絵本の紹介|大人も子供も楽しめる爆笑絵本、もうぬげない(ヨシタケシンスケ)
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もうぬげない ヨシタケシンスケ ブロンズ新社
ヨシタケシンスケさんは大人気の絵本作家で、本屋に行けば著書がずらりと平積みしてあると思います。
『もうぬげない』は第9回MOE絵本屋さん大賞で1位を獲得した作品で、私は本屋で立ち読みして爆笑し、その場ですぐ購入を決めました。
購入当時は、息子はまだ1歳台で、一応読み聞かせてはいましたが、意味はわからず「?」という顔をしていました。
それでも成長にしたがい、絵に興味を持ち、なぜか冷蔵庫の絵が描いてあるページで爆笑し、まもなく4歳になる今、やっと内容が理解できるようになり、ニコニコと聞いてくれるようになりました。
大人も子供も楽しめる『もうぬげない』ですが、大人と子供では、どうやら面白いと思うところが違うようです。
感じ方の違いが面白いなあ、と思ったので、ご紹介していきたいと思います。
目次
1.おおまかなあらすじ
2.大人はここが面白い
3.子供はここが面白い
1.おおまかなあらすじ
表紙からして、子供が無理矢理母親に服を脱がされているところから始まっています。
どうやらお風呂前にぐずぐずし、しびれを切らした母親が無理に脱がそうとして、服が引っかかって脱げなくなってしまったようです。
それでも一人でやりたい盛りの子供は、「ひとりでなんとかする!」と奮闘しますが、やっぱり脱げない。
……このまま脱げないまま大人になったらどうしよう?
ふと、そんな不安に囚われます。
立派な大人になれるかな?
困ったことが起こったらどうしよう?
友達できるかな?
湧き上がる不安を子供は「なんとかなるさ!」と打ち消し、「ずっとこのままぬげないままでいよう!」と決意します。
でも、ちょっと寒くなってきた、ママにお願いして脱がせてもらおうか?
悩みますが、やっぱり自分で頑張ろう、と「先にズボンを脱いでみたら?」と思いつき実行しますが、今度はズボンまで引っかかって脱げなくなって、さあ大変!
「もうおしまいだ」と絶望したところに、母親が登場し、あっという間に服を脱がせてお風呂に入れられて、パジャマを渡されます。
「またママのいいなりか……」げんなりとパジャマに着替えながら、「僕だってがんばれば自分のことくらい自分でできるもん」とぶつぶつ文句を言いますが、今度はパジャマが引っかかって着られない!
裏表紙では、パジャマが引っかかったままウロウロしている息子を「どうしたものか?」という表情で見つめている母親の絵で終わります。
2.大人はここが面白い
たった一枚の服が脱げないだけで、子供にとっては一大事なこの絵本。
子供なりに「脱げなかったら」の未来を想像して、なんとかなるさ!と自分を慰めているのが面白いですよね。
おそらく母親がこの子をほったらかしにして、思う通りやってみさせようとした時間は長くても10分くらいのものだと思うのですが、その間に広がる広がる、妄想ワールド。
このまま大人になっても、服が引っかかってるだけで他の人と変わらないから大丈夫。
ジュースが飲みたくなっても、ストローを2本つなげて飲めば大丈夫。
きっと僕の他にも脱げないままでいる子はいるはず。
そんなこと考えてる暇があったら脱ぎなさいよ、と言いたくなりますが、子供の心を想像してみると、育児がもっと楽しく面白くなる、そんなことにも気づかせてくれます。
子供の心の世界は豊かで突拍子もない、と日々息子に接していて思いますが、ご自身も育児中のヨシタケシンスケさんも、自分の子供を観察しながらこの絵本を作っていったのかな、と微笑ましい気持ちになります。
突拍子もないといえば、後半の「ズボンを先に脱いじゃえばいいんじゃない?」のくだりには、「そんなわけあるか!」と全力で突っ込みを入れたくなりますね。
そして最後のパジャマが引っかかったところは大爆笑でした。
絵本でこんなに笑える日が来るとは思わなかったです。
描いてある子供が男の子なので、息子と被らせて、似たようなことやってるよなあと大変な着替えタイムもこうして笑い話になるんだな、と少し着替えの時間が楽しくなりました。
3.子供はここが面白い
大人から見たこの絵本は、大人の目線で子供の心を想像してみる、という視点で描かれているとうつります。
裏表紙の「どうしたもんかね? この子は……」と呆れた顔で我が子を見つめる母親の視点ですね。
なので、この絵本は大人向けで子供にとってはそんなに面白くないかも……と買ったはいいけど、読み聞かせても、きょとんとした顔をしている息子を見てそう思っていました。
しかし、最近、幼稚園でもお着換えの練習が始まり、めきめきと着替えが上手になってきた息子が、この絵本を読んでもらっているときに、こんなことを言い出しました。
「僕はもっと上手にできるよ! ひっかかったりしないよ!」
息子の表情はいわゆるドヤ顔でした。
そう、子供から見たこの絵本は、自分がこの子だったら? という子供目線で理解していたんですね。
ある程度着替えが上手になった息子にとっては、まだ着替えがへたっぴな子の様子を見て、自分が誇らしく感じたのでしょう。
もし他の子が読めば「僕もたまにこうなるなあ」と同情したり、「自分でやって脱げなくなったら大変だ! しばらくママにやってもらおう」と知恵を働かせたりしているかもしれませんね。
テーマが着替えの絵本なので、自分で着替えの練習をする、3~4歳くらいになると、この絵本は子供にとっても日常のことになり、楽しめる絵本になるようです。
いかがでしたでしょうか?
ヨシタケシンスケさんの絵本は他にもたくさんあり、どれも考える、ということの楽しさを感じさせてくれる内容になっています。
年齢的には幼稚園以降、もしくは小学生以降で楽しめる、少し上の子向けの本が多いですが、まずは大人が読んで楽しむといいかもしれませんね。
それではここまで読んでくださってありがとうございました!