ジョジョの奇妙な冒険
言わずと知れた荒木飛呂彦先生による、ジョジョの奇妙な冒険シリーズのPart1からPart4の途中まで読み返しました。独特な画風とセリフ回し、世界観で多くのファンを魅了する超ヒット作品で、わたしも読み返すたびに面白さを発見しています。記憶が一番新しいPart4の虹村兄弟の話について感想を書こうと思います。
この後はネタバレを含みますので嫌な方はブラウザバックをお願い致します。
知らない人は少数かもしれませんが、そもそものジョジョシリーズの大前提についてお話してます。ジョジョの奇妙な冒険とは、ジョースター一族とDIOとよばれる吸血鬼の一派との闘いを描いたシリーズです。現在までにPart9まで続いていますが、各Part毎に主人公が異なります。主人公はジョースター家の血をひいており、苗字と名前にそれぞれ「ジョ」がつき、略して「ジョジョ」というニックネームを持つ、という設定になっています。
Part4では東方仗助(ひがしかた・じょうすけ)が主人公で、第二部の主人公であるジョセフ・ジョースターの息子という設定です。仗助は苗字に「ジョ」が入ってませんが、名前に「ジョ」が2回使われているので「ジョジョ」となっています。
舞台は日本の杜王町(モデルは仙台市辺りで、架空の町)で、そこに住む仗助が友人や家族と共に凶悪な犯罪者たちに立ち向かう内容となっています。
ジョジョの奇妙な冒険シリーズの魅力とはなんといってもその特異なキャラクター造形にあると思います。画風にも特徴がありますが、キャラクターたちに独特な魅力は、大袈裟でなく、魂に揺さぶりを掛けてくるような圧を感じます。
キャラクターたちの個性はそれぞれに多岐に渡るのは当たり前ですが、敵味方問わず、主要キャラクターに共通する要素は「諦めずに信念を貫き通す」ことにあると思います。
ここで、Part4の虹村兄弟のエピソードをもとに、敵キャラクターとして登場する虹村形兆(にじむら・けいちょう)の魅力を紹介したいと思います。
虹村形兆は、ある理由のために、スタンドといわれる特殊能力を持つ人間を探しています。彼は自らの願いのために主人公たちに襲い掛かり、味方であるはずの弟の億泰すらも足手まといといって躊躇なく攻撃し、 殺人も厭わず、常人の感覚からいえば間違いなく「悪」の方に分類されるキャラクターとして登場します。
しかし、主人公たちとの戦いに敗れた形兆は、自らが戦う理由を明かさざるを得なくなります。その理由と言うのが、死なない化け物になってしまった父親を殺してやれるスタンド能力を持つ人間を探すことでした。強力な殺傷能力を求めるあまり、彼は悪事に手を染めていたのです。読者はここで、悪と思っていた形兆の悲しい正義を知ることになります。そしてさらに、この後別の第三者の襲撃にあい、弟である億泰が攻撃を受けそうになり、形兆は自らを犠牲にして弟を救うのです。
彼は口では父親を憎み、弟を罵りますが、その心の底では熱く家族を思いやっている、これが形兆というキャラクターの揺らぐことのない信念であり、自分の命さえ迷わずにくれてやる「貫き通す」魅力を与えているのです。形兆というキャラクターは、登場回数で言えば5話分くらいと、とても短い命のキャラクターでした。しかし、おそらく読者はこの形兆というキャラクターを忘れないでしょう。自分の心のどこかにもある、しかし貫き通すことは難しい信念を貫き、果てたかっこいいキャラクターとして、覚え続けるはずです。
キャラクター造形というのはそもそも難しいし、それを描写するとなるとさらに難しい。たった5話の中で魅力を描ききった荒木先生のストーリー作りの力や、推して知るべしです。
形兆というキャラクターを思い出すにつれ、生きて億泰と肩を並べて戦う姿が見たかったなと思います。そして、こんなふうに読者に思わせるキャラクターといものをいつか書いてみたいと思います。
読んでくださってありがとうございました!