まだ見ぬ続編を勝手に予想してみました『豆腐小僧双六道中 おやすみ』(読書感想)
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今回ご紹介する本はこちら↓
豆腐小僧双六道中 おやすみ 京極夏彦 角川文庫
前作『豆腐小僧双六 ふりだし』の続編です。
今回も間抜けでお馬鹿で、でも愛嬌たっぷりの豆腐小僧の
珍道中が約700ページにわたって書かれています。
「700……京極夏彦の本は分厚いなあ」
しかし、ご安心を。
前作は妖怪うんちく成分が50%近くの割合を占めていましたが、
今回はうんちく、少なめです。
その代わり、人間たちの悪だくみも複雑になり、
妖怪たちも大ピンチに陥ったりと、
ストーリーに力が入って、読みやすくなっていました。
ラストは続編を意識して終わっていますが、
残念ながらまだ続編はでていません^^;
作中では明かされなかった謎もいくつか残っているので、
少しだけ手前味噌ではありますが、
考察してみたいと思います。
それでは、ご紹介していきましょう。
目次 1.おおまかなあらすじ
2.豆腐小僧にまつわる謎5つ
3.本編では明かされなかった謎について
前作『豆腐小僧双六道中 ふりだし』のあらすじ・感想の記事はこちらからどうぞ↓
『豆腐小僧 その他』のあらすじ・感想の記事はこちらからどうぞ↓
1.おおまかなあらすじ
おおまかなあらすじからご紹介……のその前に、
この作品の大前提をまずはご説明しましょう。
1.主人公は妖怪・豆腐小僧
2.豆腐小僧を始めとする妖怪がたくさんでますが、人間には見えません。
3.本来、妖怪は人間が「怖い!」と思った時に、恐怖の原因を説明するために
出るもの。
例えば 古い家でミシミシと音がする。
これは家鳴(やなり)という小鬼が住み着いて音を鳴らしているせいだ
と理由付けます。
4.妖怪の出る、消えるは人間次第。
基本は妖怪は出た瞬間に消えてしまうもの。
5.妖怪には自由意志もなく、出っぱなしで勝手にウロチョロ動き回る
なんていうのは世にも珍しい現象である。
以上を頭に置いてから、あらすじを読んでみましょう。↓
豆腐小僧は、玄角というニセ山伏と、権太という天狗を目指す男にくっ付いて、
甲府辺りの街道を歩いている。
旅の道連れは、達磨と、猫又の2匹の妖怪。
特に目的がある旅でもなく、妖怪のくせに何故か出っぱなしで消えることがないため、
とりあえず人間の後ろをくっ付いて歩いているだけ。
しかし、山奥の村に近づくと退屈な旅も終わりを告げた。
おりんという旅の巫女が逃げてきて、
それを追う村人たちの騒動に巻き込まれたのだ。
事情を聞けば、村の寺の和尚さんが死にかけ、
おりんが寺を乗っ取ろうとしたのではないかと疑いがかかったのだという。
実は濡れ衣で、お寺の和尚さんに一服盛った悪いヤツ、
然貫という坊さん崩れが裏で糸をひいている。
然貫、そして播磨屋という商売人、そして幕府直轄の甲府にて
武士として勤める猪狩の3人が仕組んだ悪だくみである。
甲府には戦国武将・武田の埋蔵金が埋まっていると言われ、
それを掘り出すために、村人をだまそうと、和尚の地位を狙っていたのだ。
そして然貫らの手下である伝治が腕利きの侠客、田村を引き連れ甲府へやってくる。
伝治に田村を紹介したヤクザ者・弥平とその情婦・あさぎも金の臭いをかぎつけ後を追ってくる。
幕府のスパイである吉蔵や、自称・先祖は武田の郎党・林らも巻き込んで、
埋蔵金を狙って一癖も二癖もある人間たちが甲府の田舎村に大集結する。
そして、主役の豆腐小僧は、人間たちの争いに巻き込まれた挙句、
豆腐の乗った盆だけを残して消えてしまうという大ピンチ。
取り残された達磨は、豆腐の乗った盆を追いかけていく。
追いかけた先で出会った妖怪・小豆そぎに盆を取ってもらうと、
小豆そぎごと、今度は盆まで消えかける。
慌てた達磨が盆を取り返そうと掴んだところ、
小豆そぎも、達磨も盆も、一緒くたに消えてしまった。
次に豆腐小僧が湧き出た時は、何故か河童と混じった間抜けな姿。
しかし、豆腐小僧として旅してきた記憶も、旅の途中で出会った
達磨をはじめとする他の妖怪の記憶もすべて残っている。
ただ、恐い状況を説明するためにでるはずの妖怪なのに、
記憶が残ったり、自分の意思があったりと、
これはおかしなことが起こっていると、共に再び湧き出た達磨が頭をひねる。
そして人間たちと、妖怪たちが一堂、せまっ苦しい飲み屋の一室で
