食い物の恨みは怖い

小説風育児日誌です、どうぞ!

煮魚事件という言葉が我が家にはある。
もう2年以上前のことだが、父親が残っていた煮魚を平らげてしまい、息子がまだ食べたかったのに!と泣いてしまった、という物悲しい事件だった。
驚いたことに、まだ根に持っているらしい息子は、どうかするとその恨みをのぞかせることがある。

朝食にメロンを出した。父親も息子も好物なので、今頃の季節はよく出てくるデザートだ。
メロンはケンカしないように3人分に切って分けて出すことにしている。
父親が、自分の分として切り分けられたメロンに手を付け始めると、息子がこう言った。
「パパ、ママの分まで食べちゃダメだよ」
息子は自分の分のメロンをしっかりと確保している。食べないよ、と父親が約束したにもかかわらず、食べる間中、じーっと父親が母親の分のメロンに手を出さないか用心深く見張っていた。
「食い物の恨みは怖いな、煮魚事件がまだ尾を引いてる」
父親はそう言って、苦笑している。
「そんなに睨まなくてもママの分はとらないよ。ママの分まで心配して優しいなあ」
「心配ねえ……」
息子の魂胆が大体見えていた私は、息子に尋ねた。
「ママの分から、少しもらおうと思ってるでしょ?」

息子は賢くなってきたとはいえまだ3歳児である。嘘で取り繕う、なんてことはまだしない。私の言葉にうん、と大きく頷いた。
「ママのメロン、僕一口もらうんだ♪」
情けは人の為ならず、というわけである。

ちなみに、このあと、じゃあ俺のをあげる、といった父親の一言は息子によって拒否されていた。こちらの理由の方がよほどよくわからない。

読んでくださってありがとうございました!

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