思います。
そういう方には特におススメできます。
創作というのは他者からの批評が得にくく、自己評価も難しい分野です。
つまり、参考になる情報が極端に少ない!
しかし、業界のトップを走る方々の意見は間違いなく見習うべきことに溢れているはずです。
そして、何より、読むと最も大事なこと、創作意欲を刺激されてやる気が出ると思います。
2.読むと思い知ること
やる気や知識を得られる一方で、読むと分かるのは創作者が待ち受ける厳しい現実です。
小説家に絞って書きますが、デビューするだけでも狭き門なのはもちろんのこと、書き続けること自体が非常に困難なことなのです。
書いても売れるかわからない、読者の期待を裏切りはしないか、といったプレッシャー。
そもそも書くこと自体できなくなるスランプ。
人気作家だからといってこれらと無縁ではいられない現実を思い知ります。
経験したことのある方には痛いほどわかると思うのですが、書くということは本当に大変で、それこそ人間としての基本的な生活も疎かになるほど考えて考えて、考えに詰めて……
それでも納得いくものができるか、認められるものができるかは不透明、という世界です。
厳しい世界ですが、そこから這い上がるためのヒントも本書からは読み取れます。
それはすべてを糧にする、ということです。
3.小説家という人種
小説家という人種は、すべてを糧にして作品を生み出します。
アニメ、漫画、小説。
過去の経験。
昔見た風景、絵画。
ちょっとしたとっかかりから話を膨らませていくのが非常にうまい。
何を見ても、経験しても何か使えるものはないか、自分の心の動きを非常に敏感に生きている人種、それが小説家なんだと思います。
案外役に立たないのは昔の自分の創作物(笑)のようですが、それだって失敗があるからこそ、成功が何かわかるってものですよね。
そして、対談の模様からすると、敏感に感じ取ったものを、しっかりと表現しきることができるかどうか、も大切なのだと思います。
表現しきれるかどうか、というのは表現力の問題だけではありません。
カッコつけることなく、曝け出すことを意味します。
これって本当に難しいことです。
人間、誰だってカッコつけたいんです。
というか、無意識にカッコつけちゃってるものなんです。
意識的にしろ、カッコつけるのを止めて自分を曝け出す、ものすごく恥ずかしいですし、本当にできる人は少ないのだと思います。
しかし、創作について語り合っている小説家たちを見ると、あっけらかんとそれができているように思えます。
もうそれが仕事なので感覚がマヒしてしまっているのかもしれませんが、これが小説家っていう人種なんだな、と本書を読むとそんなことも読み取ることができます。
いかがでしたでしょうか?
森見先生のファンの方はもちろん、対談相手のファンの方、そして創作をしている方に特にお薦めできる本です。
一つ一つの対談は短めなので短編集を読む感じで隙間時間の読書にも向いていると思いますよ。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
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