全員相まみえることになるのだが……
人間たちはお互いの悪だくみがぶつかり合い、
皆殺しにしよう、そうはいくかと刀を振り回しての大乱闘。
そんな時にわく邪魅という名の、妖怪を恐ろしい化け物に変えてしまう奴が
湧いても、豆腐小僧や達磨、猫又たちは普段と変わらぬ呑気な様子。
これを見て達磨がひらめいた。
「消えるはずなのに消えない。自分の意思などないはずなのに自由に動く。
邪魅にも影響されない。
これは……!」
達磨がその理由を述べたタイミングで、何故か、豆腐小僧や他の妖怪たちが
人間の目に見えるようになる。
妖怪たちの姿にあっけにとられた人間たちの大騒動は収束に向かう。
そして幻のように、豆腐小僧たちは再び消えてしまったのだった。
2.豆腐小僧にまつわる謎5つ
この作品の醍醐味。
それはなんといっても、主人公・豆腐小僧の愛嬌にあります。
編み笠をつけて、豆腐の乗った盆を持ってちょろちょろうごく子供を
想像してみましょう。
「か、かわいい…?」
……かどうかはどんな子供を思い浮かべたかによりますが、
少なくとも悪い子じゃなさそうです。
実際に、この豆腐小僧のキャラクターはお馬鹿ではありますが、
とても人懐っこく(お化け懐っこく?)、
出会う妖怪すべてと仲良さげに話しだし、すぐに打ち解けます。
そして困っている人間が、これから酷い目にあいそうな人間を
見つけると、助けなきゃ、と何ができるはずもないのに
とっとこ走り出しちゃうような、けな気な性格もしています。
悪い子じゃないどころか、そう、とても良い子なんですね。
だから読むほうも、「豆腐小僧、がんばれ!」と
応援しながら読んでしまうんですね。
しかし今回は豆腐小僧が途中で消えるという大ピンチもあり、
そのせいで(?)物語の奥深さを感じさせる伏線のようなものが、
作中、いろいろと出てきます。
ここで、伏線のようなもの、という微妙な言い回しを使いました。
なぜなら、伏線、回収されないまま、お話が終わってしまうんですよね^^;
どうもこのお話、構想段階で続刊が予定されていたようなんです。
2021年7月現在、残念ながら、続刊は出ておりません。
これからも出ないのか、あるいは思い出したようにひょっこり出るのかは
作者のみぞ知るところであります。
とはいえ、残された伏線は気になりますし、
本文中で理由が明記されていなかった謎もいくつかありますので、
書き出してみました。
1.豆腐小僧は途中と最後で消えてしまいますが、なぜ消えたのか?
2.途中、豆腐小僧が消えた時、なぜ豆腐と盆だけ残ったのか?
3.なんで最後、人間に見えないはずの妖怪たちが見えたのか?
4.妖怪総狸化計画はどうなったのか?
5.埋蔵金の行方は?
すみません、4番については、あらすじに落とし込み切れませんでしたので、
次項で詳しく説明します。
1~3については、それで正解、と明記はされていないだけで、
「たぶんこれが理由だろう」という理屈が、
作中、出てきています。
ここは作品の一番重要な ”オチ” の部分なので、
記事の中で書くのは控えます。
ヒントを出しますと 「この作品は誰の目線で語られているのか?」
これを考えると、妖怪が出っぱなしになったり、
都合よく消える理由がわかります。
誰にとって都合がいいのか、というのも重要なヒントです。
これ以上は言い過ぎな気がしますので、4番と5番の謎について、
ちょっと考えてみましょう。
3.本編では明かされなかった謎について
まずは 4番の妖怪総狸化計画 から。
この計画は、読んで字のごとく、
「妖怪の正体はみんな狸でした、ってことにしてしまおう」計画です。
狸が正体という妖怪は ぶんぶく茶釜 など、存在していますが、
そういう妖怪だけではなく、豆腐小僧も、一つ目小僧も、
いったんもめんも、鬼太郎も、いろんな妖怪の正体すべてが
狸であり、狸が他の妖怪に化けているということにしてしまおう、
という計画です。
計画の首謀者は四国を根城にしている 八百八狸とその頭目、
隠神刑部狸(いぬがみぎょうぶだぬき、と読むらしい)です。
八百八狸は前作にも登場し、計画の手始めに豆腐小僧に
面白おかしい狸メイクを施してくれたりもしたんですが、
計画はうやむやなままに失敗したことになっていました。
しかし、まだ諦めてないようだ、ということが本作で明らかになります。
もし続編が出ていたら、この妖怪総狸化計画、
いったいどうなっていたのでしょうか?
