読書感想|ほぼ烏野のターン、ハイキュー!! #40(古舘春一)
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ハイキュー!! #40 古舘春一 ジャンプコミックス(集英社)
前巻ではVS鴎台高校との1セット目を落とし、さらに日向対策ローテまで組んできた鴎台に、エースの東峰も不調……という、苦しい展開のまま終わりました。
そして今回ご紹介する40巻目は、逆にほぼ烏野のターン!です。
読んでいて気持ちのいい展開になっていました。
それではこれ以降、ネタバレありです、ご注意ください。
目次
1.おおまかなあらすじ
2.キャラクターの使い方がうまい!
3.対立させて、際立たせる
1.おおまかなあらすじ
VS鴎台高校は、2セット目に入るが、烏野高校のエース東峰は敵のブロックに阻まれ点が取れない。
落ち込みかける東峰だが、同期である澤村・菅原からの声掛け、そして後輩・西谷のプレーにフォローされ、吹っ切れる。
鋭いアタックではなく、ふわっとしたプッシュにより1点を取った東峰は調子をつかみ、ついに渾身の一撃で点をもぎとる。
これに刺激を受けたかのように、日向も速さと高さを生かしたアタックを仕掛けブロックを破る。
山口のサービスでレシーブを乱し、鴎台のエース星海の万全ではないアタックを月島が見極め、ブロックの手を避けることでセットポイントを取る。
両校が1セットずつ取り、勝負の決着はラストセットに委ねられた。
2. キャラクターの使い方がうまい!
もう鴎台戦も大詰めなので、惜しみなくキャラクターを使っています。
特にエース東峰の復活でのキャラクターの使い方が熱すぎます。
あらすじでもさらっと書きましたが、細かく見ていくと
落ち込む東峰に同期の澤村・菅原が声をかける
↓
それでもアタックが決まらずブロックにはじかれるが、それを後輩の西谷がナイスレシーブ
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普段は控えの菅原がコートイン
↓
仲間のフォローに迷いが吹っ切れ、ふわっとしたプッシュで東峰が1点を取る
↓
アタックを続けるがレシーブされラリーが続く
↓
セッターとして菅原がボール下に入る
↓
いける、と確信した東峰がボールを呼ぶ
↓
菅原からのトスで、東峰の渾身のアタックがついに決まる
そして、コートにいる菅原、澤村、東峰はハイタッチし、ベンチにいる同じく同期のマネージャー清水が小さくガッツポーズをし、東峰の復調編は終わります。
エースの復活を描くために、東峰に関連する全キャラクターを投入して盛り上げているんですね。
特に西谷と菅原の使い方が本当にうまい。
かたやレシーブ専門のリベロ、かたや控えのセッターなので、彼らの活躍が主となって描かれることは少ないので、活躍すると、それだけで「お!?」と盛り上がるわけです。
さらに、ずっと前ですが、東峰が退部寸前になっていたころ、彼をコートに呼び戻したのは同じく西谷と菅原でした。
読み続けている読者の中にはそのことを思い出した人もいるでしょう。
だからこそ、彼らが活躍し東峰を支えるプレーをするのは、感情的にも熱くなるし、エースの復活を予感させて面白さも増します。
読者が望む展開をよく理解して、練られているなあと思います。
個人的にはマネージャーの清水の様子も伺えたのが好印象です。
ハイキュー!!は試合後などに、直接試合には関わらないマネージャーの様子もしっかり描いてくれることが嬉しかったりします。
3.対立させて、際立たせる
東峰の復活には、味方だけでなく、敵チームである鴎台高校のキャラクターもうまく対比で使ってあります。
対比されているのはブロックの一人である昼神(ひるがみ)です。
昼神の過去も簡単に描かれています。
バレー一家に生まれたらしい昼神は、自分もバレーをするのを当然と思い、めちゃくちゃ練習に打ち込みます。
打ち込みまくって、結果、ミスをする自分に嫌気がさすようになり、追い詰められ、「バレー好きじゃない、やめたい」と思います。
しかし、当時からチームメイトの星海に「じゃあやめれば?」と言われたことで、バレーはいつでもやめていいんだ、と気づき、「いつでもやめられるならもう少し続けてみよう」という気持ちで高校までバレーをしてきたのです。
昼神は「自分に強みがあるとするなら ここにいる皆ほど バレーも仲間も好きじゃないこと」と述懐しています。
このスタンス自体の是非はともかく、『ハイキュー!!』の世界観の中では、昼神は異質な存在だということが際立っています。
バレーも仲間も大好き、な日向が主人公ですからね。
烏野高校のメンバーも、みんながみんな、バレーも仲間も大好き、というわけではありませんが、昼神ほどの諦念をもってバレーに臨んでいるメンバーはいないと思います。
そして、烏野高校の東峰はどうかというと、以前はエースとしての重圧から、バレーが嫌になった時期がありましたが、現在は仲間に支えられてバレーにどっぷり漬かっています。
そんな彼は、おそらく仲間のことは大好きな一人でしょう。
エースとしての重圧は相変わらず存在し、特に鴎台戦ではブロックにうまくアタックを封じられ、追い詰められますが、仲間からのフォローで、エースの重圧=仲間が重荷、ではないと吹っ切れます。
それが流れを変える、ふわっとしたプッシュによる一点に繋がるのです。
プッシュによる一点が入った後、昼神は「アタックからの逃げ、弱腰にも見える、けど」とこの一点の重要性に気づいています。
自分を追い詰める傾向は東峰も昼神も同じだったのですが、吹っ切り方の違いで差を出しています。
いつでも逃げることを良しとした昼神。
逃げる対象なんてなかったと思った東峰。
東峰のプレーは逃げにも見えますが、実は迷いに立ち向かった故に見つけた活路でした。
昼神は留まったように見えて、この試合のずっとずっと前、いつでもやめていいんだ、と吹っ切れた瞬間に逃げていた、ということなのかもしれません。
この後、プレーでは逃げを見せても精神的には踏みとどまった東峰は、ついに昼神のブロックを破ってアタックによる一点を決め、両者の対比関係は東峰の勝利で幕を閉じます。
個人的には、昼神の開き直りも、東峰の諦めの悪さも、どちらも精神的にタフですし、どちらも見習うべきマインドだと思います。
ただ、『ハイキュー!!』の世界観と、少年ジャンプの標榜する「友情・努力・勝利」からすると、東峰に軍配が上がる、ということでしょう。
いかがでしたでしょうか?
スポーツ漫画を、特に中学高校生の子たちが活躍する漫画を読んでいると、学生時代の自分にこの漫画があればもう少し学生生活変わっていたんじゃないか!?、と残念になったりします。
読んだところで、私も頑張ろう! の気持ちは3日坊主だったかもしれませんが笑。
過去の自分はともかく、社会人でも、主婦でも、テンションを上げてくれる一冊だったことは間違いないので、落ち込んだときに読み返すと、前向きになれるきっかけになるかもしれませんね。
それでは、ここまで読んでくださってありがとうございました!
よろしければ感想など、コメントを残していってくださいね。