これは『豆腐小僧 その他』という同作者の豆腐小僧に関する
作品集を読むと、少し想像がつきます。
『豆腐小僧 その他』には10代の若い読者向けに、
妖怪うんちくを簡単にして、ストーリーもわかりやすいように
現代を舞台にして、書き下ろされた『小説 豆腐小僧』が
収録されています。
この作品の中で「犬上」さんというのがでてくるんですね。
作中、悪役として登場し、お金大好き、自分が一番、
夢は世界制覇というわかりやすいキャラクターをしています。
名前は犬上だけど、イメージは狸おやじです。
名前からして 隠神刑部狸の人間バージョンではないか?と
推測できますね。
おそらく、豆腐小僧の続編にはこの隠神刑部狸がラスボス的な
位置づけで登場する予定だったのではないか、と思っています。
きっと、ものすごく強欲な、あくの強い狸だったんだろうなあ……
ちなみに、『豆腐小僧 その他』に登場する強欲人間の犬上さんが
最後にはどうなるかというと……
改心します。
自分だけ儲かればいいという発想から脱却するんですね。
もし続編が出ていたら、
隠神刑部狸も、妖怪総狸化計画のアホらしさに気がついて、
みんなで仲良く妖怪しましょう、となったのかなあ、と想像しています。
『豆腐小僧 その他』についてはこちらの記事からどうぞ↓
そして、最後に5番の埋蔵金の行方についても少し補足をしておきましょう。
作中に出てくる武田の埋蔵金、その総額なんと25万両!
まさに大判小判がざっくざく、状態なんですが、
25万両って、どれくらいの金額になるんでしょうね?
調べてみましたが、そもそも経済の仕組み自体が現代とは異なるので、
1両=いくら、と明確に定義するのは難しいようです。
高くて1両=13万円、低くて1両=3000円、でした。
作中、「1000両もらえれば一生遊んで暮らせる」と
言っている登場人物がいます。
この情報をもとにそろばんを大雑把にはじくと、
1000両 × 10万円 = 1億円
1000両 × 1万円 = 1千万円
一生遊べるというのだから、上の1両=10万円のほうが
説得力のある数字に思えますね。
だいたい、1両=10万円前後、としておきましょう。
すると 25万両 × 10万円 = 25,000,000,000円
250億円、で計算合ってますでしょうか?
これはとんでもない金額ですね。
悪い人間たちが集まってくるのも道理の金額です。
埋蔵金は作中、掘り返されることはついにはありませんでした。
もし掘り返されていたら……豆腐小僧たちがちょっと脅かしてみたところで、
人間たちの欲望が大人しく収まったかどうか……
ちなみに、『豆腐小僧 その他』では埋蔵金は出てきません。
そのかわり、「現実にあったらとても儲かりそうなシステム」が出てきます。
そのシステムに狸おやじ・犬上が目を付けて大儲けしようとするわけなんですが、
結果、システムは世界中のみんなでシェアしましょう、という平和な解決に終わります。
埋蔵金も、豆腐小僧が 「みんなで山分けいたしましょう!」 と
よく深い人間をたしなめてくれるようなラストが想定されていたのかもしれないですね。
なんて言ったって、お馬鹿とはいえ「主人公」ですから!
いかがでしたでしょうか?
京極先生は、シリーズものをいくつも抱えている
超売れっ子作家ですが、何年ぶりのシリーズ新作!
なんてことも起こったりするので、
「豆腐小僧もまだあきらめることはない!」
と、個人的には思っています。
小さい声で念を送っておきましょう、
豆腐小僧がわいて、京極先生のところへ、
せっつきにテケテケ駆け出してくれるかもしれません。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
よろしければ、感想など、コメントに残していってくださいね。
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『豆腐小僧双六道中 ふりだし』↓
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